Demon's Stella ~悪魔の彗星~ 作:Hershel
食事場所について
《憲兵食堂》
憲兵寮近くに設置してある憲兵用の食堂がある。内容は質素で、学食や社内食堂レベル。
その代わり値段はかなりリーズナブルで、サービス料金に定評がある。
昼時が一番込んでいて、各憲兵達が思い思いに語り合って盛り上がっている。
ビーフカレーが人気メニュー。他にもうどんやラーメン、各定食や丼物もある。
利用する客は殆どが憲兵。小室や加賀など変わり者もいることはいる。
《監査棟食堂》
監査棟の中にある食堂。質としては憲兵食堂よりかは上である。
憲兵、艦娘、提督以外の職場の人がここを利用している。
憲兵食堂よりかは清潔感漂うが、メニューが割と高く、事務関連の職についている
人の悩みの種の一つのようだ。
《購買》
執務棟1階にある売店。夜遅くまで営業しており、外出が出来ない夜中にも買い物を
行うことが出来る。食料や飲料、簡易な日常品など便利なものも取り揃えている。
雑誌や漫画もあり、休みの日には立ち読みしている憲兵や提督、艦娘もいるとか。
《甘味亭 間宮》
鎮守府内で一つだけ瓦屋根の建物があり、そこが甘味亭 間宮である。
日本の他の鎮守府にも存在するらしく、どうやらチェーン店のようだ。
ここには艦娘、提督以外は立ち入りが禁止されている。
お上さんがずいぶん別嬪という噂が憲兵内に立っているが、真相は謎である。
朝食から夜食までのメニューが揃っている。殆どの提督、艦娘はここで食事を取る。
メニューとしてはカツカレーやジャンボパフェなど、憲兵食堂に比べれば豪勢であるが
少々値段がお高い。
「えっ?いいの?昨日も休みだったのに・・・」
「ええってええって。仕事せなあかんのは俺だけやし」
「だった尚更」
「疲れ溜まってるやろ?病み上がりの中昨日は頑張ってくれたんや。今日ぐらいは
休んどき」
六月七日(日)午前八時。日曜日ではあるものの、俺は仕事が入っている。
提督や艦娘は日曜日は休みのことが多いのだが、憲兵はそういうわけにもいかない。
提督達が居ないからこそ、この鎮守府を守る必要があるからだ。
休日が定められているのは可笑しい気がするが、海の敵である深海凄艦は
特定の日にちには襲ってこないらしく、日曜日がその日に該当するらしい。
相手の詳細は俺達憲兵が知ることではないが、向こうも休息が必要なんだってことだろうか。
「と、ゆーわけや。しっかり休んどくんやで!!」
「あっ!ちょっと、もぉ!!」
俺はせっせと自部屋から離れる。だが
「ぶっちゃけ、俺かって休みたかったけどな」
そう考えるとため息しか出てこない。
「最近しこってないし」
小声でボソッと呟く。まぁ、そうだ。夕張と部屋が一緒になってから、そういった性処理
を一度もしていないのだ!!!
本当に何とかしたほうがいいのかもな。俺の命燃え尽きる前に。
「さて、今日も頑張るで」
憲兵寮の入り口で、背伸びをする。蛇矛の刃が光を反射して輝いている。
今日は晴天。さぁ、張り切って・・・
「・・・・・・」
と、俺は空を見上げて少々感情に浸る。
「晴天・・・か」
俺は頭をぶんぶん振って、顔を叩く。幸い今日は休みということもあって近くに人の気配は無い。
「よし、とりあえず港に行けばいいんやっけか」
俺は、艦娘が停泊する港へ向かった。
「おぉ、来たか」
港には常に上官が待機していた。そして、その後ろには大量の資材が。
そして、その資材の近くには少し冷や汗をかきながらもニコニコしている艦娘数名が。
「ん?これって・・・」
「何、今日は艦娘達は休日であろう?だが、遠征の件で、この子達は今日の朝までが
仕事だったってわけだ」
ん?嫌な予感がする。
「艦娘達も疲れているだろう。そこで!」
俺は上官にビッ!と指を指される。
「お前が艦娘達に代わって、この資材を運ぶのだ」
「はぁ!?」
俺は口が大きく開く。顎が取れそうな勢いだ。
「いや、さすがにそれも仕事の内なんやから、艦娘にやらせたほうがいいんやないっすか?」
「艦娘達の貴重な休息を無駄には出来んからな」
「んじゃ上官がやればいいじゃないっすか」
「俺はもう年だ」
「うっせぇクソオヤジ」
俺は小言で呟くと、鋭い目つきで睨まれた気がする。
そして、上官は地面に向かって自前の鞭を叩く。
「つべこべ言うな!これは上からの命令だ!!」
「って、上官の命令ちゃうんかい!」
「仕方ないのだ。これも、この鎮守府の掟なのだ」
