Demon's Stella ~悪魔の彗星~ 作:Hershel
舞鶴鎮守府
艦娘で構成される艦隊を所持する、深海凄艦に対抗するための国際基地。
そこに所属する人材として、実際に戦う《艦娘》、艦娘を指揮する《提督(司令官)》
提督や艦娘を監視、警備する《憲兵》、艤装や新しい艦娘を製造する《技師》
鎮守府全域の情報管理をする《事務員》、と大まかに分けられる。
鎮守府内の施設は、各提督の執務室がある《執務棟》、主に憲兵が戦闘訓練を行う《演武場》
艦娘と提督専用の食堂《甘味処 間宮》、憲兵専用の食堂《憲兵食堂》、艦娘の演習を行う《海上演武場》
事務員が働く《監査棟》、艦娘や艤装の建造に関わる《工廠》
艦娘や提督が娯楽を楽しむために建てられた《娯楽棟》には、温水プールやボウリング、
ビリヤードなどを楽しめる総合娯楽施設となっている。
開発中の建物もあり、今後も増築予定。
午前五時。俺は普段より早めに起床する。
炊飯器から白煙が出ており、米の瑞々しい香りが漂う。
洗面台に言って顔を洗う。いつも以上に目が開かない。魔物討伐で疲れていたところに・・・
「今日の朝、演習警備に就いてくれないか」
艦娘、日向がそう告げると去っていったんだ。
演習警備って・・・海上でやるんじゃないのか?そこらへんがよく分かっていないんだが。
とりあえず、日向の言ったとおりに演習警備に就けるように上官に話を通すため、この時間に起床した。
憲兵服の袖に腕を通し、着替え終わると静かに部屋を出た。
憲兵寮の最上階。最上階は上官が住まう部屋ひとつしかない。迷うはずもなかった。
俺は扉の前まで歩いてきて、深呼吸をした後、扉を叩く。
「誰だ」
低いトーンでの返事。上官はこの時間から起きていると前に飯田から聞いていた。
馬鹿みたいに厳しい人だけど、誰よりも早く起きて仕事をしているなんて、さすがだなって思う。
「池宮です」
「お前か、入れ」
返事が聞こえると扉を開けて敬礼。上官もその姿を見て頷く。
窓越しに立っていた上官は、身体を俺のほうに向けて用件を尋ねてくる。
「今日の午前の配属なんですけど・・・」
俺は少し言葉を濁らせて話す。直球勝負もいいと思ったが、上官の恐ろしさは身に染みているので
さすがにちょっと怖い。
「そのことでお前に丁度話したいことがあったのだ」
「へっ?」
都合のいいような話に拍子抜けして間抜け顔を晒す俺。
上官はその姿を見ては軽く口角を上げて話を進める。
「今日の午前のお前の配属だが・・・」
俺は思わず唾を飲む。もしかして、日向が先に仕込んでくれていたのかな。
「谷岡提督の専属護衛として働いてもらう。谷岡提督は早朝から発たれるそうなので
朝礼は出席しなくて結構だ」
「ハァ!!??」
俺は予想もしていなかったことに驚いてしまいつい声を荒げて叫んでしまった。
上官は豪快に笑うと俺の肩を勢いよく連続で叩く。
「はっはっは!よかったな!この鎮守府の最高責任者である谷岡提督の下で働けるのだぞ!
しかもお前を谷岡提督自ら指名してくださった!お前を育てた俺の鼻も高いものだ!」
いやいや、いやいやいや!!絶対おかしいだろ!!
なんだよ指名って!朝っぱらから何か危ないところでも行くってのかよ!?
意味わかんねぇよ!もう演習警備なんて話どころじゃねぇよ!!
