Demon's Stella ~悪魔の彗星~   作:Hershel

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設定紹介

池宮の武装
メイン武器:蛇矛
中国に伝わる蛇のような刃を持つ槍。三国志で《張益徳》が使っていたとされる武器で
西洋の剣「フランベルジェ」のように、刺すことで相手の肉を引き裂くことに
特化している殺傷能力の高い武器。
池宮曰く、突きたいし刺したいが、皆と同じ武器がいやだったため、この武器を選んだらしい。
刃は現代では失われた技術で生産されていた、ダマスカス鋼である。

腰装備:投槍&ポーチ
投槍は組み立て式で、上と下に分かれていて、ビリヤードのキューのような付け方をする。
腰に布の筒を装備し、その中に3本ずつ入っている。
もったいないという理由で、投槍は基本リサイクル。投槍にも、エンチャントルーンの
属性をつけることができる。
ポーチは戦利品を入れるもの。たまに飲み物を入れたりもしているし、予備の無線機も入っている。

耳:小型無線機
親方自作の小型無線機。池宮のはさらに特製で、超小型カメラまで搭載。親方はこのカメラ
で現場の状況を把握している。無線は舞鶴鎮守府の工廠とつながっており、これで
池宮をサポートしている。ちなみに音漏れが結構激しい。


第十三話 共闘

「ただいま」

「あ、お帰りなさい~」

 

午後六時。

俺は、一旦寮へ戻ってくる。ちゃぶ台の傍に、夕張と浜風は座っている。

夕張の手には、ゲームコントローラーが握り締められている。

 

「ゲームしとったんか」

「浜風ちゃんも、興味あるって言ってくれたし」

「はい。こういう娯楽は、全く体験したことが無くて」

 

ゲーム画面を見てみると、大人数で楽しめる、対戦アクションゲームだ。

隣にいる飯田を呼んで、よく対戦してたなぁ。いつも負けてたけど。

夕張と浜風がチームを組んで、コンピューター相手に戦っているようだ。

 

「あんまりはまらせんなよ」

「分かってるって」

 

浜風は慣れないものの、戦いには何とか健闘している。

対する夕張は、もう慣れた手つきでキャラクターを操作している。

持ち方も独特で、生粋のゲーマーが編み出す持ち方だ。

俺もあれはたまにするけどな。でも、ほんとにゲーマーなんだな、あいつ。

 

「んじゃ、俺が相手したるわ」

 

俺は、テレビの下に置いてあったもう一個のコントローラーを取り出す。

 

「お、勝負しちゃう?私と浜風ちゃんのコンビは強いわよ~?」

「俺に配管工使わせたら・・・どうなるかわかってるんやろなぁ!?」

 

妙にテンションの高い俺。なんか久々に盛り上がってきたぞ。

浜風は、俺と夕張の姿を見て少しおどおどしている。

そんなやり取りをしていると、俺の部屋の扉が勢いよく開く。

 

「ふっふっふ、その勝負。俺も混ぜてもらおうか!」

 

右手にコントローラーを握り締めた男が、のしのしと入ってくる。

 

「何できたんや、飯田」

「だってさ、面白そうなことやってるからさー。聞こえてくるし」

「あぁ・・・」

 

そういや、結構壁薄いんだった。耳を澄ませたら飯田の部屋の音も聞こえるし。

浜風は、飯田の姿を見てはぺこりとお辞儀をする。

 

「どうも」

 

飯田も軽く会釈する。飯田は浜風のことを特に聞いてくることはなかった。

こういうところは気を使えるのがこいつのいいところだ。

 

「んじゃ、俺は池宮とコンビ組もうかな」

「おっ、久々に共闘か?ええで、やったるやんけ!」

「うわ、初心者いるのに大人気ない!」

「夕張が頑張ればええねん。それに、浜風には最大のハンデポイントあげるからさ」

「は、はぁ・・・」

 

俺達3人は非常に乗り気だが、浜風だけ、このゲーマーのノリについていけていなかった。

が、決して悪い顔をしてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「うえええ・・・なんやねん、夕張めっさ強いやんけ・・・」

「あはは・・・飯田さん・・・?もすごく強いですね」

「浜風、あの二人は化け物やから、あんなにめり込んだらあかんで」

「・・・多分、無理です」

 

俺と浜風は、夕張と飯田のデッドヒートを後ろから見ている。

俺は夕張と一騎打ちで戦っていたが、夕張の駆け引きと感の強さに撃ち負け、完封された。

飯田も、浜風にハンデがあるといっても、技術力で全く歯が立たなかった。

飯田なりに気遣って、一回だけは倒せたものの

残りの二人で壮絶な乱闘が繰り広げられている。

 

「やりますね・・・飯田さん」

「夕張ちゃんもな・・・これほどの強敵は初めてだ・・・!」

 

両者一歩も譲らない。ライフが一つ少ない飯田は分が悪いものの、夕張のライフを一つ

奪っている。譲れない戦いが、ここにある!と言わんばかりのいい試合だ。

 

「あ~・・・これは、暫く終わらんかもな。時間設定しとくべきやったわ」

「二人とも、全く引きませんね」

 

カメラが近づいたり遠ざかったりと、なんか酔いそう。

それほど細かい動きをしているということだ。

 

「あ~、俺飯作っとくわ」

「おう、俺の部屋の食材、いくつか持ってきてもいいぞ」

「まじで!!??あざっす!!」

「その代わり、食わせてくれよ」

「任せとけや!!」

 

金が無かったため、食材提供はありがたい!なんというか、感謝感激だ!

