テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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カヤ・ジュリア

「嘘!?スヴィエート……!?イフリートさん、本当にスヴィエートにマクスウェルがいるんですか?それに、アルスもどうして……!」

 

ルーシェは信じられないという顔で聞き返す。アルスとイフリートの完全に一致したその答え。スヴィエート出身のルーシェが驚くのも無理はないだろう。イフリートはギロりとアルスを睨んだ。

 

「貴様…、何か心当たりでもあるのか?」

 

「まだ確証はない……。ただ、思い当たる事があるのは事実だ」

 

アルスは目をそらして言った。

 

「………、それが事実だとしたら気候変動と異常気象の原因はスヴィエートだという事だ。………アルスと言ったか。あのセルシウスの封印者の子孫だと俺が予想するに、貴様は恐らくスヴィエート一族だな?」

 

「……!?何故分かった!?俺がスヴィエート一族だと!?それに、封印の子孫とか、一体どうゆうことなんだ!?」

 

「俺が答える問にはもう答えた。十分なヒントも与えたはずだ。あまり人間に加担するのは好きではないと言ったはず。後は貴様らの問題だ。これからの世界の行き先もな。俺は傍観させてもらう。封印結界も解かれたことだし、とりあえずまぁ、火山活動のソガラ村に対する被害は今しばらく俺が抑えておいてやるとしよう。それで文句はなかろう、女」

 

イフリートはそう言うと、早々と炎のエヴィに紛れて姿を消していく。

 

「待て!まだ聞きたいことがたくさん……!」

 

アルスが静止をかけるが、イフリートは完全に消えてしまった。

 

「イフリート……、人間嫌いとか言ってるけど、ソガラの事ちょこっと解決してくれた……!案外いい奴なのかも……」

 

カヤがそう呟いた。

 

「くそっ、まだ分からない事があり過ぎる……!」

 

アルスは悔しがった。しかしこうしていても埒があかない。

 

「とりあえずさ、一旦村に戻んない?」

 

カヤが言った。納得はいかなかったが、アルス達はソガラ村に一旦戻ることにした。

 

 

 

カヤの家に行くと彼女は嬉しそうに家に入った。

 

「ただいま!おばあちゃん〜!」

 

元気良く言うと、奥からカヨが出てきた。しかし、彼女は泣いていた。

 

「カヤちゃん!無事だったんだね……!あぁ、どれほど心配したか、このバカ孫!」

 

泣きながらもカヤを叱咤する。

 

「ごめんね、おばあちゃん。今まで嘘ついてて…。世界を股に掛ける商人なんて言ってて、本当はただの盗賊に過ぎなかった…。ただこの村を救いたい一心で、今までやってきて……!周りが見えてなかった!アタシ、危ないことばっかりしてて、おばあちゃんを心配させたくなくて……!」

 

「わかったわかった。とりあえず、何があったのか、きちんと説明しんさい?」

 

「それが───」

 

カヤは今までの経緯を語り出した。先程の火山の出来事、命からがらルーシェに助けられた事、そしてソガラの火山影響が抑えられたことも。精霊の話も大体の事が伝わるように、分かるように話した。

 

「そうかい、色んなことがあったんだね…。いいんだ……あたしゃアンタが無事で生きててくれりゃ……ありがとね、よく頑張ったね……」

 

カヤも祖母につられて徐々に涙声になっていた。彼女にとって、祖母とこの村はとても大切な存在なのだろう、と全員が分かる場面だった。

 

「おばあちゃ〜ん!うあぁぁあ、ごめんなざいいいい!」

 

その優しい言葉にカヤは鼻がツンとした。視界が滲み、耐えきれなくなり、涙をこぼし、顔をくしゃくしゃにさせながら謝り、抱きつく。が、しかし

 

「こりゃっ!」

 

「あいたァッ!?」

 

突然カヤの頭にキレよく手刀を入れた。

 

「謝るんべきは、私だけじゃないだろう!」

 

「うぇ?」

 

「情けない声出しおって、この大馬鹿者!いくら義賊っぽい盗賊って言っても、一歩間違えれば軍にお世話になる罪人でもあるんだよ!?アンタは罪を償わなきゃいけない。それに!ルーシェさんに助けてもらったんだろう!?恩返し、盗品返却、その他諸々終わるまで、帰ってこんでええ!!」

 

「んなっ、え、えええええええええ!!」

 

「当たり前じゃ!!」

 

「そんな殺生な〜!」

 

カヨはカヤの顔を両手で掴むと言い聞かせた。

 

