Demon's Stella ~悪魔の彗星~   作:Hershel

1 / 29
キャラクター紹介

池宮広樹(いけみや ひろき)
性別:男 年齢:23歳 身長:162cm 体重:51kg

主人公。自称《ただの》憲兵。関西出身の関西人。
黒髪で短髪ヘヤー。昔は前髪を伸ばしていたが、結局邪魔なため切った。
舞鶴鎮守府所属の憲兵であるが、裏では陸上を脅かす《魔物》の討伐に一役買っている。
自身の体長を軽々超える長槍《蛇矛》を扱い、長いリーチを生かした戦いをする。
火を放ったり風を呼び起こしたり冷気を操ったり、軽い傷を癒したりと
不思議な力を持っているが《マジック》の一種らしい。

性格は非常に下劣。卑猥な発言をすることに全く抵抗が無い。
だが、どんな人や艦娘にも発言するのではなく、ある程度信頼関係を築いた者
にしか発しないようだ。
しかしそれと一緒に激情家でもあり、身内の命を大切にする熱い心を持つ。
女に対して下心はあるものの、男にも女にも特に態度を変えずに接する。
重度のゲーマーでもある。隠れた名作といった類のゲームには目がない。

舞鶴鎮守府では、憲兵として不当な艦娘の扱いを行った者への取り締まりが主である。



第一章 憲兵として
第一話 池宮広樹


  グギャァァ・・・

 

 

断末魔が響く。

倒れこむ狼のような生物。

その見つめる先には紅色に染まった刃。

刃はそれを吸い、輝きを増している。

 

その刃の後ろには尻餅をついた少年が二人。

 

ここは東舞鶴市大門九条通り。

昼間は学校の通学路ということもあり、賑わいを見せている。

すぐ傍には川が流れ、浮かぶ小さな漁船がまたいい味を出している。

そういった小田舎風景を出しているが、夜は違う。

傍の山から降り立ってきた《魔物》が徘徊し

人を見ては容赦なく襲い掛かってくる。

だが、野犬程度にしか見ていない人が興味本意で夜を出歩き

魔物の餌食になる事件が後を立たない。

 

「はぁ・・・頭の中で説明してたら、だるなってきたわ」

 

声の主は白色のカッターシャツ、洒落たプリントが施されたインナーに赤い宝石のヘッドが

ついたネックレスに、淡い色のジーパン姿をした姿に背には体長を超える巨大な長槍。

血塗られた輝く刃の持ち主、俺、《池宮広樹》はため息混じりに呟く。

倒れた魔物を見つめては息を確認するかのように近づいては

座り込んで様子を探っている。

しばらくしたら立ち上がり、魔物を背に視線を固まった少年達のほうへ向けた。

 

「おら餓鬼ィ、怪我ないか?」

 

少年達は上の空だった。一呼吸置いたら一度瞬きをして、俺のほうへ

目を向けて見開く。

 

「う、うん・・・」

「ありがとな・・・兄ちゃん・・・」

「別に礼はええわ、それよりな」

 

俺は少年達に近づいて拳骨を一発ずつ。

 

「いてっ!」

「うぐっ!」

 

「アホォ!お前らみたいな餓鬼が出歩いていい時間ちゃうぞ!」

 

ご近所迷惑のレベルの叫び声で怒鳴り上げる。

いくつかの家の電気がついたがそんなことは気にしない。

 

「あんなぁ・・・お父ちゃんから聞かんかったか?

ここらへんはヤバイって。お前らがへらへら笑いながら

帰れる道ちゃうねんぞ?」

 

子供達は俯きながら涙声で返事をしている。

 

「今はな、お前ら食べるようなこわい奴らがうろうろしてんねん

外で遊びたいのは分かるけど、それは昼でもできるやろ?