俺が立ち上がると、浜風も立ち上がる。

 

「私も手伝います」

「頼むわ」

 

特に拒むこともなく俺は承諾する。逆にここで拒むと彼女の厚意を無駄にすることになるからな。

隣の部屋の飯田の部屋に入って、冷蔵庫をササッと漁ってすぐ戻ってくる。

数種類の野菜と豚肉とウィンナー。これだけあれば十分だろう。

俺はご飯を炊き始めたら、早速調理に取り掛かる。

 

「んじゃ、適当に作るか。ポトフでも作るから適当に切ってや」

「はい」

 

ゲームに熱中している音が聞こえる中で、俺と浜風は調理に入る。

浜風は野菜を切り分ける前に、火が通りにくいにんじんを先に電子レンジで温める。

 

「へぇ、よー知っとるな」

「水と一緒に温めると、乾燥せずに済むんですよ」

「ほほう」

 

浜風は一言ポイントを説明する。結構料理できるんだな、本当に。

まぁ、実際に料理する姿が結構様になってるから、見ている俺もちょっと楽しい。

そんな感じで、俺は肉を焼く。面倒だからまた塩コショウで炒めるだけ。

キャベツともやしがあったから、それも一緒に炒める。

浜風は、野菜を切ったらそのままポトフを作る作業に入っている。

煮立ったコンソメスープの中に、先に軽く茹でておいたウィンナーと野菜を入れて

ゆっくり煮込んでいる。

 

「慣れてるなぁ」

「ポトフ、始めて作るんですけどね」

「十分やて、上手上手」

 

へらへらと俺は笑うと、雑ではあるものの野菜炒めを炒めていく。

完成すると、皿に盛り付ける。

ポトフも煮終わって、器に入れて、最後にバジルとこしょうを振り掛ける。

 

「お前ら・・・まだ終わらんのかいな」

 

まだ乱闘は続いていた。残りライフ一つずつ。確実に戦いは進んでいるものの

いかんせんペースが遅すぎる。

炊飯器の炊き上がる音が鳴り、俺は一旦手を叩く。

 

「はい、一旦やめな」

 

俺のコントローラーでポーズ画面にする。

 

「あぁ!!いいところだったのに!」

「池宮!お前ひどいぞ!」

「せっかく浜風が飯作ってくれたんやで、ずっとゲームしてたら失礼やろ」

「ってえっ!?うそ!?あ、本当だ、料理できてる・・・」

 

熱中しすぎていて、料理していることも気づいていなかった夕張。

少し恥ずかしかったのか、顔を赤らめている。

 

「続きは飯の後・・・だな」

「そうね」

 

一時休戦と言わんばかりに、夕張と飯田はがっちり握手する。何の握手だよ、何の。

その姿を見て、浜風は苦笑している。

 

「んじゃ、いただきます」

 

手を合わせて、感謝して食べる。ちゃぶ台に並べられた料理に手をつける俺。

夕張と飯田も、急いで席について手を合わせて食べる。

 

「うん!このポトフおいしい!」

「ありがとうございます」

 

ポトフを褒められて浜風も嬉しそうだ。実際美味い。野菜もいい感じにやわらかくなってるし

スープもなかなかだ。これはコンソメだけじゃないっぽいな。

 

「オリーブオイルも入れておいたんです」

「なるほどなぁ」

 

確かに、ちょっとオリーブオイル特有の渋みがある。だが、野菜とコンソメにマッチしていて

美味い。う~ん、これなら毎日作りにきてもらいたい。

料理を完食すると、後片付けをする。終わったらすぐに、夕張と飯田はゲームに戻る。

 

「お前らなぁ・・・」

 

俺が呆れていると、つんつん、と俺の腕を突いてくる浜風。

「あの・・・」と小声で言ってきて、時計を見て、俺は把握する。

 

「あぁ、分かった」

 

その二人を置いておいて、俺と浜風は憲兵寮を出る。

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、皆が帰ってくるころなんで」

 

夜の静かな潮風が、浜風の髪を靡かせる。俺もその風を感じながら、前へ歩いていく。

艦娘が停泊する港沖で待つことにした。大きな外灯が灯されていて

海の向こうからでもわかるようになっている。

 

「遠征任務なんで、資材を運ぶ手伝いもしないと」

「手伝うで」

「い、いえ!そこまでしてもらわなくても・・・」

 

浜風がぶんぶんと手を横に振っている。まぁ、大変そうなら手伝うぐらいでいいか。

 

「あ、帰ってきました」

 

浜風は、見知った人影を見つけると、大きく手を振った。相手も手を振り返す。

停泊した艦娘は、浜風と同じぐらいの身長の子が二人。駆逐艦っぽいな。

二人の艦娘が引っ張ってきた小船には、燃料や弾薬など、たくさんの資材が詰め込まれている。

 

「おかえり」

「おう!浜風、そっちの人は?」

 

艦娘の一人・・・ショートヘヤーの子が俺に目を向ける。

 

「池宮憲兵。ちょっと・・・今日お世話になったの」

「・・・もしかして」

「うん、拘束された」

「あはは・・・まぁ、いつかこうなるって分かってたけど」

 

少し顔を引きつるショートヘヤーの艦娘。俺のほうに近づいて軽く挨拶してくる。

 

「谷風だよ。浜風が世話になったね」

「池宮や。ただのおせっかいやし、気にせんでええよ」

 

俺も軽く挨拶する。

 

「そっちのが・・・」

「磯風だ」

 

黒髪で背中を伝うロングヘヤーの子は、磯風と名乗る。

そう言うと、小さく頷く磯風。なんだ、小さいのに妙にしっかりした子だな。

いや、一部は大きいけど。

 

「いやぁーでも、どうなるんだろうね、これから」

「さぁ・・・提督の処遇次第だと思うけど」

 

難しい顔で谷風と浜風が会話する。

浜風は、身内では結構言葉砕けてるんだな。いつも下からだったからそういう子なのかな

って思ってたんだけどな。というか立場上、憲兵のほうが艦娘より地位は下なんだけど。

 

「まぁ、あれや。とりあえず資材運んで置いたほうがええんちゃうか?」

「あ、そうですね。谷風、疲れてるだろうし持つよ」

「大丈夫だって!」

 

浜風が谷風の

艤装を装備した彼女達は、資材を軽々と持ち上げている。だが、量的にも手で全て

持ち上げるのはきつそうだ。

そう思った俺は、比較的運びやすい弾薬を持つ。

 

「池宮憲兵、気を使わなくていい」

「そうだって!谷風たちだけでいけるからさ!」

「ええって、なんつぅか、男が働かへんってのも、何か情けないやん?」

「うわぁ~うちの提督と全く逆だね~」

 

あはは、と谷風は笑っている。

普通だと思うんだけどな。上に立つと何でも下に任せてしまうっていうことかな?

