リア充よ、雄々しくあれ   作:サンダーボルト

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世の中のリア充じゃない奴らは、リア充を羨み、妬む。そんなお前ら、リア充だって努力してるし、それがあるからリア充でいられるんだよ。

爆死?上等だ、かかってこいよ。我が身大事で口しか動かせない奴らが、口も体も動かしてる俺たちと同じ立場になんかなれるか。勝負にすら乗ってないのに、勝ち組になんかなれないよ。


葉山隼人の若干の憂鬱

俺の名前は葉山隼人。

 

 

世間一般では"リア充"といわれるカテゴリーに属する人種である。別に誰が付けてくれと頼んだ訳でもないのに、勝手にそう呼ばれている。いい迷惑だ。こうやって大雑把に区分される事で、いらん感情を向けられているというのに…。

 

 

例えば、同じクラスにいる比企谷八幡。彼は入院していたとかでクラスに遅れてやってきた。ぱっと見た印象は…暗い、だろうか。入院していた影響か目が濁ってたし。

社交辞令として一言二言話してみたが、なんでか挙動不審だった。簡単な相槌すら噛み噛みだ。あまり人と話さないのかな?

 

で、それから特に話さずに過ごしてきたんだが……時々彼から視線を感じる。

 

ただ見られるだけならこんなに気にしない。視線には慣れてるからな。

 

問題なのは、どこか見下したような…こちらを嘲笑してるような時がある事だ。

 

俺の見立てでは、彼には友達がいない。クラスでは携帯をいじるか本を読むか、お粗末な寝たフリをしてるかの三択だ。体育でも1人で壁打ちとかリフティングとかをしてる光景しかない。

 

思い返してみると、彼は基本1人だ。何が楽しくて高校に来てるんだろうか。マジで気になる。今度聞いてみようかな。嫌な顔されるだろうけど。

 

 

 

で、そんな彼が俺達を嘲笑してる理由は……ま、大方リア充爆発しろとか思ってるんだろうな。

 

友達がいないから、友達がいる俺達を羨ましがる。それだけじゃなく、多少大袈裟に青春楽しんじゃってる感を出してる俺達を馬鹿にしてるんだろ。

 

 

まあ確かに、意味もなく騒いでいるさまは、端から見れば馬鹿に見えるだろう。俺も他のグループ見てると思う時あるし。

 

だけどな、楽しい時に楽しさを表現して何が悪いんだ?勝手に嫉妬して勝手に見下して、ああ気分が悪い。どうせ仲良いわけでもないんだし、あんな視線送ってくるくらいならこっち見ないでほしいな。切実に。

 

 

ま、単に俺の考えすぎって線もあるかもね。あの濁った目玉は誤解を招きやすいだろうから。きっと何度かいじられた事もあるんだろうな。可哀想に…。

 

 

 

 

 

 

さて、クラスメイトの一人に対する考察を終わらせた俺が向かっているのは、職員室だ。国語教師の平塚先生に呼ばれ、本当ならとっくに友達と帰っていただろう放課後に話があるんだと。

 

 

……俺、なんかしたっけ?生活指導の先生に目をつけられる行動はしてないと思うんだけどな。ノックをして職員室に入ると、平塚先生が手招きしてきた。そして場所を移し、机を挟んでソファに座る。

 

 

「あの、ご用件は何ですか?」

 

「ああ…この作文についてなんだが…」

 

 

先生が取り出したのは、『高校生活を振り返って』というテーマの作文…あ、これ先生の授業の課題か。

 

 

「何かおかしい事でも書いてました?」

 

「とんでもない。誰がどう見ても素晴らしい出来だった。将来を見据えての勉強、新しく出来た友達と育んだ友情、そしてこれからの目標…非の打ちどころもない」

 

「……なら、何故呼んだんです?」

 

 

疑問しか出てこない。平塚先生は大きく息を吐くと、俺の作文を片手にこちらを見据える。

 

 

「この作文は確かに模範的だ。……模範的すぎるくらいにな」

 

「ハッキリ言って下さいよ。言葉を濁されても察せません」

 

「……分かった。この作文の内容は君が自分を省みたものなのか?」

 

「……?」

 

「使われている言葉全てが綺麗すぎる。都合のいい言葉だけを並べて、外見だけを見繕っているように感じるんだ」

 

「…ああ」

 

 

成程ね。テーマに沿って良い事書いてはいるけど、それって本当に君が体験したことなの?って言いたいのか。

 

 

 

 

「そんないちゃもん付けるために呼んだんですか?」

 

 

 

 

平塚先生の顔が険しくなる。そりゃあ先生からみれば生意気に聞こえるでしょうけど、こっちだって少し腹が立ってるんですよ?本当の事を書いただけなのに、嘘呼ばわりされたらそうなるでしょ。

平塚先生は気を落ち着けるかのように煙草に火を付け、ゆっくり煙をふかす。

 

 

「そうは言うがな、葉山。君の作文には…こう…オリジナリティーというものが感じられんぞ?」

 