まだまだちっこいねんやから、はよ帰って寝て大きくなれや」

 

頭をなでてあげた。中々粗末ななで方ではあるが

性格が大きく現れていて感情的な子供にはちょうどいいらしい。

 

「ほら、もう泣くな。兄ちゃんが送ったるからな」

 

こくり、と頷くと背中を押してあげながらその場を立ち去った。

魔物の死骸は血痕と共に跡形も無く消え去っていた。

 

「毎度思うけど後処理だけは楽やなぁ」

 

ぼそりと呟いた。

 

 

 

 

 

午前1時。

少年達の家まで送ってあげた。

親御さんから過剰なほどの感謝を受けつつ、俺はなんとか帰路についた。

九条通りを北上し、海沿いを歩いていく。

その先で開いた場所に出て、大きな門の前に立つ。

 

『舞鶴鎮守府』

 

そう書かれた標識の門を開け、中に入る。

警備服を着た男にしばらく見つめられながら堂々と中に入っていく。

一番手前の建物に入り、三階のとある部屋の前に立つ。

 

『谷岡提督執務室』

 

そう書かれた部屋の扉をノックする。

 

「どうぞ」

 

女性の短い返事と共に扉を開く。

ムダにだだっ広い部屋の奥にぽつんと立つ執務用の机と椅子。

白銀の衣装を纏った男がどっしりと構えてそこに居座っている。

両隣には少女が二人。

一人はサスペンダー付きのスカートを着こなし、大きな帽子を被っている小さな子。

もう一人は・・・なんというか胸しか見えない。

いや、ちゃんと見よう。ん?ちゃんと見よう?それはそれでおかしいような・・・

ま、まぁ、後は生脚か?チャイナドレスのような衣装を身に纏ったロングヘヤーの女性。

こんな緊張して説明しているが、正直俺からしたら見飽きたトリオだ。

 

「報告」

「もう少ししっかり物事を話してください」

 

小さな子が声を張った。

 

「相変わらず手厳しいなぁ、霰ちゃん」

「規則ですから。それぐらい守ってもらわないと・・・困ります」

 

頭固いなぁ。

軽く頭を掻くと口を開く。

 

「今回も『大門九条通り』で魔物発生。少年二人が襲われていたので

救出活動を遂行しました。魔物の系統は、四足歩行、狼型の魔物、ウルフです」

「ちゃんと言えるじゃないですか・・・」

「眠たいんです、察してください」

 

呆れたかのように目を閉じる《霰》と呼ばれる少女。

 

「そうですね・・・時間が時間ですし、お疲れでしょう。

今日はもう休まれてはいかがですか?」

「さすが乳首さん、話わかってるなぁ」

「筑摩です!」

 

おもしろい。こうやって名前で弄ると生真面目に反論してくれるこの人は《筑摩》。

まぁ、なんとなく分かってると思うけど、この子らは艦娘。

海上で勢力を拡大している《深海棲艦》に対抗できる唯一の存在・・・らしい。

・・・まぁ、陸上はからっきしらしいけど。

 

「憲兵風情が筑摩で遊ぶでない」

「へいへい、申し訳ありませんでした」

 

居座る男が口を開ける。この男が《谷岡提督》である。

本名は《谷岡礼司》。艦娘で構成された巨大な艦隊を所持し、この舞鶴鎮守府の

最高責任者でもある。

この舞鶴鎮守府は、谷岡提督以外にも複数の提督が勤務しており、

各々が艦隊を所持して、海上での戦いに貢献している。

そしてその艦隊の面子はもちろん艦娘である。

俺から見たらただの可愛い女の子だからうらやましいたらありゃしない。

いや、彼女達は兵器として運用されているから、そういう目で見るのが

間違ってるんだろうけど・・・

 

「んじゃ俺はこの辺で退散しておきますよっと」

 

足早に部屋を後にする。

ふんっといけ好かない声が聞こえたが俺は気にしなかった。

本当はこの後に連絡路から隣の寮まで行って布団に飛び込んで眠りたかった。

でも、もう一人に報告する必要があるのだ。

 