上官はそういう人でもないから・・・そういう感覚が分からないなぁ。

 

「んじゃ、お願いしちゃおっかな~」

「おう」

 

俺は片腕ずつで、弾薬の入った木箱を担ぐ。

 

「とりあえず、工廠に運べばええんか?」

「そうだね。そこにうちらの保管倉庫があるはずだからさ」

 

向かい始めると、浜風に服の裾を引っ張られる。「持ちます」と小さな声を出して

手を伸ばしてくる。

 

「ええって、艤装装備してなかったら辛いやろ?」

 

俺はニシシと浜風に笑いかける。浜風はその姿を見て、諦めて深くお辞儀をした。

 

工廠にたどり着く。とりあえず中に入って、倉庫のあるエリアまで歩いていく。

 

「お、谷風ちゃんお疲れ!遠征帰りかい?」

「おっちゃん!どうもっと!そだよ~、今から下ろしにいくとこ~」

「そうかいそうかい。お、隣にいるチビは誰かと思ったら・・・」

「誰がチビじゃドアホ」

 

工廠の男にからかわれ、俺は思わず身を乗り出す。その姿を見た浜風が押さえてくれる。

 

「あれ?おっちゃん、知り合いなの?」

「毎日のようにここに来てるからな」

「ふむ・・・」

 

磯風が俺のほうに向いて考えるような仕草をする。何を考える必要があるのだ。

 

「とりあえず、重いだろ。早く置いて寮に戻るといいさ」

「は~い」

「失礼する」

 

俺達は男へ軽く手を振って別れる。そうすると、俺のことを呼び止めてくる。

 

「お~っと、広樹!親方が呼んでたぞ~。なんだ、例の物がどうとか」

「あ~、了解。後で夕張も連れて行くわ」

 

振り返った顔を戻し、倉庫へ向かう。資材倉庫は十分すぎるスペースがあった。まだまだ

入りそうだけど、今はこれだけを置いて工廠を後にする。

 

 

 

 

 

「そんじゃ、ここらへんでお暇しときますか」

「そうだな、身体も休めておきたい」

 

谷風と磯風は、大きく背伸びをして身体を伸ばす。

艤装を外して普通の女の子になった彼女達は、疲れの貯まり具合を実感しているのだろう。

 

「それじゃ、手伝ってくれてありがとね~憲兵さん」

「浜風のことも助かった。礼を言う」

「気にすんなって」

 

谷風と磯風は敬礼をする。俺も敬礼をし返して浜風を見る。

 

「暇があったら、また遊びに来てもええで」

「はい、また」

 

薄く微笑んで、浜風は敬礼をする。

俺達は別れて、俺は憲兵寮に戻ることにする。

 

 

 

 

「まだやってたんかいな」

「おかえり~、池宮さん」

「もうちょっとで・・・終わるから!」

 

画面に身体を向けた艦娘一人と憲兵一人。

乱闘はまだ続いていた。だが、どちらも紙一重の体力で、次の一撃で勝敗が決まりそうだ。

 

「もらったぁ!!」

 

夕張がここだといわんばかりに攻撃を繰り出す。しかし、飯田はその一瞬をつき、回避する

 

「あぁ!!」

「俺の勝ちだぁ!」

 

飯田は隙だらけの夕張のキャラクターに必殺技を見舞う。

夕張のキャラクターは吹っ飛ばされて、ライフを失い負けてしまう。

 

「いえ~い、今日は俺の勝ちぃ!」

「く、くやしい~!!」

 

悔しいあまりに決定ボタンを連打する夕張。感情に身を任せてやってしまうゲーマーあるある

の一つだ。

 

「はいはい、もうお開きや!」

 

俺が両者の頭を叩く。二人は頭を抱え、蹲っている。

 

「さすがに時間が時間やしな」

 

俺は時計を指す。午後10時。お前ら何時までゲームやってるんだ。

 

「あぁ・・・俺も寝る時間だー」

「嘘付け、これからが本番なんやろ?」

「なんのことかなー」

 

飯田はしらばっくれる。俺はため息をついて飯田を追い出す。

 

「はい、もう出て行け!」

「おいおい、ちょ、押すなって!」

 

俺は勢いよく扉を閉める。飯田はそのまま隣の部屋である自分の部屋に戻った。

私服に着替える俺。壁にかけていた槍を背負って、準備は終わる。

夕張も、ゲームを片付けてすぐに着替えを始める。軍服からいつものジーパンとパーカーの

姿になる。

 

「前の服は着んでええんか?」

「こっちのほうが動きやすいからさ、魔物も出るし」

「まぁ、せやな」

 

夕張の言うことも一理あるため、俺は否定しない。だが、せっかくだから

新しいの、着ればよかったのに。

 

「親方が呼んでるから、先にそっちいこか」

「オッケー」

 

部屋を出て、鍵を閉める。憲兵寮を後にして俺達はそのまま工廠へ向かう。

二階の小部屋に入ると、明らかに俺達を待っていたかのように扉に向かって立っている。

 

「やっと来たか!!遅いぞ!!」

 

大きな声で俺達に叱ってくる。

 

「時間とか指定されてなかったやんけ」

「それでもじゃ!まったく、空気の読めん奴じゃ!!」

 

どんな空気を読めばいいんだよ。俺はこころの中で突っ込みを入れる。

その親方の隣には、苔が完全に剥がされ、光に反射して輝いている鉄の剣。

 

「剣・・・やな」

「そうじゃな、剣じゃ」

「ちょっと、変わった形ね」

 

剣にしては少し小柄で、しかも何かごちゃごちゃしている。ところどころにネジが付けられて

いて、剣というか一つの機械みたいだ。

 

「これが、デュアルウェポンっていうんか?」

「そうじゃ、間違いないじゃろう」

 

「んじゃ、これからわしは、これを分解する作業に入るぞ!!」

「はぁ!!??」

 

俺はその一言に驚きを隠せず、思わず声を発してしまう。

 

