Demon's Stella ~悪魔の彗星~   作:Hershel

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設定紹介


艤装
艦娘のみが装備することのできる海で戦う装備。実際の軍艦に使われていた装備を艦娘用に
作り変えられた形で使用することが出来、現在深海凄艦に対抗することのできる唯一の手段。
艤装を装備した艦娘は、人間を超越した腕力を手にすることが出来る。
海の上を走る機能も艤装には備わっており、艤装が完全に機能停止すると、艦娘は艤装の
重みによって深海へと引きずり込まれ、轟沈という扱いになる。
もちろん艦娘は深海で生存することは出来ず、人間の死の概念としては「窒息死」扱い
となる・・・らしい。しかし、轟沈した艦娘を回収した者はおらず、艦娘のその後を知るも
のは報告嬢では存在しない。


第二十二話 月、溶け込む

「・・・んっ」

 

弥生は見上げると、見慣れない天井に少々困惑していた。

弥生の住む寮の部屋の天井より古びた木の板が張り巡らされて、小さな電灯で部屋が

照らされている。そして、意識が段々と取り戻されていくとき、鼻から匂いを感じ取った。

そして、小さな窓から差し込まれる光が弥生を照らす。

 

「あっ・・・」

 

六月十一日(木)午前七時。天気は晴れ。

池宮憲兵は部屋のキッチンで朝食の支度をしていた。弥生の寝ていたところは薄い敷布団

と使い古された掛け布団がしかれていた。その隣では、すーすーと寝息を立てている

夕張さんがいた。

 

「お、おはよう・・・ございます」

 

弥生はそう小さく呟いて、布団を下半身にかぶりながら頭を下げて挨拶する。

池宮憲兵は、こちらには向かずにおう、おはよ、と返事してくれる。

 

「えっと・・・私はどうしたんでしょう」

 

自分がこの部屋にたどり着いて、池宮憲兵に礼を言った後、何も覚えていない。

何故か気がついたら朝になってて、何故か池宮憲兵の部屋で寝ていたのだ。

 

「あのまま寝たんや。ほんま疲れてたんやろな」

「そうなん・・・ですか。ご迷惑をおかけしました」

「気にせんでええよ」

 

申し訳なさそうに俯く弥生に、気にしてない、と彼女の負担を軽くしてくれる

言葉を発する。

 

「飯食おか。夕張起こしたって」

「あ、はい」

 

隣で寝息を立てる夕張さんを軽く揺する弥生。もうたべれないよ~・・・と幸せそうな

寝言を立てる夕張に対して

 

「これから食べるんですよ・・・」

 

少し困った表情をしながら弥生は夕張さんを揺すり続ける。その姿を見て池宮憲兵は

けらけらと笑い飛ばしていた。

 

「ゆさ、ゆさ」

 

弥生がずっと揺らしていると、夕張さんを揺らし続けていると、うっすらと目を開ける。

 

「んっ・・・弥生ちゃん・・・?」

「おはよう、ございます」

 

目をごしごし擦って身体を起こす夕張さん。寝起き悪いです。

 

「あ、池宮さん。昨晩は夜のほう手伝えなくてごめんなさい」

「気にせんでええよ、久々に海で疲れたんやろ」

 

そう言って、皿に盛った料理を持ってくる池宮さん。

 

「弥生、ちゃぶ台出して」

「はい」

 

弥生は壁に立てかけられたちゃぶ台を部屋の真ん中に置く。片付いていない布団を踏んで

しまい、夕張さんは急いで布団を引っ込める。

 

「もう食材なくなってきたから、そろそろ買いにいかなな」

「休みもらえるといいんだけどね」

 

夕張さんが横槍を入れると、池宮憲兵はため息をこぼす。弥生的には池宮憲兵はずっと

働いてるイメージなので、少しは休んでほしいです。

 

「・・・あっ」

 

弥生は、池宮憲兵の腕に少し赤くにじんだ腕の包帯を見て思わず声を漏らしてしまう。

 

「腕・・・どうしたんですか?」

 

思わず腕を指差してしまう。池宮憲兵はその包帯を摩ってはにこやかにしてる。

 

