テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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水上の村 シャーリン

「さぁいざ行かん!!我が故郷シャーリンへ!」

 

ラオの合図と共にパーティー一行が乗ったイカダは川を下りはじめた。

 

 

 

「おえ…、酔った…」

 

フィルは口をおさえ倒れこんだ。

 

「ぐぉぉ…、なんつー運転だ…!二日酔いみてぇに視界がぐらぐらする…」

 

ラオのイカダのせいではないが川の状態からして荒い運転にならざる終えなかった、というべきか。

 

「しょーかないジャン!落とされなかっただけマシだと思ってネ!」

 

「ふえぇ、アルス…、目が回る……」

 

「ルーシェ!大丈夫か!?」

 

運転本人のラオ、アルス、ロダリア酔わなかったようだ。

 

「アルスもよく酔いませんでしたね、ものすごい揺れでしたわよ?」

 

「俺は乗り物酔いしないんだ。船酔いだってしない。乗り物酔いに強いんだろうな」

 

アルスは乗り物酔いには強い自信があった。

 

「あら、それは素晴らしいですわね。体質の問題なのかしら?」

 

「さぁ、そんなことよりやっと目的地のシャーリンについたぞ」

 

そう、カヤという盗賊を追って自分はここまでやって来たのだ。ルーシェの母形見、ナイフを貿易島ですられて以来。

 

「おおー、久しぶりの我が故郷…、こんなに水も家もあったっけ?人口も水も増えたってとこなのかネ」

 

 

 

シャーリンという村はサンハラ川の下流に位置する水上の町だった。自分達は西の首都、ヨウシャンから反対の東側の端まで森を越え川を下りたどり着いたのだった。どの家にも舟着き場が存在し、そこに一隻の小舟がある。この村にとって水と一体になって生活するのが当たり前なのだろう。

 

そしてパーティー一行が乗った筏は水上

に漂いながら次の目的について話始めた。

 

「カヤっつー奴を知らないか聞き込みするのが一番早いんじゃねぇの?」

 

「まぁそれが一番手っ取り早いか」

 

「それなら町長に聞いてみたらどうドウ?これも一番手っ取り早いと思うヨ、カヤって子がシャーリン出身者なら把握してるだろうし」

 

「そうですわね。そうしましょう。ですが、町長の家は何処でしょうか?」

 

「あ、ボク知ってるよ、家のてっぺんにカモメと手裏剣のマークがついてる家だヨ」

 

「手裏剣?なんですか?それって」

 

「コレだヨ」

 

ラオは手裏剣を取りだしルーシェに見せた。だがルーシェにしがみついていたフィルが一番早く反応を示した。

 

「なんだそれ!カッコイイ!触らせて!」

 

「ダメ~、子供は触っちゃメッメッ!」

 

「ケチ!!ドケチ!!ドドドケチ!!」

 

「アホなことやってねーでさっさと町長の家探そうぜ、オラ、さっさと動かせよ」

 

「モー、人使い荒いなぁ…。あ、ゾンビ使いか~」

 

 

 

カモメと手裏剣が重なりあったマークの家、それは目印通り分かりやすく簡単に見つかった。ラオの言う町長の家だ。表札に書いてあるのを読むと、名はユーロンというらしい。

 

「あったあった、アレアレ。いやぁ~場所も変わってないネ、すぐに見つかったヨ」

 

「へぇ~これが町長の家。やっぱ他の家と比べるとでけぇな」

 

「すみませーん!ユーロン町長さんいらっしゃいますかー?」

 

ルーシェはドアを叩き言った。そしてしばらくすると、

 

「何じゃ?」

 

ドアが開き、老人が出てきた。

 

「ム!?来客か!?いやー、コレはコレは!最近観光客がめっきり減ってしまってのぉ…、ささ。どうぞ入りなされ!」

 

老人はパーティーの格好からしてシャーリンの者ではないのだろうと悟ったのだろう。愛想よく笑い受け入れてくれた。

 

「シャーリン名物の水飴煎餅じゃ!どうぞ食べなされ!」

 

「え、ぇ、いいのかな…?」

 

ルーシェはいきなりのことで困惑したが、入ることにした。家の中に案内されもてなしの品として出された水飴煎餅。好みの水飴を選び一口サイズの煎餅にそれにちょびっと着けて食べる、というモノらしい。

 

「うわー!メッチャ懐かしい!!これボクの大好物!ザ・お袋の味!!」

 

ラオはそう言うと煎餅を貪った。

 

