絆道~始まりのミチシルベ~   作:レイリア@風雅

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第30話 助太刀

 

「っ!!!

く……っう……」

 

飛び起きた瞬間、全身に走る激痛に呻き、うずくまる。

呼吸を整え、まだ暗い辺りを見渡すと、苦悶に顔を歪め、額にタオルを乗せられているサスケと、その隣で眠るナルトがいた。

 

「なる、と……さすけ……」

 

息をし、上下に動いているのを見て、ユウは唇を震わせる。

 

「……生き、てて、よかった……」

 

ズキンズキンと傷が痛むが、そんなものが気にならなくなる位、胸が一杯になる。

二人の命が無事だったことの喜びを噛み締めていると、ガサ、と草むらから音がして、警戒する。

震える左手でクナイを手にし、痛みを堪えていたその時、草むらから見覚えのある桃色が姿を現した。

 

「ぁ……」

 

「……サ、クラ…?」

 

「ッ~~~ユウ!!」

 

泣きながら駆け寄ってきたサクラにほっとし、クナイを仕舞って呼吸を整える。

そんなユウの姿にますます涙が溢れた。

 

「もう……目を覚まさないんじゃないかと思った……」

 

「あ、はは……そんな簡単に、死なない、よ……」

 

「でも全然血、止まらなかったし、今だって……!!

ずっと苦しそうにしてるし……っ!!」

 

「あー……まあ、うん……」

 

鼻腔に残る薬品の臭いと、目の前が霞、過去の幻影がチラチラとちらつく。

背中の傷は毒が塗られていたからか、出血は止まる様子が見られないし、こうして起きていられるのも普通じゃ有り得ないだろう。

先ほどの、ユウとそっくりの幼い金髪の少女を思い出す。

 

「……ごめん」

 

「え?」

 

「……あたしが……もっとちゃんとやっていれば……。

サスケを守れた。サクラが、今、こんなに泣かなくて、良かったかもしれないのに……」

 

「!……バカ!!

ユウは一生懸命戦ってくれたじゃない!!

謝らなきゃならないのは寧ろ……」

 

「っ……やっぱりちょっとキツイな……さすがに……」

 

苦しそうに浅い呼吸を繰り返しながら立ち上がろうとするユウに慌てて座らせようとする。

 

「酷い傷なんだからもっと休まないと……!」

 

「そうも、言ってられないよ……。

今度こそ、二人を守らなきゃ……せめて見張りくらいしないと……」

 

「わ、私が見張りしてるから……だからユウは……!!」

 

お願いだから休んでいて……。

震える手でしがみつくサクラに困ったように微笑み、それじゃあ、と近くの木の根元に腰を降ろし、寄りかかる。

主に受けた深い傷が背中にかけてのものがほとんどだったので、激痛が走り、一瞬顔を歪めた。

 

「~、はぁ……ここで、休みながら見張りする。

それなら、休んでることになるし……」

 

「でも……!!」

 

「サクラだって、不安でしょう?

だから……起きてるよ」

 

ニッコリ、笑いかける。

どうして笑えるのだろうと疑問に思った。

何一つできなかった自分を罵ることもせず、怒りもせず、寧ろ責任を感じ、ボロボロの体を更に酷使しようとしているユウが理解できなかった。

理解できなかったが、同時にあこがれを抱いた。

 

私も……ユウみたいに強くなりたい。

 

「……あり、がとう……ッ!!」

 

今はまだ全然届かないけど。

きっと、いつかあなたみたいに大切な人たちを守れるくらい、強く。

 

ポツリ、ポツリとユウに負担をかけないように注意しながら会話し、サスケの看病をする。

やがて辺りが明るくなってきた頃、疲れ果てていたサクラを睡魔が襲い始めた。

コクンコクンと頭が揺れ、眠ってしまいそうな自分を叱咤し、フルフルと頭を振ることで眠気を飛ばそうと試みる。

 

「(眠っちゃダメ……。

あ!もう夜明け……!?)」

 

