テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

29 / 121
銀色の狼

無事船の操縦者を連れてきた。ユーロン町長の孫のユラさんだ。

 

「こんにちは、ユーロン町長の孫で、ユラと言います。どうぞよろしくお願いします」

 

「おう、ヨロシクな、頼むぜ船長さんよ、俺はガットだ」

 

「はい、僕も盗賊にはもううんざりしていますんで、精一杯協力させていただきます」

 

「俺はアルス、船の操縦は任せた」

 

「お任せください」

 

ユラの操縦する船はサンハラ川を上りはじめた。

 

 

 

そしてバイヘイ湿地付近の川のところまで来た。霧が深くなってきている。

 

「イカダの時は速くて何がなんだか分からなかったけど、近くで見るとこんなどろどろしかったんだ…」

 

ルーシェはバイヘイ湿地を眺めて呟いた。魔物も不定形型が多く、気味の悪さではホランの森に負けないぐらいだ。不気味な霧が立ち込めていてとても人が通るところではないと改めて実感させられる。双眼鏡を覗くロダリアが言った。

 

「霧で何も見えませんわねぇ、これは絶好の襲いポイントと言ったところでしょうね」

 

「師匠、小生にもそれかして!」

 

フィルは伸長が低い故ロダリアの持つ双眼鏡に手が届かない。

 

「言っておきますが、ホントに何も見えませんわよ?」

 

「かしてかして!」

 

「はいはい、どうぞ?」

 

「やった!!あれ?何も見えないぞ?」

 

「レンズが逆ですわよ?霧以前の問題です」

 

「あ、あれ?」

 

フィルはレンズを直して覗きなおす。するとフィルは

 

「ん?何だあの魔物?こっちに向かってくるんだが?」

 

「何!?フィル、かせ!」

 

「あ゛ーー!!何をする!」

 

アルスはフィルの双眼鏡を取ると覗いた。ロダリアも顔を険しくさせスナイパーライフルのスコープを覗く。

 

「おやおや、随分大所帯の乗客ですわね?」

 

「え?何々?どうなってんの?」

 

ガットは目を細めて霧がある方角を見つめる。なんと霧の中から鳥型モンスター、グリフィンに掴まりこちらに向かってくる人影が見えるではないか。

 

「アレが例の盗賊?魔物を操る能力があるのかネ?」

 

「ええっ!?本当にそんなことが出来るんですか!?」

 

「作戦は成功だ、あいつらで間違いないだろう、来るぞ!」

 

魔物、グリフィンに掴まった奴らは船に降下してきた。布を顔に巻き、目元しか見れない。

 

「ひぃいぃ来たー!」

 

フィルが狼狽えた。彼らはナイフを手にこちらに襲いかかってくる。

 

「影縫い!」

 

ラオは盗賊団が船に降りてくるのを待っていたかのように術を発動した。手を地につけて全員の身動きを止めた。ラオの影が伸び盗賊の影と繋がった。

 

「チョロいチョロい!今だヨ皆!やっちゃえー!」

 

「よくやったゾンビ!」

 

「ラオだヨ!!」

 

ガットはそう言うと動けない盗賊団に斬りかかった。

 

「おりゃあ!虎牙破斬!!」

 

「ぐあぁあああ!!」

 

ガットは鞘と太刀の二連撃を繰り出した。斬られた盗賊は血飛沫をあげ絶命した。

 

葬落脚(そうらっきゃく)!」

 

アルスも先制攻撃を仕掛けた。彼が目を付けた目標に向かって飛び上がり見事な踵落としで盗賊をダウンさせた。声も出ず気絶したようだ。

 

「黄泉へと誘う門、開け!ネガティブゲイト!」

 

そしてラオの術が発動し残りの盗賊団は死亡したようだ。

 

「なぁーんだ、口ほどにもないネ」

 

ラオは影の術の構えを解いた。

 

「男性陣が片付けてしまいましたわね、グリフィンは私がやっておきましたわ、逃げられては困りますから」

 

ロダリアの持っていたスナイパーライフルで撃ち落としたのだろう。魔物が川に浮かんで死んでいた。

 

「フィル、こいつだけまだ生きてる、糸で縛れ」

 

「ふぁ?」

 

