Demon's Stella ~悪魔の彗星~   作:Hershel

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キャラクター紹介(好きなもの、嫌いなもの。個人の意思も込められてます。)


池宮広樹
好きなもの:女、バイク、ゲーム、魚、トマトや!!
嫌いなもの:お化け、心霊現象ほんまあかんねんって!!

夕張
好きなもの:ゲーム、デュアルウェポン、機械弄り、メロンかなぁ。
嫌いなもの:特に無い・・・気がする。

弥生
好きなもの:炭酸飲料と・・・ラーメン、です。
嫌いなもの:まだよくわからない、です。

飯田武士
好きなもの:いっぱいありすぎて困るぜ。
嫌いなもの:探すほうが難しいな。

小室純
好きなもの:師匠ッ!!!!!!
嫌いなもの:師匠の嫌いなものッ!!!!!!

加賀
好きなもの:提督、弓。
嫌いなもの:三式弾。

日向
好きなもの:強いて言えば瑞雲だ。
嫌いなもの:特に考えたことが無いな・・・何か言ったほうが良いのか?

堀本健介
好きなもの:健康的な食事、効率的な戦略だ。
嫌いなもの:不健康な食事、非効率な戦略だ。

風見鈴
好きなもの:けんちゃんとか~、榛名とか~、いっぱいあるよね!
嫌いなもの:私、谷岡提督は嫌いッ!

谷岡礼司
好きなもの:数え切れなくて困るな。
嫌いなもの:五月蝿いハエ共は嫌いだ。


好きなもの:司令官・・・。
嫌いなもの:池宮広樹・・・!

筑摩
好きなもの:浅漬けとか好きですよ?美味しいですよね。あと美少女戦隊とか!
嫌いなもの:名前をわざと間違える人は嫌いですッ!


第二十一話 海の闘争

「・・・鎮守府から入電よ」

 

加賀さんがそう低いトーンで話す。多分いい話ではなさそうだ。

 

「駆逐艦《弥生》が大破。現在戦況は絶望的だそうよ」

「一刻の猶予も無い・・・といったところかな」

 

加賀さんと日向さんはあくまで冷静だった。これが経歴の差ってことなのかな。

私は正直、その報告を聞いて慌てていた。一刻も早くあの子の元に向かわなきゃって、

焦ってしまう。

 

「出来るだけ急ぎましょう」

 

加賀さんは私の表情を見て察したのか、今一番気の効くだろう言葉を私にかけてくれる。

その気遣いを察して、私は小さく頷く。

そして、進行方向に向かい、全速力で駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「ま、まずったなぁ・・・」

 

空母ヲ級。それは幾度も戦ってきた相手。ではあるが、自分がそれをまともに相手にしたことは

殆ど無かった。基本的には他に大型艦がいて、その艦娘のフォローに回る、もしくは雷撃戦

による攻撃でしか活躍したことがない。

砲撃戦では全くもって不利。詰んでいる装備の大きさが違いすぎる。

 

「滞空装備は一応詰んでるけど・・・」

 

望月は、中破になりつつも自身が詰んでいる《10cm連装高角砲》によって、敵艦載機の

迎撃をしている。ではあるものの、全く撃破数が足りていない。

小破した皐月は主に駆逐艦、軽巡洋艦の誘導、迎撃を行っている。幸い近海の深海凄艦

の錬度は低く、軽巡や駆逐艦程度なら私達一人でも迎撃できた。

だが、正規空母だけは別格だ。

 

「しかも・・・」

 

その裏には、重巡リ級も主砲を構えている。今の状態だと、艦載機の一撃ぐらいなら

まだしも、重巡の主砲を喰らえば確実に沈む。それだけは避けたい。

せめて、なんとか退路を見出して、撤退をしないと。

そう考えている内に、一つの艦載機が飛んで来る。

 

「舐めないでよ・・・ッ!!」

 

副砲である高角砲でその艦載機を打ち落とす。が・・・

 

「あっ・・・・・・」

 

その後ろにも艦載機。さらに・・・、一撃轟沈の可能性が高い、高威力の爆雷搭載の

艦載機。その爆雷が落とされる瞬間、思わず目を見開いて固まってしまう。

しかしとっさに、とある影が望月を突き飛ばす。

 