そんなサクラの様子を気にしながら、ユウはクナイを手元に置き、右手の具合を確かめる。

一応、簡単な手当てはサクラがしてくれたらしいのだが、右手は今、忍具を持てない状態だろう。

左手一本で、しかもこの怪我で、ユウは彼らを守り切ることができるのか不安だった。

“守るための戦い”の初戦……大蛇丸戦は惨敗だったからだ。

 

……それでも。

 

「(やるしかない)」

 

その時、草陰から物音がし、反応する。

サクラは震える両手でクナイを握り、恐る恐る音がした方へ顔を向けた。

しかし。

 

「!」

 

「……リス?」

 

小さな一匹のリスだった。

 

「何よ。あんまり驚かさないで」

 

ヒョコヒョコと駆け寄ってくるリスに気づき、慌ててサクラはクナイを放つ。

目の前に突き刺さったクナイに驚いたのか、リスは大慌てて逃げていった。

一方、ユウは割と近くに感じる気配に意識を集中させる。

人数は3人。

恐らく、音忍だ。

ずっと見張られている。

警戒を解けない状況の中、相変わらず過去の幻影がチラつき、精神的疲労が蓄積されていく。

 

「っはぁ……」

 

呻き、思わず頭を抱えたその時、見張っていた奴らが動いた。

サッとクナイを隠し持ち、顔をあげ、相手を見据えた。

 

「クク……二人で寝ずの見張りかい」

 

「!!」

 

「でももう必要ない……サスケ君を起こしてくれよ。

ボク達そいつと戦いたいんでね!」

 

うとうとしといたサクラも彼らに気づき、彼らと向かい合う。

そこにいたのはカブトの方を襲っていた3人の音忍。

内心、レイナたちではないことにほっと息をつく。

恐怖と緊張で震える体を抑えながらサクラは三人を睨み、叫んだ。

 

「何言ってるのよ!大蛇丸って奴が陰で糸引いてるのは知ってるわ……

いったい何が目的なのよ!?」

 

「「「!!?」」」

 

「……?」

 

「サスケくんの首すじの変なアザは何なのよ!!

サスケくんをこんなにしといて…何が戦いたいよ!!」

 

「(首すじに……アザ?)」

 

サクラの言葉に彼らは驚きを隠せないようだった。

それは秘密を知られていたという驚きではなく、もっと別な所にある気がした。

そして大蛇丸に付けられたと思われるサスケの首すじのアザ……これも気になる。

苦痛を訴える体に鞭を打ち、ゆっくり立ち上がりながら一挙一動を見逃さないよう気を引き締めた。

 

「……さーて…何をお考えなのかな…あの人は…」

 

「(彼らには知らされていない……?)」

 

「しかしそれを聞いちゃあ黙っちゃられねーな……。

この女もオレが殺る。サスケとやらもオレが殺る…」

 

「金髪の方は間違っても殺るなよ……。

あの人たちにボクたちが殺される」

 

「わかってるって」

 

身構えるサクラとユウ。

一人、随分血の気の多い者がいるようだ。

ザクがこちらへ一歩踏み出した。

しかし、もう一人の男、ドスに静止をかけられる。

 

「待て!ザク」

 

「あ?なんだよ?」

 

「ベタだなあ……ひっくりかえされたばかりの石……土の色。

この草はこんな所には生えない」

 

「クッ……」

 

「ブービートラップってのはさ……バレないように作らなきゃ意味無いよ」

 

それは偏った考え方だな、と内心ユウはため息をつく。

剥がされてしまったトラップだが、頭がキレるとカカシからお墨付きをもらう程であるサクラが、そこまで簡単にバレてしまうようなトラップを本命にするとは思えない。

きっとそのトラップではない、別の物が彼女の本命だ。

何も作戦など聞かせられていないが、ユウはサクラを信用している。

 

「チィ……くだらねぇ。

あのクナイはリスがトラップにかからないようにする為だったのか」

 

「まあこの女なんか用無いからさ

すぐ殺すぞ」

 

一斉に跳躍した彼らに口角をあげ、サクラは傍にあった糸をクナイで切った。

その直後、彼ら目掛けて丸太が落ちてくる。

これがサクラの本命か、とユウは少し厳しい表情で彼らを見上げた。

 

「上にもトラップが――――ヤバイ!!