いまいち納得いかない。だが、これに逆らったら後々面倒になるのは確かだ。
俺は腹をくくる。
「はぁ・・・はいはい、分かりました分かりました。やればいいんでしょやれば」
「二度も言うな!返事ははっきりと!!」
鞭の音が港に鳴り響く。この一喝には、後ろの艦娘達も少々怖がっているようだ。
「はぁ。上官、艦娘達がびびってるっすよ」
「お?あぁ・・・すまない」
上官は艦娘に向かって礼をわびる。艦娘達はいいえ、と言わんばかりに首を振っている。
「それでは、頼んだぞ、池宮」
そう言って俺の肩を強く叩いて、上官は去っていった。
「あはは・・・ごめんね?憲兵さん」
艦娘の一人がこちらに近寄ってきて謝ってくる。
「いや、ええって別に。あ、敬語のほうがええんかな」
「ううん、気を使ってくれなくていいよ」
そう言って艦娘は首を横に振る。
「まぁ、あんたらもお疲れやろうし、今日はゆっくり休んどき。買い物に出かけるのも
ええやろうし、ここは俺に任せてエンジョイしておくんやで」
「はーい!」
艦娘皆が大きく手を上げて、そのまま走り去っていった。まだまだ元気じゃねぇか。
遠征帰省ってことは、あの子達は駆逐艦かな。それにしては、この前喋った弥生
と比べたら大きい子達だったな。
「艦娘にもいろいろあるんやろなぁ」
俺はそう思いながら、まずは弾薬を運ぼうとする。
「あぁ、予想通り重たい」
俺は腰に力を入れて、全身の力を使って持ち上げる。これは、とりあえずは工廠に
持っていけばいいらしいので、俺はそのまま工廠へ持っていく。
だが、この弾薬の箱はごく一部で、俺なりに推測して、ざっと30往復はしなければならない。
あぁ、せめて昼までには終わってほしいな。そう思いながら俺はせっせと弾薬の詰まった
箱を運んでいくのであった。
「よっし、お疲れさん」
工廠のおっさんが激励の意味も込めて背中を叩く。
午前十一時。ようやく半分ほどの搬送を終えた。普段なら遠征に行った艦娘が艤装装備
のまま全員で資材搬送をするのを一人の人間がやっているのだ。
我ながら素晴らしいと褒めたい。そして、折り返してまた港へ戻ってみると
「お」
見慣れた姿を見かけた。紺の軍服に三日月の髪飾、昼間だから紫の髪が繊細に見える。
「よっ」
「あ・・・っ」
弥生だ。見かけると俺はとりあえず声をかける。弥生は声をかけられて驚いたのか
声を漏らし、数秒後にお辞儀をする。
「どうしたんや、こんなとこで」
俺は何故このような場所にいるのかを尋ねてみた。実際休みのときなんて港には用は
無いはずだ。
「え、えっと・・・」
弥生は言いづらいのか、言葉を詰まらせている。
「あー、悪いな。プライベートに踏み込んだらあかんかったか」
俺は頭を掻く。その姿を見て、弥生はぶんぶんと首を横に振る。
「んでも悪いな、俺今日は仕事やねん」
そう言って俺は弥生の隣を通り過ぎ、港沖に置いてある鉄材の箱を持ち上げる。
「うわ、これ結構重っ」
弾丸よりも人一倍重かった。弾丸は軽量化されているものも存在し、100%鉄でも
ないため、鉄材よりは軽かった。だが、これは100%鉄なので、非常に重たい。
「あ、明日腰痛めそう」
俺は自分の体調の心配をしながらも、そのまま工廠へ運んでいった。
その姿を、弥生は歩いて追っていた。
「ん?どうしたんや?」
ついてくる弥生を見て、俺は疑問に思い尋ねた。
「え、えっと・・・」
弥生は口をもごもごさせ、俯いている。
「き、気を使わなくていい・・・です」
「・・・?」
寧ろこれは気を使わなきゃやってけない状況な気がする。
「あ、あの」
弥生が声をかけてきた。俺はじっと、彼女を見つめる。
「お、お邪魔でなければ・・・お手伝い、します」
そう言って、弥生は来た道を戻っていった。俺の返答を聞かずに。
「あぁ・・・」
俺は届かない手をずっと伸ばしていた。が、その手を離して鉄材が少し地面に落ちる。
「あぁぁああっと!!」
・・・これは見なかったことにしよう、うん。
鉄材を一旦運んで戻ってみると、鉄材の箱を一生懸命持ち上げようとしている弥生の
姿が見えた。
「ん・・・しょ!ん・・・しょっ!!」
だが、一向に持ち上がる気配は無い。艤装しているときならともかく、あの小さな身体で
あの重い鉄材の箱が持ち上がるはずも無い。
「なんか、見てると癒されるかも」
不謹慎ではあるものの、その懸命に持ち上げようとしている姿は見ていて癒される。
この光景を見られただけでも今日仕事した甲斐があるぜ!
