Demon's Stella ~悪魔の彗星~ 作:Hershel
魔導術の《
魔導術には導力という術の源が存在する。RPGのマナとかと全く同じと考えてもらっていいが
世界に存在するのではなく、血液のように人間の体内で精製されて運用していくもの。
普段生活する分では導力を使用することはない。
導力は、導脈という血管のようなものが全身に張り巡らされており、それを通って循環している。
この循環が早い生命ほど、魔導術に長けていると言われている。
魔導術は外的因子(薬など)によって補充、もしくは精製促進が可能ではある。
六月十三日(日)午前八時。
今日は午前中は仕事がなく、短い休暇を与えてもらった。この機会を機に、俺は頭の隅
に置かれた疑問点を解消しようとしていた。
「属性鑑定?」
夕張と弥生は、ちゃぶ台の前でちょこんと正座をしては首を傾げる。
属性診断とは、魔導術の一種であるが、これは攻撃するものでも支援するものでもなく
ただ単に相手の潜在属性を読み取るといったものである。
夕張が自然と魔導術を使いこなせていることがあまりにも疑問だったため、いつかは
やっておきたいと思っていた。
「せや。簡単に言えば《潜在属性》を鑑定できるんや」
「あ、それ前言ってたやつだよね」
いつぞやした魔導術の話を夕張は思い出し、思わず手を合わせて合点といった表情をする。
弥生は首を傾げたまま動かない。
「あー、せやな。弥生にはまだ話してなかったな」
「池宮憲兵が使う、雷とか炎とか・・・ですか?」
「せやせや」
指先でジェスチャーしながら話す弥生に、俺はうんうんと頷く。
「普通は、生命一つ一つに備わってる潜在属性に乗っ取って魔導術が使えるんや。
お前らの潜在属性を鑑定することでどんな魔導術が使えるか分かるんやで。
弥生、お前も例外やないからな」
単純に説明してあげた。弥生はなるほど、と言っては頷き続けている。
が、あ。と言ったような顔つきになっては口を開けては手を挙げる。
「でも池宮憲兵は色々な属性を多用してますよね?」
「俺は特別や。あんま参考にせん方がええ」
また弥生は首を傾げてしまう。う~ん、といった声をこぼして。
「というわけや。でも、無理にやらせるのもあれやしな。やってもいいかはお前らで決め」
そう言っては俺は黙り込む。少し考えるようにしていた二人だったが、先に言葉を
発したのは夕張だった。
「私はやるわ」
夕張はそう言って頷く。横目で見ていた弥生もそのあとに続いて
「やります・・・」
こくこくと頷く。その姿を見て、俺は少し顔がほころぶ。
「分かった」
そう言って、俺は卑しい表情に変わる。
「んじゃ、脱げ」
そう言うと、その場は硬直した。
「・・・はい?」
「聞こえへんかったんか?脱げや」
夕張は眉間にしわを寄せて納得のいかない様子でいた。しかしその隣では着々と服を
脱ぎ捨てる弥生の姿。
「や、弥生ちゃん!?」
「脱げ・・・って言われたんで」
「な、なんて素直な子なの・・・!」
夕張はその素直さに感嘆したと同時に、危険を感じるようにもなってきた。
「弥生。別に下着までは脱がんでええで。あと下も脱がんでええ」
「あ、そうなんですか」
弥生はそう言われると、スカートのホックを外そうとしていた手を休め、上の服を脱ぎ
下着姿になった状態で、また同じように正座をして待機する。
「せめて、理由を教えてよ」
夕張はまだ納得がいかない様子。俺は小さくため息をついて口を開く。
「えっとな、属性鑑定の結果は背中に出るんや。鑑定用の魔導術を流し込んで、全身循環
したら最終的に背中に凝集されてその凝集された形や色から判別するんや」
「ふむふむ」
夕張はまじめに聞いている。だが、少し気になる点もある。
「それじゃ別に背中じゃなくて他の所でもいいんじゃないの?」
腕とかなら裸にならなくてもいいし、と夕張は付け足す。
「腕と脚、顔はあかんねん。人の身体で魔導術が干渉しやすい部位やからな。
後遺症が残るかもしれんわ」
「そ、そんな危険があるんだ・・・」
夕張はその話を聞くと、背中っていうのに納得せざるを得なかった。
「まぁ、お前らが希望するんやったら、おっぱいでもええんやで?まぁ元から乳ないし