なーんてね……」

 

やはりというべきか、ドスが手を丸太に宛てた瞬間、丸太は粉々に粉砕する。

彼らはそのままユウたちへと襲いかかってきた。

 

「はっきり言って才能ないよ君は……そう言う奴はもっと努力しないとダメでしょ!

弱い君がボクらをナメちゃいけないなぁ!!」

 

「!サクラ!!」

 

ユウには目もくれずサクラへ攻撃を仕掛ける音忍たちから彼女を守ろうと前に出る。

クナイを構え、向かい打とうとしたその時、横から第三者が乱入してきた。

“木ノ葉旋風”!!!

素早い蹴りを喰らい、音忍たちは成す術なく蹴り飛ばされる。

怯えたままのサクラと、その前に出たままのユウの前に一つの影が舞い降りた。

 

「だったら君達も……努力すべきですね!」

 

「!(ガイ上忍にそっくり……そうか、この人が……)」

 

「な…何者です……!?」

 

「木ノ葉の美しき碧い野獣……ロック・リーだ!」

 

リスを肩に乗せ、男……ロック・リーは腰を落とし、手を前に出す彼独特の構えをとった。

サクラは呆然と彼を見上げる。

 

「な……なんであんたがここに……」

 

「ボクは……アナタがピンチの時はいつでも現れますよ」

 

「!」

 

聞いてる方が恥ずかしくなってくるセリフを堂々と吐き、リーは不敵な笑みすら浮かべて単身、音忍たちと対峙する。

 

「とにかくありがと……助かったわ!」

 

「前に一度言ったでしょ」

 

「……え?」

 

「死ぬまでアナタを守るって」

 

……自分はここにいていいのだろうか

アウェー感に居心地の悪さを感じ、本気で悩むユウだった。

 

「仕方ないなぁ……ザク、サスケくんは君にあげるよ。

こいつらはボクが殺す!」

 

余裕そうな表情から一変、敵意をむき出しにしてきたドスを見て、チラリとユウたちへ視線を向ける。

 

「(サクラさんも見る限り……もう戦える状態じゃない。

それにあちらの方も…あの怪我では本当はもう立つことすら難しいはず……)」

 

「リーさん……でしたか?

あたしはまだ戦えます」

 

リーの視線に気付いたユウは一瞬フラついたが、しっかりとした足取りでリーの隣りまで来ると構えた。

 

「で、ですがその怪我では!!」

 

「大丈夫ですから……あ、あたしの名は琥珀ユウと言います。よろしくお願いします」

 

「あ、ご丁寧にどうも。

ボクはロック・リーです!サクラさんのお友達なら、敬語も敬称もいりません、フレンドリーな感じでよろしくお願いします!!

……ってそうじゃなくて!!」

 

「敬語敬称無し、だね……了解。

あはは、心配しなくて大丈夫だよ。

とはいえ右手はちょっと使えないと思う。だからサポートに徹するね」

 

「……分かりました

辛くなったらいつでも下がってください」

 

そんなやり取りの中、ドスが動いた。

ユウはクナイを放ち、ドスの進行を邪魔する。

ドスが跳躍し、忍具の付いた腕を振り上げた。

リーはそれをよけず地面に手を突っ込み、木の根を引きずり出して楯にした。

楯にされた木の根は粉砕される。

 

「君の攻撃には何かネタがあるんだろ?

バカ正直には避けないよ。

君の技は前に見せてもらったからね……」

 

余裕そうな態度こそ崩さないでいるものの、だが内心リーは焦りを感じていた。

 

「(とはいえ、ユウさんだっていつ倒れてもおかしくないこの状況……。

1対3は分が悪い

賭けに出るしかないな……一人ずつ全力でつぶす!!)」

 

 

 

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