「あ、あのっ」
一生懸命持ち上げている中、こちらを見つめてくる。
「持ち上がらない・・・です」
少しむくれ顔でこちらを見つめて言ってくる。
俺はとりあえず彼女の持つ箱の中の鉄材の半分ほどを、次自分が運ぶ箱の中に入れた。
山積みになったけどなんとか運べそうだ。
「どうや、それぐらいなら運べるか?」
そう言って、最初の持ち上げるのだけ手伝ってやる。そうすると、なんとか安定して
箱を持ち上げることができた。
「大丈夫、です」
「オッケー。無理したらあかんで」
だが、俺のほうが今回は無理をしている気がする。ぐ、お、重い。
午後0時半。弥生の手伝いもあってかなんとか昼食時までには作業を終えることができた。
夏も間近というだけあって汗が止まらない。弥生も疲れているようだ。
「疲れたなぁ」
「は、はい」
「待っとき、飲み物買って来るわ」
そういって、俺は立ち上がって鎮守府内の自動販売機まで歩き出す。
ポケットマネーを使ってすっきりする炭酸飲料を二本買う。冷えた缶を握り締め、
戻ると彼女の頬に缶をつけてやる。
「冷たっ」
弥生はびっくりしたのか、少し引き気味にリアクションした。でもそれは一瞬で、すぐに
缶を手に取った。
「ありがとう・・・ございます」
「どういたしまして」
俺は缶を開け、カシュッと音を立ててそのまま一気に飲み干す。炭酸飲料の一気飲みは
正直身体にはあまりよろしくないが、これが俺としては最高に気持ちいいのだ。
と、そう考えている内に一つだけ気づき、俺は弥生に尋ねる。
「あ、炭酸いけた?」
そう言うと、ずっと缶を見つめ握り締めていた弥生がこちらを向く。
「いえ、大丈夫だと思います」
大丈夫だと思います・・・?なんか気がかりな言い方だな。
「炭酸飲料といったものは・・・飲んだことが無いので」
「あぁ、せやな」
そういや、彼女は最近建造された艦娘で、まだ赤子に近いような状態なんだ。
知識はある程度は詰め込まれているだろうけど、こういった人間じみたことは
きっと経験をつまないとやっていけないんだろう。
「缶開けれるか?」
「んっ・・・」
一生懸命、缶のプルトップを持ち上げようとするが、上手くできない。
俺はその姿を見てはくすくすと笑いつつ、彼女に近づいて、
「こうやるねん」
俺はプルトップと缶の間に爪を入れ込み、少し持ち上げる。その持ち上がったスペースに
一気に人差し指を入れる。そして、くいっと持ち上げると、プシュッと空気が抜ける音が出た。
「わっ・・・」
弥生は少し驚く。そして、それを物珍しそうに見つめている。
「飲んで、いいですか?」
「おう、飲み飲み」
そう俺が返事すると、弥生はこくん、と頷く。缶の飲み口にゆっくり口を近づけ、飲み物を
口内に注いでいく。炭酸が弾ける音とその感触に弥生は不思議な気持ちを抱いていた。
「不思議な感じです」
そう言って、また飲んでいく。何度か口を離しては飲んでを繰り返し、飲み干した。
「美味しかった、です」
「そっか」
俺は自然と口角が上がる。自分のお気に入りの飲み物を気に入ってくれたのもあるけど
艦娘として戦いに身を投じるのも大事だが、こういった小さな楽しみも、きっと大事な
ものに変わっていくだろうと思ったからだ。
そう考えながら、俺は弥生の缶をゴミ箱に捨てに行こうとする。
「自分で捨てに行きます」
そう言って俺の前を歩き出す。
「えらいな、弥生」
その返しには返事は返ってこなかったが、少しだけこくりと頷いたように見えた。
「ラーメン大盛り、から揚げお待ちッ」
俺は駅前の大型ショッピングモールにある、ラーメン屋に来ていた。
鎮守府前にもラーメン屋があるのだが、個人的にはこちらのラーメン屋のほうが美味い
から、時間に余裕があるときはこっちまで足を運んでいるのだ。
今日は日曜日で、憲兵食堂は閉まっているのだ。つまり、購買で何かを買うか、外食するか
自炊するかなのだ。自炊でも良かったが、力仕事をした後に作るほど元気が無かった。
歩く元気はあったんだがな。
「お子様セットお待ちッ」
