狭間少女~Proprietà comune~ 作:Il cielo
「じゃあ、私達は部活見学に行ってくるね」
「うん、いってらしゃい。また明日ね」
そう言葉をかわして、2人が教室を出ようとした時だった。
プツリと音を立てて、校内放送が始まった。
《2年A組 上井玲奈さん、至急第二理科準備室に来てください。繰り返します…》
繰り返し玲奈の名前を呼ぶ放送に耳を傾けながら、第二理科準備室とは何処だったか考えていた。
たしか、今は使われていないとか先生がいっていた気がする。
そんな所に何故玲奈が呼ばれるのかと不思議に思いながら、当人の玲奈の方を向いた。
「玲奈、呼ばれてるよ?」
「………うわ…ぅぇ…」
友優が呼び掛けているにもかかわらず、玲奈は唸り声を
上げるだけだった。
心なしか顔が青い気がする。
不信に思い、玲奈の所までかけよってみると、ぶつぶつと
何かを呟く声が聞き取れた。
「やばい………やばい、やばい、呼び出しまでかかっちゃたよ……逃げなきゃ…」
何やら焦っているのはわかるが何に焦っているかは全くわからない。
友優と顔を見合わせ、首を傾げる。
「あはは………友優、梓、また明日ね!バイバイ!」
そう言って、全速力で走っていく玲奈。
「どうしたんだろうね、玲奈。」
「さあ……明日聞けば良いんじゃない?」
「そうだね。じゃあ、また明日」
「うん。バイバイ」
友優と別れ、私もスクールバッグをもって教室をでる。
「第二理科準備室か……」
友優にはああ言ったが、やはり気になる。
気になる事は知りたくなるのが人というものだ。
私は靴箱とは逆の方へ足を向けた。
………
準備室の近くまでくると、流石に人も居なくなり、辺りは物音一つ聞こえなくなる。
「きゃあああああ‼ちょ……まっ、やああああ‼」
階段の前を通りかかった所で玲奈の悲鳴が聞こえたので、
立ち止まる。
どうやら上からの様だ。
冷静にそんな事を考えていると階段を駆け足で降りる音か
聞こえてきたので、急いで近くのトイレに駆け込む。
トイレに隠れながら階段を見ていると、階段から玲奈を
担いだリーゼントの集団が降りてきた。
そして、そのまま準備室の方へ走っていく。
「………今のって」
もしかしなくても風紀委員の皆さんである。
何故玲奈が風紀委員に連れていかれているのだろうか。
考えられる理由は一つ。玲奈が風紀を乱したのだ。
どんな事をしたのか想像はつかないが、玲奈自身が逃げていた事もあったのもあって、玲奈に比があるのは決まりだろう。
しかし、入学してからずっとと言ってもいいくらい私と玲奈は一緒にいた。
一体いつ風紀委員に目をつけられるような事をしたのだろうか。考えられるのは、入学式の時だが…流石に入学早々
問題は起こさないだろう。
頭を回転させながら、準備室の前までくる。
少し扉が開いていたので、こっそりと覗くと椅子に座らされて風紀委員の皆さんに見下ろされている玲奈がみえた。
しかし、そのまま何もおこらない。
緊迫したこの部屋の中を見ていると此方まで、緊張してしまう。
だからだろうか、私は後ろから近づいてくる足音に気が付かなかった。
「あの」
「〜〜〜〜〜〜っっっ⁉」
不意に肩に手をおかれて、ビクリと身体を大きく震わせて
後ずさってしまう。
暫く混乱していたが、落ち着いてくると目の前の人物が
見覚えのある人だと気付く。
「すまん……。大丈夫か?」
「あ、はい………此方こそ大袈裟に驚いてしまって…」
「いや………ん?」
「はい?」
目の前の彼は私をじっと見ると、考え込むような仕草をする。
「もしかして君は委員長の……妹さんか?」
「えーー、えっ…と、ううん…まあ、はい」
悩んだ末YESと答える。
雲雀さんが私の事を他人に話していた事にも驚きだが、
妹とは一体……まあ、確かに他人に紹介するならそれがベストなのか?
実際は私の方が歳上だけど。
「ああ、私は草壁といいます。風紀委員の副委員長をやっている。」
「あ、宜しくお願いします。狩羽梓です。」
思い出した様に、自己紹介をする彼に私も立ち上がって頭を下げる。
「宜しく。ところで、気になる事があるのですが」
「何でしょう」
「何でここで覗きを?」
それを言われてギクリと身体が強張る。
まさか見つかるとは思ってなかったので、言い訳など用意していない。
「あ……や、その……」
戸惑った挙句、本当の事を話すことにした
私は何も風紀を乱していないのだから、怒られる事もないだろう。
悪いのは玲奈だ。
「彼女は君の友達だったのか…」
「ええ、まあ。………あの、玲奈ちゃんは何をしたんですか?」
そう聞くと草壁さんは少し考えた後、話し始めてくれた。
「入学式の日、校門に置いてあった入学式と書かれた板を知ってますか?」
「ああ……風紀委員で作ったっていう奴ですね?」
「はい。簡潔にいえば彼女がそれを壊したんです」
「えっ………あの板をですか?」
「はい。」
昨年まで使っていた入学式の板が壊れたので、風紀委員が率先して新しい板をつくったと聞いた。
それにしても木で出来ているとはいえ、ほぼ新品で硬い板を彼女一人の力で壊すとは何とも恐ろしい。
と、いうかそんな事出来るのだろうか。
そんな私の心中を察してか、草壁さんが説明をしてくれた。
「周りにいた生徒によると、彼女、犬に追いかけられていて、前をよくみていなかったそうです。それで、頭から
板に突っ込んで彼女も板もボロボロに……」
何て馬鹿っぽい壊し方なのだろうか。
いや、そもそも可笑しいところがある。
「入学式は一週間前なのにどうして今更?」
「あー……それがですね、私達は一週間前から彼女を捕まえようとしていたんですが、彼女、逃げるのが上手くて今日まで捕まえられなかったんですよ」
あの風紀委員の目をかいくぐって一週間も逃げ延びるとは
玲奈は案外すごい人物なのかもしれない。
ひそかに、感心していると準備室から風紀委員が一人でてきた。
草壁さんに何かを告げると草壁さんは頷いて、私に断りをいれて、準備室の中へ入っていった。
「………帰ろうかな」
真相は知れたし、友達がボコボコにリンチされるのを見るのも胸糞悪い。
恐らく明日は包帯を巻いて登校してくるであろう、
玲奈に心の中で謝りながら足を階段へ向けた。
長かったので切ります。
続きますよー