狭間少女~Proprietà comune~   作:Il cielo

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12/ 名前を呼ぶ

 

 

階段を下ろうとしていると上から足音が聞こえて思わずトイレに隠れてしまう。

 

こっそり覗いて見ると、そこに居たのは欠伸をしながら階段を下りる雲雀さんだった。

 

そのまま第二理科準備室へと入って行く見つからないか、何故かドキドキしながらそれを見ていた私は雲雀さんが其処に入る事に疑問を感じていた。

 

玲奈に制裁を与えるのは他の風紀委員達で十分な筈だ。雲雀さんがわざわざくる必要性が感じられない。それとも……入学式の看板を壊された事を根に持っているのだろうか。

 

雲雀さんが来たとなると帰るのを躊躇ってしまう。他の風紀委員達はなんだかんだいって、一番重傷でも一週間ほど入院するだけに留まらせてくれるが、雲雀さんにやられると何ヶ月も病院にいる事になってしまう。

 

流石にそれは可哀想だと思うし、一応それを受ける相手は友達の玲奈だ。放ってはおけない。

 

恐る恐る、準備室の前へいく。扉に耳をあてて、中の音を聞き取ろうとするが余りきこえない。声的に雲雀さんが喋っているのはわかるが何を言っているのかまでは聞き取れない。だが、何時も以上に冷たい雲雀さんの声が、不穏な空気をかもし出している。 こういう時の雲雀さんは大抵怒っているのだ。やはり、看板を壊されたことが相当気に食わないのだろう。

 

そんな事を思っていると、中からガタンッと椅子が倒れる音がする。躊躇している暇はない。早くしなければ玲奈が噛み殺される。そう思った瞬間、私は扉を開けていた。

 

扉を開け、中に入った瞬間部屋の中の全員の視線が私に注がれる。若干、冷や汗を流しながら草壁さんの制止の声を無視して椅子から転げ落ちて、驚いた様子で私を見ている玲奈と、トンファーを構えたまま目だけ此方に向けている雲雀さんの元に行く。

 

「あ、梓………あっ!来たらダメ‼」

 

慌てて言う玲奈を一瞥し、雲雀さんの方を向く。

 

「何しにきたの」

 

無表情で問う雲雀さんに全身が震えるのを感じながら、私は言った。

 

「あの……話は聞きました。でも、玲奈も悪気があってしたわけじゃないと思うんです。だから………許してあげてくれませんか?お願いします………恭弥さん」

 

数ヶ月一緒に過ごしてきて、雲雀さんはこの「恭弥さん」というのに弱いのは知っている。私は人の名前を呼ぶ時、幼さが3割増しらしい。前まではそれも嫌で嫌で仕方なかったが、雲雀さん相手に言う時ばかりは童顔で良かったと感謝する。

 

「………………」

 

当人の雲雀さんはトンファーは下ろしてくれたものの、不満そうな顔をしている。それもそうだろう。私に頼まれたぐらいで引き下がる人だとは思っていない。

 

「その代わり、私が一発殴っておきますから」

 

ニコニコと愛想笑いをしながらいうのと、少し考えた後、雲雀さんは学ランを翻し準備室を出て行った。

 

私が一息つく前に、玲奈が息を吐く音が聞こえてくる。

 

「梓……ありがとう……怖かった…」

「まあ、どっちにしろ殴られるんだけどね」

「雲雀さんよりはマシだよー。それに一発だけでしょ?それに梓だし……其処まで痛くないでしょ」

 

ヘラヘラとしながら言う玲奈にカチンとくる。私だって、伊達に雲雀家に居るわけじゃない。

 

「………だったら三発ぐらいにしようか?」

「ええっ⁉…でもまあ、私が悪いんだしね…。わかった!」

「言ったからね?」

「え?う、うん」

 

玲奈がそういうのを確認してから、懐にいつも常備しているトンファーを構えて素早く玲奈に三発与える。鈍い音がして玲奈が倒れていくのを眺めながら、トンファーを懐にしまう。

 

玲奈を見てみると、痛みの余り気絶している様だ。これでも雲雀さんよりは何倍もマシだろう。振り返ってズラッと並んでいる風紀委員達に後片付けを頼むと、ポカンとしていた風紀委員達がビシッと姿勢を正して敬礼をする。

 

別に私相手にそこまでかしこまる必要はないんじゃないのか、とも思いつつ準備室を出る。

 

「………人を殴るのって……気持ちいいな」

 

もしかしたら私も雲雀さんの様な戦闘狂になり始めているのかもしれない。

 

 

翌日。包帯を巻いて登校してくる玲奈が私を見て怯えていた。

 

腕を避けて攻撃してやったんだから感謝してほしいものだ。






3話を少し編集しました。
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