アルスの足元に倒れる盗賊。彼の踵落としを食らい気を失っていた。

 

「1人位残しておかないと情報が聞き出せない、目を覚ましても逃げ出さないようにお前の糸で拘束そていてくれ」

 

「えー、めんどくさ…、しょうがないなぁ…」

 

フィルは渋々了承すると糸を作り出しグルグル巻きにした。

 

「まさか魔物に掴まって船に乗り込んでくるとはな、これは戦闘能力を持たない一般人では対処しきれないな」

 

「でもラオさんのおかげですね!あっという間に盗賊退治!」

 

「いやー、照れるナー」

 

「皆さん!大丈夫ですか!?」

 

甲板に船長のユラが出てきた。戦闘が終ったと気づき出てきたようだ。

 

「おう、無事だぜ、ユラ。なんか呆気なくて拍子抜けだよ」

 

「魔物も来たでしょう!?それを退治するなんて…」

 

「あ?あー、あの鳥か?ロダリアが片付けたみたいだぜ?」

 

「鳥?え、狼の魔物は来なかったんですか?」

 

「狼?」

 

ユラは甲板の手すりから身を乗りだし川を見渡した。川にはグリフィンの死体。甲板には盗賊の遺体。狼なんてどこにもいない。

 

「あれ?僕が聞いた情報では銀色の大きな狼が指揮をとっていた、って言うんですけど」

 

「狼なんて出てきませんでしたよ?」

 

ルーシェは皆の後ろに下がって様子を見ていたのでそう言った。

 

「うーん、でも確かに襲われた人は必ず狼がいた、って言うんですよね、幻でも見たのかなぁ?」

 

「夢でも見てたんじゃねぇの?」

 

ガットがそう言うとユラは首を傾げ、船室へと戻って行った。しかしその次の瞬間、

 

「うわああああああ!!」

 

ユラの悲鳴が聞こえた。

 

「ユラさん!?」

 

ルーシェは急いで駆けつけた。

 

「ルーシェ!」

 

続いてアルスも追いかる。

 

「皆はここで見張りをしていてくれ!」

 

そう言い残すとアルスは船室へ向かった。ユラは船室の奥に吹き飛ばされていた。

 

「うっ…ぐぅ」

 

全身を強く打ち、立つことができない。

 

「ユラさん!しっかりしてください!」

 

ルーシェは急いで治癒術を仕掛ける。

 

「ユラ!何があった!?」

 

「おっ、狼が…!狼に突進されて…」

 

「狼だと?魔物はいないはず…?」

 

「あっ、ああ!アイツ!」

 

ユラは力を振り絞り指を指した。ルーシェとアルスが振り返った先、天井のパイプに足をかけ逆さづりにコウモリのようにぶら下がっている銀髪の男がいた。

 

「えっ…?」

 

「なっ!?」

 

ルーシェは状況についていけず停止してしまった。男は気づかれたと気づくと船室に降り立ち甲板の扉を開けた。

 

「何…?今の…」

 

「ルーシェはここにいろ!ユラを頼んだ!俺はあいつを追いかける!」

 

 

 

甲板に行くと先程の男が残りのメンバーと対峙していた。銀の髪に黄緑色の瞳。上品な黒衣装をまとい貴族のような格好だ。長いその銀髪は結んでおり、ヒールを履いているせいもあるだろうが背がかなり高い。恐らくガットよりも少し上だ。彼はのんきにキセルを吹かしはじめた。

 

「これはこれは、僕の部下達を全滅させるなんて…、すごいですねぇ」

 

男は拍手をしながら言う。

 

「何モンだお前…」

 

「僕はノーヴ、君らが倒した盗賊の上司といったところですかね」

 

「ノーヴ…ね…やはりこの盗賊団は…」

 

ロダリアは小さく呟いた。

 

「ま、その糸で巻かれたヤツを解放すればおとなしく下がりますよ、渡していただきますよね?」

 

「断る、と言ったら?」

 

アルスはノーヴの後ろに立ち、銃を後ろから頭に突きつけて言った。

 

「手を上げろ」

 

銃を突きつけられているのにも関わらず彼はおちゃらけたようにこう返した。

 

「おっと、困ったなぁ。僕は君らに手をあげる気は無かったんですが…ねっ!!」

 