俺は工廠まで歩いた。工廠は、艦娘の建造、艤装の製造に関わる施設である。

艦娘の建造には非常にコストがかかり、現在は殆ど運用されていない。

同じ艦娘は二人製造することはできないため、新しい艦娘を製造するのにも

開発に膨大な時間がかかるのも後押ししている。

金槌を打つ音にまぎれながら中に入って行き、小さな生物と一緒に鉄を叩いている

中年の男に声をかける。

 

「おっちゃん、親方どこにおる?」

「おぉ、広樹か。親方なら二階じゃ」

「センキュ」

 

短い会話を交わしながら鉄の階段を上っていき二階の小さな部屋に入った。

その中には小さな妖精・・・のようなよくわからない生物がこちらを見ては叫ぶ。

 

「おぉ、帰ったか広樹ィ!」

「うっさいわ親方!」

 

小さな体からは想像もできないほどの大音量で迎えられた。

ほんと、この小さいおっちゃんはなんなんだよ。

 

「ほら、依頼達成してきたで、ウルフ三体討伐や」

 

そう言って戦利品であるウルフの皮を引き渡した。

 

「ほいほい、お疲れじゃ。もってけ」

 

小さな巾着袋を投げてきた。それをキャッチすると、金銭が入っていた。

 

「880円・・・コンビニのバイトかよ!」

「なんや、ここらのバイトよりは安いじゃろ」

「コンビニも命のやり取りしてたらな」

「不満か?」

「もうええわ」

 

口喧嘩では親方にかなわないのは分かっていたため俺は引き下がる。

親方は表ではこの工廠の責任者、夜は魔物討伐依頼の管理をしている。

んで、もうなんとなく分かっていると思うが

日中は《ただの》憲兵、夜は魔物討伐専門の・・・傭兵みたいなものだ。

俺はこんなよく分からない生活をしている。

普段はあの谷岡提督とこの親方と工廠のむさくるしいおっさんとしか縁がないから

艦娘っていう存在とは近そうではあるがそうでもない。

 

「俺、ほんと女との縁ないよなぁ・・・」

 

思わず呟いてしまった。そう呟き残すと部屋を後にした。

 

 

 

寮へ戻った。今の時間帯でも憲兵寮の廊下は電気がついている。

すぐに部屋の扉を開けようとした。

が・・・

 

 

「・・・・・・」

 

何故だ。

 

何故。

 

何故か。

 

俺の部屋の前で艦娘が寝ている。

これは・・・どういうことなんだ。

 

「つぅか、憲兵寮は艦娘の立ち入りは禁止されてるはずなんやけど・・・」

 

扉の前にもたれている子は、銀髪にポニーテール、緑のリボンにオレンジのスカーフ

暗い色のセーラー服を着こなしている。

 

「・・・起こしてあげるのが一番・・・やんな?」

 

そう思って俺は彼女の肩に手を当てた。

・・・違和感を感じた。

とっさに彼女の首とでこに触れた。

 

「結構な熱やな」

 

なんというか、艦娘でも熱出るんだな、と思いながらもしゃがんで彼女を負ぶって

部屋の中に入れた。

この時間だと治療室は開いていない。この手の症状は外傷ではないため、入渠も

少々意味合いが違ってくる気がする。

部屋にしかれっぱなしの布団をかぶせて氷水にタオルをつけてでこにおいてあげた。

艦娘の扱いに関しては殆ど知識は無いものの、人間同様の扱いで看病した。

最初のほうは息が荒かったもののだんだん落ち着きを取り戻してきた。

 

「ただの風邪っぽいな、というか艦娘も風邪を引くんやな」

 

そこらへんは人間と同じなようだ。つくづく艦娘という存在がわからなくなってくる。

でもこの状況は・・・

 

「うーん、正直やばい」

 