可愛い子供用のプレートにはミニチャーハンとプチから揚げ、小鉢にはラーメンが入った
子供用のセットが、弥生の前に置かれた。甘味亭は営業していたのだが、どうしても俺と
一緒に食事がしたい、とせがまれ、ラーメン屋まで一緒に来たのだ。
俺は弥生には悪いかもしれんが、コスパは最高のお子様メニューにしてもらうことにした。
店員も弥生が艦娘だということは知らなかったようで、見た目が子供なのもあって
問題なく注文が通った。
「池宮憲兵、多いですね」
「男ならこんなもんやで」
俺は来たラーメンの味付け卵を食し、スープを一口だけ含んで麺を一気にすする。
ずずずっ、という音を立てた俺の口元をじっと見つめる弥生。
「お前も食えよ」
そう言うと、弥生は少し困った顔をする。
「ラーメン・・・というものを、食べたことがないです」
あぁ、と思って俺は適当に説明していく。
「箸で麺を持つ」
「はい」
俺がやった通りに弥生も麺をつまみ上げる。箸の使い方は問題ないようだ。
「そんで、すする!ずずーっ」
「すする・・・ずずずっ」
二人同時にラーメンをすすっていく。弥生はすすり終わると、顔が柔らかくなる。
「美味しい、です」
「やろ?」
俺はスープが少しついた箸で弥生を指して、したり顔で話す。良い子の皆は箸で人を
指してはいけないぞ。
「炭酸飲料といい、癖になりそうです」
そう言って、弥生はどんどんとラーメンをすすっていく。あっという間にスープも完食し
プレートのチャーハンとから揚げもぺろりと食べ上げた。
「・・・・・・」
そして、食べ終わると、俺のラーメンをじーっと見つめている。
「食べるか?」
そういって、一回り以上大きいラーメン鉢を弥生のほうに持っていく。
それを見て目を輝かせながら、残りの麺を食べていった。
「これは、面白いことを知ったなぁ」
俺は嬉しそうにラーメンを頬張る弥生を見て、微笑ましくなってクスクスと笑っていた。
午後一時四十分。午後の仕事が始まった。
「絶対俺がやる仕事ちゃうでこれ」
まさかの買出しの仕事だった。こんなの憲兵にやらせるとかどうかしてるぜ!
食料は基本は鎮守府のほうに運送されるはずなのだが、今回は手違いで、食料の数が
足りなかったらしい。その足りない分を買って来い、という謎の仕事。
というかこれもうただの雑用だぞ。
だが、上の命令にはある程度は従わなきゃならないから、鎮守府にある軽トラを借り
俺は舞鶴の道を走る。
「憲兵も大変ですね」
「さすがに俺は特別やと思うでー」
「そうなんですか」
助手席には、シートベルトをした弥生が座っている。午後もついて行きたい
と言ってきたので仕事内容次第では断ろうと思ったが、これぐらいならいいだろうと
連れてきた。
「ひっさびさの運転やわー」
俺は一応運転免許は持っている。年齢が18になってちょっとしてから教習所に通い
免許を取った。初心者マークも外せる立派なドライバーだ。
まぁ、でも本業は単車のほうなんだけど。
「自動で動くんですね」
「完全自動やないけどな」
と、話しているときに、ウインカーをつけて曲がる。たどり着いた場所は、
「お豆腐屋・・・ですか?」
「せや」
俺と弥生は軽トラから降りて、正面から慣れたように入っていく。
俺の姿を見ては、気づいた人が一人。
「広樹か」
「よっ、おっちゃん」
エプロンをした背の高い中年男性、俺の叔父は豆腐作りの作業を一旦止め、奥に消えていく。
暫くしたら買い物籠二つ一杯につめられた豆乳と豆腐、油揚げがあった。
「持って行け。金はもうもらっとる」
「オッケー」
籠二つ受け取る。後ろに隠れているようにしていた弥生が、籠を貸してと言わんばかりに
無言で手を伸ばしてくる。
「その子は?」
叔父がそう尋ねてきた。弥生は籠を両手で持つと、少しふらふらしながら軽トラへ運んでいく。
「艦娘や」
「あんな小さい子もか?」
「せや」
そう言うと、叔父は少し考え込んでいる。
「見た感じ、うちの子と同じ・・・もしくは少し大きいぐらいだが」
