テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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フードル鍾乳洞

「……話とは何ですかロダリアさん」

 

ロダリアに人気のつかない場所に呼び出された。今、アルスとロダリアは倉庫の奥、荷物が積み重なり周りから完全に死角になっている位置に立っている。アルスは警戒心丸出しだった。

 

「そんなにピリピリしなくても…?」

 

「ただでさえ行き詰まっているんだ。一体何の……」

 

「エヴィレーダーを欺く方法の事ですわ」

 

「……は!?」

 

アルスのイライラした物言いを遮るようにロダリアは被せて言った。アルスは驚いた。

 

「なっ、だったら何故さっき言わなかったんですか!?」

 

「あら、お分かりにならないのですか?」

 

「はぁ?」

 

「私は貴方の名誉を守ったのですわよ?むしろ感謝して欲しいぐらいです。エヴィレーダーを最初に開発したスヴィエート。その誇りの技術を欺く事ができる手段を、皆の前で言いふらされたいのですか皇帝アルエンス様は」

 

ロダリアはいっそ清々しい程の皮肉を込めて言い放った。アルスは自分のこめかみにピクリと青筋が浮き出るのを感じた。

 

「チッ……、お気遣いどうも!」

 

「まぁ、そんなにイライラなさらなくても。そうですわ、私の手料理は食べてくださったかしら?会心の出来だったのですけれど」

 

「会心!?アレで!?貴方の感覚おかしいですよ!!」

 

「よく言われますわ」

 

「ガットが外に捨てましたよ!食べれませんよあんなゲテモノ!捨てた地面の草が枯れるなんて一体どんな毒素を秘めているんだあの料理は!」

 

「まぁ!?何て酷いことを!?一生懸命作りましたのよ!?」

 

「ハンナから聞きましたよ!厨房出禁になったらしいですね!?」

 

「それは誤解ですわ、ハンナが誤解しているのです、ええ。私の芸術に、大いなる誤解を抱いているのです、私は何度も説得しましたわ彼女に理解をされるために」

 

アルスはあのロダリア製シチューを思い出した。吐き気がした。あれなら料理初心者の自分が作った方がまだ幾倍もマシだ、と心底思う。それを持ってくるガットもガットだ。嫌がらせかと言いたくなる。こっちは急ピッチで作業を進めたというのに。

 

「………失礼、話がズレましたね 」

 

アルスは冷静を取り戻した。

 

「で、その…………。エヴィレーダーを欺く手段、とは…」

 

「コホン。ええ、そうでしたわね。まぁ、この時代に発見されていたら、この第2次世界大戦は変わったかもしれませんね。今言っても意味のない事ですが」

 

「もったいぶらずに、どうぞ。俺を気遣うなんて気持ち悪い事しないで下さい」

 

「……フン、言うようになりましたわね。ルーシェとの仲進展しないは疎か、悪化してるクセに」

 

「それは今は関係ないだろっ!っていうか早く本題を言ってください!」

 

アルスはロダリアのペースに飲まれそうになるが何とか引き戻した。

 

「ロピアスの資源に、雷結晶がある事はご存知ですわね?」

 

「あぁ、扱いが難しく、一般人には渡りにくい結晶だな」

 

「ええ、ですが、ロピアスの技術発展に欠かせなかった結晶の一つですわ。今後更なる技術進歩が期待される反面、扱いの難しさに比例し、事故も多い」

 

「で?それが何か?」

 

「その雷結晶が採掘されるフードル鍾乳洞というのがミガンシェ地区方面の南にあります」

 

アルスはハッとその名前を思い出した。確かにノインが言っていた。自分はあまり真剣に聞いておらず聞き流していたが、レガート家に来る時にクラリスとノインが話していたはずだ。

 

「確か……様々なエヴィ鉱石が採れるっていう……」

 

「ええ、そうですわ。正式に言うとエレスティオ山の事です。その山の地下に広がるフードル鍾乳洞という所で雷結晶が多く採れます。フードルと言うのは、あくまで鍾乳洞の名前で、様々なエヴィが採れるのは主にエレスティオ山の事なのですわ」

 

「へぇ……。それで?」

 

「そのフードル鍾乳洞の奥地で、ある鉱石が採れます。レオンテ鉱石です」

 

「レオンテ鉱石……?初めて聞くな」

 

「最近発見されたものですから。そのレオンテ鉱石をミーレス輸送機に搭載すれば、一時的にエヴィレーダーから感知されない状態を作り上げる事ができるのです。特殊な境界線を作り出して、見えなくする事、それが可能なのです」

 

「………そ、そんな鉱石があるのか…。しかも最近発見された物…。平和条約を結んで心底良かったとホッとするな」

 