ノーヴは首をやれやれというように振り手を上げたが、(せき)を切ったように雰囲気が変わり、衝撃波を放った。拍子に宙に飛ばされたキセルをパシリとキャッチし、火を消す。

 

「うわっ!?」

 

アルスは思わす吹き飛ばされ呻き声をあげた。ノーヴは衝撃波と共に姿を変えた。そう、その姿こそユラの言動通り銀色の大きな狼だ。

 

「あいつ!変態したぞ!!」

 

「変身って言うんじゃないの?」

 

「いえ、どちらも同じ意味ですので合っていますわ、フィル」

 

「何冷静に言ってるんだお前ら!!」

 

ガットがツッコミを入れる。

 

「気を付けろ皆!多分こいつが例の狼だ!」

 

「グオオオオ!!」

 

狼は雄叫びをあげ、ガットへ突進した。

 

「うおっ!?」

 

吹き飛ばされ咄嗟に受身を取るガットだが、彼だから出来た事でユラはあのようにやられたのだとアルスは悟った。そこである作戦がアルスの頭に浮かんだ。

 

「なんつー、力…。イテェなオイ!」

 

「どうやら力ずくで行かねば分かってもらえないと判断しましたので」

 

「犬が喋ったぞ師匠!!」

 

「犬じゃない!狼だ!!」

 

何故かノーヴがツッコむ。

 

「いえ、遺伝子はほぼ一緒です」

 

「じゃあ変わらなくない?」

 

「俺の事は無視かお前ら!!」

 

ガットはまたツッコミを入れた。一方倒れたアルスは態勢を立て直すとガット達と合流し、皆に作戦を小声で伝えた。

 

「全く馬鹿にして…!」

 

「オイ!犬!!」

 

「やい!!犬!」

 

「犬さんこちら!手の鳴る方へ~、なんてネ」

 

「だから違うって言ってるでしょうがああああ!!」

 

「よくも俺を吹き飛ばしてくれたな!うおおおおりゃああああ!!」

 

ガットは太刀を構え直し突撃した。

 

「学習しない人ですね、今度はもっとひどい目にに合わせてあげましょう」

 

狼は牙を剥きガットに噛みつきかかった。噛みつかれる寸前、ガットは引っ張られるように後退した。エヴィ糸がガットに張り付いている。フィルがガットを引っ張ったのだ。

 

「!?」

 

狼の噛みつきは外れ、大きな隙が生まれた。

 

「凍結せよ!オールザウェイ!!」

 

隙が出来た狼にアルスはすかさずエヴィ弾と複合した光術を叩き込んだ。鋭い氷柱出現しが狼に食い込んだ。

 

「うあっ…!」

 

狼は仰け反った。そこへすかさずラオが技を発動させた。

 

「影縫い!」

 

「しまった!僕としたことが…」

 

「フン、よくも俺を吹き飛ばしてくれたな」

 

「成る程…!この強さなら部下達を倒せる訳だ…、だが!」

 

「ぅワッ!」

 

狼は視線を移動させ走り出した。物凄い力でラオの技は強制的に解かれてしまう。向かう先は先程アルスが気絶させた盗賊の方だ。

 

「僕の目的はこの盗賊団の中では少しだけ偉いコイツだ、皆殺されたなら別に構わないけど、口を割られては困るしね」

 

そう言い、縄でグルグル巻きにされた盗賊をくわえて船を去っていった。

 

「しまった!待て!」

 

アルスは慌てて追いかけるが船を降りられては追いかけようがない。

 

「くそ、俺のミスだ…」

 

「あら?それに関しては安心していいですわよ?アルス」

 

「え?」

 

ロダリアは言った。どうゆう意味だろうか。

 

「あれはマビヅルで拘束された遺体で、いわゆるダミーです」

 

「は?」

 

「本当の気絶していらっしゃる方はこちらに転がっている人ですわ」

 

「ああ、 ソーソー、さっきロダリアに頼まれたんだヨ、上着の服とか取り替えっこしたの、フィルも協力してくれたヨ」

 

アルスが船室にいた頃、ロダリアの提案で、ダミーを作り、それに騙されたノーヴがまんまとあのマビヅルの遺体をくわえていったということだ。

 

「何故…、そんなことを?」

 