「なんじゃ、そんな大声を張りおって!五月蝿いぞ!」

「一番あんたに言われたないわ!!」

 

大声でぶつかり合う俺と親方。夕張は耳を塞いで何とか耐え忍んでいる。

 

「別にええじゃろ、分解する前に隅々を写真に収めるし、分解過程もちゃーんと覚えて

おくわい。元通りにする、という意味で分解するのじゃ」

「パーツとか分捕ったりしないやろな?」

「何を言うんじゃ!そんなことするわけないわい!複製できるかは・・・見るがな」

 

その複製にそのパーツを使って型を取ったりするんだろうな、と思ったらまたちょっと

不安になってくる。

だが、俺が親方に任せたものだし、最善の注意を払ってもらえることを祈って任せてみるか。

 

「分かった分かった、親方に任せるわ」

「それでこそ広樹じゃ!!よう言った!!」

 

喜んで飛び上がる親方。俺の頭近くまで飛んできて、肩をパンパンと叩く。

 

「痛い!痛いわ!」

「そう照れるな!わっはっはっは!!!」

 

そう茶々話が進んでいるときに、耳を塞いでいた夕張は、いつの間にか手をぶら下げて

いて、じっと俯いて考え事をしている。

そして、話を割って、口を開く。

 

「あの!その分解、私も手伝いたいです!」

 

グッと前に出て夕張が声を荒げて言う。俺は一瞬驚くも、冷静になってその経緯を問う。

 

「何でや」

「その武器・・・気になるの。構造とかもそうだけど、何故最終幻想物語の遺物が

今になって掘り出されたのか。それがどのようなものなのかも」

 

夕張は胸に手を当てて話す。俺と親方も、腕を組んで何も言わずに話を聞く。

 

「それと、もし、その武器を私が扱えるのなら・・・」

 

一呼吸を置いて、顔を上げて夕張は、俺のほうをただ真っ直ぐ見つめる。

 

「池宮さんの・・・貴方の仕事のお手伝いもできるかと思って・・・」

 

強い意志が込められた瞳。俺はその瞳から逃げずに、相手の気持ちを受け取る。

 

「・・・・・・」

 

俺は考える。もし、その武器を夕張が扱えるとしてだ。この子に命の危険がある魔物討伐

を手伝わせることは、果たして許されることなのだろうか。

彼女は艦娘だ。海上の戦闘では、唯一無二の対抗手段であり、人間にとっての貴重な戦力。

そんな彼女を、無理に地上でも働かせる必要があるのか。

だが、今はその答えがでない。彼女の決意も本物だ。その意志を少しでも通してあげたい。

 

「残ってええで。今日は一人で行ってくるわ」

「あっ・・・はい!!」

 

俺の答えとしては、今はそれを良しとは思わない。

だけど、彼女の意志には協力するつもりだ。

それを見た後で・・・判断してもいいだろう。

 

「んじゃな。しっかりやりや」

「はい!いってらっしゃい!」

 

夕張は敬礼する。俺も敬礼し返して、部屋を出る。

工廠を出て、すぐに門まで歩いていく。そうしていると、後ろから声をかけられる。

 

「いい夜だね」

 

俺が振り返ると、見慣れた艦娘が二人。加賀と日向だ。

 

「こんばんは。池宮憲兵」

「おう」

 

加賀が小さくお辞儀をすると、俺は軽く手をかざして挨拶する。

 

「お前ら何しとんねん、こんな夜遅くで歩いても何もないやろ?」

「うむ。何もない」

 

そう真顔で返されてもな。

 

「んじゃ、俺はこれから仕事あるから。すまんな」

 

そう言って手を振って門から出ようとすると、加賀が口を開く。

 

「私も行きます」

「・・・は?」

 

そう言って、俺を通り過ぎて、警備員に敬礼をして門を出る。

日向も後に続いて出て行く。

 

「お、おい、お前ら・・・」

「大丈夫です、訓練はしてきましたから」

 

加賀の手には、弓が握り締められている。艤装のものとは違い、赤い色合いをした弓。

矢も艤装のものとは違って、白兵戦用の弓だ。

装飾も施されており、ちょっと高そう。

 

「小室提督にお願いして、白兵戦用の弓術装備を揃えてもらいました」

 

無表情ではあるものの、ほんの少し口角が上がり、親指を立てる加賀。

 

「で、でもな、小室の奴も心配するやろうし・・・」

「安心してくれ、彼からも了承済みだ」

 

日向が軽く頷く。そして、続けざまに言葉を発す。

 

「逆に「師匠の助けになるなら、喜んでっす!!頑張ってくるっす!!」って言っていた」

「あの糞餓鬼・・・!」

 

俺は拳を握り締める。あぁ、今近くにあの餓鬼がいるなら殴りたい。

 

「安心してくれ。何も毎度手伝うということではない」

「今回だけ・・・ってことではないですが、たまにということで。

私達も一応艦娘なので、毎度手伝えるわけじゃないのです」

 

 

 

「はぁ、分かった。ついてき」

「感謝します、池宮憲兵」

「では、行こうか。今日は何処に行くんだ?」

 

「東側の海岸線をゆっくり歩く予定や。いくつかの魔物の報告があるから

そいつらの討伐やな」

「了解しました。早速行きましょう」

 

弓を持った加賀は、門を出て右に進む。

 

「加賀、逆や」

 

俺は加賀の進行方向とは逆の方角を指差す。加賀は振り返らずに身体を震わせている。

 

「・・・冗談です」

 

俯きながら早足で東側へ進む。

 

「面白いな、あいつ」

「そうだろう?見てて飽きないよ」

「お前、悪い奴やな」

 

日向は腕を組んでクスクスと笑っている。俺はその姿を見て苦笑いを浮かべた。

そして、一つの疑問が浮かぶ。

 

「お前は何も持ってないんか?」

「素手で十分だ」

「あぁ・・・」

 

考えたら、あの時素手でエンチャントルーンを宿した俺と戦ってたんだっけ。

こいつに関しては心配は無さそうだな・・・。

そう思いながら俺と日向は、先行する加賀の後ろをつけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが・・・夜の街なのですね」

