狭間少女~Proprietà comune~   作:Il cielo

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13/ 掃除

 

 

最近、というか例の事があってからずっと玲奈が私を見るたびにビビっている。流石に何時も何時も怯えられるとイライラする。髪をくるくると指に巻きつけながら、先生がチョークで書き綴っている黒板を見やる。中学生になってから大分たち、授業も本格的に中学生の内容になってきたが、私はもうわかっている。

 

なので、授業中は幻術の修行の時間にあてることにした。まあ、授業中に出来る幻術なんて限られているが。基本的は巫山戯た幻術ばかりだ。因みに今は先生の頭から毛を失くすーーーつまり、ハゲにしている。巫山戯ているだけだと思われるかもだが、こういう幻術の方が生徒達の反応が見れて効果が分かるので良いのだ。まあ、半分は私の暇潰しなのだが。

 

私は別に修行が好きな訳ではない。家でも学校でも本気の修行なんてお断りだ。息抜きというのは大切だと思うんだ。うん。事実、この息抜きを始めてから幻術のレベルは上がった。人を他人に……つまり、他人に玲奈を友優に見せることぐらいなら出来るようになった。

 

まあ、攻撃系の幻術はからきし駄目なのだが。

 

因みに今回の幻術は周りの生徒が微妙に笑っていることから、成功だろう。当人の先生はハゲでもないのに笑われて気の毒だが、今は理科の時間。彼はじきに解任されるのでかまわないだろう。

 

一応ノートは取っているが、授業は聞き流しているとチャイムがなったので先生の頭を元に戻してやる。

 

「次なんだっけ」

「体育だよ」

 

誰にでもなくボソリと呟くと友優がそれに答えてくれる。

彼は本当に良い子だ。

 

「男子はバスケだっけ」

「うん、女子は?」

「………バトミントン」

「玲奈の出番だね」

 

修行のおかげか、前よりは運動は出来るようになったが、ノーコンは今だ健在らしく球技は駄目だ。私が苦い顔をしている中話をふられた玲奈が私とは対象的にキラキラと目を輝かせた。

 

「うん!バトミントン部として負ける訳にはいかないわ!」

「じゃあ、私とは違うチームになった方が良いよ…」

「んー、梓のノーコンっぷりはここ数ヶ月で痛いほど解ったから、あたしもそうしたいんだけど………チームは出席番号になるからね…」

 

チーム分けは一組4人で出席番号順。対戦ごとに4人の中から2人選び、相手と2対2という形になっている。

 

「私、上手い玲奈とペアになるの嫌なんだけど…」

「まあ、そうなったらあたしが全部打ち返してやるから大丈夫だって!」

 

それ私が試合にでてる意味なんだけど………という言葉を押し込む。全部打ってくれるならその方が良い。下手に私が打って負けても困る。

 

「それでも、バトミントン部エースの玲奈さんとは嫌だなー」

 

玲奈はバトミントン部に入って初心者にも関わらず、先輩達を追い越して今ではエースと言われるほどの実力になってしまった。

 

そして、それは友優も同じ。この前、レギュラー入りしたと聞いた。

 

「運動もできなかったら救いがないよ………梓は勉強出来るからいーじゃん。」

 

出来るというか、知っているだけなのだが…。

 

運動は嫌いではないし、基礎能力は平均より幾分か上だ。

しかし、中学の授業でメインとなる球技が出来ないのでは論外だ。嫌い……むしろ好きなのに、上手く出来ないというのはキツイものだ。

 

「はぁ………」

 

一つ溜め息を吐くと、隣から同じように溜め息が聞こえた。彼も運動………どころか勉強もダメダメだったな。

 

「玲奈、私先に行ってるね。」

 

そう玲奈に告げ、教室を出る。せめて、少しでもノーコンがマシになるように先に行って練習しておこう。駄目は駄目なりに頑張るしかないのだ。

 

 

…………………

 

頑張っても駄目だった。いや、実際には一点とることが出来たのだがそれはノーコンが幸いして入っただけだ。

 

同じ人が二回続けて試合にでることは出来ない。つまり私も六試合中三試合はでるわけで。結果、私がでた試合は全て負け、他の2人のペアが二回負けるという成績。全体で一勝五敗。全チームの中で最下位だ。因みに最下位のチームは体育館の掃除をする事になっている。

 

「………ごめん」

「いーよ、いーよ!私が無理矢理、梓に見せ場をつくろうとお節介しただけだし。」

 

玲奈はそう言ってくれるが、他の2人には完全に睨まれている。

 

「あ………た、体育館の掃除は私だけでやるから!」

「え……でも…」

 

男子も負けたチームは掃除らしいし、一人でするわけじゃない。女子は一人だが、男子が複数いる筈だから大丈夫だろう。

 

玲奈は一緒にやると言ってくれるが、他の2人は宜しく、と言って行ってしまった。

 

「玲奈もいいよ。今日、用事あるんでしょ?」

 

玲奈は今日、部活がないらしく、同じく部活のない友優から放課後デートに誘われていた。本人にいったら、デートじゃないと必死で否定していたが。

 

「ぅ………ご、ごめんね。じゃあ、宜しく!」

 

そう言い、玲奈も着替えにいってしまった。

 

「はぁ………」

 

面倒だが、サボったらクラスの子達から文句を言われるので体育館へ向かう。

 

体育館の扉を開けるとそこにいる筈の男子は1人しかいなかった。彼は、私が入って来ると驚いたが直ぐに私の横を通りすぎて体育館をでていった。

 