そう思っているが、自分の用件は伝えようと俺は口を開く。
「えーっと・・・そのことなんですけど・・・」
何だ?と言った様な顔つきで上官は俺の顔を見つめる。
「俺、午前の配属は・・・演習警備に就きたいって頼みにきたんですが・・・」
上官はそれを聞くとまた豪快に笑う。ダメだ、これは浮かれすぎて人の話を利かないパターンだ。
「はっはっは!!心配するな!演習警備などとは比べ物にならん大儀だ!なんなら、午後の
仕事もパスしてくれて構わんのだぞ?」
・・・これはきつい。日向が何を思って演習警備に就いてくれって言ったのかわからなかったけど
約束を守れそうにない。ごめんな、日向。
その後も俺は、上官に何度も叩かれながら話は進み、結局午前は谷岡提督の護衛に就くことになった。
「びっくりするぐらい上官が上機嫌やったな」
眠気がまだ治まっていなくて、目をこすりながら歩く。
どうせ今から寝たら確実に寝過ごす。部屋に戻って槍を背負って、俺は外に出た。
丁度日の出だった。俺は海沿いまで出て、係船柱に座り込んだ。
海の先、水平線から日が昇っている。普段から見れる景色ではあるものの、その姿は幻想的で美しい。
「早起きは三文の徳、これがその一つの徳やな」
それらしいことを呟く。俺は何一人で言ってんだと思ってくすくす笑う。
「そうですね。それに、その徳を共有するのも、素敵ですよね」
後ろから気配、声を感じる。発した声を辿っていくと、風に吹かれて靡く銀髪が見える。
「早起きやな、夕張」
「おはようございます、池宮さん」
夕張は軽く会釈すると、俺の隣に座り込んだ。
「今日は夜更かししませんでしたから」
こちらを向いて微笑む。太陽の光に当たりながらということもあり、いつもより優しい微笑み
に見える。
「なんやねん、普段から夜更かししてるんか?」
「そうですね・・・夜ぐらいしか、自分の好きなことはできませんから」
てへへと言って頬を指先で弄る。
「飯田みたいなこと言いよって」
「飯田・・・さん?」
夕張は聞きなれない人の名を聞いて問い返す。
「俺の憲兵仲間や。ほら、昨日警備のときに横におったあのノッポ・・・」
「あぁ、あの人ですか!」
分かったかのようにポンと手のひらと拳を合わせる。
なんかジェスチャー表現が古臭くて笑いそうになった。
「あいつも夜更かししてるねんなぁ、いつも。漫画読んどったりゲームしとったり・・・」
「わぁ・・・私とそっくりだ」
夕張はそう呟く。しかしすぐに失言したと思い口を塞ぎ、顔を赤らめてそっぽ向く。
「い、今のは忘れてください!!」
前かがみになって気持ち大きな声で俺に言う。
俺はけらけらと笑ってはどうだかな~といった意地悪い表情になる。
「んでも意外やったな。夕張はそんなん好きなんか?」
俺は軽い気持ちで尋ねる。夕張は俯きながらも頷く。
「俺さ、漫画はてんであかんけど、ゲームなら結構なもんやで」
ニタァと笑顔を夕張に向ける。夕張は意外そうな感じで目を見開いていた。
「そう・・・なんですか?どういったゲームをしてます?」
「最近やったら、ドラゴンブレイクとかやな・・・結構マイナーやけど・・・」
微妙な表情になった俺だが、それに反して夕張の目は輝きだした。
「うわぁあ!それって、先月発売したゲイマー社初のタイトル作品ですよね!」
「うお、まじかいな!知っとるんかい!びっくりやで!」
異常な食いつきっぷり。まさかのビンゴだった。俺もこんなマイナーなゲームの話で意気投合
できると思っていなく、思いもよらなかった高揚感が湧き上がる。
「あれ、昨今のビッグタイトルが忘れがちな、王道かつシンプルなストーリーがいいんですよね!
ヒロインを助け出す目標から様々な試練が立ちはだかって、人間的にも成長するドラマは
何度見ても心が動かされますよ!」
「やんなぁ!!それでさ、キャラのイラストもよくできてるし、有名声優とかに媚びてない
のもいいよな!お陰で変なアンチもいないし!」
「そうですよね!有名な声優さんのいるゲームもそれはそれでいいのですが、本来の
目的を忘れちゃいそうで、キャラへの愛が薄れていっちゃうんですよね・・・」
「うんうん、分かる!分かるでそれ!!」
朝の日の出の絶景スポットで、通なゲーマーしか知らないようなマイナーゲームで最高に
盛り上がる俺と夕張。なんというか、非常に珍妙な光景である。
「す、すいません!つい、喋りすぎてしまったかも・・・」
夕張が自制心を取り戻しては口を塞ぎ照れ笑いをする。
俺はそれを見て嬉しい気持ちも含めて笑い飛ばす。
「ええよええよ、俺も楽しかったしな」
2~3度頷く俺。そして、次の言葉。
「こんだけいっぱい話したんや。もう固いことなしでええんちゃうか?」
「固いこと?」
夕張は何だろうと言わんばかりに首を傾げる。
「敬語。面倒やろ?別に気つかわんでええで」
「い、いえいえ!そんな滅相も・・・」
夕張はぶんぶんと首を振り、おどおどとしだした。
「俺はただの憲兵やし、どっちかというと艦娘よりは地位は下なんや。
それに、こんだけゲームで語ってたら、もう赤の他人・・・ってわけないよな?」
少しだけ意地悪い笑みを浮かべて俺は言う。それを聞いた夕張は一呼吸置いて口を開く。
「・・・うん、そうよね。そうさせてもらおうかな」
夕張はすっきりしたかのように背伸びをしてん~と声を出す。
「私ね、今日始めての演習なんだ」
海のほうに向いて夕張は話す。俺は一緒に海を見つめながらその話を聞く。
「この鎮守府初の陸上演習なんだって。小室提督の提案で、もし魔物が鎮守府に乗り込んで
きたら、っていう過程で行うらしいの」
陸上演習か。魔物退治に貢献できるなら願ったり適ったりの話だけど、別に艦娘がやらなくても
いい気がするな。今でも俺が魔物に関しては処理してるわけだし。
俺はいろいろ思うことがあるがそれを飲み込み、夕張の話を聞き続ける。
「私ね、この前の夜、池宮さんに助けられたとき、自分って無力なんだなって気づかされたんだ。
海上では確かに、艦娘は深海凄艦に対抗する唯一の存在だけど、でも、陸上では人間と変わらない
ちっぽけな存在なの。あ、別に人間が弱いなんて言ってる訳じゃないのよ?