「見た目はあーやけど、ちゃんと海で戦える子達やから」
そうか、と小声で呟く叔父。暫くして
「俺達は、あんな小さな子にも守られているんやな」
叔父はそう、息を大きく吸い込んで言った。
はっ、と思い出して叔父はまた奥に消えていき、小瓶二本持ってきた。
「持って行き」
それは栄養ドリンクの炭酸飲料。小さい頃はほんと好きでよく買ってもらったっけ。
「お前、好きやろ?」
「めっちゃ好き。センキュ」
ニシシ、と笑って俺はそれを受け取り、豆腐屋から出て行く。弥生が運んでくれた籠の
隣に俺の運んだ籠を積み、運転席に乗り込む。
「おっちゃんからの選別や」
冷たい小瓶を弥生に渡す。
「炭酸・・・飲料・・・!」
弥生は目を輝かせている。普段は無表情な彼女だが、好きなものを見たときの目は
何かかわいらしい。女の子っぽいよな。
「飲んでてええで」
弥生は静かに頷いた。俺はそのまま軽トラを発進させ、次の場所へ走った。
午後五時。買出しは終了し、食料たちは各食堂へ降ろし、仕事は終了した。
今日は夜の仕事もあるし、俺は早く帰って寝ることにした。
「んじゃ、そろそろ俺は帰るわ」
丁度憲兵寮と執務棟との分かれ道、そこで弥生と分かれることにした。
「池宮憲兵、今日は私のわがままに付き合ってくれて、ありがとう、ございました」
「ええよ、俺も弥生が手伝ってくれたり、隣にいてくれて一人よりかは断然助かったわ」
そう言うと、心半ば弥生は嬉しそうにする。が、表情は無表情のままだが。
「えっと」
弥生が何か言い出そうとする。だが、言葉が詰まっているのか、中々言い出せない。
そして暫くすると、やっと口が開く。
「六月十日、午前十時に、私の初進水が行われます」
そう言って、また弥生が言葉を止める。また少ししたら口を開く。
「よかったら・・・来てください」
そう言って、弥生は執務棟へ走っていった。俺はその姿を、静かに見守った。
「進水日かぁ」
俺は、空を見上げる。艦娘の初進水、ちょっと興味あるかもな。
「ただいまぁ」
「あ、お帰りなさ~い」
俺は憲兵寮の自分の部屋に戻る。夕張は部屋に居て、テレビゲームをしていた。
「なんや、ずっとゲームしてたんか?」
「うん。剣振ったら特にやることもなかったし、これ詰まってたしね」
そう言って、ゲーム画面に目を向けコントローラーをカチャカチャとさせる。
この前治療室でやっていたゲームだが、俺以上に進んでいるかも?
「もう少しでここもクリアだと思うんだけどなー」
そういいながらダンジョンを軽快に進んでいく。だが、そろそろ寝ないと夜起きられない。
「ほら、そろそろセーブポイントやろ?夜の仕事もあるし、そろそろ寝るで」
「あっ、そうね。わかった」
そう言って夕張は先にあったセーブポイントでセーブをし、電源を落とす。ちゃぶ台
を壁際に置き、布団を敷く。
「そういや、池宮さん今日は何してたの?」
布団を敷いているときに夕張が尋ねてくる。
「資材運びと、買出しや」
「な、何それ・・・」
あまりにも想像していなかった仕事内容に夕張は苦笑している。
「まぁ、思わぬ助っ人の登場で案外楽しかったわ」
「思わぬ助っ人?」
誰だろう、と夕張は頭を回転させ、うーん、と腕を組む。
俺はさっさと寝たいのもあったので、答えを口に出す。
「弥生や」
「弥生ちゃん?た、確かに意外」
最近建造された艦娘の名前が出てきて驚く夕張。だが、それ以上会話は広がることは無く
そのまま就寝体勢に入る。
「ほな、十一時までには起きてや」
「了解。おやすみなさい」
俺は部屋の電気を消す。そのまま眠りにつき、いつも通りに夜の仕事をこなしていくのだった。
ご閲覧ありがとうございました!今回も弥生話です。もうちょっと続きます。
弥生ちゃんは無感情ですが、心の中ではいろいろ思ってるキャラだと思ってます。
加賀さんは無表情キャラですが、あれとはまた違った感じで。分かりづらいですね、はい。
よかったら感想などどしどし受付中です!どんな感想でも返信します!!w
8/4 修正しました。