 

加賀は気を張って気配を探っている。矢を手に、弓を構えながら歩いている。

 

「んな気張らんでもええで。もっと気楽に行こうや」

「いいえ、外に出ては、いつ何処で命を狙われるか分かりません。

最大限の警戒をしないと・・・」

 

真面目なんだなぁ。その真面目さ、すこーしだけ見習いたいな、と思う。

 

「意外にも静かなんだな、外って」

「せやな。魔物がうじゃうじゃ~ってことは無いんや」

 

俺が軽い説明をしていると、興味深く加賀は聞き入っている。

日向は聞いているものの、視線は海に向けている。

 

「やけどな、夜は魔物だけちゃうねん。怖いもの知らずに外を出歩く大人子供もいるんや。

そういう人の保護も、俺の仕事やな」

「なるほど。ただ魔物を討伐するだけではないのですね」

 

加賀が頷く。そうしていると、俺は空気が変わるのを感じる。

加賀と日向も気がついたのか、立ち止まって弓を構える加賀。

 

「無理だけはあかんで」

「了解です」

 

あっ、と俺は思い出したかのように呟く。

 

「あ、そうや。加賀、日向。これ付けとき」

 

俺はそう言って、予備の小型無線機を二人に渡す。

 

「これは・・・?」

「小型の無線機や。これでとある人と通信できる。夕張も今日はそっちにいるわ」

「ほう」

 

興味深く見ている加賀と日向。言われるがままに耳に取り付ける。

小さなノイズが聞こえるだけで、今は何も聞こえない。

 

「いざとなったら、親方がサポートしてくれるわ」

「わしにまかせるんじゃ!!」

「!?」

 

加賀が少し驚いた表情を浮かべる。

 

「すごく驚いてるぞ」

「へぇ」

 

日向が小声で話す。俺は多分、そのときかなりにやけていたと思う。

 

「さて、お喋りも終わりやな」

 

俺も槍を構える。そして、相手の出方を伺う。

そうしていると、海岸から水しぶきの音。こちらに向かって走ってくる。サハギンだ。

2体か。楽勝そうだ。だが、その後に上空からもこちらに気配が向かってくる。

 

「広樹!気をつけろぃ!《ロック》じゃ!!」

 

無線機から親方の声が聞こえる。

ロックは上空から急降下し、俺達に襲い掛かる。俺達は避ける。そのままロックは着地する。

体長は2メートル半ほどの、中型の鳥型魔物だ。

 

「大きい・・・!」

「加賀と日向はサハギンを頼むわ!おら、こっち来いや!」

 

俺は腰に装備した投槍を組み立て、それを鳥型魔物に投げる。

魔物は一度怯むが、俺を睨み、襲いかかろうとする。

俺は加賀と日向から離そうとし、地を蹴り相手の懐まで駆け抜ける。

 

「これ、返してな~」

 

俺は、すれ違い様に投槍を引っこ抜く。

背後に回りこむ俺は、そのまま構えを崩さずに相手の腹部に目掛けて刺突を繰り出す。

見事命中し、魔物は苦しみだす。

 

「さ、さすがですね」

「手馴れてる感じがするね」

 

加賀と日向は、俺の戦う姿を見て感心し、見とれている。

だが、そうしている間に二体の魚型魔物が二人に近づいてくる。

槍を構える固体と、杖を持つ個体だ。

 

「サハギンじゃ!水属性の魔導術を使ってくる!気をつけるんじゃ!!」

「槍を持ってるほうは、物理攻撃にも長けてるから、接近戦も気をつけてください!」

「了解・・・!」

 

親方と夕張のアドバイスを聞き、加賀は弓を引き、構える。日向も加賀を庇うように

前に立ち構える。

 

「加賀、魔導術って・・・」

「池宮憲兵が使ってきたものね・・・遠距離でも繰り出せるから、どちらにせよ厄介ね」

「待っていると、攻撃されるということか。私は近距離主体で敵の攻撃を妨害しよう」

「援護は任せて・・・!」

 

小声で軽い作戦を相談し、二人頷くと、日向が走り出す。槍を持つ魔物に特攻する。

魔物は迎え撃つ如く、刺突を繰り出すが、それを日向は軽々とかわす。

 

「遅いな」

 

日向は避けた勢いで、槍を持つ魔物の顔面に裏拳を繰り出す。見事にヒットし、魔物は

吹き飛ばされる。

視線を変えると、杖を持つ魔物が詠唱を開始している。

 

「加賀!」

「了解」

 

加賀は杖サハギンに向かって弓を放つ。その矢は杖を持つ魔物の手のひらに命中し、詠唱は

中断され、魔物は杖を落とす。

 

「これで決めます」

 

もう一本矢を取り出し、撃つ。その矢は魔物に着弾すると、音を上げて小爆発を起こした。

その音に俺も驚き、思わず視線を移した。

 

「火薬入りの特製弓矢です」

「うわぁ・・・」

 

威力は抜群で、魔物は跡形も無く消えていた。

残った槍を持つ魔物が立ち上がると、日向はすぐに追撃に入る。

起き上がりに蹴りを入れ、槍を吹き飛ばす。

武器を失い慌てる魔物に、日向は無慈悲な鉄拳の一撃を見舞う。

魔物はそのまま地面に叩きつけられ、ぴくりとも動かなくなった。

日向は手を払って腕を組む。

 

「ふむ、この程度か」

「す・・・すごい・・・」

 

無線越しで夕張が感心している。いや、俺もここまで戦えるとは思っても無かった。

日向は実際戦ってその強さを実感していたが、加賀の弓の技術も相当で

白兵戦用に練習したんだろうな、と思う。

そして、俺の相手はまだ平気そうだ。これでも結構斬ったんだけどな。

相手の鳥型魔物の身体には、複数の傷が刻まれ、体液も垂れ流している。

確実に聞いているが、魚型魔物に比べるといかんせん体力が高い。

加賀、日向も合流し、3対1となる。

 