池宮さんみたいな強い人がいるのも、私は知ってる。でも、でもね・・・」
夕張は風を感じ、髪を揺らしている。前髪をかき上げると口を開く。
「池宮さんみたいに、もっと人間を守れる存在になりたいの」
俺のほうに身体を向けた夕張は、真っ直ぐに俺を見つめ、はっきりと言った。
その純粋な目と声質に、俺は少し感激に近い感情が芽生えた。
純粋に応援したい気持ちになる。夕張は不思議な子だ。
「そか」
俺は短く返答する。長い言葉は無用。夕張もそれを分かっていた。
「でも、もちろん本来の艦娘としても頑張るわよ?池宮さんの夢を実現させるためにも」
「せやな。俺の夢、叶えたいなぁ」
「叶うよ、絶対」
夕張の笑顔。少し日が上がって彼女の白い肌が綺麗に俺の目に映し出される。
俺は彼女の笑顔を見て頷く。俺も立ち上がり、仕事に就くことにした。
「んじゃ、俺は仕事あるしこれで」
「今日はどこの警備なの?」
「ん~それがなぁ・・・」
俺は言葉を詰まらせたが、夕張がじっと見つめてくる。
「谷岡提督の護衛、なんやって」
目を合わせずに俺が言うと、夕張は俺の顔を覗き込んで笑っている。
「谷岡提督の護衛!?すごいね!彼の護衛をできるなんて、池宮さんやっぱり
すごい人だよ、うん!」
うんうんと何度も頷く夕張。俺はそのオーバーリアクションを見ては苦笑いを浮かべる。
「せやな・・・今までで一番でかい仕事やし、気合いれなな」
俺は握り拳を作ってガッツポーズした。
その拳を、夕張は優しく握り締めてくれた。
「がんばってね、池宮さん。私も、頑張るから」
「おうよ」
最後にまた笑顔。
別れ際に夕張が声をかける。
「また!」
「ん?」
「また今度、ゆっくりゲームの話しようね!!」
夕張は手を大きく振ってぴょんぴょんと飛び跳ねている。
俺はその光景を見て微笑ましく思いながら手を振り返した。
午前六時。
俺は夕張と分かれた後、上官の所へ行って仕事の詳細を聞いてきた。
この時間、正門前で待っていればいいらしい。
俺は門の前にもたれかかって、谷岡提督の到着を待っていた。
それから数分もしない内に、白銀の正装を身を纏った男が現れた。
「待たせたかな」
両隣に艦娘を連れた谷岡提督が現れる。動じないその姿勢からは只ならぬ気配を感じる。
右隣にいた艦娘が微笑んで口を開く。
「おはようございます、池宮憲兵。早朝の呼び出し、申し訳ありません」
谷岡提督の艦娘の一人、筑摩が挨拶をする。俺はどうもと言わんばかりに会釈する。
「霰ちゃんはなんか不機嫌そうやんけ」
腰に手を当てて話す俺は、もう一人の艦娘、霰に視線を向けると目を逸らされる。
「別に・・・なんでもないです」
何で不機嫌なのかは全く心当たりがないが、とりあえず話を進めようとする俺。
「それで、何で急に護衛なんて頼むんです?日中の街なんて魔物の脅威があるとは
思えないんですが」
直球で疑問をぶつける。今まで日中で魔物に襲われる事件など起こったことがない。
それに明るい日中なら、魔物も身を隠す場所が非常に少なくなり、人を襲うことも少々困難
である。いや、魔物関係ではなく、他の意味で護衛を任せるのだろうか。
「ん~わからん」
思わず呟く。
「分からないでしょうね・・・貴方の頭ですと」
「なんやこのぺちゃぱい!!」
「ぺ・・・ぺちゃ・・・ぱい・・・」
霞は自分の胸を撫でてすぐに俺を鋭く睨んできた。
「ほら、霰。そのくらいにしておけ」
「も、申し訳ありません・・・司令官・・・」
霰はしょげてしまい俯く。最初からそうしてなさい。
何故か俺には非常に強く当たる。霰は俺のことをどう思ってるんだろうな。
「何、簡単なことだ」
谷岡提督は腕を組んでは威勢のいい格好で話す。
「今日は久々の休暇でな、たまには霰達を連れて買い物と思ってな」
「は、はぁ・・・」
それと俺の護衛は何の関係があるんだよと思いながら、俺は話を聞き続ける。
「ここの所、魔物の事件に乗じた悪質な事件が多くてな。昼間でもそういった危険が伴うわけだ」
「ふむふむ」
