Demon's Stella ~悪魔の彗星~   作:Hershel

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今回は設定紹介なしです。もし分からないことがあれば何かコメントなど下されば対応します。


第二十五話 魔導杖

「うえぇぇぇ・・・」

 

午前八時。今日は自分の部屋でなく、親方の部屋で朝を迎える。

徹夜・・・というほどではないが、就寝時間は一時間ほど。ルーンを刻むのに集中していると

かなり体力を消耗する。ので、かなり疲労が溜まっており目元には隈が浮き出ている。

真紅の宝玉に刻まれた紋章は、複雑ながらも意味ありげな法則に則って描かれている。

 

「ほほう。完成したんか、広樹」

 

親方が俺の肩を上ってきてその様子を見てくる。

 

「ほぼ、な。後はこれと同期する人の導力を注ぐだけなんやけど・・・」

 

俺は、そう言って言葉を止める。

 

「どうしたんじゃ」

 

親方は俺が言葉を止めた事を尋ねる。

 

「せっかくやし、このまま武器でも作ってみよかな、って思ってな」

「武器・・・か」

 

親方はその言葉を聞いて、少し考えるような仕草をする。

 

「魔導術を出来るだけ高めるような武器や。さすがに、球だけで魔法打たせるのは様に

なっとらんしなぁ」

 

俺はうんうん、と頷いてみせる。

 

「アテはあるんか?」

「材料さえあれば・・・な」

 

何を作るのかは俺がもう決めている。あとは材料さえあれば。

 

「なぁ、使える鉄材って確保できへんか?」

 

とりあえず身近なところで集められる物は集めておこう。親方に尋ねてみる。

 

「憲兵のお前がうちの鎮守府の鉄材を使えるわけないじゃろ」

「だよなぁ・・・」

 

そう、俺は憲兵。簡単に鎮守府の資材を浪費できるわけがなく。

 

「なら・・・あいつ頼るか」

 

俺はその点で頼りになりそうな人間を一人知っている。

朝の仕事の時間が入る前に話をしておこう。睡眠不足による重い頭を上げて俺は執務棟

へ足を進める。

 

 

 

 

 

 

 

「鉄材・・・っすか?」

「せや」

 

小室提督の執務室。秘書艦の加賀さんが部屋の中で雑務をしている中、俺は小室と

資材についての話を持ち出していた。

 

「えらく少量っすね。この程度でいいんっすか?」

「まぁ、棒っきれ作るぐらいのもんやからな。艦娘の艤装の修理と比べたら米粒みたいな

もんやろ」

 

必要な鉄の量を暫定で纏めた物を小室に見せていた。それを見て、軽く頷く小室。

 

「これぐらいなら、次の作戦への影響は無さそうっすね」

 

小室はにへら笑いを浮かべる。

 

「分かったっす!師匠の頼みっすからね!」

「ありがとーな小室ォ!」

 

俺は彼の英断を褒め称えるために、彼に飛びついて抱擁する。

 

「はわわっ!し、ししょー・・・ししょーがおいらのこと・・・う、うへへ・・・」

 

何故か衝天していた。顔はとても幸せそうで赤らめていた。その姿を横目で見ていた

加賀さんの手元の書類にしわが出来ていたのがちらっと見えた。

 

「っと、悪いな、興奮してもうたわ」

 

俺はすぐさま小室から離れる。そうすると加賀さんは俺達から目線を逸らし、また雑務

に戻っていた。

 

「と、とりあえず、持って行く資材はどうするっすか?」

「仕事終わる夕方に、工廠二階の親方の部屋に届けて欲しいんや」

 

そう言うと小室は深く数回頷く。

 

「分かったっす。夕方日向に持っていかせるっす」

「センキュ。今度飯でも奢るわ」

 

俺はそう言って軽く笑ってみせる。俺の最後の言葉を聞いて小室も上機嫌になる。

正直、飯を奢るぐらいでこの鉄材を譲ってくれる代償にはならないんだけど。

何かしらこいつへの礼は、他にも考えておかなきゃな。

 

「んじゃ、俺も仕事あるから。頑張るんやで」

「はいっす!師匠も頑張ってくださいっす!」

 

俺は返事の証として、背を向けて軽く手を振る。

用事を済ませると執務棟を出て、さっさと寮の部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

俺は部屋に戻ってきた。まず目に入ってきたのは、朝食中の夕張と弥生。

夕張はエプロンをしていたため、料理を作ってくれていたのだろう。

よく見ると、俺の分の茶碗も出ている。

 