「………何あれ。ってゆーか、男子全員サボリ……!?」

 

私以外に生徒がいない現実に肩を落とす。

 

「………あーもー!こうなったらどーせ広い体育館にいるんだし、幻術の練習してやる…!」

 

掃除なんて物は、やってなくてもやりましたーって言っておけばいいんだ。

 

「折角、体育館にいるんだし攻撃系の幻術を練習しよっかな…」

 

広い所だからこそ出来る幻術を練習してみたい。

 

まず、最初にやったきり出来なくなった火柱だ。

イメージを頭の中で固め出そうとする。

 

「あ………れ……?」

 

どうしたことか、今まで出来なかったのに出来たのだ。恐らく、此処がリング争奪戦で使った場所だからだろう。いつも此処でクローム・髑髏がだしていた幻術を想像していたため、現地であるここでやるとイメージが強くなるのだろう。

 

しかし、出たのはいいが、小さいのだ。手の平サイズの火柱など戦力にならない。

 

だが、今回上手くいかなかった理由は何と無くわかっている。タイミングだ。火柱は私が出そうとしたタイミングよりワンテンポ遅れてでた。きっと、幻術をだす合図みたいな物があれば上手くいくと思うのだが…。

 

彼女……クロームも幻術を出す前に槍を床に打ち付けていた。

 

「………なんか長い物」

 

辺りを見回すとモップが転がっていた。さっきの彼が放り出していった物だろう。

 

とりあえずはコレでいいだろうと、火柱をイメージしながらモップの柄の部分を床に打ち付ける。すると、大きく熱い火柱が体育館に数本現れた。

 

「お、おお〜〜〜‼」

 

1人感動していると、体育館に近づく足音がしたので慌てて火柱を消す。

 

「…ん?狩羽だけか?他の奴等はどうした?」

「先生……えーっと、女子の他の子達はもう終わったので先に帰りました。男子はサボリです。」

 

女子は私が1人でやると言ったので庇っておく。男子は叱られればいい。

 

「はぁ………またか。後で電話しとかないと………あ、狩羽、終わったんなら帰っていいぞ」

「あ、はい。」

 

手に持っていたモップを片付けて、体育館をでる。とりあえず、着替えないといけないので更衣室へ行く。

 

「はぁ………幻術って神経使うわ………」

 

頭痛に耐えながら着替えをすませる。

この後、教科書やノートが入った鞄を教室に取りに行かなければならない、が如何せん行くのが面倒くさい。

 

「………私にもサイキック能力とかあったらなー」

 

フードを被った小さい術師を思いだしながらポツリと呟く。だが、そんな事を言っても能力はない物はない。自分の足で教室に取りに行く。

 

「教室………鍵かかってないよね…」

 

掃除している人がいるため、開けて置いてはくれているとは思うが、少し不安になる。しかし、そんな私の心とは裏腹に教室の扉はいとも簡単に開いた。

 

だが、そこには先客がいた。列の一番後ろの席で顔を腕に埋め、ピクリとも動かない。恐らく寝ているのだろう。まあ、私には関係ない………と言いたいが体育の時に掃除する事になった人は教室の鍵も閉めて帰れと言われている。彼を起こして教室からでてもらわないといけない。

 

「………はぁ。何で残ってるんだよ…」

 

ぐちぐちと心の中で文句を言いつつも、自分の荷物を取って、彼を起こすべく彼の席に近づく。

 

「あのーすいません、起きてもらえます?」

 

全く起きる気配がないのでもう一度声を大きくして言ってみる。それでも、起きる気配は無し。仕方ないので、鞄から教科書を取り出し軽く頭を殴る。すると、彼は唸り声をあげた後ゆっくりと顔を上げた。

 

「あれ……俺、寝ちゃってた…?」

「あの………早く出ていただけると有難いんですが…」

「あれ?狩羽?……あ!ヤッベ、もうこんな時間か!オヤジの手伝いがあるんだった!」

 

私の声が聞こえているのかいないのか、1人でわたわたとし始める。唐突に立ち上がり、鞄を持って「ワリィ‼」と一言告げると慌ただしく教室を出て行った。

 

一つため息をついて、私も教室をでる。

 

「狩羽」

「ぅああああ!?」

 

周りに誰もいないと思っていた所を話しかけられて声をあげて驚いてしまう。

 

「わ、ワリ……そんな驚くとは思わなくてよ…」

「や、山本君か………ビックリした……何の用?」

「いや、俺が寝てた所為で時間取らせちまったから鍵くらいは持っていこうと思って」

 

そう言って私の持つ鍵を指差す山本。

 

「職員室持ってくんだろ?」

「あ。うん………でも、任せちゃっていいの?」

「ああ。迷惑かけちまったからな」

 

じゃあ………と、山本に鍵を渡すが実際そこまで時間は取られていないし、迷惑は余りかかっていないのだが、わざわざ持っていってくれると言っているのだ。断ったら損だ。

 

私に手を振り、廊下を走る山本を見送る。

 

それにしても、背、高かったな。私からだと見上げるだけで首が痛くなる。首を抑えながら、やっと帰路についた。

 

途中でパンツ一枚の男が目の前を通りすぎていったが。

 

 

「………もう少しでぶつかりそうだった」

 




今回長くなりました。
因みに梓ちゃんは基本的に猫被りです。
か弱い子を演じてます。

台詞が少ないのでわかりにくいと思いますが。
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