魔物事件に乗じて・・・か。俺はこくこくと頷きながら興味を向けて聞き続ける。
「私は一応、この鎮守府の最高責任者だ。さらに艦娘の彼女達も一緒なら尚更恰好の的だ。
それに、彼女達に艤装をさせるのもまた違うだろ?」
確かに街中で艤装なんてされてみろ、たまったものではない。いくらこの鎮守府が国に認められ
その行動を保障されたとしても、建物を壊せるような兵器を歩かせているなんて、一般人
が見てみろ。
俺は想像しただけで冷や汗が止まらない。
・・・よく考えたら、槍背負ってる軍人ってのも中々のものだけどな。
薙刀っていう競技があって、本当によかったよ。
「なんとなく状況は把握しました。俺でよかったらこき使ってください」
わざわざ日向が頼みに頼んできた演習警備のことも気になるが、今は目の前の仕事に集中
することにした。上官が俺の話を全く耳にしなかったこの鬱憤を晴らすのもお門違いというものだ。
「助かる。それでは行こうか」
谷岡提督と二人の艦娘は歩き出す。門を出てそのまま海沿いに歩いていく。俺もその後を
追って門を出て、警備員に敬礼をすると、後ろから彼らの動向を見守ることにした。
午前8時。昨日も訪れた東舞鶴商店街に来た。大型ショッピングモールはまだ開店時間では
なかったため、比較的朝早くから店が立ち並ぶ商店街を選んだのだ。
というか、こんな朝っぱらから外出とか、仕事でもないのになに考えてるんだか。
と、考えてる内に少し疑問点が思い浮かんだ。
「何で、プライベートなのに軍服なんっすか・・・?」
三人共プライベートなのに何故か全員軍服。俺は護衛という仕事だから、軍服でもおかしくは
ないんだが、彼らは休暇だ。別にそれぞれの好きな服でも着ればよかっただろうに。
といっても、特に感じられる違和感でもないし、逆に抜群なセンスを見せ付けられると
同じ男として自信が全くなくなってしまう。
「普段着は奥底に眠っておってな。取り出す時間が面倒だった」
「案外めんどくさがり屋なんっすね」
俺はへらへら笑った。谷岡提督もくすくすと笑っている。
「んで、艦娘の二人はどうなんだよ」
「私は、この衣装しか持っていないんで・・・」
「右に同じ・・・です」
別の服ぐらい着てみろよと思いながら俺は頬を掻く。
といっても俺は提督じゃないし、艦娘にはそれぞれの事情があるんだろうなと、自分の頭の中で納得する。
そうやって他愛も無い会話が進んでいくと、とある店の前に立っていた一人の老婆。
見間違えるはずも無い。見慣れた人の姿。やばい。帽子を深くかぶってそこを何とか逃れようとした。
が、他が目立ちすぎた。その老婆は俺達に話しかけてきた。
「おやおや、あんた等軍人さんかい?」
ゆっくり近づいてはゆっくり喋っている。その呼びかけに応えて俺達は立ち止まって老婆の
場所まで歩いていく。
「おはようございます、ご婦人。こんな朝早くに店構え、そのお心を見習いたいです」
谷岡提督が丁寧に挨拶すると老婆は笑顔で迎えてくれた。
艦娘達も会釈し、俺も帽子のつばを持ちながら礼をした。
「あらあら、褒めても何も出ませんよ?」
おほほと笑っては店の作業をせっせとしている。
「この中立ち話もなんです、よかったら上がっていってくださいな。」
「いえ、そんな滅相も・・・」
谷岡提督は心遣いだけと、老婆の提案を断ろうとした。
しかし、その後に続いて俺の一番恐れていた言葉が発せられる。
「いいんですよ、そこの小さい孫がお世話になっていることですしね」
やっぱりばれてた。血は争えない。というか、雰囲気で分かってしまうのだろう。
その言葉を聞いて二人の艦娘は俺のほうに勢いよく振り向いてきた。
「え、ええっ!?」
「池宮憲兵・・・それって」
俺は諦めて帽子を外して、老婆に向き合って笑顔を作った。
「久しぶり、お婆ちゃん」
「おかえり、広樹。少し見ない間に立派になったねぇ」
そういって俺のところまで来て頭を撫でてくれる。まだまだ子供扱いされていて俺は恥かしい。
「お婆ちゃん、さすがに人前ははずいって・・・」
「あら、そうかい?」