「ッ・・・!!」

 

海を駆けるがまま、その影、弥生は望月を突き飛ばす。望月は海面に尻餅をついて

飛ばされた元凶の方向へと振り向く。それを目にした瞬間、そこは爆雷により

大きな爆発音と共に、巨大な水しぶきを上げた。

水しぶきが晴れると、そこには、膝をつき、ぼろぼろになった弥生がいた。

 

「や、弥生!!」

 

思わず望月が叫んでしまう。その状態を見ると確実に大破は行っているだろうの

損傷具合。主砲の砲口は折れ曲がり、艤装のほぼ全てが破壊され、戦闘不能に近い状態。

海面に浮かぶのがやっとの状況である。

その姿は皐月からも見て取れたが、四隻の相手をしているため、手が出せない。

 

「だ、大丈夫・・・ですか・・・望月・・・」

 

頭から血を流し、ぎこちない顔つきでこちらを見つめる。その顔はあくまでも無表情では

あるものの一生懸命笑おうとしているのか、こめかみがヒクヒクとしている。

 

「だ、大丈夫かって・・・」

 

望月からすれば、それはこちらの台詞だといわんばかりに言葉を漏らす。

 

「大丈夫そう・・・ですね。よかった・・・」

 

そう言うと、少し弥生はふらつく。無理もない。

錬度を全く詰んでいない艦娘が、正規空母の爆雷を直撃したんだ。

轟沈していないだけ幸運だったと言える。

でも、これ以上はもう・・・絶望的だよ。せめて、援軍が来れば・・・。

 

「まだ、負けていませんよ」

 

そう、弥生は勢いづくように言葉を放つ。その眼は、ヲ級に向かって真っ直ぐ向いていた。

そして・・・

 

「あ、そうでした」

 

あっ、と思いついたかのように、弥生は艤装から何かを取り出そうとした。

殆ど壊れているため、たてつけも悪くなってしまうが、とある部分から、黄色い瓶を

取り出す。その物が無事だったことを喜んだのか、少し顔がほころんでいる。

 

「よかった・・・。無事だった」

「なに・・・それ・・・」

 

その手に取ったものを見て、望月は困惑した。

 

「炭酸飲料・・・」

「いや、分かってるよ!?今飲むの!?」

 

望月は疲れながらも鋭い突込みを入れる。それを聞いた弥生は静かに頷く。

そして、

 

    カシュッ・・・

 

あの人に教わったように、瓶の蓋を開ける。そして、その中の液体を一気に口内に入れる。

 

「ぷはぁ」

 

気の抜けた情けない声のような吐息を上げると、弥生は蓋を閉める。

 

「そうだよね、今飲むのは可笑しいよね」

 

あはは、と笑い飛ばす弥生。でも、その表情はどこか清清しい。

 

「でも、私は今飲みたいと思ったんです」

 

そう言って、望月のほうに目を向ける。

 

「多分、この海域の問題の模範解答は、上手くこの状況を打破し、撤退することだと

思います。ですが、このままだと交戦は続き、誰かが沈むことになるでしょう。

この状況まで追い込まれてしまったら、犠牲は免れません」

 

望月はそれを聞いて俯く。確かに、それが私も一番の最善の選択だと思っていた。

誰かが沈むのは悲しい。だが、それは最善の選択でもあり、悲しい選択だ。

誰かがこの場で・・・その《艦娘(ヒト)》が消えるのだから。

 

「ですが・・・」

 

弥生はそう言葉を続ける。

 

「私は、教科書に書かれたような、模範解答通りに進みたいとは思いません」

 

そう勢いづけて言葉を放った瞬間、手に持った瓶を勢いよくヲ級に向かって投げた。

それはヲ級の頭部の帽子のようなものに当たって砕ける。その瞬間、ヲ級の標的は

完全に弥生になった。

 

「ちょっと!何してるんだい、弥生!!」

 

ふぅ、とため息をつく弥生。それを見てあっけにとられる望月。彼女はこの状況、行動

が全く理解できなかった。

そして、ぼろぼろの身体になった弥生は、短く事を告げる。

 

「すいません、望月。少し遊んできます」

 