「久々やなぁ、誰かと一緒に戦うの」

「ふふっ、悪くないだろ?」

「せやな。めっちゃいい気分や」

「では、一気に片付けましょう」

 

弓を引く加賀。その音を聞いた俺は左手に気を込める。手中で炎が巻き上がり

前に掲げて握りつぶす。

 

「燃えよ、我が闘志!!」

 

火花がほとばしり、身体を伝って矛先に炎が宿る。蛇矛の周りには陽炎が表れ

空間を歪ませている。

 

「魔導術・・・ですか」

「せや。火のエンチャントルーン、《イグニス》や」

「この前は雷だったが、火も操れるのか」

「いろんな属性使って、リハビリせなあかんからな」

 

「術唱えるから、悪いけど暫く頼むわ」

「了解」

 

日向が前に出て、加賀が後方から弓で援護する。

加賀は着実に矢を魔物に当てている。日向も防御に徹しながらも

隙あらば拳を打ち付けている。

 

「堅いな」

「先ほどの魚とは桁違いのようね」

 

魚型魔物のように、簡単に攻撃は通らないようだ。

鳥型魔物は、上空へ跳び、突風を起こす。

加賀と日向は、飛ばされないように踏ん張る。

 

「くっ・・・」

 

加賀は、突風のせいで身動きが取れない。その隙をついて、魔物が突進してくる。

 

「しまっ・・・」

 

加賀は思わず身を守ろうと蹲る。その瞬間、加賀の目の前に巨大な火柱が立ち上がる。

それに驚き、鳥型魔物は後退する。

 

「ふぃ~、問題なさそうやな」

 

俺の魔導術だ。比較的簡単な炎の魔導術だが、牽制には十分だ。

 

「こんなんも出来るんやで」

 

俺は炎を宿した槍を地面に突き刺す。

 

「星の攻め、見せたるわ!!」

 

掛け声に合わせて、大地が熱くなる。その熱さは俺、加賀、日向の力を向上させる。

 

「こ、これは・・・!」

「力が、溢れてくるようだ」

「炎の支援術の一種や。ちょっとの間力が上がるんやで」

 

炎は、攻撃に特化した属性だ。こうやって味方の力を引き上げることもできる。

うん、使う分には問題はなさそうだ。こういうのは、味方がいないと試せないからな。

 

「殴ってみ、多分結構違うと思うで」

「分かった」

 

日向は頷くと、魔物の懐まで一気に駆け抜け、

 

「はぁっ!!」

 

腹部に一撃を見舞う。魔物の腹部に衝撃が走り、風圧と共に魔物は吹き飛ばされる。

魔物の腹部には、攻撃の後が残っている。

 

「ほう・・・」

「す、すごい力・・・」

 

加賀と日向もその力を体感している。加賀の弓も、速度が上がり

より深く矢が刺さるようになった。

 

「先ほどより効いていますね」

「せや、一気に叩くで!日向、ついて来い」

「了解だ」

 

俺が駆ける後すぐに日向も続く。加賀は矢を放ちながら敵の動きを封じる。

 

「加賀のお陰で、狙いやすいわ」

「あぁ、一気に決めよう」

 

俺はそのまま魔物を駆けぬき、抜き様に複数回斬り付ける。斬撃で怯んだ隙に

日向が飛び上がる。

 

「はぁぁああああ!!」

 

強く握り締めた拳は、相手の顔面に直撃し、地面に叩きつける。

俺はその隙を逃さず、少し長い詠唱を開始する。日向は、加賀を守るように少し後退する。

 

「天に集いし焔よ、恐怖と共に降り注げ!!」

 

台詞による詠唱を終え、俺は左手を前に突き上げる。一瞬左手に炎が巻き上がる。

その後、天から無数の火炎弾が打ち出され、魔物を焼き尽くしていく。

今、と思った加賀は、火薬矢を引く。

 

「これで、終わりです」

 

弓を放ち、燃え盛る魔物に命中すると、先ほどより大きな爆発を起こした。

その分爆風も大きく、俺と日向は吹き飛ばされる。

 

「どわああああっ!!!」

 

ゴロゴロと転がっていく俺。体重軽いから、よく飛んでいく。

日向はある程度飛ばされると踏ん張ったようだ。

魔物は完全に焼かれ、戦利品である羽を残し、跡形も無く消え去っている。

日向はその羽を拾う。加賀はすぐさま俺の元へ駆けつける。

 

「す、すいません、池宮憲兵。大丈夫ですか?」

「ってて・・・さすがに支援ありではでかいなぁ」

「まさか火薬矢までが、魔導術の力で増強されると思っていなかったので・・・」

 

加賀が手を差し伸べる。俺はその手を握り、立ち上がる。

 

「ふむ、報告だと、そのロックがここいらの主将のようじゃな」

 

無線から親方の声が聞こえてくる。

 

「念のため、もう一回りしてこい。また外で遊んでいるアホがいるかもしれん」

「へいへい、了解了解」

 

無線越しで話す俺。内容は、同じ無線を装備した加賀と日向も聞いている。

 

「池宮憲兵、これ」

「お、ロックの尾羽根か。もらっとくわ」

 

俺は魔物の落とした尾羽根を戦利品を入れるポーチに入れる。ふと、その中に入っていた

ものに気づく。

 

「あっ・・・」

 

あのときの子のカチューシャ。俺はあの時、半分意識が飛んでいて、彼女の親に渡せなかった。

もし、またあの人に会えるなら、渡してあげたい。

あー、でもせめてこの血を洗ってからにしないとな。

 

「どうしたのですか?」

 

加賀が心配そうに、俺の顔を覗き込んでくる。

 

「あぁ、いやいや、何でもないで」

 

俺は急いで尾羽根をしまう。

 

「んじゃ、いこっか」

 

今は、前に進もう。俺は歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く見回ったが、特に異常はなかった。魔物が数体出てきた程度で、対処も楽だった。

さらに今回は加賀と日向がいるため、苦労もせずに倒せることが大きい。

やっぱ、誰かと一緒に戦うっていいなぁ。

 

「もう大丈夫かなぁ」

「お疲れ様~」

 