「犬に噛まれたんや」

 

そう言っては笑い飛ばしてる。

 

「そう、ですか」

 

これ以上言及しないことにした。

 

「んじゃ、手を合わせるんや」

「?」

 

手を合わせる、弥生にはその行動が理解不能でした。

 

「食べる前には、食材に感謝するって意味で、手を合わせてな。いただきます。

って言うんや」

「おぉ、なるほどです」

 

食材の命に感謝するんですね。弥生はまた一つ賢くなりました。

そして、皆で手を合わせて、

 

「「「いただきます」」」

 

池宮憲兵が調理した命を有難く食した。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁああああ!!???」

「五月蝿い。もう少し静かに出来ないのか」

 

俺と弥生は、谷岡提督に呼び出されて彼の執務室に来ていた。

憎い野郎だけど、こいつが実質この鎮守府の最高責任者で、国の最高機関に一番近い

距離で連絡を取れる人なんだ。

それで、最近の現状を書類に纏め、国に提出したらしいが・・・。

 

「お前関連の書類に、お国が興味津々でな」

 

そう言って谷岡提督は苦笑する。苦笑している中、俺は渡された書面を見ては

開いた口が塞がらない。弥生は俺の顔を見ては首を傾げている。

 

    駆逐艦 《弥生》

     本日六月十一日(木)一○〇〇にて、

     池宮広樹憲兵の専属艦娘へ転属とする。

     なお、先の軽巡洋艦《夕張》の処遇と同じものとする。

 

「安心しろ、弥生の提督からの承諾は貰っている」

 

ん~?そういう問題じゃないと思うんだな。

 

「むしろ、しっかり鍛えてやってくれ。とのことだ」

「はぁ・・・」

 

俺はもうため息しか出なかった。同じ処遇ってことは、またあの狭い部屋に人が増えるのか。

夕張と一緒に住んでいて、経済的にも、精神的にも最初はどうなることかと思った

けど、何とかなってる。弥生を居座らせることは精神的には別に問題はない・・・

と思うが。

 

「経済状況が困難やねんって・・・」

 

小言のように俯きながら呟く。さすがに三人になると、食費やらが馬鹿にならない。

今までは飯田のスネをかじったりしながらも何とか食べてきたが、飯田は最近留守にしがち。

いろいろ思う所はあるが、あえてここではこれ以上考えないようにしておこう。

 

「大変ですねぇ・・・池宮憲兵」

「人事やからって好き放題言いやがって・・・!」

「人事ですから・・・ね」

 

谷岡提督の傍にいた艦娘、霰と筑摩が茶々を入れる。俺はそれに反論するも特に

言葉が出てこなかった。

 

「はぁ・・・もう帰っていいっすか?」

「あぁ、下がっていいぞ」

 

失礼しまーすと、脱力して敬礼しては俺は執務室から出る。

遅れて弥生も敬礼し、俺の後ろをついて来る。

 

「池宮憲兵、これからよろしくお願いします」

 

廊下で歩きながらぺこり、とお辞儀する弥生。俺はその姿を横目で見て軽く頷く。

 

「ん、よろしく」

 

もう項垂れていても仕方ないと思い、俺はグッと目を瞑って顔を引き締め、前を向いた。

弥生が俺の元に配属になったのは、多分半分ぐらいは国の好奇心もあると思う。

実際提督以外が今まで艦娘とここまでの交流を築くことはなかっただろう。

交流程度なら興味が沸いた程度なのだろうが、俺に関しては一緒に生活しては

しかもそのバランスまで成り立っている。

提督ではない、純粋な人間の環境で艦娘達が育っていくと、どうなるか。

そんなことを思って俺に一目置いているとか。まぁ、全部谷岡提督から聞いた話だけど。

あと、弥生が俺の元に配属されたもう一つ理由がある。

 

「そんな艤装って修理に時間かかるんか?」

 

先の海戦で、艤装が大破した際、かなりの損傷だったそうだ。錬度の低い艦娘が

正規空母の攻撃をモロに受けた。艦娘に関してはあまり分からないが、加賀さんが正規空母

ってことは知っていたから、あの艦載機の攻撃が直撃したんだろう。

錬度って意味も若干わからないが、あるとないで生存率などが全く違うらしい。

 