ふふふと笑うお婆ちゃん。孫との再会が嬉しいのか、結構上機嫌だ。
「池宮君のお婆様でしたか。でしたら、少しお話をお聞きしたいものですな」
「えぇえぇ、どうぞ上がってくださいな」
そう言ってお婆ちゃんは俺達を店の中へと案内してくれる。
俺達はお婆ちゃんに連れられて、店の中の和室へと案内された。
そして、店の商品である厚揚げをご馳走してくれた。
葱と醤油をかけたシンプルな料理だが、これがまた絶妙に美味い。
「お、おいしい・・・」
「美味しいです!おばあさん!」
二人の艦娘もおいしそうに頬張っている。お婆ちゃんもその言葉を聞いて嬉しそうに頷いている。
「ほらほら、ゆっくり食べないと詰まらせるよ」
そう言ってお婆ちゃんは霰の頬についた醤油をふき取ってあげる。普通の人から見たら霰は子供だもんな。
「あ・・・ありがとう・・・ございます・・・」
霰は少し照れくさそうに礼をして、お婆ちゃんはうんうんと頷く。
「それにしても、広樹がこんなかわいい女の子やかっこいい男の人を連れてくるなんてねぇ」
お婆ちゃんは谷岡提督や艦娘を見た後俺を見てくすくす笑っている。
「お婆ちゃん、一応誤解してそうやから・・・女の子達はそういう関係ではないからな?」
「当然です・・・」
「ええ、そうですね」
俺が否定するとすぐに二人とも否定する。これはこれで辛い。
「お婆様、彼女達は私の部下です。池宮君は働き所が違いますが、いろいろお世話になっています」
「おやおや、ご丁寧にどうも」
谷岡提督がまとめて説明をする。そうだな、お世話になってるな。特に魔物関連で。
「お婆ちゃん、そろそろ店でなくていいんか?」
「おやおや、もうそんな時間かい?」
お婆ちゃんは店の時計を見ると、九時四十五分。
今はお婆ちゃんがいないため、叔父一人で回している。
「そうだね、そろそろ行こうかね。あ、お皿は置いたままで構わんよ」
「ありがとうございます」
谷岡提督が礼をすると隣の二人も礼をする。
「お婆ちゃん、皿洗っとくよ」
「いいよいいよ、広樹は仕事があるんだから、そんなこと気にしなさんな」
そう言ってせっせと皿を持っていくお婆ちゃん。
「それでは、広樹のこと、よろしくお願いしますね」
お婆ちゃんはそう言っては手を振って俺達を見送ってくれた。
「いい祖母を持ったな」
「当たり前や」
谷岡提督がそう言うと俺は鼻息を荒くして返事をする。
筑摩はその姿を見てくすくすと笑い、霰は谷岡提督の服のすそを掴みながら、醤油がついた
頬を何度も擦っていた。
午前十時五分。
俺達は東舞鶴駅からすぐにある大型ショッピングモールに来ていた。
ここは割と昔からあった店で、この東舞鶴に近代の風を齎し、商店街の過疎化の一つの原因である。
少し皮肉ではあるが、この店が出来てからここの住民の生活の利便性は格段に上昇し
今までのように商店を行き来する必要も無くなり、若者達の集まりの場としても
機能するようになった。
俺達は一階の靴売り場に足を運んでいた。
「見たいもんって靴かよ」
俺は愚痴をこぼす。霰に睨まれたけどそんなことは気にしない。
「そうだ。私の靴も長年愛用してきたものだが、そろそろきていてね」
そう言われて俺は谷岡提督から視線を落とす。
確かに谷岡提督の革靴は、かなり使い古されており、丁寧に手入れした跡が見えるものの
革の光沢やしわなど、経年の劣化を感じる。
でも靴ぐらいなら一人で買いに行けよ、幼稚園児かよ。
「そこまで高価なものは必要はないのだ。とりあえず、ある程度動きやすいものならよい」
そう言いながら、同じような革靴を嗜みながら履いていく。
艦娘二人は、女の子の靴が売られているブースに行っている。
筑摩が霰にスニーカーを押し付けている時点で、霰に似合いそうな靴を筑摩が選んでいる
といった感じなのだろう。
靴より服をどうにかしろ。
「池宮憲兵」
いきなり俺に話を振ってきた谷岡提督。
「これなんかどうだろうか」
まさかの靴の意見を聞いてきた。俺より筑摩とかに聞いたほうがいいんじゃないか?