アルスは思案を巡らせた。その鉱石を悪用すれば、エヴィレーダーに感知されずに、スヴィエート国内に侵入もできるし、気付かれないまま攻撃だって出来る。

 

「そんな事を知っているなんて、流石国家情報機関のハイドディレの職員ですね」

 

「まぁ、私がハイドディレだなんて。それに仮にそうだったとして、だからこの情報を知っている、なーんて話は貴方の憶測に過ぎませんわ。そうでしょう?保証も無いのに?」

 

「ええ、憶測に過ぎない。聞き流してくれて構いませんよ。ですがコレ、現代に関わると結構、というかかなり重大な機密ですからね」

 

「………まぁ、平和条約があるからいいではありません事?」

 

「貴方がそれを言うと、寒気がしますね」

 

「何とでも」

 

相変わらずあまり仲は良いとは言えない2人だが、ロダリアの目的に着々と進んでいる事は確実だった。

 

(早く過去のスヴィエートに行ってみたいですわね。噂の、あの御方をどのようにゆするのか、楽しみでなりませんわ)

 

ロダリアは不敵な笑みを浮かべた。しかし、その話を盗み聞きしていた赤髪の少女が1人いた。

 

 

 

アルス達はフードル鍾乳洞に来ていた。ポワリオから一駅先、ミガンシェの地。街から外に出て、街道を歩き、エレスティオ山にたどり着き、フードル鍾乳洞を見つけたのだった。

 

「この山の麓のフードル鍾乳洞。そこが目的地だ。そこでレオンテ鉱石を見つける」

 

「レーダーを欺く鉱石ねぇ…、大層なこった」

 

「あぁ、思い出しましたそうだ、エレスティオ山だ!そうだそうだ、そうだった!」

 

ノインは思い出せなかった名前が分かりスッキリしたようだ。

 

「レオンテ鉱石、うへへ………高く売れそうなんじゃないの〜?」

 

「………カヤ。言っておくがミーレス輸送機に搭載するだけだ。この時代にあんまり干渉するな」

 

「わーかってるっつーの!それアンタがそれ言う?これから一番干渉しそうなアンタが?」

 

「………早く行くぞ」

 

「あー!誤魔化したわね!?コラー!ルーシェとも何かあったんでしょー!?このスケコマシ!」

 

アルスはカヤの野次を無視して鍾乳洞に入った。まず奥地に進まなければならない。

 

 

 

しかししばらく進むと、妙な音がフィルの耳に入った。

 

「なぁノイン……なんか変な音しないか?」

 

「え、えぇ?コウモリかなんかじゃないの?」

 

後方にいたノインとフィルが話していた。フィルは何が音を聞きつけた。

 

「いや、なんか、誰かの声だったような……、小生の気のせいか?」

 

「こ、声!?ままままさか、幽霊!?」

 

「何だと!?幽霊がいるのか!?」

 

「ひぃぃいいいやめてよフィル!僕を脅かそうとしてるんでしょ!?」

 

「ホーラ首なしお化けー」

 

ラオが2人に近づいて首をもげさせた。

 

「「ぎゃあああぁあああぁぁああ!!」」

 

鍾乳洞にノインとフィルの悲鳴が響き渡った。

 

「グロイからやめろ!この腐れゾンビ!」

 

「やーいガットもビビってやんのー」

 

「てめっこんのやっろ……!」

 

ガットとラオが恒例の喧嘩をしだした。アルスは呆れてその様子を傍観する。

 

しかし突如、

 

「ぎぃゃあああああああああ!」

 

あああああぁぁぁぁ─────

 

と、鍾乳洞に仲間達の誰のでもない声が響いて聞こえた。しかもどこかで聞いたことのある声の悲鳴だ。ガットはハッとしてその声の方へ顔を向けた。

 

「おい!?聞こえたか!?」

 

「嫌な予感がする。……今の声、まさか………!?」

 

アルスは急いでその声のする方へ走った。その嫌な予感は的中した。

 

「クラリス!!!」

 

「うぇえええぇええん!ロイー!お母さんー!お父さんー!ハンナー!」

 

なんとそこにいたのはクラリス。大人しくハイルカークの家で待っていると思っていた彼女は今、凶暴な魔物に襲われていた。魔物の身体の半分が石で覆われている。あらゆる色の鉱石と思われる物を身にまとっていた。クラリスはその魔物に掴まれ宙ずりになっている。

 

「助けてー!!!誰か!!」

 

クラリスは必死に抵抗しながら叫んだ。魔物はそれを抑え、口に含もうとする。

 

「クラリスちゃん!?」

 

「あのガキ!何でここにいやがる!?」

 

「大変だ!食べられてしまいますよ!」

 

「……世話が焼ける!」

 

「ちょっアンタ!?正面からって!」

 

アルスはカヤの静止を振り切り魔物に近づいていく。アルスはよく観察した。鍾乳洞の奥地は光が入らない闇の中。

 

(これならどうだ!?)