「あら?詰めが甘いアルスに変わって私がフォローしてあげただけですわよ?」

 

「…、ありがとうございます」

 

それは嫌味で言っているのか、と思ったが口にするのはやめ、素直にお礼を言った。

 

 

 

「そんで?これからどうするんだ?アルス」

 

ノーヴが去ったしばらくのち、ガットはアルスに問いかけた。

 

「そうだな、尋問だ。丁度タイミングよくこいつも目を覚ましているようだ」

 

尋問はルーシェが治癒と看病でいない間に出来るだけ済ませておきたかった。ルーシェに見られたくないからだ。アルスは転がっている盗賊をコンコン、と蹴った。

 

「ヒィッ!!」

 

男は情けない声を発した。

 

「運が悪かったな、いや、運が良かったというべきか。なんせ命が助かったんだからな、お前がこの盗賊団ボスなんだろ?」

 

「なっ、何故それを…!たっ、頼む!命だけは!!」

 

盗賊は命が惜しいのか暴れまわる。

 

「もちろん、殺さない。お前には聞きたいことがあるからな」

 

「なっ、何だ?」

 

「カヤという人物を知っているか?」

 

「カヤ!?どこでそいつの名前を!?」

 

「知っているんだな、そいつの場所は何処だ?」

 

「知らねぇよそんなこと!」

 

「そうか、ならサヨナラだな」

 

アルスは身動きが取れない盗賊の額に拳銃をつきつけた。

 

「わぁーー!!待て待て!場所は本当に知らないんだ!本当だって!」

 

「なら何を知っている?3秒以内に答えなければ撃つ、3、2」

 

「あああ!喋る!喋るから!カヤは俺達を騙しやがったんだ!バイヘイ湿地に財宝が眠っているから協力して山分けにしないかと言ってきた!だがそこに財宝はなくて罠にはめられた!危うく死にかけたんだぞ!底なし沼にはめられてな!」

 

「他は?」

 

「あいつはケラケラ笑いながらどっかへ消えた!」

 

「それから?」

 

「狼が助けてくれたんだ!そして俺達はカヤに仕返しをしたくないか?ってな!そしてある組織に勧誘された!」

 

「誘ったのはノーヴか?」

 

「ああ!そうだ!」

 

 

 

「これ尋問というか拷問じゃね?喋らなきゃ殺すって…」

 

「誘導尋問うまいネ彼」

 

「流石スヴィエート人…」

 

「ん?師匠何か言ったか?」

 

「いえ、何でもありませんわ」

 

 

 

 

さて尋問(?)は続き、

 

「その組織の名前は?」

 

「リザーガっていう組織だ!」

 

ロダリアがその言葉に反応した。だが皆は気づかなかった。

 

「リザーガ…?聞いたことないな、リザーガについて知っていることを話せ」

 

「それは話せねぇ!フン!殺せよここで!リザーガについて喋ったら恐ろしい事が待っているんだ!死ぬことよりもな!」

 

「そうか、残念だ。だが俺も死よりも恐ろしい事を知っているぞ?」

 

アルスは姿勢を低くし盗賊の耳元でこんなことを呟いた。

 

「知っているか?スヴィエートの拷問術を…。指を凍らせて一本ずつ折っていく…。感覚ないから平気?そんなことはない、特殊な術でなんと痛みの増加付きだ。手っ取り早く首を凍らせる場合もあるそうだ。手足全部の指を折っても喋らなかったら、今度は磔にされて新兵器の死なない程度の実験台のされる…。ま、さっきので喋らなかった奴は滅多にいないがな…。もちろん毒ガスやら、拳銃をわざと急所から外す…とかな。ストレスで髪が抜け落ちるそうだぞ…?殺してくれ!って叫んで精神崩壊を起こす奴もいる。さて、お前にとって今一番恐ろしい事は何だ…?」

 

盗賊は顔面蒼白になった。ゴクリと唾をのみこんだ。ガットは引いた目でアルスを見た。

 

「何言ったんだよ大将…」

 

「ちょっと…ね」

 

アルスは姿勢を戻し、

 

「さ、話せ」

 

と、満面の笑みを浮かべて言った。

 

「リ、リザーガは優れた情報を持つ組織だ…。工作活動で国を動かして金を得る事もあるすげぇ組織だ」

 