「それは文章にしたからですよ。はたから見ればありふれた文章かもしれませんが、詳細は先生が思っているものではないと思いますよ?2という答えは1+1でも、5+7-10でも、32-23+98+63-146+37-59でも出るんですから」

 

「…ならば何故、詳細を書かなかった?」

 

「これからの目標と勉強に関しては詳細も何もないです。やった事そのまんまですから。予習復習にテスト勉強、将来立派な弁護士になる為に少しずつ勉強。

友達の話は詳しく書くとどうしても個人名が出ますから、恥ずかしくて…。これは勘弁して下さい」

 

「……ふぅむ。どこか釈然としないが、まあ、いい。分かった」

 

 

納得していないような先生だけど、別に嘘とかそんなわけじゃないと分かってくれたようだ。今度から、書き方を変えてみようかなぁ。またこんな事で呼ばれたくはないからね。

 

 

「では、もう帰ってもよろしいですか?」

 

「ああ……いや、少し待ってくれ」

 

 

せっかく帰れると思ったのに…。今度はなんだろうか。

 

 

「これは同じテーマで別の人物が書いた作文だ。これを読んで意見を聞かせてほしい」

 

 

そう言って平塚先生は作文を俺に手渡してきた。人の作文を勝手に見せていいのか?

 

 

えっと……青春とは嘘であり、悪である。

 

青春をおう歌せし者達は常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。

 

彼らは青春の2文字の前ならば、どんな一般的な解釈も社会通念もねじ曲げてみせる。

 

彼らにかかれば嘘も秘密も罪科も失敗さえも、青春のスパイスでしかないのだ。

 

仮に失敗することが青春の証しであるのなら、友達作りに失敗した人間もまた、青春のど真ん中でなければおかしいではないか。

 

しかし彼らはそれを認めないだろう。

 

すべては彼らのご都合主義でしかない。

 

 

結論を言おう。

 

青春を楽しむ愚か者ども、砕け散れ。

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

「へえ、面白いですね」

 

 

平塚先生がひどく驚いた表情をする。

 

 

「どうしました先生。意見が欲しかったんじゃないんですか?」

 

「い、いや…何しろ君が予想外の反応をするものだから、つい固まってしまってな」

 

「予想外?」

 

「君は常識的な人物だと思っていたが…この犯行声明のような作文のどこが面白いんだ?参考までに聞かせてくれ」

 

「中々的を射た作文だと思いますよ。人の薄汚い部分を躊躇することなく酷評している。名前は覚えていませんが、クラスメイトの誰かも似たような事言ってました。

俺の見る限り毛ほども勉強してないくせに、一丁前に『全力で取り組んだ結果だから悔いは無い。これも良い思い出だ。』なんてほざいてるんですよ?テストで赤点取ったの恥ずかしくないんですかね?あからさまに嘘吐いてるの分かってるのに、周りも咎めずにノッてるし。軽く殺意が湧きましたよ」

 

 

こういうはっちゃけた意見は嫌いじゃない。むしろ好意すら抱くレベルだ。俺の心に渦巻いていたモヤモヤを一気に晴らしてくれた。

 

惜しむらくは…この作文が『高校生活を振り返って』というテーマだという事だ。いくら内容が優れていても、テーマから逸脱した作文は評価されないだろう。悲しきかな悲しきかな。

 

 

「…どうやら、私は君の事を見誤っていたらしいな」

 

「そうなんですか?」

 

「君は優等生タイプ…あまり波風を立てない反応をするかと思っていたよ。まさか、殺意が湧くなんて言うとは夢にも思わん」

 

「ははは、そうでしょうね。俺だって誰にでも言うわけじゃないですよ。気に食わない奴だけです。ああいう馬鹿な事してるのがいるから、俺や俺の友達まで風評被害を受けるんですよ」

 

「……そうか」

 

 

平塚先生は二本目の煙草に火を付けた。心なしか疲れているようだ。俺の発言はそこまで衝撃的だったのか?

 

 

「先生、他には何かありますか?」

 

「いや、ない…。長々と悪かったな。帰っていいぞ」

 

「はい。失礼します」

 

 

鞄を持って立ち上がる俺。

 

 

「葉山」

 

 

歩き出そうとした俺にまた声をかけてくる先生。他に無いって言ったじゃないですか…。

 

 

 

「随分、この作文を気に入ってるようだが…もしだぞ?」

 

 

 

口元に笑みを浮かべて訊いてくる。

 

 

 

「この作文が、君と君の友達に向けて書かれたものだとしたら、どうする?」

 

 

 

……考える必要の無い質問だ。俺も微笑みながら平塚先生に返す。

 

 

 

「その紙切れを破り捨てて、執筆者の顔に唾吐きかけてやりますよ。知ったような口を叩くな、ってね」

 

 

くわえていた煙草を落として騒ぎ出した平塚先生を後目に、俺は帰路へついた。




どうでしたでしょうか?

一際強くなった葉山隼人が暴れまくる小説にしようと思ってます。もしよければ感想下さい。
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