「ええか、アンタがやるべき事は、アンタが一番分かってるはずがな。さっきの話を聞いとってもそう!恩返しもそう!」

 

「……………!」

 

図星だった。密かに心の奥で思っていたのかもしれない。

 

「お行き。彼らと一緒に。私が思うに、この先世界に大きな変革が起こる。年寄りのカンじゃ。アンタはそれを変えて、世界に少しでも貢献することで、罪滅ぼしの一貫になるんじゃないのかい?」

 

「おばあちゃん……」

 

カヤは真っ直ぐに祖母の目を見つめると、大きく頷いた。

 

「うん……!分かった……、アタシ、やるよ!あいつらについて行く!」

 

「それでええ。それに帰ってこんでええ言うたが、疲れた時、寂しくなったら、少しなら帰ってきてもいい。ただし、そのままこの村でグータラするようじゃ追い出すからね?」

 

「分かった、ありがとおばあちゃん!」

 

カヤは決心を固めようだ。振り返り、アルス達に向き直る。

 

「……と!いうわけで、アタシことカヤもアンタ達と一緒に行くことになるけど、いい?」

 

ルーシェは手を叩いて喜んだ。

 

「うん!!一緒に行こ!カヤちゃん!」

 

「はぁ、ルーシェ……。まだ決まったわけじゃ……」

 

「いいでしょ?アルス?私、同年代の仲間が増えるのすっごく嬉しいんだもん!」

 

ルーシェの輝く笑顔にアルスは目をそらした。

 

「はいはい………、分かったよ。カヤ、これからよろしく頼む。ただし、もう盗賊紛いなことはよせ。カヨさんの言われた通りにするんだな。孝行の為にも」

 

「分かってるよ」

 

カヤはアルスの鋭い睨みに目をそらさずしっかりと見据えて答えた。

 

「………仲間が増えるのは大いに結構な事ですが、私も貴方の被害者の一部になるのですのよ?スターナー島で盗んだモノ……、返していただけるかしら?」

 

「あ!オッケーオッケー、なんか使い道分からないし、対して価値も分かんない物とかはアタシの部屋にどっさり保管してあるから、返すよ」

 

「んじゃま、自己紹介かね?仲間になった事だし?」

 

ガットはあくびをしながら気だるそうに手を頭につけると

 

「俺、ガット・メイスン。万事屋。一応今じゃロダリアに雇われてる身なのかね。お前の探索でな」

 

「アハハ、そりゃ遠路はるばるご苦労様。すみませんでしたねー」

 

カヤは苦笑いで返答した。

 

「私はルーシェ・アンジェリーク。ルーシェって呼んでね」

 

「小生はフィルだ」

 

「僕ラオ〜」

 

「私はロダリア」

 

「僕はノインです」

 

「ハイハイ、皆よろしく〜、って最後にアンタはアルスだっけ?え?ってかさ、なんかスヴィエート一族とかなんか言ってなかった?」

 

「ああ。俺はアルエンス・フレーリット・レックス・スヴィエート。10代目、現スヴィエート皇帝だ」

 

「はぁ!?」

 

抑揚なく言ったが、カヤにとっては重大発表だった。

 

「本当だ。気候調査団は、ロピアスとの平和条約の条件としてやっている。皆からはアルスと呼ばれている」

 

「うっそ〜ん!アンタが皇帝陛下!?えっ、ちょっ、アタシ運イイ〜!コネ出来ちゃったよ〜!スヴィエート皇帝と〜!」

 

カヤはアルスの正体を知るとはしゃぎ出した。

 

(現金な奴だな……)

 

アルスは少し微妙な気持ちになった。あまりそうゆう視点で自分見られたくはない。

 

「……まぁ、だからと言って敬語はいらない。皆普通に接してくれる。それと同じようにしてくれるとありがたい」

 

「全然いいってばー、敬語なんてまず堅苦しくて嫌だし?」

 

「あの〜…」

 

カヨが気まずそうに声をかけた。

 

「今日は、その、アルスさん達はどうするおつもりですか?もう日も暮れるし…、よかったら、泊まっていきます?」

 

「よろしいんですか?」

 

「えぇ、窮屈な村で、狭い家ですが、どうぞ温泉にでも浸かって、疲れを癒してください、孫がお世話になったんですから、これくらいさせてください」

 

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」

 

アルスはカヨの御好意に答えた。だがありがたかった。火山は暑いし、色々ありすぎて疲れている。アルス達はソガラで一泊することにしたのだった。


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