そう言って、ぼろぼろになった主砲を抱えて、弥生は全速力で海を走り出した。

それに続くように、ヲ級とリ級は後を追っていった。

 

「何してるんだよ!あの馬鹿!!!」

 

望月は自分らしくないと思いながら、情を込めて思いきり叫んだ。

だが、今彼女の戦いに参戦したところで、何かが出来るわけでもない。

望月は戸惑っていた。今まで予定通りに行ってきたこと全てが狂っていたから。

 

「どうしたら・・・いいんだろう・・・司令官・・・」

 

そう、海面に崩れた自分の顔を浮かび上がらせながら、呟いた。

 

 

 

 

 

 

数分後、会いも変わらず逃げ回っている弥生。それを追いかけるヲ級とリ級。

弥生は大破しつつも、相手の攻撃を殆ど避けきり、かなりの時間を稼いでいた。

艤装の破壊により砲雷撃戦はままならないものの、回避なら難なくできていた。

 

「これが炭酸飲料の力ですか。恐ろしいものです」

 

そう冗談交じりに独り言を呟く弥生。だがしかし、大破してからの機動力も大した

もので、航空母艦や重巡洋艦の攻撃さえ軽々とかわしていた。

 

「これはこれで、新しい発見・・・かもですね」

 

軽やかに相手の攻撃をかわしていく姿は、自分自身としても自信がつくほど。

だが、その自信は無残にも直ぐに砕かれる。

 

    ザバァン!!!

 

「えっ・・・」

 

進路先に、駆逐ハ級の姿が見える。そのハ級と私の進路上には・・・

 

「魚雷・・・ッ!!」

 

その存在に気づき、弥生は間一髪でかわす。だが、左足に直撃し、大きく転倒する。

 

「あっ・・・!がっ・・・!」

 

海面に転がり落ちる弥生。左足が熱くて動かない。

このハ級は、皐月が処理していたものが急に逃げ、弥生のほうに向かったものだ。

 

「あはは・・・」

 

弥生は思わず笑ってしまう。これはまずい。逃げ道を絶たれたら私の打つ手が無い。

 

「せめて・・・もう一回、飲みたかったな」

 

握った瓶の感触を思い出しながら、弥生は目を閉じた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

目を閉じた瞬間、いろいろなことが脳裏に浮かぶ。

初めて私が建造された時。

 

「君の名は、弥生だ」

「弥生・・・」

 

弥生(やよい)。》旧暦三月である名を、私は授かった。

私は、自分でも分かるほど、無愛想な人だった。正直、他の人と馴れ合ったりできるかは

不安だった。毎度毎度、相手のことを思って

 

「あ、気を使わなくていい・・・です」

 

これが決まり文句だった。この台詞で、余計に人が寄り付かなかった気がする。

でも・・・

 

「教科書の模範解答で、物事を捉えてたら、損やで」

 

そう、私には理解できないことを教えてくれた人が一人。その人は、

 

「オッケー。無理したらあかんで」

 

人間なのに、私のことをちゃんと心配してくれて

 

「缶開けれるか?」

「箸で麺を持つ。そんで、すする!ずずーっ」

 

人間なのに、他愛も無い日常を教えてくれて

 

「怪我だけはせんようになー!!」

 

人間なのに、私を見送ってくれて

 

 

人間・・・なのに・・・

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「あははっ」

 

思わず眼を瞑りながら笑ってしまった。考えたらおかしな話だ。

 

「なんで・・・あんなに気を遣ってくれたんでしょう」

 

気を使わなくていい・・・って言ったのに。あの人は気を遣ってくれてた気がする。

でも、そんな気遣いも、もう・・・

 

「気を遣わなくて・・・いいのに・・・」

 

うっすらと、血の滲んだ涙が、海面に堕ちる。そして、その涙に写ったのは、敵艦載機。

 

 

 

 

「今度は・・・平和になった世界で、会いたいな」

 

そうぼそりと呟いて。弥生は手でそっと、顔を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

    ブォォォオオン!!!