「はい。最低でも一ヶ月はかかるらしい・・・です」

「一ヶ月は海に出られへんってことやな」

 

そう、一ヶ月は艦娘としての任務を果たせなくなってしまったのだ。

それもあってか、生まれたての彼女にいろいろ教えてやってくれと。

それがまたもう一つの理由である。

 

「いきなり災難やったなぁ」

「そう・・・ですね」

 

だが、その言葉とは裏腹に弥生は少し顔がほころんでいた気がする。

いや、でもやっぱ今見たら無表情だ。う~ん、この子は本当に顔に出にくいタイプだな。

 

 

 

 

 

 

「はぁぁああああッ!!」

 

    ガキィィン!!

 

金属同士がぶつかり合う音がその場に響き渡る。青年憲兵の手に握られていた刀は宙に

舞い、演武場の地にカラン、と音を立てて落ちる。

 

「勝負あり!」

 

おおおおおおお!!!と歓声が鳴り響く。午後の仕事は憲兵演習。夕張は剣がある程度

使えるようになったこともあり、今日からこの演習に参加することになった。

と、その初日にいきなり稽古相手を圧倒してしまい、思わず沸きあがっている・・・と

いった状況だ。

 

「すごいです・・・」

 

それを観戦していた弥生も思わず、感嘆のあまり手を叩いてしまう。

 

「まぁ、これぐらいなら楽勝やろな」

 

俺は夕張の戦闘している姿を見つめながらそう呟く。確かにこの短期間で

彼女の剣はかなり上達した。正直俺もここまで上達するとは思っても見なかった。

 

「やけど・・・」

 

雷を纏った剣技や、魔導弾を放てること。つまり、俺が教える前に雷の魔導術が

使えるようになってること。それだけは今でも疑問に思えてくる。

 

「ん~、全然思い当たらん」

「池宮憲兵・・・?」

 

弥生が俺の顔を覗き込んでくる。

 

「あぁ、すまんすまん。次は俺やな」

 

俺は腕をぶんぶんと回すように、演武場に上がっていく。

 

「よろしくな、池宮憲兵」

「おう、お互い頑張ろーや」

 

相手憲兵が刀を構えて、俺も蛇矛を構える。正直相手にとっては捨て試合ではあるものの

本気でかからないと訓練にならないからって皆真面目に戦ってくれる。

そこはあり難かった。だからある程度は俺も力を奮えるってもんだ。

 

 

 

「そこまで!」

 

上官の図太い声が聞こえてきた。俺は相手憲兵の元まで駆けつけて手を差し伸べる。

 

「お疲れや」

「ははっ、ありがと」

 

俺の手を握り返した相手憲兵は起き上がって刀を拾い上げ、演武場を降りる。

俺も降りて夕張と弥生の元へ戻る。

 

「やっぱすごいねー、池宮さん」

「強い・・・です」

「どや、舐めとったらあかんで」

 

俺は胸を思いっきり張って上機嫌になる。その姿を見ては夕張はくすくすと笑っている。

 

「まぁ、この程度でくたばってたら世話無いからな」

 

俺はそう、小声で呟く。弥生は聞き取れていなかったのか、首を傾げている。

稽古が終わると、ダウンの基礎トレーニングを済ませ、今日の仕事を終えた。

 

 

 

 

 

 

部屋に帰ってはいつものように食事を済ませ、深夜前まで就寝。

いつもより多めに作った夕飯は、無慈悲にも冷蔵庫の食事を枯渇させていく。

その光景を見ては大きなため息をつく俺、何故落ち込んでるか分からずそれを宥める弥生

その何気ない、そして今まで異常に賑やかになった光景が微笑ましくなり

つい微笑んでしまう夕張がいた。

 




閲覧ありがとうございます!今回はかなり短め・・・というか短いですが投稿します。
急展開な気がしていますが、どんどんこの先で穴埋めしていきたいと思います。
実はこういう何気ない日常が一番筆が進まないんですよね・・・。

47お気に入りありがとうございます!
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