他の憲兵にばれたら即お縄。絡んでる程度なら注意を受ける程度で済むが、

部屋に入れてる・・・ということがばれたらそれこそやばい。

首チョンパだ。

憲兵は直接艦娘に絡むのは基本的に禁じられている。

昔、憲兵による艦娘の監禁事件があったらしく、性的暴行にまで

陥ったため、上の者が対策を講じた結果である。

やめろ先人、俺がやらなくてよくなったけどよ。

でも、この子を放り出すのは何か違う。

・・・見つからないことを祈ろう。それがきっと最善策だ。

 

「今日は起きてるか」

 

豆電球だけつけて起き続けることにした。男に二言は無い。

荒い息はスースーと落ち着いた寝息になっていき、一安心した。

 

 

 

午前七時。

普段だったら起床時間、部屋を後にして隣部屋の憲兵仲間の飯田の部屋に押しかけた。

 

「起きてるかぁ飯田ぁ!」

 

バァンと勢いよく扉を開ける、これは日常茶飯事だ。

 

「うるせぇ池宮!毎度のことだけどな!」

 

毎日が同じ返事。この小コントがないと一日が始まった感じがしない。

そして俺は飯田に用件を伝える。

 

「は?今日は休む?」

「わり、頼むって」

「何かあるのか?」

「ある」

「自慰か」

「しばくぞ」

 

また新しいコントが始まろうとしたが、そこで止めた。

 

「頼む」

 

それだけ俺は言った。飯田は悟ってくれた。

 

「今度ラーメン、よろしくな」

「センキュ」

 

軽い契約を交わして飯田の部屋を後にした。

自分の部屋に戻って朝食の準備。

寝る前に炊飯器で米を炊いていた。米はある程度蒸らしたほうがうまいからな。

それと冷蔵庫に入っているうに数の子をアテに朝食を済ませようとした。

うに数の子、何気に高いから朝の贅沢なんだよなぁ。

だが、今回はもう一人いる。

まだ起きていないが、いつ起きるかわからない。

一応病人だし、おかゆでも作ることにした。

冷ご飯はなかったので、炊飯器のご飯を少量すくい上げ、小さな鍋に入れて

塩で味付けして上に梅干を乗せた。

水分補給用にスポーツドリンクをコップに入れて、お盆の上に乗せて彼女の隣に置いた。

彼女の寝ている傍でご飯を済ます。空になったお茶わんを備え付けのちゃぶ台に置いたら

寝ている彼女の鼻が動いた。何で最初に鼻が動くんだよ。

 

「ん・・・」

 

声を漏らした。初めて彼女の地声を聞いた。

頭を起こすと、でこに敷いていたタオルが前に落ちた。

朝食を用意する前にに変えたため、まだ冷たい。

 

「これ・・・ここは・・・」

 

彼女はまだ寝ぼけている。目を半開きにさせて辺りを見渡している。

記憶を遡っている。昨日のいつ・・・何を・・・していたっけ・・・

そういった顔をしている、ちょっと分かりやすい子だな。

 

「おはよう」

 

そう俺が軽く声をかけたら、思いっきり目を見開き思わず

 

「えっ・・・」

 

声を漏らした。

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

やべ、逃げる準備してねぇ。

考えたら俺完全に不審者だな。

布団の中に女。男一人に女一人の二人っきり。

あーこういうことまでは考えて無かったわ・・・こりゃ俺もお勤めに出てた方がよかったか?

いろいろ頭が過って過ってパンクしそうだ。

そう思っていたら、向こうのほうから口が開いた。

 

「え、えっと・・・貴方は・・・」

 

少しおどおどした口調で話してきた。警戒はしてるけど助けを呼ぼうとはしない。

九死に一生を得るってこういうことなんだな。うん。

 

「俺は、池宮広樹や。まぁ、とりあえずそれ食べながらでも話しよか」

 

俺はおかゆの入ったお盆を指差した。

湿ったタオル、布団、消化の良い朝ごはんを見ては自分が看病されていたことを悟り

小さく礼をした。

そして、レンゲを使っておかゆを口に運んでいった。

 