 

「汝を裁きしは光の十字架!放て!クロスミラージュ!」

 

2丁拳銃から放たれた光術。光属性だ。それは2つの光線となり魔物の目の前で交差した。すると十字架が描かれ、まばゆい光を発する。

 

「ギィイィイイ!」

 

魔物はその光に明らかな拒絶反応を示した。魔物はクラリスを手放した。真っ逆さまに自由落下していくクラリス。

 

「ぁああああああああ!!!」

 

「………っと!!」

 

「ぁぁあ……ぁ?」

 

アルスはその落下点に入りクラリスを無事キャッチした。

 

「はぁ………どうしてお前がここにいるんだクラリス……」

 

「お、お姫さまだっこ…!」

 

「…はぁ?」

 

「う、うわぁああ、下ろして下ろしてー!」

 

「うわっ!いきなり暴れるな!分かった分かった!」

 

クラリスは顔を赤らめてアルスの腕の中、ジタバタと暴れ出した。アルスは彼女に従い、ゆっくりとクラリスを地面に下ろした。

 

「…………ふぅ。危なかった。あ、これ」

 

クラリスは決して手離さずに、大事そうに持ってた何かをアルスに見せようとした。が、

 

「クラリスゥ…………?」

 

「う゛……」

 

アルスはドスの聞いた声で名前を呼んだ。視線を合わせ据わった目で睨みつける。クラリスは思わず手を引っ込め怯む。

 

「ギャァアァアアア!!」

 

魔物が再び暴れだした。アルスに目くらましをくらい、機嫌は相当悪く怒っている。

 

「………話は後だ、危ないから俺から離れるな、全く!」

 

「う、うん…!分かった!!」

 

クラリスはその言葉通りに素直に従い、アルスの足にしがみついた。

 

「ちょっ…、そうゆう意味じゃ……これじゃ動けないってクラリス!あぁ、くそっ!皆!アイツは光属性に弱い!弱点をつけ!」

 

アルスは必死にしがみついているクラリスのおかげで動けず、仕方なく指令を出した。

 

「リョーカイ!って、ハッ!ボク光使えないヨ!」

 

「ゾンビは闇系ばっかりだからな……、かく言う俺も、光に関しては守護方陣しか使えねーんだけど」

 

「皆ガンバッテー!」

 

「つーことで頼んだー」

 

喧嘩組の2人はどうやら今は補欠のようだった。

 

「小生が参るぞォ!」

 

フィルが先陣を切った。フィルはエヴィ糸をぐるぐると手に巻き付けた。それを発行させ魔物の目の前に見せつけながら前進した。魔物はうめき声をあげて後退する。

 

「せぇい!やっ、はっ!」

 

それからフィルは杖を回転させドスドスと殴り付ける。そして次々と糸の攻撃で連携し、蹴りを交えた光属性の連続攻撃を畳み掛ける。

 

「ピラーハドルテ!」

 

杖が光り、最後にそれで強く魔物を殴打した。魔物はもがき苦しみ動きを止めた。

 

「明澄たる光、降り注げ!レイ!」

 

その隙をつき、ノインが光属性の光術で追い討ちをかけた。

 

「グギィイイアア!」

 

「チャンスですわ。私も、行きますわよ!ヘラ!」

 

ロダリアもそれに続き、ショットガンで魔物の足元を撃った。すると魔法陣が展開され、浮かび上がり、やがてそれは光の鳥籠となった。一気にホワイトアウトし、目の前が真っ白になる。

 

「ふむ、終わったと思ったのですが、ついてないですわね。意外としぶといようで」

 

ロダリアの攻撃でほぼ瀕死状態になった魔物だが、まだ息があった。

 

「聖なる槍よ、敵を貫け…」

 

ルーシェの詠唱だ。

 

「とどめっ!ホーリーランス!」

 

魔物の頭上から光の5本の槍が出現した。それは魔物に向かって突き刺さった。光に串刺しにされた魔物は動きが止まった。

 

「ッギィッ、………ギ、ギイィイ…」

 

どうやら息絶えたようだった。ルーシェの光の槍がパッと消える。

 

「うっひょー!こいつの身体鉱石だらけじゃーん!ふへへへ金金金金ー!金の元よぉー!!アッハハハァー!」

 

カヤは真っ先に向かい、魔物を剥ぎ取っていた。まるで死体に群がるハイエナのように貪欲だった。

 

「カヤったら……、もう…」

 

ルーシェはそんな彼女の姿に呆れて頭を抱えた。一方、後方でクラリスを保護していたアルスはドスの効いた声で言った。

 

「さてクラリス……。ワケを聞かせてもらおうか?さっき話の続きをな」

 

「う………ぁ、は、はい……」


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