と思いながら俺は率直な意見を言う。
「俺やとこっちっすね」
俺は隣の棚にあった黒がベースの革靴を選ぶ。ローファータイプの一般的な正装用の革靴だ。
「ほう」
谷岡提督は俺の話に耳を傾けた。
「谷岡提督の好みが茶色なんかわからんけど、白と青がモチーフの軍服なんやったら、
茶色はあんまあわへんと思うんっすよ」
谷岡提督が選んだのは、明るい茶色の革靴。しかもブーツタイプときた。
普段用ならいいと思うけど、こんなお出かけで軍服で来るような人が履くものではない。
「それに、それはブーツタイプっすから、足の負担が結構くると思うんっすよ。
ローファータイプだと足首上からの負担はフリーっすし、軽いから歩きやすい。
ついでに履きやすいっす。靴べら無くても履ける人は履けるっすからね」
ほほうというような目で俺を見つめる谷岡提督。
「あとはここ」
俺は棚の出っ張りに挟まれた一つの広告を指差す。
俺が選んだ靴の特徴について記されたものだ。
「この靴、撥水性を上げる特殊加工が施されているらしいっす。
鎮守府は潮風や海水に打たれて何ぼでしょうし、水垢なんかの手入れも簡単っす。
革靴用の撥水スプレーを買う必要もない、決まった期限にスプレーする必要も無い。
押入れの奥底から服を取り出せないような谷岡提督にはぴったりのらくらくシューズやと」
最後に皮肉を飛ばして腕を組む俺。
それを最後まで聞いて、谷岡提督は笑った。
「はははははっ!すばらしい説明ご苦労だった」
そして、谷岡提督は履いていた靴を元の場所に戻し、俺の靴を受け取った。
「君の熱弁に乗じて、これを買うことにしよう」
そう言って谷岡提督は俺の選んだローファーシューズを持っていった。
一方そのころ艦娘二人は
「に・・・似合いませんよ・・・」
「可愛いですよ、これ!今流行の朝のアニメ、プリチーキュアのキャラスニーカーですよ!」
筑摩が朝の人気アニメのスニーカーを霰に履かそうとしてた。
あれは多分半分以上趣味入ってるな。
俺達はフードコートに来ていた。
靴の買い物を済ませ、服でも見に行くかと提案したが、谷岡提督は拒否してきた。
その代わり、靴のお礼として俺は食事をご馳走してもらっていた。
「んでも・・・いいんっすか・・・まじで・・・」
食べながら俺は谷岡提督に尋ねる。
俺はフードコートの笊蕎麦を食べている。安物ではあるが、この安物感がまたいい。
学校の食堂のうどんが妙に美味しく感じる感覚と同じだ。分かる人にはわかる。
「食べながら・・・話さないで・・・」
「・・・(ごくんっ)。へいへい」
俺は蕎麦を飲み込んで面倒くさそうに霰に返事をする。
「池宮憲兵のご機嫌を取れるなら、安いものだ」
谷岡提督は口角を上げる。
俺はずるずると蕎麦を吸い上げる。
筑摩はその姿を見ては微笑み、霰は半分ぐらい睨んでいるような表情で俺を見つめながら
無料の水に口をつけている。
「あ、そう言や」
俺は思い出したかのように口を開く。
「谷岡提督、ちょいと聞きたいことがあるんっすけど」
「ん?」
谷岡提督は俺の話に耳を傾ける。
「今日の小室提督の演習・・・陸上演習っちゅぅんでしたっけ」
思い出しながら話す。谷岡提督は微動だにせずに聞き続ける。
「あれ・・・誰の考案っすか?」
俺はこのときだけ真顔になる。谷岡提督もその表情を見ては口を開く。
「・・・私だ」
やっぱり。だが、どういったコンセプトなんだ。それが俺は気になった。
「何で陸上でも演習をやろうとしたんっすか」
俺は聞き続ける。谷岡提督はそれに応えるかのように話を続ける。
「今、魔物の被害は甚大だ。君一人が今は夜な夜な戦っている状況だが、正直猫の手も借りたい。
このような状況を打破できるのも、やはり艦娘の力だと、私は思うのだ」
熱く熱弁する。俺はその熱弁を今は聞き入れる。
「確かに、憲兵達を戦わせるのが一番いいのかもしれない。君のような人間が
こうして魔物と対峙できるのだから、彼らにもそのセンスを見出せるかも知れん。
だが、艦娘は我等人以上に秘められた潜在能力を持っている。その潜在能力が陸上演習
で見出すことができるのなら、それは海上での作戦の成功率にも関わってくるのではないだろうか」
確かに、陸上での戦闘が海上で応用されるということは無い話ではない。特に艦娘ならそうだ。
艦娘は海上でも陸上のように自由に動けて戦える。陸上で上手く戦えるのなら、海上も
お手の物となるだろう。
だが、それだけではまだ何かが足りない気がする。だが俺はその何かが思い浮かばなかった。
「そうっすか」
俺はこれ以上意見できないと悟り、会話を切る。谷岡提督もそれ以上追及してこなかった。
その会話が終わって、俺はまた蕎麦を吸い上げる。
そうしていると・・・
ぶっぽるぎゃるぴるぎゃっぽっぱぁーっ!
「ぶーっ!!」
霰は思わず水を吹いてしまった。謎の絶叫が俺のポケットから聞こえる。
「あ、電話や」
俺はスマホを取り出す。
「ちょ・・・音はでないように・・・しておいてください・・・!」
「すまんすまん、顔に水ついとんで」
霰はすぐにコップをテーブルに置いた。その向かいに座っていた筑摩が、何処からか
ティッシュを取り出しては霰の顔を拭いている。
「すんません、ちょっと」
「あぁ、構わん」
俺は谷岡提督に軽く会釈すると、少し席を離れてスマホの応答ボタンを押す。
電話の相手は飯田憲兵だ。
「なんや!今仕事中なんやで!」
俺は少し怒鳴り声で話す。
「おわっ!びっくりした・・・って、仕事中って今何処にいるんだよ?」
「谷岡提督と一緒に買い物や」
「なんじゃそりゃ、ついに金づるになったか」
「俺には金玉二つぐらいしかないで」
何故かとてつもなくつまらないコントが始まる。
あまり続かなさそうなので飯田がその会話の流れを切る。
「あー、今日のコントはもう終わりだ。それより今鎮守府でどうなってるか知っているのか?」
どうなっている?どういうことだ・・・何かイベントでもあるのか?