「あ゛ー!!小生も食べる!!」

 

この2人はここに来た目的を完全に忘れていた。

 

「おっ!うめぇ!!この組み合わせ最高!おいアルス!このマーボー豆腐味の水飴とカレー煎餅の組み合わせヤッベェぞ!マジ旨い!」

 

「わー、すごい…、味の種類がこんなに…!アルス!イチゴ味の水飴とミルクの煎餅!これすごく美味しい!」

 

「ふむ、このチーズ味の煎餅とワインの水飴は素晴らしいですわ、とても美味です」

 

「俺達は煎餅を食いに来たんじゃないんだぞ…」

 

「ホッホッホッ、味は好みによりますからねぇ、無限の組み合わせがありますよ!ワシの家にはたくさんの組み合わせができますぞ!」

 

とは言ったもののアルスも興味を示し食べた。ラオはストレートにノリ味の煎餅に醤油水飴の組み合わせ。そしてフィルはバター味水飴にジャガイモ煎餅という組み合わせが気に入ったようだ。アルスはチョコレートの水飴に所構わず様々なものを組み合わせていたので仲間達から怪訝な顔で見られたのは言うまでもない。

 

 

 

腹ごしらえも済んだところで、本題に入り町長にカヤの事を聞いてみる。

 

「カヤ…ですか…。ふむぅそんな人物はシャーリンにはおらんかと…」

 

「そんな…、もうここしか手がかりはないのに…」

 

ルーシェはガッカリした様子で肩を落とした。

 

「ですが、盗賊…、という単語でしたら嫌というほど最近は聞きますぞ」

 

「と、言いますと?」

 

「川下りに来る交易船がここ最近あんな川の状態にも関わらず襲われているんです。頑丈な貿易の船が沈められるなんて…。川が氾濫する以前からも、盗賊団の存在はくすぶっていましたが…」

 

「はぁー、なるほどね。貿易の船は確かに頑丈で川の流れなんてもろともしないけど、でもそれを狙って襲われるんじゃ首都も船は出せねぇわな」

 

「ええ、被害は悲惨です。貿易品も出荷品もすべて奪われるのです。恐ろしくて恐ろしくて。だからこんなに観光客が減ってしもうた…」

 

「そこにカヤがいる…という可能性もなきにしもあらずあらず、ですわね」

 

「決まりだな。やはりその盗賊団を探して見る他なさそうだ」

 

 

 

町長にさらに話を聞き、盗賊団はなんとあのバイヘイ湿地に拠点を張っている可能性が高いらしい。アルスとガットの予想通りだったというわけだ。そしてきな臭い話にして、その盗賊団は魔物と一緒に襲ってくるという事だ。恐ろしい限りだ。そんなのに襲われたら本当にひとたまりもない。いくら頑丈な貿易の船といえど。

 

「新たな情報。魔物と一緒に襲う盗賊団か…、厄介だな…」

 

「厄介どころか俺達の手に負えんのかよ?バイヘイ湿地だぜ?ラオ曰く腐海はあるわ底無し沼はあるわ、全くよくそんなところに拠点おくよな…」

 

「町長によるとバイヘイ湿地はその環境ゆえに人が寄り付かないらしい。盗賊の住みかとしては絶好の居場所というわけだ」

 

「そうだネー、昔からあの湿地は近づくなって言われてるし、船で通りすぎちゃうから滅多に行かないんだヨ」

 

「それで、立てた作戦というのがアレか…」

 

 

 

ガットの視線の先、それはここシャーリンの一番大きい船だった。ルーシェが船の上で手を振っている。女性陣はもう全員乗っている。

 

「ハァー、囮とかさぁ、よく思い付くよね。ずる賢いってこーゆう事言うんだか…」

 

「ずるはいらないぞガット。素直に賢いと誉めろ。これがシャーリンの町にとっても俺達にとっても最善だ。俺達は盗賊を追っている、その盗賊を退治してほしい町人。これほど利害が一致して利用しないことはない」

 

「つーかそれ以前に危ないとかそーゆーの考えなかったの?しかもあんな話聞いたあとで」

 

「無論承知だ、そんなに嫌ならお前は別行動だ。そうだ特殊部隊として一人で湿地を散策してきたらどうだ?」

 

「冗談!んなの勘弁勘弁…」

 

「はいはいしつもーん!ところでー船誰が操縦すんの?」

 

ラオが手を挙げていった。

 

「あ」

 

(呼ぶの忘れてた)

 

「オイ、操縦者ぐらい呼んでこいよ…」


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