テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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カイラとサーカス団、漆黒の翼

「というわけさかい!とっとと協力しぃや!」

 

ここじゃひと目につくからと連れてこられた裏路地の若干狭い道。彼女が言うにはこうだった。彼女の名前はカイラというらしい。そしてそのカイラさんはラメントでカジノの店長として働いている。客引きのために首都に来て客引き終わったのでとっとと列車に乗って帰ろうかと駅で列車を待っていたら丁度列車運行が中止となったそうだ。それは何故か。そこでエルゼ港で聞いたあの事件と繋がってくる。線路が何者かの手により爆破されたからだという。お陰で彼女は帰れずじまい。そうゆうことで、首都で足止めを食らっているらしい。歩いて帰ればいいじゃないか、と思ったがそんなこと言ったら殴られそうな勢いだったので口を閉じておいた。歩くと距離が凄まじいのだろう。ただでさえ世界で1番大きいことフォスキア大陸だ。その西を横断するこの長いフォルクス。だから鉄道が通っているのだ。

 

カイラはすっかりご立腹。苛立ったように靴を地面にコツコツと鳴らしている。

 

「…つまり、俺達にその鉄道爆破事件の犯人を見つけ出せと?」

 

「だからさっきからそうゆうとるやろ!」

 

(言ってないだろ……)

 

彼女のマシンガントークをなんとか聞き取り、理解できたのだ。それだけでも評価して欲しいぐらいだ。

 

「それは大変ですね。故郷に帰れないなんて!おまけに店長やってる身だと早く帰らないとまずいとか?」

 

ルーシェが聞いた。2人は見事に打ち解けている。カイラに失礼な態度をとったせいか男2人組、つまりアルスとガットはあたりがひどい。

 

「そうなんよ。自分物分りが早ようて助かるわ!名前は?」

 

「あ、私ルーシェです!よろしくお願いします」

 

笑顔で握手を交わすルーシェ。やはり誰とでも早く打ち解ける能力があるのは性格ゆえか。

 

「ふーん。犯人ねぇ…。言っとくけど、たとえその依頼を聞き入れたとしても見つかる保証は約束できねェぞ」

 

長らく話を聞いていたガットは欠伸をしながら言った。

 

「なんとなく犯人はわかっとる。だが確証はできひん」

 

「はぁ?分かってるなら自分で解決できるんじゃないんですか?なぜわざわざ俺たちに…」

 

アルスはさらに訳が分からないと言った表情で聞き返した。

 

「そこの緑がぶつかってきたからに決まっとるやろ!」

 

「緑…。ふっ…」

 

思わず笑ってしまった。ガットの特徴を一言で表す言葉だ。

 

「失礼だなアンタ!緑緑って!お前もさりげなく鼻で笑ってんじゃねぇよ!俺はガットっていう立派な名前があるんだよ。美人の店長さんよ」

 

「ガット?あぁ、そか。別に覚える気ないわ緑で十分やろ十分。そんで、アンタは?」

 

カイラはアルスに言ったようだ。

 

「あ、俺の名前はアルスと言います」

 

「…なんや自分、すっかした顔しとるなぁ…」

 

「…………………………」

 

無言が続いた。この切り返し、予想もしていなかった。何故自己紹介しただけなのにそんなこと言われなきゃならないんだ、と頭に血が上るのが自分でも分かった。

 

「ブァハハハハ!!すかした顔だってよ!大将!アハハハ!」

 

「うるさい…!」

 

怒りと気恥ずかしさで拳が震えた。殴ってやりたい、この緑。

 

「アルスは透けてないよ?」

 

「そっちの意味じゃないルーシェ。いいから触れないでくれ…」

 

透けたとかそう言う意味じゃない。第一顔が透けてるとかもはやホラーだ。俺は幽霊じゃない。

 

「犯人探しですよね!わかりました!私達が探します!」

 

