テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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封印結界

祭壇が2つに割れ、中から現れた陣は光を放っている。

 

「何だコレ!?うほおぉ小生いっちばーん!」

 

フィルはその陣の上に立ち人差し指で天を指した。

 

「フィル!危ないかもしれないよ!?」

 

慌ててノインが引き止めるが、

 

「………あり?」

 

陣の光は消え、何も起こらなかった。フィルはそのポーズのまま素っ頓狂な声を出す。

 

「何も起こりませんわね」

 

「あら?何もないの?」

 

ロダリアとルーシェも首をかしげた。

 

「ええー!?ここまで来て何もないんかい!?」

 

カヤはガックリと肩を落とした。

 

「えーいやいや、絶対何かあるだろここまで来といてそれはねぇよ」

 

ガットも便乗し、陣の上に乗ってみるがやはり何も起こらない。

 

「………」

 

沈黙が流れ、ラオが、

 

「何も起こんないネ」

 

と、言った。

 

「うるせぇ」

 

彼は拗ねると陣を足裏でコツコツと蹴った。

 

「んで?結局さ、カヤさんは考古学がお好きなわけ?」

 

ガットはカヤに問い掛けた。

 

「んな訳あるか!仕方無くだよ仕方無く!」

 

「そうだ、カヤ。そもそも何が目的で解読をしていたんだ。リザーガから本をくすねといてここに来たからには考古学に興味がない限り何か理由があるはずだろう」

 

アルスは先程聞き出せなかった事をもう一度聞いた。カヤは観念して話し出した。

 

「あーもう分かったよ話すよ…。あたしはこのガラサリ火山の麓のソガラ村で生まれ育った。でも幼い頃からこの村は貧乏だった。年寄りは多いし辺境のド田舎だし。でも温泉とかもあって皆は明るくてイイ人達がいて、あたしはソガラ村が大好きだった。でもおばあちゃんも村の人も皆口々にこう言うんだ。昔はこうじゃなかったって。貧乏でもないし、温泉ももっと入れるのがあった。今は煮えたぎってとても入れない温泉なんかもある。火山灰なんてものも頻繁に降らないし、そもそもガラサリ火山の活動もこんな活発じゃなかった、って」

 

カヤは神妙な顔であらましを話した。彼女にも彼女なりの苦労や事情があって故の人生だったのだ。

 

「その話と考古学の話はどう繋がっているんだ?」

 

「1年前、大変だったけど、なにか原因があるんじゃないかと調べてみようと思ってね。このガラサリ火山に来て、この祭壇を見つけた。そしたら訳のわからない文字があって、全く読めなかった。そんで、さっきルーシェが読んだこの古代プロメシア語を解読すれば何か分かるかもと思ったんだ。それで、ソガラに仕送りのため商人やってるって嘘をついて、金目のものを盗んだりしてた。その合間に解読のヒントも得られるんじゃないかってね。勿論、アタシも鬼じゃない。貧乏な人間や弱い人間からは決して盗まなかったし、どっちかって言うと悪業者から盗んだりしてた。いい例がリザーガだよ。あいつら、アジェスを乗っ取ろうとしてるんだ!天皇は言葉巧みに騙されて、それで国民も気付かず操作されてる…!だからソガラが必死に助けを求めても何一つ救援を寄越さなかった!アジェスは今ピンチなんだよ!」

 

カヤは感情を爆発させて怒りをぶつけた。リザーガは、気付かぬうちに、じわじわとアジェスを侵食していっているようだ。

 

「落ち着いて?カヤちゃん。ね?気持ちは痛い程分かるよ…。私も、貧民出身で、似たような経験があるから… 」

 

ルーシェがカヤの手を取り、落ち着かせる。

 

「………ごめん。で、リザーガからくすねた荷物にその古代プロメシア語で書かれた書物が混じっていた。その時確信したよ。こいつらは何かを知ってる。この世の中の理を。何かを隠して、何かを企んでいるって事も。それで、解読書を盗んで、ここに来たってワケだよ。話が少し脱線しかけたけど、これでいい?」

 

カヤは目線をアルスに向けた。

 

「なるほどな。お前にも色んな事情があったわけだ」

 

アルスは同情した。カヤに対するイメージがガラリと変わり、心が痛んだ。

 

「辛かったでしょう、貴方は本当は、優しい人なんですね」

 

ノインがそう言うとカヤは笑った。

 

「優しい…か。おばあちゃんによく言われるな。でもやってる事はただの泥棒。自分でも分かってる。分かってるんだけど…」

 