「おかえりなさい、池宮さん」

「おかえり・・・です」

 

俺はその声を聞いて、とりあえず空いている席に座る。食事を夕張が装ってくれる。

俺はそれを受け取って、手を合わせて頂く。

 

「いただきま~す」

 

口に広がる味噌汁の味。それに朝食用に炒めたのであろう醤油ベースの野菜炒め。

うん、美味い。多分夕張が作ったんだろうけど、こいつは意外と料理が出来る。

手伝ってもらっているときも手際がよくかなり楽させてもらっているしな。

 

「うん、美味いわ」

「ふふっ、良かった」

 

夕張が嬉しそうにくすくすと笑っている。弥生はその横で小さな口をもごもごさせながら

味わって食べている。

 

「それで、昨日の晩は何をしてたの?」

 

夕張は食事の手を止め、じっと俺の目を見つめてくる。

その真っ直ぐな瞳の先には隈が出来た情けない表情を浮かべる俺。

 

「・・・ん~、まだ言いたくないなぁ」

「えぇ~・・・」

 

夕張は落胆する。まだ言いたくない、と言われて隠し事をしているのは明確だ。

だが、夕張はそれ以上詮索しなかった。

 

「ごちそうさん。ちょいと風呂入ってくるわ」

「はーい。着替えは洗面所に置いておくから、先に入ってきていいわよ」

「お、助かるわ」

 

夕張の気遣いに感謝しつつ、俺は工廠の空気や作業で汚れた体を洗うべく浴場へ行った。

そして、夕張は俺の着替えを持って洗面所に入ってきた。俺はもう浴場に入っている。

着替えを置き、洗面所から出て行く。

 

「・・・ごめんね、池宮さん。ちょっと気になるし・・・」

 

彼女は俺のカバンをごそごそと漁り出す。その中には紅い球。

彼女には見たことが無いはずの紋章が刻まれた球。だが・・・

 

「これって・・・」

 

見覚えがあった。

 

「どうしたんですか・・・?」

 

夕張の行動を後ろから覗く弥生。夕張は急いで物をしまい、首を横に振る。

 

「ううん、何でも無いわよ?」

「そう・・・ですか」

 

弥生はそれ以上問い詰めず、朝食の片付けに戻っていった。

 

「この紋章・・・」

 

夕張は何時ぞや、この部屋に唯一ある少し年季の入った一冊の本。それに書かれていた

ものと酷似していた。そして、その一冊の本が入った棚を見つめる。

 

「今度もっとしっかり読んでみようかな」

 

夕張は、俺が昨日休んだ意味は無駄では無いということに少し安堵するも、あの内容について

もう少し勉強してみようと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六月二十日(土)午後五時。

いつも通り憲兵の仕事が終わり、俺は艦娘二人を引き連れて工廠を訪ねていた。

 

「どうも」

「やぁ。来たね」

 

何故か小室提督にその付き添いの加賀さん、日向も来ていた。

 

「何でおるねん」

「そりゃ、師匠に鉄あげたんっすから、完成品見るぐらいの権利はあったって

いいじゃないっすかー」

 

小室はむくれ顔でそう言う。まぁ、こいつには感謝してるしこれ以上は何も言わないでおこう。

 

「やっと来よったかい」

 

工廠の二階からカツカツと鉄の階段を飛び降りる音。小柄な親方が俺達のいる一階まで

降りてくると目の前にたって咳払いをする。

 

「ごほん・・・ちゃんと『例の物』は完成したわい」

 

俺は親方の台詞を聞いてこくりと頷く。親方は奥に置いてある風呂敷に手をやる。

 

「白兵戦用の武器なんぞあまり作ったこと無かったが、渾身の出来じゃ」

 

親方が風呂敷を引っ張ると・・・

 

「・・・・・・おぉ」

 

皆が感嘆を上げる。その風呂敷の中から現れた物は、

 

「杖・・・」

 

先端に刻印の刻まれた球が装着され、それを鉄で覆うように作られた杖。サイズ的には

少し小さめに作られており、大人が持つと頼りなく見える姿であるものの、それ以上に

見た目だけでは言い表せない威厳、オーラを持ち合わせている。

磨かれた鉄は電灯の光を受けてきらきらと輝いている。

 

「『魔導杖』。」

 

俺はそう呟く。皆が俺の方に目をやる。

 