俺は少し気になって尋ねてみる。
「どうなってるって・・・なんやねん」
そう俺は言うと飯田は少し興奮気味に話す。
「今、小室提督の艦娘達が、陸上演習っていうものをやってるんだ!」
あぁ、確か夕張が朝そんなこと言ってたっけ。
陸上演習に関しては今さっき思いっきり小室提督に語ってもらったけど。
「らしいな。それがどうしたんや」
俺は半分興味なさげに尋ねる。
「それがな!小室提督の艦娘、えーっと、加賀と日向やっけ。今その二人が組んでるんやけど」
あぁ、あいつらが今やってるのか。夕張はどうしてるんだろうかと思いながら耳を傾ける。
「艤装装備で、ポニーテールの艦娘を一斉攻撃するんだ!!ほんまマジの海上戦みたいだ!!」
「・・・は?」
俺は背筋に悪寒が走る。艤装装備で・・・ポニーテールの艦娘を一斉攻撃・・・?
小室提督のとこにいるポニーテールの艦娘といえば、夕張しかいないはず。
そんなことして、夕張は助かるのか・・・?
いや、いくら艦娘だからって、艤装の砲撃を直撃すれば命は無い。
というか、陸上なら、もろに直撃すれば艦娘だって一撃で死ぬだろ!
「・・・え、えっと・・・それで、そのポニーテールの艦娘は・・・」
「艤装が壊されて今逃げてる状態かな。それをあの弓道着の艦娘が飛ばしてる艦載機が
追撃してるんだ!!もうかっこよくてやばいよ!!」
明らかに大丈夫じゃねぇ状況じゃねぇか!!
でも、まだ分からない。何か小室提督は考えがあっての可能性もある。
続いて質問に入る。
「なぁ、普通だったら、それって今すぐやめるような状況やないん?小室提督は何か言ってるんか?」
と俺は言うと、飯田は笑いながら話す。
「大丈夫やって!艦娘は砲台に当たっただけじゃ死なんから!小室提督も言ってたし!」
それは嘘。艦娘の情報は秘密事項になっているため、普通の憲兵は知らない。
小室提督は谷岡派の人間だ。谷岡派にいる提督たちからの口出しはないだろう。
だが、まだだ。まだ判断材料が足りない。
「ちょいと悪い、切るわ」
そう言って俺は電話を切る。
俺はすぐに谷岡提督の下へ戻り、勢いで尋ねる。
あまりにも急ぎ足だったため、周りにいたほかの客もこちらを見つめてくる。
「谷岡提督!全提督の今日の予定!どうなってるんっすか!?」
俺は声を荒げる。艦娘二人は驚いた表情でこちらを見る。
谷岡提督のみが意地悪い微笑みを浮かべる。
「ほら、今日の予定が書かれたリストだ」
持ち運んでいたカバンからそのリストが書かれたファイルを渡される。
俺は急いでそのファイルをめくる。
殆どが休日だった。一部仕事の提督もいるが、ごく少数。
俺はその場構わずスマホを取り出して、急いで工廠の親方に電話する。
あの小さなおっちゃんでも携帯は使えるらしい。
そう思っていると電話がつながる。
「おお、広樹か!どないした!!」
耳に響く大きな声。そんなことも気にせずにすぐに俺は口を開く。
「今から言う提督について!調べてくれ!早急にや!!」
俺の荒げた声を聞いて驚きつつもすぐに作業に入る親方。
俺の言った提督の名前を洗い出して、ある程度の情報が聞けた。
この瞬間、予測が確信に変わる。
「あかん・・・夕張がやばい・・・っ!!」
ファイルをテーブルに叩きつけて、そこに立てかけていた槍を背負って全速力で店を出た。
「ど、どうしたのでしょう・・・」
筑摩と霰が疑問を浮かべながら向き合っていると、谷岡提督が笑い出す。
「池宮憲兵・・・やはり面白い男だ」
そう言って暫く、その場から動かなかった。
午前十時半。
舞鶴鎮守府では、演武場で一方的な激闘が繰り広げられていた。
艤装が破壊され、なすすべも無く逃げ回る夕張に、それを追う加賀の艦載機と日向。
逃げ回る夕張はギャラリーの憲兵から罵倒され、加賀と日向には歓声が上がる。
その姿を上の待機室から見下げる小室提督。
「くっ・・・おかしいよ・・・こんなのっ!」
逃げ回る夕張に容赦なく襲い掛かる攻撃。
戦うすべを失った彼女には、逃げ回ることしかできない。
だが、その姿を良しとしないギャラリーの罵倒は止まらない。
「おい艦娘!もっとしゃきっとしろー!」
「戦えー!お前は戦うために生まれてきたんだろー!!」
「そんなんで深海凄艦と戦えるのかー!!」
ギャラリーも、攻撃も止まらない。物理的にも精神的にも追い込まれる夕張。
その二方向からの攻撃に、夕張は体力を奪われていく。
「・・・・・・」
加賀、日向は口を開かずに攻撃をしている。
「皆さん!これが艦娘の力です!この力で我等の海域を必ずや取り戻し、この国の秩序と平和を
取り戻して見せましょう!!」
ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!