そして依頼を普通に受けているルーシェに呆れた。アルスもガットも受けるとは一言も言ってない。

 

「また面倒事が増えたな…はぁ…」

 

ため息をつき頭を抱えた。

 

「めんどくせぇ〜…!」

 

ガットも心底そう思っているのだろう。声色で分かる。

 

「なぁにか言ったかそこの緑!」

 

「ま!まぁ~!旅は道連れっていうよ大将。ここは素直に受けとこうぜ?でないとこの人この裏路地から出してくれないぜ?」

 

後半は小声で、アルスに囁く。

 

「貴方に道連れされるぐらいなら死んだ方がマシです」

 

「オイオイ、お前ら俺についてくんじゃなかったのかよ……。つか嬢ちゃんがもう依頼として受けちゃってるしなぁ」

 

(確かに…)

 

「分かりましたよ…もう…」

 

「お?決心ついてくれた?」

 

「勘違いしないでください。貴方に道連れされたんじゃありませんよ。ルーシェです!」

 

「素直じゃねぇ―な。そんなんだからすかした顔なんて言われるんだよ」

 

「それ以上言うと撃ちますよ?」

 

「へーへー。すいませんでしたー」

 

カイラが腕組をし男2人を睨みつける。

 

「んで?どうなんや。受けんのか?」

 

「受けますよー。犯人探し。で、検討はついてるって感じでさっき言ってましたけど」

 

万事屋からしたらタダ働きだというのに何の利益があるんだ。だがもう受けてしまったのだから腹を括らなければ。

 

「犯人はズバリ!漆黒の翼の中におる!」

 

「漆黒の翼?何ですかそれ?」

 

アルスには聞き覚えのない名前だった。初めて耳にする。

 

「なんや知らんのか?漆黒の翼っつーのはサーカス団のことや。サーカス団の名前や、名前!ロピアスで漆黒の翼を知らんとはアンタら外人か?」

 

アルスはギクリとしたが、

 

「あ?ああ観光だよカンコー。俺たち貿易島から来たんだ」

 

「ああ、ほか。まあええわんな細かいこと」

 

ガットが誤魔化した。確かにあながち間違ってはいない。先程までまるで本当に観光客のような素振りだったのだから。

 

「カイラさんはその漆黒の翼の中に犯人がいると思っているわけですか?」

 

「ああ、そうやルーシェ。でもこれはあくまで私の推測」

 

「その漆黒の翼はどこにあるんですか?」

 

アルスが聞いた。

 

「どこってセーレル広場や。公演開かれるはずやで。ロピアス各地を移動しとるサーカス団なんやけど今日は丁度、この裏路地を抜けた先にあるセーレル広場で行われるはずや

 

「セーレル広場ね。ハイハイ、了解。ところで…」

 

ガットは改まったように真顔で話す。

 

「何や?」

 

「依頼受ける代わりに知ってたらちょこっとでもいいから教えてくれよ。人探してんだ。ロダリアって名前だ。俺たちその人を探して貿易島からはるばるやってきたんだ。知らないか?」

 

カイラは一瞬不敵な笑みを浮かべ言った。

 

「ああ、そん人なら自分がこれから必ず会える人物だと思うで」

 

「はぁ?占いじゃねぇんだぞ。知ってるか知らないか、どっちなんだ?」

 

「じゃあゆうわ。知っとる」

 

「ホントか!?」

 

そう、ガットはそのロダリアという人を探しにここに来たのだ。貿易島でのあの依頼を受けて。

 

「ほんまや。ま、これ以上は依頼主のプライベートとして黙秘するわ。いずれ会えるやろうから。ほな、私はこの辺で」

 

「はぁ?プライベートって…、あ、ちょ!?」

 

「カイラさん!必ず犯人探し出しますねー!」

 

───────任せたでー!。

 

後ろ向きに手を振りながらカイラは早々に去ってしまった。

 




今回の漆黒の翼は3人組ではありません。サーカス団の名称となっています。

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