俺程度に見られてもそんなにグベェッ!!」
「無くて悪かったわね!!!」
俺の言葉を遮るように夕張は俺の顔をぴっぱたくことによって制止させた。
その姿を見て、弥生はおー、と感嘆の声をあげながら拍手をしている。
「っつー。まぁ、そーゆーことや。やからお前も脱げ」
「っ・・・分かったわよ」
「あんまりジロジロ見ないでよね!あと、後ろ向いてて!」
「へいへい」
俺はくるりと半回転して夕張に背を向けた。ガサゴソと服を脱ぐ音が俺の脳内を刺激
させる。だが、その至福のひと時はあっという間に終わる。
「はい、終わったわよ」
少し恥ずかしそうに上半身下着状態になった夕張。そのまま弥生の隣に正座をする。
「オッケー。んじゃまず弥生からな」
俺は立ち上がり、弥生の背中まで回り込んで座る。その一言を聞いて思わず夕張は
立ち上がる。
「って!それじゃ私今脱ぐ必要なかったじゃない!」
「ええやんけ。後から躊躇われても面倒やねん」
がみがみ怒る夕張を俺は適当にあしらう。そして、俺は精神を集中させ、そっと掌を
弥生の手に当てる。手の感触に反応したのか、弥生の身体はビクッと震えた。
「少し我慢してるんやで」
「・・・はい」
そう小さく呟いて、弥生は静かに目を閉じた。俺は魔導術を唱え、掌から弥生の身体へと
術を流し込む。弥生は全身に冷水が流れるような感覚に陥る。俺は掌を離し、ふぅと
一呼吸置く。
「術式は完了や。もう少しだけ待ちや」
そう言うと、弥生は小さく頷く。夕張もその光景に興味津々なのか、弥生の背中をまじ
まじと見つめている。
そして暫くすると、弥生の背中に変化が出始める。
「あっ!」
思わず声を上げた夕張。俺もその変化に注目する。弥生の背中には水色の配色がなされた
水晶のような紋章が浮かび上がってきた。
「ほうほう、まぁ納得やな」
「そ、そうなの?」
俺はその結果に納得の表情を浮かべる。全く何を示しているかわかってない夕張からしたら
ついていけない、と言わんばかりに首を横に振る。
「弥生、お前の潜在属性やけど・・・」
弥生はじっと、黙って答えを待っている。
「《氷》や」
「氷・・・ですか」
弥生の潜在属性は《氷》。氷は冷静沈着の概念を持つので、案外弥生にぴったりの属性
なのかもしれない。
「それじゃ、私も頑張れば・・・」
「そうや。氷属性の魔導術が使えるようになるわ」
弥生は目を見開き、こちらを見つめる。少しばかりか生き生きとしているような気もする。
と、俺は弥生の背中の小さな変化に気づく。
「っ!ちょっと待ち!」
「えっ」
弥生の肩をガッとつかんで制止させる。それに驚きつつ、弥生はその場で硬直する。
背に刻まれた紋章に小さく何か書き足されていく。
「これは・・・」
俺はその内容を興味深く見つめる。そして、くすくすと笑った。
この術式の意味は・・・
「なるほどな・・・。おもろいやんけ」
「?? ねぇ、どういうこと?」
夕張は俺が笑っていることが気になってしまい、思わず訪ねてみる。
それに応えるため、俺は弥生に話しかける。
「弥生。お前持ってるわ」
「? 何をですか・・・?」
弥生は全く分からず首を傾げている。そして、俺は彼女の頭をぽんと叩いてから
「お前には、魔導術の才能がある」
弥生はその言葉を聞いて、少し呆ける。あまり実感が無い様子だ。
「誰でも魔導術は使えることは使えるんやけど、魔導術には導脈っつぅ血管みたいなのが
あってやな。そこには魔導術の源、《
弥生は、その流れがめっちゃええねん」
「ほうほう」
つまり、弥生の背に新たに現れたものは、導力の流れが速いがために現れた紋章だと
いうことだ。夕張も、そう聞いては少しぎこちない感じで納得する。
弥生は頷き、何とか俺の話を理解しようとする。
「誰にでもある才能やないで。誇っとき」
「はい・・・」
こくり、と頷く。そして、俺は夕張に目を向ける。
「んじゃ、次は夕張や」
「やっとね!」
待ってました!と言わんばかりにグッと拳を握る。そして、自ら背中を向けて待機する。
楽しそうですね、と服を着なおす弥生が小声で呟く。
「早く服着たいもの・・・」
「顔に似合わず恥ずかしがり屋なんやな」