「おいしいです」

「よかったわぁ、塩濃くないか?」

「はい、大丈夫です」

 

少し熱かったのか、ふーふーと息を吹きかけながら食べている。

 

「君は俺の部屋の前で倒れてたんや、ほんとやったら治療室に連れて行くべき

やったんやけど、時間が時間で閉まっててな。

俺の粗末な部屋で看病ってことになったんや」

 

軽く現状を説明した。彼女はうんうんと言わんばかりに頷いている。

 

「ありがとうございます、本当に助かりました。

私、軽巡洋艦の《夕張》と言います」

 

ポニーテールの艦娘、夕張はそう言っておかゆを頬張った。

結構食べるな、この子。

 

「元気になってよかったで、熱あったからただの風邪なんかな?」

「そう・・・ですね。たぶんただの風邪だったと思います」

「そっかそっか」

「すいません、何分ここに着任したのはつい先日でして、勝手が分からなくて・・・」

 

あ、新しい艦娘だったのか。工廠のおっちゃんらは艦娘の開発なんて当分できないって

言ってたくせになんだよ、ばっちりやってるじゃん。

夕張は少しおどおどしている。フォローといわんばかりに口を開く。

 

「そんな緊張せんでええで。楽にしとき」

 

ニシシと笑う。こういう笑顔は得意だ。ニコッとかいう作り笑いは苦手だけど。

夕張もその笑顔を見ると少し落ち着きを取り戻した。

そういってる間におかゆを間食し、スポーツドリンクも飲み干していた。

 

「おいしかったです、ありがとうございました」

「お粗末様でした。誰かに飯食ってもらったのも久々やで」

 

そう言って俺は後片付けをした。

それで、これからどうするかを考える。

 

「どうすっかなぁ」

「??」

 

夕張は?マークを頭に浮かべるように首を傾げる。

 

「あぁ、俺憲兵やねん」

「憲兵さん・・・?提督じゃないんですか?」

「ちゃうわ」

「それじゃ、ここは・・・?」

「憲兵寮」

「・・・・・・」

 

夕張は少し黙り込んだ。

 

「間違えました・・・」

「どんまい」

 

俺は夕張の肩をぽんぽんと叩いてあげた。

 

「まぁ、あんな病気の状態でいきなり着任挨拶ってのもあれやし、今治せてよかったな」

「そ、そうですね。結果オーライってやつですね!」

「いや、まだ結果でてないやんけ」

 

お得意のコントが始まった。まさか今日初めて喋った艦娘とコントをやるとは。

夕張とは意外と息が合うのかも。

 

「そうですね!でも、おかげで緊張もほぐれた気がします」

「そりゃよかったわ。んじゃもう着任先にいけるか?」

「え、えーっと・・・」

 

夕張はもじもじしだした。なんとなく俺は察した。

 

「提督の名前は?」

 

夕張の顔がぱーっと明るくなった。

 

「小室提督です!」

 

元気に返事した。この表情の変わり様、これは絶対付いてきてくれっていう合図だな、うん。

 

「わかった、案内したるわ」

「ありがとうございます!」

 

そう言って俺はミリタリー仕様の憲兵服に着替えて部屋を出た。

左右に人がいないことを確認し、夕張も外にでて憲兵寮を後にした。

ここまで出たら首チョンパは免れる。よかった、よかった。

 

「夕張、小室提督には会った事あるんか?」

「いえ、今回が初対面です」

「そっか。俺もそいつのこと知らんねんなぁ」

 

どんな人なのか考えつつ提督執務棟、深夜最初に訪れた建物の二階の部屋の前に立った。

 

『小室提督執務室』

 

「ほら、ノックしろや」

「え、えっと・・・」

 

夕張はまたもじもじしている。分かりやすいな、こいつ。

 

「はぁ・・・」

 

軽くため息をつくと俺は扉をノックする。

 

「用件を」

 

