テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜 作:平泉
「着いたー!!」
フィルは両手を空に突き上げ叫んだ。
「皆さんお疲れ様でした。ここがアンジエ駅です」
駅を降りるとアルス達がいたハイルカーク地区よりもすこし静というか。街並みも少し変わっており狭い路地の上には洗濯物が無造作に干してある。
「くぅ、ずっと座っていて疲れた…!」
「ふぁー、でも列車から見える街並みは綺麗だったねー!」
ルーシェは背伸びをした。腕がポキポキと鳴っている。
「フォルクスには一体何個駅があるんですか?」
アルスは疑問に思いロダリアに尋ねた。
「5つありますわ。フォルクス、ハイルカーク、ポワリオ、ミガンシェ、アンジエです。フォルクス駅近くにあの有名なロピアス城がありますわ。フィル、私達はアンジエから順番にハイルカークまでやってきたのですよ?貴方は知らないかもしれませんが」
「そうだったのか…。全然知らなかったぞ。だって殆どテント内で過ごしてたし…」
「こんなに街が広いと列車があるのもうなずけるな…」
「さて。アンジエ街道に行きましょうか」
ロダリアは指をさした。
「アンジエ街道の先は国境の砦、カルシン砦ですわ」
ふと、アルスは重大な事を思い出した。
(…旅券ないのにどうやって国境を渡るんだ…!?)
旅券がないと他国には帰れない。もともと、ロピアスに入れたのも成り行きであり、事実上不法入国だ。
(どうしよう…それにガットはともかくルーシェも旅券がないし…!)
「お?着いたんじゃね?やっぱちけぇな」
ガットは見渡すように手を額の上にかざし眺めた。国境は厚い壁が守っており、更にその門の下にはロピアス兵が見張っていた。
「ええ、確かにカルシンには着きましたが、ここである問題が発生しています」
「え?」
ロダリアは旅券を取り出した。
「私はこれを持っていますが、フィルは持っていません。彼女には戸籍がありませんからね」
ロダリアはチラリと考え込んでいるアルスを
「?つまり?」
視線を戻し、
「旅券がないとアジェスに行けないって事ですわ」
「あっ、そういえば…私も…!」
ルーシェはハッとした。まずい、という表情だ。
「ああ、旅券?一応俺は持ってるけど…?」
「ええ、ですが旅券を持っていない人を連れてきてしまった以上皆仲良く…とは行きません」
「何ィッ!?じゃっじゃあ小生はここでオサラバなのかっ!?」
「誰もそんなこと言っていないでしょう?」
ロダリアはため息をついた。
「まあ大丈夫です。ある道を通っていきます」
「ある道?」
アルスは首を傾げた。ロダリアはにっこり笑って
「こちらです」
ロダリアに案内された場所はカルシン国境の壁づたいに真っ直ぐ南に歩いてきた場所。相変わらず高くそびえる壁は変わらない。だがところどころにアーチ状に開いている壁があり、鉄格子で塞がれている。そしてロダリアはある所の壁にある鉄格子を引っ張った。
「よっと…」
ガコン!と音をたて横にズレた鉄格子。鉄格子が取れた場所は丁度人一人通れる隙間だ。
「ええ!?取れた!?」
アルスは驚いた。頑丈そうなこの鉄格子がいとも簡単に女性の力で動いたのだ。
「ええ、ここだけ取れます。フフフ、内緒ですわよ?」
ロダリアは得意げに笑い鉄格子の間を抜けて歩いた。
「この先を抜けるとアジェスなのですが、そこは丁度森の中になっています。整備が行き届いていません。まぁ抜け道ですからね、そう簡単には見つからないところに繋がっています。簡単に通れますが、いかんせん魔物がいます。油断はしないように」
「なるほど、アジェス側が森になってるんですね、ロピアス側は普通の草原が広がる所ですが…」
「へっえー、相変わらずスゲェなロダリアの情報網は」
「まぁ、知ってる人は両国でも極わずかでしょう。私に感謝してくださいね?」
フフフ、と上品に笑うロダリア。
(つくづくこの人は知りすぎているというか…)
アルスは横目でロダリアを見た。
「アルス?どうしたの?先行っちゃうよー?」
「あ、ごめん!今いくよ!」
アルスも隙間を通り、鉄格子を元に戻すと先へ進んだ。
「うわっ!ペッペ!なんか口に入った!!」
「フィルちゃん!大丈夫?」
通路を抜けるとロダリアが言っていた通り森があった。だが出口は、枝や葉っぱなのでカモフラージュされており、アジェス側からは壁が続いているとしか思えない。見事に隠されている。その茂みを抜ける途中でフィルは背が低いせいか、小さな枝が突き刺さりまくっている。
「うぇ…葉っぱだ…」
「うお…、なんか…、獣道って感じの所だな…」
当然にも地面には道があるはずもなく雑草が生い茂っている。木が所狭しと並んでおり、あまり人の手が加えてられないということが分かる。倒れている木には苔がびっしりと生えている。
「なんだか蒸し暑いな…」
アルスは肌にまとわりつく髪の毛を払い言った。
「ええ、もうアジェスですからね。あの分厚い壁を超えたのです。大分気候も変化してきたようです」
「ついにアジェスか…!」
アルスはしみじみと呟いた。しばらく道なき道を進んでいると突然バサバサッと音がした。
「うわぁぁぁびっくりした!!」
「何だ?鳥か?」
不気味で暗い森、フィルとルーシェは少し怯えている。小さな音がした。
「…、いや。皆、ちょっと待て。なんかいるぞ…!」
「ええ!?へ、変なこと言わないでよアルス!」
ルーシェは目を泳がせ声を震わせた。
「ええ…いますね。魔物でしょうか?」
「魔物っ!?どこだ!?」
フィルは杖を構えた。
「っ!ルーシェ!危ないっ!!」
「えっ?」
大きな影がルーシェを突っ切った。ルーシェがそれに轢かれる前にアルスは急いで彼女の体を抱え避けた。
「ぐ…」
「あ…!アルス!ありがとう!」
「いや、大丈夫だ。それよりコイツは一体…」
ガットは太刀を抜いた。
「おい!来るぞ!」