 

鎮守府方向から。数隻の艦載機が飛んでくる。その艦載機から放たれる弾丸は

敵の漆黒の艦載機を打ち落としていく。

 

「えっ・・・」

 

自分の死が訪れないことに疑問を抱くと、弥生は眼を見開き、その光景を目にした。

その艦載機は、そのままヲ級を攻撃し、けん制する。しかし、リ級はこちらに主砲を

構えたまま。砲弾が放たれようとしたそのとき、

 

「はあああああああああああっ!!!!!」

 

    ズドォォォオオン!!ズドォォン!!

 

鎮守府方向から放たれた砲撃二発は、重巡洋艦であるリ級に直撃した。

相手の艤装は砕け、今にも崩れ落ちそうな状態にまで追い詰めた。

 

「どう?私の主砲、20.3cm連装砲の威力は!!」

 

主砲を構えた夕張は、満足そうに高らかに叫んだ。

 

「ま、まぁ・・・ちょっと重いけど」

 

あはは~、と少し汗をたらして弱みを漏らした。

そして、その背後から、もう一発、一回り大きな砲撃が飛んできた。

それもリ級に直撃し、その一撃でリ級は力尽き、海深くへと沈んでいった。

 

「41cm連装砲だ。命中には難有だがな」

「み、味方に当てないでくださいよ~!?」

 

夕張はその威力に震えてしまう。自分が当たってしまったら堪らないからだ。

全く予想していなかったこの状況に、思わず弥生は眼を見開いてしまう。

そして、夕張はそのまま、弥生に近づいてきた。そして、

 

「もう大丈夫よ」

 

手を差し伸べてくれた。その手はまるで、太陽のようで、私の顔を明るく照らしてくれた。

 

「・・・っ・・・!!」

 

弥生は思わず泣いてしまった。

 

「わ、わわっ!どどど、どうしたの!?弥生ちゃん!?」

 

泣き顔を見てしまった夕張は慌ててしまって、あたふたしだした。その姿を見て

くすくすと笑ってしまう日向。後から加賀も合流し、

 

「戦闘は任せなさい」

「私達が、軽くひねり潰してやろう」

 

心強い台詞と声を聞き、夕張は強く頷く。

 

「お願いします!」

 

夕張は、何とか弥生を泣き止ませ、肩を貸しながら望月のところまで向かった。

 

「大丈夫!?望月ちゃん!」

 

望月の状態を確認して、声をかけた。顔を上げた望月は、夕張の顔を見て綻んだ。

 

「夕張さん・・・よかった、助けに来てくれたんだねー」

「うん、もう大丈夫だからね」

 

よしよし、と夕張は弱った望月の頭を撫でてあげる。

それから、弥生のほうを見ると、

 

「あっ・・・」

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

眠っていた。気を張りすぎて、それが解けた瞬間気が抜けたのだろうか。

 

「弥生は、私を庇ってくれたんだ」

 

そう、望月は罪深く、重く言った。

 

「そっか」

 

夕張はそう、短く答えた。そして

 

「優しいんだね、弥生ちゃん」

 

そう言って、望月に笑顔を向けた。その笑顔を見て、望月も笑った。

 

「そうだね、すっごく優しい」

 

戦闘中だということを忘れているかのように、その空間は、笑顔に包まれていた。

 

 

 

 

 

「助太刀するわ」

 

そう言って弓を引き、数隻の艦載機を飛ばして、ハ級とホ級一隻ずつ沈めた。

その勇敢な姿を見て、皐月は目を輝かせた。

 

「加賀さん!かっこいい!!」

 

尊敬の眼差しで加賀は見つめられる。少し照れているのか、髪の毛を弄繰り回している。

 

「慢心しては駄目。まだ二隻残っている」

 

先ほど弥生が攻撃されたハ級と、もう一隻のホ級が残っている。

 

「これくらいなら、僕と加賀さんなら楽勝さ!」

「ふふっ、そうですね」

 

そう勢いづいた皐月は、素早く相手の懐までもぐりこみ、砲撃を放つ。

その直撃を喰らったハ級は、そのまま海に沈む。

 

「沈みなさい」

 

ホ級の周りには、加賀の放った艦載機が取り囲んでいる。

加賀の合図で一斉射撃が始まり、ホ級は蜂の巣になると共に、海にゆっくり沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

「航空母艦か。相手にとって不足は無いな」

 