鋭い女性の声だ。艦娘だな。

 

「新しい艦娘が着任した」

「入れ」

 

必要最低限の会話を扉越しに行い、中に入った。

谷岡提督ほどではないが、ムダに広い部屋に奥に執務用の机に椅子。

そこに居座る・・・男・・・。

 

「ち、ちっさ・・・」

 

驚いた。俺より小さい。身長は150あるかないかだと思う。

そういや聞いたことある。この鎮守府は、優秀な人物は年齢関係なく雇用していくと。

小さな提督は通称『ショタ提督』と称され、一部の艦娘からは非常に人気があるとか。

こいつもそういう類っぽいんだけど、どうなんだろうな。

 

「・・・?」

「何か言ったか?」

 

いや、何もと言わんばかりに俺は首を傾げる。

小室提督の両隣には艦娘が二人。

サイドテールの髪型で弓道着のような装束を着こなしている女性。

もう一人はショートヘヤーで巫女服のような装束を着こなしている女性。

うーん、どっちもいいものをお持ちで。そんなこんな考えていると夕張が口を開く。

 

「軽巡洋艦、《夕張》、着任しました!小室提督の下、精一杯働かせていただきます!」

 

固い挨拶。

小室提督と両隣の艦娘は口を順に開いていく。

 

「私が《小室提督》だ。今日から君は私の部下だ、よろしく」

「正規空母の《加賀》。秘書艦を勤めさせてもらっています、よろしくお願いします」

「航空戦艦の《日向》だ。小室艦隊の二番艦になる、よろしく頼む」

 

加賀、日向は無愛想ながらも挨拶をしては少し顔を緩ませる。

 

「ところで」

 

小室提督の目線が夕張から俺に変わる。

 

「君は何だ?」

 

鋭い眼光。小さいが威厳はある。

こんな子供でも海上での戦場の指揮を取る提督だということが身に染みる。

 

「はっ、舞鶴鎮守府所属憲兵、池宮広樹であります。

夕張殿はこちらに着任して間もないようで、道に迷っていたところで

声をかけた所存であります」

 

面倒ながらそれなりに決まっている敬礼をしながら俺は話す。

その姿を見て今までの姿からは想像もできない俺の姿に夕張は少々驚いていた。

 

「これぐらいやらないと何言われるかわからんからな」

 

小声で夕張に話す。夕張はこくんと頷く。

 

「ふむ、池宮憲兵、ご苦労であった。下がっていいぞ」

「はっ、失礼します」

 

敬礼を解き、がんばれよ、と夕張の肩を軽く叩いて部屋を後にした。

 

「・・・あの人が池宮広樹ですか」

 

加賀が口を開いた。日向も何かを思う表情をしている。

 

「礼司様からは聞いていたが、なるほど、礼儀はできているようだな」

 

小室提督はくすくすと笑いながら話す。その姿を見て夕張は首を傾げる。

 

「池宮憲兵・・・か」

 

夕張は覚えたぞと言わんばかりに何度か呟いた。

 

 

 

 

 

 

俺は部屋に戻った。さすがに寝不足で今すぐ倒れたい。

 

「寝よ・・・」

 

ばったり布団に倒れこんだ。

疲れがたまりこんでいたのか、一瞬で眠りにつくことができた。

極楽極楽・・・このまま夜まで快眠だ・・・

昼間から憲兵寮の一室では静かな寝息が響いていた。

 

 

 

池宮広樹。彼は艦娘、夕張と出会ったことがきっかけで、様々な壁に立ち向かう

こととなる。

そして、まだ彼は・・・

力を出し切っていないことを・・・他の者は知らない。

 

 

 




初投稿です。
頭の中で妄想してたことを適当にぶち込んでいく駄文になります。
よろしければ何かしながらでもぺらぺら流し読みしていただけたら幸いです。

コメントや評価は励みになります。感想だけでなく指摘、どうでもいい雑談など
どしどしお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。