無線から夕張の声が聞こえてくる。時々ではあるものの、夕張がサポートに回ってくれる

こともあり、デュアルウェポンの作業をしながらしてくれていた。

 

「そっちはどうや?」

「見てるだけで楽しい」

「そっか、よかったな」

 

俺はニシシと笑う。加賀と日向は何の話か分からず、首をかしげている。

 

「池宮憲兵、夕張は何をしているのでしょうか?」

「あぁ、剣の分解や」

「剣を分解?」

 

日向が疑問に思い、困ったような顔をする。

 

「剣って言ってもな、ちょっといわくつきの代物やねん。デュアルウェポンって言ってな」

「デュアルウェポン?」

「剣と銃、二つの形態を操る武器やねん。銃剣みたいなんじゃなくて、剣になったり

銃になったりって」

「変形するということか」

「せやせや」

 

日向がなるほど、といわんばかりに頷いている。

加賀は微妙に納得していない。

 

「そんな摩訶不思議な武器が、この世に存在するんですね・・・」

「今までなら信じへんかったけどな。最終幻想物語に登場するような武器やし」

「それって・・・」

 

加賀も、最終幻想物語は知っているようだ。結構有名だしな。

 

「ですが、アレは御伽噺で・・・」

「それが、いくつかは実話かもしれんねん」

 

俺は腕を組んで、考えるようにして呟く。

 

「そんなの・・・有り得るのでしょうか?」

「ありえるんちゃうか?実際今の魔物騒動も、最終幻想物語に似てるし、魔導術かて

話の魔法と似てるやん」

「確かにな。こんな世の中だと、実在した話、といわれてもおかしくはない」

 

日向はそう言うと腕を組んで頷く。って、こんなとこで立ち話してるのはよくないな。

 

「立ち話もなんや、時間も時間やし、帰るか」

「そうですね」

 

俺達は帰路につく。30分ほどで鎮守府に帰還する。

午前一時五十分。日はとっくにまたいでおり、施設の電気も殆ど消灯している。

 

「さて、私達は・・・」

「ちょい待ってくれ、一緒に工廠に行くで」

「いえ、報酬などは必要ないので・・・」

 

加賀は報酬を分け合うのかと思うと、遠慮し、首を横に振る。

それもあったが、別の用件もある。

 

「一応、来てくれんか?また手伝ってくれるんやったら、尚更」

「何かあるようだな、行ってもいいんじゃないか?加賀」

「そうですね、分かりました」

 

二人の承諾を得る。俺達はそのまま工廠へ向かい、親方のいる二階へ上がった。

扉を開けると、地面に寝転がっている親方と夕張がいた。

 

「風邪引くで」

「お、おう、おかえりじゃ」

 

親方の声に覇気がない。何故だ。とりあえず戦利品を親方に渡す。

 

「ロックの尾羽根や」

「お、おう。こいつが報酬じゃ」

 

巾着袋を渡される。俺は中身の金額に驚愕する。

 

「に、二万円!!??」

 

今まででは有り得ないほどの驚愕の大金。正直桁を間違えていないか再度確認する。

いや、間違いない。札は二枚であるものの、福沢諭吉が描かれた札が二枚。

これは、間違いなく二万円だぁ!!

 

「珍しいもんを見せてくれた礼も含めてじゃ」

「親方大好きぃ!!」

 

俺は親方に抱きついた。親方は声を荒げた。

 

「ぐわあああ!!気持ち悪い!離れるんじゃ!!」

 

ぐいぐいと押し出される俺。俺は手放すと、親方の隣にいた夕張を見つめる。

夕張は風呂敷に巻かれたものを大事そうに抱いている。

 

「夕張・・・起きてるかぁ?」

 

俺が彼女の顔に手をかざすと、うっすら目を開けた。

 

「・・・すごいです」

 

そう小さく呟く。

 

「加賀さんも、日向さんも、すごいです。初めてなのに、あんな果敢に魔物と戦って。

動じずに戦えて」

 

天井を見上げながら話す夕張。その姿を、加賀と日向は黙って見守る。

ただ、何も言わずに彼女の話を聞く。

 

「私には、出来ませんでした。戦えたとしても、せめて小さな子供の心を宥めるぐらい。

最初はそれも、戦いの内だって、心から思っていました。今でもそれは変わりません」

 

夕張は、自分は弱いことを自覚している。確かに加賀のように弓を操る力もなければ

日向のような圧倒的な力もない。俺のような槍を操る力も、魔導術を駆使する力もない。

彼女の行動には、俺も助かっていることはあるが、《魔物》と《戦う》ことは

今までの彼女にはできないことだった。

 

「でも、私も、《魔物》と《戦う》力がほしい。ないものねだりかもしれないけど

今の私にとって必要なんです」

 

風呂敷の物を強く握り締める。感情がこもっている証拠だ。

 

「だから、池宮さん」

 

夕張は目を見開き、勢いよく起き上がる。風呂敷を脱ぎ捨て、デュアルウェポンの姿を現わし

彼女は武器を構える。左手で持った刀剣は以前より輝きを増し、少し形も変わっている。

 

「私に、戦い方を教えてください!」

 

真剣な眼差し。右手の拳は強く握り締められている。

 

「本気じゃぞ、彼女は」

 

親方が首を突っ込む。俺は親方に視線を移す。

 

「広樹、《剣》なら、教えられるじゃろ?」

「・・・・・・」

 

痛いところをついてくる。親方は少しだけだが、俺の昔話を知っている。

確かに、《剣》なら教えられる。昔いろいろあったからな。

・・・できるなら、あまり剣は握りたくないけど、彼女の意志にも応えてやりたい。

俺は、決心した。

 

「・・・わーった、わーったわ。教えたる。せやけど」

 

剣を教えることにもうためらいはない。だが、中途半端に教えるのも気に食わない。

 

「俺は厳しいで」

「はい!よろしくお願いします!!」

 

厳しい特訓メニュー、考えないとな。でも、銃はまたどうするか考えないといけないか。

う~ん、近くに銃が使える人がいてくれたらなぁ。

今度、夕張の潜在属性を調べるついでに、魔導術の知識も少し叩き込んでおくか。

俺は訓練について、いろいろ考え込む。

 