ヲ級は、ぎらぎらと揺らめく深海の瞳を日向に向ける。その瞳に応えるかのように

日向はニヤリと笑う。彼女の艤装が、ギギギと金属音と共に、主砲がヲ級に向けられる。

しかし、艦載機が上空から日向に向かって突進してきた。

 

「無駄だ」

 

主砲から一つの砲弾が、宙に放たれる。それは宙で爆散し、敵艦載機を次々と破壊していく。

そして、ヲ級の放った艦載機は全て打ち落とされる。

 

「航空戦艦の力、思い知れッ!!」

 

主砲から砲撃が放たれる。それはヲ級に直撃し、爆散する。爆風が巻き起こり、それが

収まった頃には、ヲ級の姿は跡形も無く消えていた。

 

「まぁ、こんなものか」

 

手を払い、仕事を終えた日向は、仲間の下に駆けつけた。

 

 

 

 

 

 

「敵艦、全て撃破しました!!」

 

大淀は戦況を読み取ると、声を上げて状況を報告した。その顔は、安堵の表情。

 

「よし、皆よくやった!!!」

 

小室提督はその場でグッ、と拳を握り締める。

 

「轟沈された艦娘はなし!全員無事です!!」

「そうか、よかった・・・!」

 

小室提督は、気が抜けて近くの椅子に座り込んだ。

 

「ふふっ、お疲れ様です。小室提督」

「ほんと、ひやひやしたよ・・・」

 

あはは、と笑っている大淀。そして、艦娘達に電信を送る。

 

「聞こえますか!?皆さん!ご無事で何よりです!近くの深海凄艦の撃破が

確認されました!気をつけてに帰投してください!」

 

 

 

 

 

 

 

大淀からの入電を確認したら、艦娘達は帰投するため帰路に着いた。

弥生は夕張が肩を貸し、水上を走った。

そして鎮守府まで戻ると、艦娘や人間達から暖かい出迎えがあった。

 

「よく帰ってきたな~!!」

「おかえり!無事でよかったよ~!!」

「艦娘に敬礼!!」

 

言葉が飛び交っている。皆言うことはバラバラであるが、艦娘達の帰投を心から

喜んでいるのは同じだ。とりあえず傷が浅い夕張、加賀、日向、皐月の四人が手を振った。

 

 

 

 

 

「何とか帰れたね~!」

 

皐月は艤装を外し、ぴょんとその場で飛んだ。負傷した望月は、腕を抱えてそのまま

入渠するため、船渠へ向かう。

 

「風呂入って来るねー」

 

そう言って望月は手をひらひらと振り、その場を後にした。

 

「しっかり治して来るんだよ~!」

 

皐月はぶんぶんと大きく手を振った。そして、その視線はその後夕張達に向けられる。

 

「この度は、本当にありがとうございました!」

 

皐月は勢いよく頭を下げる。その姿を見て、夕張達は優しく微笑む。

 

「どういたしまして!貴女達が無事で良かったわ」

「えぇ。本当に間に合ってよかったわ」

 

夕張と加賀は皐月の頭をぽんと叩く。皐月は少し照れ笑いをする。

 

「あ、そうだ。この子・・・」

 

肩にもたれかかった子、弥生を夕張は見る。

 

「出血があるから、一度治療室に連れて行ったほうがいいわね」

 

加賀が弥生の状態を見ながらそう見解する。それに同意したのか、夕張が頷く。

 

「それじゃ、私が連れて行きますね」

「えぇ、お願い」

「後の処理は任せてくれ」

 

加賀は薄く微笑んで、日向は任せろ、と言わんばかりに胸をドン、と叩く。

 

「お願いします!」

 

夕張は頭を下げて、執務棟にある治療室へ、弥生を連れて向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、出血はもう止まりました」

「そうですか、よかった・・・」

 

医者の適切な処置により、弥生は大事には至らなかった。

出血も止まり、後は海戦での疲労や傷を癒すために、入渠するだけだ。

 

「連れて行ってやるといい」

「はい!」

 

私は、弥生ちゃんを負ぶって船渠に向かった。

 

 

 

 

 

「・・・あっ」

 