小室提督の発言にギャラリーが沸く。
「心配しなくても、この程度で艦娘は死にはしません。彼女達はあくまで《兵器》ですから。
兵器がこの程度で死んでしまうとは、ただの人ではありませんか・・・」
下劣な顔つきで話す小室提督。だがその表情はギャラリーからは見えない。
そう話しているうちにも、戦闘は進行していき、徐々に夕張に砲撃が当たり始める。
そして、加賀の艦載機の攻撃が、夕張の逃げる術である右足に命中する。
「キャッ!!」
夕張は足から血を流して倒れこむ。立ち上がろうとするも、右足が言うことを利かない。
そうしている間に、艦載機に囲まれ、日向に砲口を向けられる。
その瞬間を見て、夕張の表情は絶望に堕ちていた。
「あぁ・・・」
恐怖心が声に出る。もう言葉にすらならない。
動かない足。流れ出る血。目の前には・・・絶望の果て、もう見ることができない世界。
いろいろな光景が思い浮かぶ。死ぬ前に人が必ず迎える瞬間だ。
その光景をさかのぼっていくと、涙が止まらない。
「あぁ・・・あぁ・・・!!」
ただ泣くことしか出来なかった。これから死に行く定めの自分に。地面に這いつくばっている自分に。
何も出来ない無力な自分に。
そして、最後に聞こえた言葉。
「ごめん」
日向がそう呟く。夕張はその言葉を聞くと目を瞑った。諦めた。
暗闇の中、意識が遠のいていく瞬間を待ち続ける。
そして・・・艦載機の銃声、砲撃が聞こえてくる。
演武場は巨大な爆風に包まれた。ギャラリーたちも飛ばされないように必死に踏ん張る。
加賀と日向は涙を浮かべる。その涙は無残にも爆風にて吹き飛ばされる。
そして、元凶が笑った。
「ハーハッハッハッハ!!!これで夕張、君は終わりだ・・・
安心せよ、また君は新たに生まれ変わるのだ・・・
私の忠実な僕として・・・。そのときは、君を、最強の艦娘に仕立ててあげようではないか・・・!」
高らかに笑う小室提督。全ては計画通り。解体とは言えない直接的な殺傷。
艦娘は法に縛られる人間ではないため、そういった類で裁判沙汰になったりはしない。
そう考えれば理不尽な世の中だ。あくまで艦娘は兵器だというのが世間の現状なのだ。
目の前が真っ暗だ。
あれ・・・私・・・どうしてたんだっけ・・・
確か・・・私は・・・足を・・・撃たれて・・・それから・・・
あっ・・・そっか・・・私・・・死んじゃったんだ・・・
だからもう・・・無理しなくていいんだ・・・
頑張らなくていいんだ・・・起きなくていいんだ・・・
一生・・・寝てて・・・いいんだ・・・
あぁ・・・痛いな・・・いつ意識が・・・飛ぶんだろ・・・
早く・・・逝きたい・・・な・・・って・・・
パチィィィン!!
「いったぁああああ!!!」
私は大声で叫ぶ。頬には赤く平手打ちした跡。叩かれたであろう頬をさする。
そして、目の前には光が見える。
あれ・・・私は・・・なんで・・・
「あっ・・・」
私は目を疑った。そこには今はいなかったはずの存在。早朝、日の出を一緒に見た存在。
ゲームについて熱く語り合った存在。駅で身体を張って助けてくれた存在。
そして・・・夢を語ってくれた存在。私に夢をくれた存在。
自然と涙が溢れた。ありったけの涙が。その涙はその存在の腕を濡らす。
そして、私は、その存在の名前を、呼んだ。
「池宮・・・ざん・・・・・・」
爆風によって巻き起こった煙が晴れる。晴れると、そこには砲撃跡。
だが、それ以外は何も無い。
「なっ!?なんだと!!??」
小室提督は驚いて窓越しに演武場を見つめる。その砲撃跡から視線を少しずらすと・・・
「ば、馬鹿な・・・奴は・・・谷岡提督と・・・一緒に・・・ッ!!」
煙の中から現れたのは、片手の頬に紅葉の跡がついた夕張と・・・
「おい我ェ・・・何しとんねや・・・あぁ・・・?」
怒りに怒った俺・・・池宮広樹だった。
えっと、とりあえず次ははじめての人間VS艦娘です。割とこの組み合わせもメインの戦闘スタイルになる予定です。
どういった感じになるのかはまた後ほどのお楽しみということで。
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