「最終幻想物語にも記されている、魔導術を効率よく操る為の武器や。先端には刻印

っつーモンが刻まれてて、それが術者の潜在能力を高めてくれるんや」

 

俺は魔導杖を手に取る。そして、一度じっとそれを見つめると、視線を弥生に変える。

そして彼女の前に立ち、魔導杖を押し付ける。

 

「弥生。お前にやるわ」

「・・・えっ?」

 

弥生は自分の名前を言われてぽかーん、と口を開ける。

 

「せっかく魔導術の才能があるんや。もっと伸ばしてやりたいな、と思ってな」

 

俺はにたり、と笑みを浮かべる。その表情や言葉に困惑する弥生。

 

「えっと・・・」

「そこは、素直にありがとう。だよ」

 

夕張が隣で弥生の肩を叩くと、ぱちりとウィンクをする。その仕草を見た弥生は小さく

頷き、

 

「ありがとう・・・池宮さん」

 

押し付けられた魔導杖を受け取った。俺は満足そうに何度も頷いた。

サイズ的には彼女の身長より少し小さい程度の物。

重さも申し分なさそうで、物珍しそうに撫で回してはじっと見つめている。

 

「・・・やっぱり弥生ちゃんのだったかー・・・」

 

夕張は小さな声でそう呟く。それを聞き取ったのか、ちらりと日向の目が夕張の方を向く。

が、彼女の表情から察したのかくすり、と笑ってはまた視線を元に戻した。

 

「あ、言い忘れてたわい。おい、広樹」

 

俺は親方の言葉に振り向く。親方の手にはB5サイズ程度の紙切れ。

 

「請求書じゃ。タダで鉄打ってやると思うなよ?」

「あぁ・・・やっぱり?親方ならタダでやってくれると思っとったんやけどなー」

「阿呆。んなわけあるか」

 

請求書を見てみると・・・まぁ、払えない金額ではない。寧ろこの程度で収めてくれたのは

親方だからだろう。感謝しなきゃならないんだけど、好にタダでもいいじゃん!

 

「・・・んじゃ、討伐報酬から引いといてや」

 

小さく溜息。また節約しなきゃなぁ・・・。いざとなったら婆ちゃんやおっちゃんを

頼らなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後11時半。いつも通りの魔物討伐依頼を引き受け、夜の街へと駆り出す。

だが、今回は今までで一番の大所帯になった。

 

「流石に五人は目立つなぁ・・・」

 

そう、今回は加賀さん、日向も手が空いていたから付いてきてもらったけど・・・。

魔導杖を手にした弥生も、彼女の意思を尊重して今日から付き添ってもらうことにした。

 

「あ、あはは・・・確かに五人は凄いよね」

「ここまで大所帯だと、夜でも目立つね」

 

夕張と日向が他愛も無い会話をしている。生真面目な加賀さんは雑談に介入することも

無く、弥生は初めての夜の街の為か、手に持つ魔導杖を震わせて緊張してる様子だ。

 

「大丈夫か?」

 

俺は弥生の隣に寄って小さな声で励ます。

 

「だ、大丈夫・・・です」

 

そう言っているものの緊張はほぐれていない様子だ。まぁ、何かあったら人数もいるし

守ってやればいいか。

 

「・・・!!」

 

加賀さんが矢を手に弓を構える。その姿をいち早く察知した俺と日向は武器を構え、

一足遅れて夕張も慌てて武器を構える。

 

「数体おるな」

「結構街中なのに・・・」

 

俺と夕張はそう会話していると、何処から攻めてくるか警戒している。魔物の気配を

いち早く察知したのは加賀さん。

 

「そこですッ」

 

道路の茂みに向かって弓を射る。中から小さめの人型魔物が十数体ほど現れる。

 

「ゴブリンじゃ!」

 

無線越しに親方の声が聞こえてくる。いつも通りの聞きなれた解説が終えると、俺達は

魔物に向かって攻撃を開始する。

 

「いくでぇ!!」

 

炎の気を纏った槍を片手に、俺は魔物の群れに突進する。それに引き続いて夕張も駆け出す。

加賀さんと日向は遠距離攻撃で牽制と補助に回っている。

 

「ふんッ!!」

 

勢いづいて思わず声を漏らして俺は槍を思い切り振り回す。ゴブリン数体はそれで

焼ききられ、蒸発するように消滅していく。夕張も魔導術を駆使し、雷の剣で敵を

切り伏せている。

 