「当たり前でしょ!これでも女の子なんだから!」
少し声を荒げる夕張。その姿が面白可笑しく感じた俺だが、あまり裸体をさらけ出し続
けるのはさすがに可愛そうな気がしてきたので、俺もすぐに術式を展開する。
そして、弥生のときと同じように掌で背中に触れる。
「ひゃいっ!!」
夕張は掌に触れた瞬間、言葉では言い表せない悲鳴を上げる。
「うおっ!どないしてん・・・?」
「い、いやぁ・・・冷たかったから」
あはは、と苦笑する夕張。俺は小さなため息をついてから術を流し込む。
術式は完了し、また弥生のように暫く待つ。
そして、背中に紋章が記さ始めた瞬間、すぐに違和感に気づく。
「・・・ん?」
俺は思わず声を上げる。その声に弥生も気になってしまい、俺の傍に寄る。
「え、何々、何かあったの?」
夕張も気になってしまい、懸命に首をこちら側に向けようとする。
「これは・・・もしかして・・・」
紋章は、同時に二つ刻まれていっている。同時に刻まれる。この意味を俺は知っていた。
「《
そう言って、完全に紋章が具現するまで待つ。そして、出てきた紋章は・・・
「紫の稲妻か。まぁ納得やな」
「雷属性ってこと?」
「せや。お前の魔弾も雷っぽいしな」
ここは納得だ。問題はその隣に刻まれた紋章。
「淡い光に包まれた・・・翼?」
「な、何よその曖昧な発言・・・」
いや、多分光属性なのは間違いない。だが、この形の紋章は俺も見たことがない。
昔読んだ魔導術の本にもこんな紋章は記されていなかった。
「ん~・・・」
俺は思わず深く考えてしまうも、すぐに頭を切り替える。今考えていても仕方ないか。
「とにかく、結果を発表するで」
「う、うん」
夕張は思わず唾を飲む。そして、俺は口を開く。
「お前は、雷と光の《
「は、はいぶり・・・何?」
夕張はその言葉を聞くと、頭がちんぷんかんぷんになった。
「つまりやな、夕張には二つの潜在属性が備わってるってことや」
「えっ!?」
やっと意味の分かる説明を聞き、彼女は思わず驚いてしまう。
「二つあるってことは・・・魔導術も二属性駆使できるってこと?」
「せやな。残念ながら弥生ほど導力の循環が速いわけやないから、使えるものは限られる
やろうけどな」
「そ、そっかぁ・・・」
少し沈んだような気がしたが、夕張の顔はほころんでいる。
「しっかし、複属性の使い手かぁ。これはめっちゃ珍しいなぁ」
「そんなになんだ」
「せやで。なかなかおらんわ」
「ね、ねぇ。もう服着てもいいよね?」
夕張がそわそわしている。俺はその姿をしてため息をこぼす。
「はぁ・・・わかったわかった、はよ服着ぃ」
その言葉を聞くと、夕張は急いで地面に投げ捨てられていた服を掴み、音速の速さで
着替えを済ます。そして、自分の特別感を感じ、自分の才に酔いしれていた。
その姿を見て、弥生が俺に話しかける。
「属性が分かったのはいいんですけど、訓練ってどんなことをするんですか?」
単純明快な質問。だが、それを聞くのは当然だろう。
「簡単なことや。基本的には精神を鍛える。イメージトレーニングや」
「ほほう」
弥生は今何となく氷の魔法のイメージをしている。
「弥生に関しては、せっかく導力に長けてるしまた今度いいもの渡すわ」
「いいもの・・・?」
そう聞いて、弥生は少し嬉しそうに身体を揺らした。
「あとはそこの自分に酔いしれてるのやな」
と言われると、なに~?といった顔つきで夕張はこちらを見つめる。
「駄目だこりゃ」
「駄目な人・・・です」
駄目、と言われて気が引き締まったのか、酔いが覚めキリッとした顔つきに戻る。
そして、拳を引き締め、
「池宮さん、私訓練頑張りますね!」
「おう、期待してるで!」
気を引き締める勢いで声を張る夕張。俺はそれに答えるように言葉を返した。
しかし・・・
彼女の背中には
もう一つ
あるものが刻まれていたことを
俺は、知る由も無かった。
今回もキリがいいので少し短めです。今回は世界観関連の話になってるかと思います。
すこしつまらないかもしれませんね・・・。閲覧ありがとうございます。
えっと、これから試験期間なんで更新遅れます。気長に待っていただくと幸いです。
お気に入り49ありがとうございます!!