「お前達が貿易品を盗んでいたのもそのため工作活動なのか?」

 

「ああ、カヤの情報を知りたければやれと言われた。元々盗むのは俺達の得意分野だし、お互いの利害関係が一致したわけだ、俺達は喜んだ。なんせ今後起こる事を先読みできるし、あいつらに従っていれば困ることはなかった。ノーヴって奴の指示で何でも上手く行ったからな」

 

「リザーガの目的は何だ?」

 

「ノーヴが言ってた…、我々がこの需要を握ることでこれから起こる戦争で大儲けが出来るってな…」

 

「戦争だと!?」

 

「オイオイ、マジかよ?」

 

アルスとガットは驚きの声をあげる。

 

「嘘だと思うか?だが本当なんだよ…、近々あの仲の悪いスヴィエートとロピアスの間で戦争が起こる。戦争が起こった国は当然疲弊する…。すると貿易相手はアジェスしかいなくなる訳だ…。その貯めといた貿易品を売りさばけばガッポガッポ稼げるっつー特需ってことだ、へっ。全く、リザーガ様様だよ?」

 

吹っ切れたように盗賊は全てを話した。

 

「お前ら知らねーかもしれないけどな、ロピアスの鉄道爆破事件だってリザーガのやったことだ。何か手違いで爆破のタイミングずれたらしいけどな。ホントは列車が通るタイミングで爆破してみーんな死ぬって寸法だったらしいぜ。滞在中スヴィエート人工作員がやったって情報流してな。そしてあのスヴィエート皇子殺害事件だ」

 

アルスは耳を疑った。

 

「────!?おい!今何て言った!?」

 

「あ?知らねーのかよ?スヴィエートの第一皇位継承者のアルエンス皇子がロピアス人の刺客に殺された…とか聞いたぜ?」

 

「何て事だ…」

 

「へー、どの時代もスヴィエートとロピアスは仲悪いんだネ」

 

ラオがぽつりと呟く。

 

「もうカヤなんてどうでもいいもんさ。リザーガに入ったもん勝ちだよ、今の時代アジェスは」

 

男は吐き捨てるように言った。突然船室の扉が開いた。

 

「皆!ユラさんが回復したよ!もう大丈夫!」

 

ルーシェが船室から出てきた。ユラも一緒だ。

 

「ご心配をお掛けしました、皆さん」

 

「ユラ!大丈夫か!?」

 

フィルが駆け寄るった。

 

「大丈夫だよフィル、心配してくれてありがとう」

 

フィルはユラにお菓子を沢山貰ったことでなついていた。餌付けされているとはフィルは自覚ないのだろう。もちろん、ユラもそんな気はないと思うが。

 

「ルーシェさんのお陰で助かりました」

 

ユラはもう大丈夫そうだった。

 

「おい!いつまで俺を拘束してるつもりだ!」

 

放置されている盗賊がほえた。

 

「もうお前は用済みだ。大人しくアジェスの警察に引き渡す」

 

「は!ふざけんな!知ってることは全て話した!離せよ!」

 

「ふざけるなはこっちの台詞だ。誰が野放しにするかお前を」

 

アルスはそう言うと銃床で首の後ろを殴ると盗賊は気絶した。

 

「ユラ、盗賊のボスはこいつだ。こいつを引き渡すためにヨウシャンに向かってくれないか?」

 

「もちろんさ!盗賊を退治してくれたんだ!それぐらいはさせてください!」

 

「ありがとう、助かる」

 

 

 

船は川を上り3日かけてヨウシャンへと向かった。世界最大のサンハラ川は伊達ではない。

 

「あー、やっと着いたー。小生疲れたー」

 

「上りになるとやはり時間がかかってしまいました。すみません」

 

「気にすんなよユラ、ありがとな」

 

「ユラ、警察を呼んで盗賊を逮捕させてくれ。今まで世話になった。俺達はやらなきゃいけないことがある」

 

「分かりました、色々ありがとうございました。ルーシェさんの料理美味しかったですよ」

 

「ありがとうございます!ユラさんお気をつけて」

 

「ええ、さようなら」

 

船を降りると6日ぶりのヨウシャン。

だがこの間、時は大きく動いてたのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。