湯煙が浴場を包んでいる中、弥生は目を覚ます。ここは船渠。

艦娘は海戦での深海凄艦での戦闘の傷は、この船渠の大浴場で傷を癒す。

この浴場は特別仕様らしく、海戦での傷は、この湯で癒すことが可能だそうだ。

ただし、人間には効能が無いらしく基本は艦娘専用である。であるため、

女湯しか存在しない。

そして、目を覚ました弥生の顔を私は覗き込む。

 

「あ、目が覚めた?」

 

私は特に怪我が無かったものの、弥生ちゃんの付き添いで一緒に入渠することにした。

船渠は比較的空いていたため、私の入る場所もあったからだけど。

 

「ここは・・・」

「舞鶴鎮守府の船渠よ」

 

まだぼーっとしている弥生ちゃん。辺りを見渡して、その光景を何度も確認している。

 

「確かに、船渠です」

 

こくり、と小さく頷く。その姿を見て、私はくすりと笑う。

 

「よく頑張ったわね、弥生ちゃん」

 

私は弥生ちゃんを抱き寄せて、優しく撫でる。その抱擁に、弥生は身を任せていた。

 

「あ、あの」

 

不意に、弥生ちゃんが声を上げた。何?と言う私。

 

「望月達は・・・無事ですか?」

 

自分と一緒に出撃した艦娘のことを心配する。

 

「大丈夫だよー」

 

声が、大浴場から聞こえてきた。

 

「あたしがこんなとこでくたばるわけないじゃんー」

「僕も無事だよ~!」

 

気だるそうな声と、快活な声が聞こえてきた。その声を聞いて、弥生は胸をなでおろす。

だが、少し気になっていたことがあった。何故、あの状況で援軍が来たのか。

司令官に電信を送った。が、何故か繋がらなかったのだ。

故意的な電波障害をされたのか、もしくは司令官が出られないような状況だったのか。

弥生はそんなことを頭にめぐらせていた。

 

「大淀さんが、一応そういう管理をしていたからね」

 

大淀さん。確か情報管理を主とする艦娘だったっけか、と弥生は思い出す。

 

「でも、指示してくれたのは小室提督よ。後で挨拶しとくのよ」

「は、はい」

 

小室提督。その人が、弥生のことを救ってくれた恩人なのかな。

そう考えていて、錬度の低い弥生は望月達より早く入渠を終わらせた。

 

 

 

 

 

「小室提督、いらっしゃいますか?」

 

小さな声が、扉の奥から発される。弥生は小室提督の執務室の前まで来た。

 

「入ってくれ」

 

そう短く小室提督は答えた。扉を静かに開け、執務室の中に入る。

 

「弥生か。もう大丈夫なのか?」

「はい」

 

弥生も少し固まっているのか、少々ぎこちない感じで話す。

 

「ははっ、そう緊張しなくていい。楽にしてくれ」

「はい・・・」

 

弥生は返事だけをすます。少しして、弥生は再度口を開く。

 

「この度は、助けていただき、ありがとうございました」

 

頭を下げる。その姿を見て小室提督は少しだけ慌てる。

 

「そんな、顔を上げてくれ弥生」

「いえ、弥生が今この鎮守府に立てているのは、的確な処理をしてくれた小室提督

のお陰です」

 

頭は一向に上げない。困ったなぁ、と言う感じで小室提督は頭を掻く。

 

「いや、実は私も反省しなければならないところはあるんだ」

 

そう言われ、えっと驚く表情を浮かべる弥生。

 

「確かに加賀さんたち艦娘を指揮したのは私だ。しかし・・・」

 

そう少し溜め込んで、弥生の眼をしっかり見つめて言葉を放つ。

 

「一番早くその異常に気がついたのは、池宮憲兵なんだ」

「えっ・・・!」

 

池宮憲兵。それは私もよく知ってる人。

私が最後だと感じた時に脳裏に浮かんが人間。それが池宮憲兵。

あの人は、私の自分の価値感を改めて見直す機会を与えてくれた人。

人間なのに、私達兵器をしっかり命として見てくれる人。

そんな人に、私は自然と惹かれていた。そんな人だからこそ、私は・・・

 

「・・・嬉しい」

 

そう呟いてしまう。その言葉を聞いて、小室提督も小さく微笑んだ。

 