「ギャァアァ!!」

 

ゴブリン数体が鳴き声を上げる。そうすると、どこからともなくゴブリンが湧き上がってきた。

 

「いっ!?」

 

俺は思わず声を上げる。先ほど現れたゴブリンの数の2倍・・・いや、3倍ほどの数に

増えてしまった。

 

「どうしましょう・・・これは撤退したほうが・・・」

 

後方で弓を射続ける加賀さんがそう呟くと、日向もこくりと頷く。そして、撤退の指示を

だそうと思い息を吸い込むが、隣でぶつぶつと声が聞こえてきては吐き出すのを止める。

 

「弥生・・・さん?」

 

加賀さんはぶつぶつと呟いている少女、弥生のことをじっと見つめている。

日向もその姿を見ては撤退の意思を消し、牽制を続行する。前二人は相変わらず複数体の

ゴブリンを相手に武器を振り回している。

 

「・・・深き地に宿りし灼熱の魔手・・・焼き尽くして・・・です・・・ッ!!」

 

弥生の持つ魔導杖の球・・・刻印が刻まれた『宝玉』が紅く光る。

そして、彼女は目を開き、魔導杖を掲げる。

 

「イラプション・・・!!」

 

魔導術の術名を叫ぶと、街の地面が震える。その震えをいち早く察した俺は夕張に向かって

 

「後退や、夕張!!」

 

言葉を放った後、俺は加賀さん達の所まで後退する。

 

「は、はい!!」

 

夕張も遅れて後退する。彼女が後退した瞬間に地面が裂け、地から溶岩が吹き出す。

溶岩はゴブリンの群れを飲み込み、一気に焼き尽くしていった。

夕張は間一髪、といった感じで飛び込んで地面に滑り込む。後ろを見ると溶岩が溢れ出て

魔物を焼き尽くしている姿が見える。夕張は一歩遅れたら・・・と想像していて一人

ぞっとしている。

他三人もその光景をぼーっと眺めている。だが、俺だけはにやり、と不適な笑みを

浮かべてしまう。

 

「・・・想像以上やな・・・弥生」

 

前方の魔物の群れは全滅。弥生の《炎》の魔導術で一層した。

 

「炎・・・でした」

 

弥生本人も表情に出ないものの驚いている。

 

「な・・・何で?あの時の属性鑑定じゃ、弥生ちゃんは《氷》・・・だったのに」

 

俺は待ってました、と言わんばかりに夕張を指差す。

 

「ふっふっふ・・・甘いな!!夕張ィ!!」

 

俺は決めポーズを取って格好付けた口調で話す。加賀さんはその姿を見て少し引いている。

 

「魔導杖に刻んだ刻印は、固有の潜在属性の導力を流し込んで別の属性に変える物や」

 

俺は腕を組んでぺらぺらと話し出す。

 

「氷の導力に合わせて変換用の刻印に、他属性への変換刻印。まぁ、色々刻んでたら

あんなややこい刻印になったんやけどな・・・」

「な、何言ってるか分からない・・・」

 

夕張は俺の話を聞いていると困惑している。

 

「まぁ、簡単に言ったらいろんな属性の魔導術を撃てるようになるんや。やけど

ここまで早く使いこなせると思わんかったわ」

 

俺は弥生の傍まで寄っては、少し荒めに頭を撫でる。弥生は目を瞑ってはそれを受け

入れている。

 

「んじゃ、このまま討伐依頼もこなすで」

 

俺はそう言って、先陣を切って前に進む。その後ろに弥生が後をつけるように歩き出す。

 

「・・・凄いなぁ。あの魔導術も・・・弥生ちゃんも」

 

夕張はそう小さく呟いて、歩き出す。その姿を見ていた加賀さんと日向は向かい合って

小さく笑いあう。そして、前を向いて歩き出した。

 

 




ご閲覧ありがとうございます!更新滅茶苦茶遅くなりましたね・・・そろそろペース上げていかないと本当にだれてきそうです。やっと弥生ちゃんが戦闘可能になりました。ここからどんどん話進めていかないとほんとにやばいです(二度目)。
魔導術の術名は・・・あれですよ、有名なRPGから分捕っています。どんどん分捕って生きたいですね!←

お気に入り51件もありがとうございます!

感想などございましたらコメントしてくださればありがたいです。では!次回にご期待ください!次回はまた少し遅くなるかもです。
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