「そうですね、罪は罪です。でも僕が今言ったことは本心ですから」

 

「ありがと。でもアタシの話なんて今はどうでもいいんだ。あの陣、本当になんもないの?」

 

カヤが指を指した陣は今は光を放っておらず、ただの模様になっている。するとカヤは何かを思いついた。

 

「そだ!ルーシェ!来て!」

 

「うぇ?」

 

カヤはルーシェの手を引くと陣の前に立たせた。

 

「はいドーン!」

 

「うびゃあ!?」

 

カヤはルーシェの背中を両手で叩いた。カヤはあまり強く叩いたつもりはなかったのだが、ルーシェは頭から陣へ突っ込み派手に転んだ。

 

「わー!!ルーシェ!?ゴメン!?え!?そんなに強く叩いたつもりはないんだけど!?」

 

カヤは慌てて駆け寄るが、立ち止まった。陣がまた光を放ち始めたのだ───!

 

「っし!乙女のカンは当たったみたいだ!皆ー!!なんかよく分からないけどとりあえず集まれ!」

 

「うぉぉお凄いぞルーシェ!小生が1番乗りだ!」

 

「ボク2番乗り〜」

 

「フィル!僕も!」

 

「集まれ!全員集合だ!」

 

「ほーい」

 

「面白いことになりましたわね」

 

「うぅ……、いたた…。鼻とおでこがぁー…。ひどいよぉ、カヤちゃん……。あ、あれ?」

 

ルーシェが立ち上がろうと陣に手を付けた瞬間瞬く間に光が強くなった。皆が慌ててその陣に集合した途端、彼らの姿は一瞬にして消えた。

 

 

 

「何だここ……?」

 

強い光に包まれた途端、視界が一気に変わった。先程の火山内部の風景とは打って変わって、何か神聖な空気に包まれている。しかし、周りは炎のように赤い。だが暑くはない。なんとも形容し難い空間にアルス達は飛ばされた。

 

「何……?ここ……!?」

 

カヤは辺りを見回すと、走り出した。そして、奥へ少し進むと立ち止まった。

 

「……、進めない。何か壁があるみたい」

 

よく見ると透明な壁がある。コンコン、とノックをしてみても音はしない。ガラスのようなものなのに、不思議な壁だ。するとまた文字が浮かび上がってきた。カヤはその文字を見つめた。先程解読してた文字と形式が一緒だ。

 

「皆ー来てきてー!」

 

カヤはアルス達を呼ぶと、ルーシェを手招いた。

 

「これ、なんて書いてあんの?」

 

「えーと、ね……。封印結界、源の力を持つ者、証を示せ。無と創造の力、世界の理。世界の、原点……」

 

「相変わらずイミフだわ。何言ってんのこれ?」

 

カヤは率直な感想を述べた。壁をまたコンコン、とノックする。

 

「世界の理……、世界の、原点……?」

 

アルスは顎に手を当て考えた。その横で、ルーシェは右手を壁に当てていた。

 

「…………?」

 

どうしてこうしたのか、理由は分からない。ただ、こうすれば何かが起こると直感で悟ったのだ。そして左手も壁に当てようとした。人差し指が触れた途端、ヒビが入った。

 

「……わ!」

 

「ぎゃ!」

 

パリィイィイィイン!!

 

「うわっ!?」

 

アルス思わず腕で顔おおおった。大きな音をたて、それが崩れた。壁はガラスの破片のように崩れるが、やがて小さな粒子となり消えていった。エヴィで構成されていたようだ。

 

「な、何が起こったの?」

 

カヤが恐る恐る目を開けると、目の前には赤い物体がいた。うずくまり、それが何なのか、全くわからないが、これだけは言えた。

 

人とは違う、何かが、そこにある。

 

「…………え?」

 

「な、何……?」

 

ルーシェは両手を下ろせずに、目の前の光景にただただ驚いている。やがてその赤い物体が腕、脚を広げた。

 

ウォォオオオオオオオォオオオオオ!!!

 

猛々しい雄叫びをあげ、赤い物体は目を覚ます。炎を纏い、熱気がアルス達に伝わってくる。

 

「ニン……ゲン……。ゆるさ、ぬ……!滅びよ!」

 

「おいおい何だこれやばくね!?」

 

ガットがただならなぬ空気を感じ取ったようだ。だがその空気はここにいる全員が感じ取っている。

 

「っ来るぞ!」

 

「うおおおあああああああああ!!!」

 

赤い生物が、殺気と炎を纏い、アルス達に襲いかかってきた─────!


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