「あの人が・・・助けてくれたんだ・・・」

 

弥生の口角が自然と上がる。嬉しい。心の底から嬉しい。

自分が好意を寄せる人が助けてくれたんだ。やっぱり、あの人は凄い人なんだ。

それを再確認させてくれた瞬間だった。

 

「あの、池宮憲兵は何処に・・・」

 

あまりの高揚感についその居場所を小室提督に尋ねてしまう。ハッと我に返り謝ろうと

するが、それを小室提督が止めてくれる。

 

「彼はきっと・・・自分の部屋に戻ってるんじゃないかな」

 

それを聞くと、ありがとうございました。と言って頭を下げ、執務室を後にする。

その後姿を見て、小室提督は小さく呟く。

 

「ほんと、師匠は凄い人っす」

 

ニコニコ笑って、小室提督は改めて、自分の師匠である人の偉大さをかみ締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

憲兵寮を訪れた弥生。だが、部屋は思った以上に多くて何処の部屋が池宮憲兵の部屋か

分からなかった。

 

「むむむ・・・」

 

困った表情で周りを見渡す。廊下には人の姿もあまりなく、艦娘の弥生を見てしまうと

敬礼をして道を譲る人が大半。やはり、立場上はこうなるらしい。

 

「困りました」

 

そう、小さく呟いていると一人の憲兵が話しかけてくれた。

 

「お困りですか?」

 

視線を弥生に合わせてくれる男の憲兵。弥生は話しかけてくれた憲兵に尋ねてみた。

 

「池宮憲兵の部屋・・・ご存知ですか?」

 

少し小さな声でそう尋ねると、やっぱりかと言わんばかりに微笑む。

 

「こっちですよ、ついてきてください」

 

憲兵は立ち上がって、階段を上って廊下を歩いていく。それに弥生はとてとてと付いていく。

そして、池宮憲兵の部屋の扉までたどり着く。

 

「ここですよ」

 

少し古びた扉の前まで、弥生を送り届ける。

 

「あ、ありがとうございます・・・」

「いえいえ、お安い御用ですよ!」

 

では、これで。と敬礼して、男憲兵は立ち去っていった。

弥生はその憲兵に頭を下げた。そして、扉に向きなおす。そして、軽く扉を叩く。

 

「ん~、空いてるで~」

 

あの人の声が聞こえてきた。それを聞いて安心して、弥生は扉を開ける。

その部屋の中には、調理をしているエプロン姿の池宮憲兵の姿があった。

来客に目をやると、最近よく見る小さな艦娘が目に入り、一旦火を止めてその子の

傍まで向かった

 

「おぉ、弥生やんけ!!もう大丈夫なんか?」

 

弥生の目線にあわせるように池宮憲兵はしゃがんだ。その姿を見て、弥生は思わず

抱きついてしまう。

 

「お、おい弥生、どないしたんや?」

 

弥生は涙ぐんでいた。それを察した池宮憲兵は、弥生の背中を優しく摩ってあげた。

 

「ありがとうございます・・・池宮憲兵」

 

感謝の言葉が飛んできた。池宮憲兵はそれに静かに頷く。

 

「弥生は・・・貴女に二度も救われました」

 

涙ぐみながらそう言葉を続けていく。言葉一つ一つに、池宮憲兵は頷いている。

 

「ご恩は一生・・・忘れません・・・っ!!」

 

さらに涙腺が崩壊していく。顔がどんどん崩れていき、次第に涙がエプロンに滲んでいく。

 

「ほんとうに・・・ありが・・・うっ・・・」

 

そして、完全に崩壊した。

 

「うわあああああああん!!!!」

「おーよしよし、よー頑張ったな、弥生」

 

子供のように泣き叫ぶ弥生に、池宮憲兵は優しく、ずっと背中を摩り続けてくれていた。

 

 

 

 




閲覧ありがとうございます!お気に入り登録45件突破ありがとうございます!
たくさんの人に読んでいただき光栄です!

今回で一旦海上の戦闘は終わりです。かなり不安定な文章になってるかもしれませんが、温かく見守ってあげてください。
感想待ってます!けなしてくれてもいいんで何でも返信しますw
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