「ついでに、魔導術についてもちょこっと教えたるわ。上手いこと行けば

使いこなせるようになるかもな」

「ほ、本当ですか!?」

「魔導術については、師匠の受け売りやけどな。上手くいく保証はないで?」

「それでも、できることはしたいんです!ぜひお願いします!!」

 

夕張は深く頭を下げる。俺は頭を掻いて頷く。

 

「わかった。出来るだけのことはやろか」

「はい!!」

 

万遍の笑みで夕張は顔を上げる。せめて、彼女が死なない程度に鍛えて、死なないように

戦えるぐらいまでにはしないとな。

その姿を見ていた加賀と日向は、微笑んでいる。

 

「生き生きしているわね、彼女」

「あぁ。彼を選んで、提督は正解だったな」

「そうね」

 

加賀は一瞬だけ暗い顔をするも、首を横に振り、元の表情に戻す。

 

「そうそう、加賀と日向じゃっけか?」

 

親方が加賀と日向の下へ駆けつける。

加賀と日向は、親方を見下ろすようにしている。

 

「広樹のこと、手伝ってくれたそうじゃな。すまんのう」

「いえ、彼にはいろいろと世話になりましたので」

「この程度では、恩返しにもならない」

 

加賀と日向は謙遜する。そこは素直に受け取ってくれてもいいのに。

 

「いやいや、きっと広樹もかなり助かっているじゃろう」

 

そこは自信を持っていいぞ、と言って親方は小さな親指をグッと立てる。

 

「じゃが、また手伝ってくれるとなると・・・そこの嬢ちゃんはちぃーと不安じゃの」

「私か?」

 

指を指された日向は自分を指差し、首を傾げる。

 

「確かに嬢ちゃんの力はすさまじいんじゃが、いささかもったいない気がしてのう」

 

親方は考え事をしながら、金槌をぶんぶん振り回している。

 

「どうじゃ、わしの好みも入るじゃろうが、武器を持ってみんか?」

「いいのか?」

「もちろんじゃ。まぁ、わしの好みで作る武器じゃから、作ってから断っても構わん」

「是非作ってくれ。そちらのほうが戦いやすい」

 

日向は頷く。嬉しいのか自然と口角が上がる。

 

「そうかいそうかい!完成次第渡すからのう!!広樹を通じて連絡するから、気長に

待っておれ!!」

 

何か親方に元気が戻った。日向に武器か。今のままでも強いけど、武器持ったらもっと

強くなるだろうな。

俺は、ちょっとその武器に期待していた。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、私達はこれで」

「ほんまセンキュな」

「また手が開いてるときには手伝うよ」

「よろしくな。んじゃ、お休み」

 

俺達は、敬礼を交わすと各自散っていく。

加賀と日向は、艦娘寮へ帰っていった。

 

「さて、俺達も帰るか」

「うん!」

 

俺と夕張は、憲兵寮に帰る。帰り際に少し会話があった。

 

「そういや、デュアルウェポン、ちょっと変わってたな」

「私が調整したの。たぶんかなり使いやすくなってるはず」

「へぇ~、夕張そういうのできるんやな」

「機械弄るのは結構好きなのよね~」

 

意外な特技を知った。ゲーマーで機械弄りが得意か。かなりインドアだな、ということは

心の中の感情としてしまって置こう。

 

「私が扱いやすいチューニングになっちゃったけど・・・ちゃんと使いこなせるように

なりたいなぁ」

 

夕張が何度も頷きながら話している。話しているうちに段々暗くなってくる。

俯きながら夕張は呟く。

 

「でも、この武器、私が使っていいのかな?貴重なものだし・・・」

 

小さい声で呟くが、俺はその声を見逃さなかった。

夕張の頭を軽くぽんと叩く。その感触に反応し、夕張は俺を見上げる。

 

「俺が釣ったもんや、所有権は俺にあるやろ?」

 

俺は風呂敷に包まれたデュアルウェポンを指差す。

 

「お前が使いたい用につかったらええ。それは、お前のもんや」

「ありがとう、池宮さん!」

 

夕張は微笑む。部屋に戻ると、槍を立てかける。

デュアルウェポンはとりあえず、風呂敷を巻いて槍の下においておく。

変形でかなりコンパクトになり、収納にも困らなさそうだ。

 

明日からは、夕張の特訓もすることになる。ある程度力をつけたら、実践投入だな。

剣なら教えられることは教えられるけど・・・。

 

「・・・今は考えても仕方ないか」

「池宮さん?」

 

俺の独り言に反応する夕張。俺は首を横に振る。

 

「何でもないで」

 

そう言って俺達は部屋着に着替える。そのまま布団にもぐりこむ。

というか、相部屋も慣れてきた。最初は何とかして別の部屋にしようと思ったけど

特に抵抗もなくやっていけてる。

長いこと続くなら何とかしなきゃならないけど、今はまだ、このままでいておくか。

 

「それじゃ、電気消すで」

「うん、おやすみ」

 

消灯し、俺は目を瞑る。その隣で、小さな声が聞こえてくる。

 

「私、頑張るから」

「・・・・・・」

 

俺は何も返事をせずにただ黙っている。

 

「頑張れ」

「うん」

 

俺はその一言だけかけてあげた。

そして、睡魔が襲い掛かり、意識が遠のく。

新しい朝が迎えてくるまで、一時の休息が訪れた。




ご閲覧ありがとうございます。いつも見てくださっている方はどうもです。
またすさまじく長くなった。メインキャラではないものの、たまーにこんな感じで加賀と日向が
参戦してくれます。日向は池宮とタイマン張り合ったので、かなり戦闘力高めです。
加賀は弓術と、矢のからくりで補ってます。

浦風も出そうと思っていたのですが、広島弁が自信ないので断念。
関西弁なら大丈夫なんだけどなぁ。

数話後には、夕張も戦えるようになります。ネタバレになるので、どんな戦い方をするのかは
いえませんが、楽しみにしていただけたら幸いです。
まだまだ序盤だというのにどんどん文字数が増えていきやばいです。
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