Demon's Stella ~悪魔の彗星~   作:Hershel

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キャラクター紹介

堀本健介(ほりもと けんすけ)
性別:男 年齢:20歳 身長:172cm 体重:59kg

舞鶴鎮守府に所属する提督。今年の春から配属された新人提督の一人。
金髪ロングヘヤー。男にしてはかなり長い。後ろ髪は肩についている。
海軍学校を主席で卒業し、指揮に関しても新人とは思えない頭の回転と的確な指示をする
未来の谷岡提督とまで称されるほどの実力の持ち主。

群れで行動することを嫌い、《谷岡派》に招待されるも、その誘いを断っている。
谷岡提督の思想にもあまり共感していない様子。

性格は冷静沈着。無駄なことは話さない性質で、非常に無愛想。
しかし、真面目なことが仇に、間違えたこと、納得しないことには非常に口を出す。
自然と突っ込み側に回ってしまう、尻拭い役。
同期の風見提督には『けんちゃん』と呼ばれている。


第六話 けんちゃんとりんちゃん

「んっ・・・・・・」

 

あれからどのくらい経ったのだろう。

最後に感じた冷たく、固い感覚は無くなり、温かく、やわらかい感覚に包まれる。

見上げると、白い天井にカーテンをかけるレーンが天井に張り巡らされている。

ここは、執務棟の治療室。普段は提督と艦娘以外は治療しないはずが、俺は全身包帯で

包まれているのか、何か布生地が触れている感覚を覚える。

とりあえず俺は、状況を把握しようと上半身を起こそうとする。

しかし、突然全身に電撃が走る。

 

「いっでええええええ!!!」

 

痛みに耐えられず蹲る。なんだこれ、全身が非常に痛い。

身体を動かした瞬間、それを拒むかのように俺を押さえつけようとする。

骨折・・・といったものではないが、とりあえず身体は動かすことを許そうとせず

俺を痛みで抑制した。

 

「久々に・・・あれ使ったからかぁ・・・」

 

俺は意識が飛ぶ前の出来事を思い出す。

異端の戦闘術である《魔導術》は、深海凄艦に対抗するほどの戦闘力を持つ、艤装付きの艦娘

を一人で圧倒し、その強さを大勢の人の前で見せ付けてしまった。

反応はそれぞれ違っていたが、たぶん、あの場所にいた殆どの人間は、人間ならざる力の前に

動揺隠さずを得なかっただろう。

次の仕事のときから、どんな顔して行けばいいのだろう。

・・・って、待てよ。包帯が巻かれてるってことは・・・裸を誰かに見られたってことだよな?

ということは・・・あれも見られちまったのか・・・?

 

「俺のちん」

「見てねぇよ」

 

俺の言葉を遮るようにカーテンが開けられる。

軍服のポケットに片手を突っ込んでムスッとした表情で出迎えてくれたのは。

 

「俺がここまで運んでやったんだからな、感謝しろよ」

 

飯田憲兵だ。こいつは本当にいいタイミングで毎度登場してくれる。

それでこそ俺の漫才の相方だ。

 

「にししっ・・・ありがとな、飯田」

 

俺は笑顔で感謝する。そして、飯田は隣のカーテンにも手をつける。

 

「ほら、あいつが起きたぞ。顔を見せてやんな」

 

そうして俺から見て右隣のカーテンが開かれる。

そこには、上半身を起こして、両足に包帯が巻かれた夕張の姿があった。

 

「あっ・・・」

 

夕張は声を漏らす。暫く俺のことをじっと見つめていると、瞳に涙を浮かべる。

 

「うっ・・・ううっ・・・」

 

その姿を見て俺は慌てた。俺、何か悪いことしたか!?

 

「ど、どうしたんや夕張!なんで泣いて・・・いてぇぇ!!」

 

涙を流している夕張を宥めようと身体を起こして手を伸ばそうとするとまた全身に激しい痛み。

その声を聞いて涙を流していた夕張は驚き、そのまま涙を抑える。

 

「だ、大丈夫!?痛いなら無理しないで・・・」

 

夕張に宥められる。宥めようとしたら逆に宥められるって・・・ちょっと惨めになる。

 

「だ、大丈夫や・・・大丈夫・・・」

 

俺は諦めて顔だけ夕張に向けることにした。まるで重症患者だな。

 

「足、どうや?」

 

包帯を巻かれた足。白い包帯の先は肉眼では見ることはできず、俺は容態を尋ねる。

 

「うん。松葉杖があれば歩ける・・・かな」

 

そう言って右足を擦っている。

 

「左足はかすった程度だから、左足を軸にすれば、移動ぐらいならできるよ」

「そっか。よかったよかった」

 

俺はうんうんと頷く。その姿を見て夕張も微笑む。

そして、少し顔を俯かせて話を続ける。

 

「池宮さん・・・ありがとうございました」

「ん?」

 

俺は急に感謝され何事だと思うような顔つきで夕張を見る。

 

「私のために・・・怒ってくれて・・・戦ってくれて」

 

指を弄りながら夕張は話している。少し緊張しているのだろうか、よく分からないが

細かいところでちょこちょこ動いている。

 

「正直、もう駄目だと思っていたの。あの時は、何もかもが敵で、加賀さんや日向さん

小室提督に観戦の憲兵さんたち。全てが敵だった。

一人で戦うには荷が重過ぎた。だから、あの時は諦めてたの。

でも池宮さんのこと思い出したんです。あの船で夢を語ってくれた池宮さん。

そして、私にも戦うことで人間のためになるっていうことも分かった。

でも、その芽生えたものが一瞬で散っていくって考えると・・・

悔しくて、悔しくて。涙が止まらなかったけど・・・」

 

一呼吸置いて、夕張は晴れた笑顔を俺に向けて口を開く。

 

「でも、貴方が助けてきてくれた。何も惜しまずに、ただ全力で」

 

ただ全力で。そうだ。俺はただ全力で、加賀と日向を倒し、小室提督を殴った。

夕張のために。それだけは確信できるだろう。

だから俺は力を使うことをそこまで躊躇わなかったのかもしれない。

 

「でも、こんなことになるなら、もう無茶しないでよね」

 

そう言って全身包帯に巻かれた俺の身体を、彼女の傍にあった松葉杖で突かれる。

軽く触られただけなのに激痛が走る。

 

「いでえええええ!!」

 

何でこんなに痛いのかも自分でも分からない。多分よっぽど無理をしていたのだろう。

考えたら魔導術を使ったのもそうだが、かなりの練度を持った艦娘二人を相手にしたんだ。

そりゃ痛くなるか。

 

「うわ!ご、ごめんね・・・」

 

あまりの大きな反応に思わず謝ってしまう夕張。

しゅんとしょぼくれる感じは、ただ純粋に可愛らしい。

そうやって夕張とやり取りしていると、間にいた一人の男が咳払いをする。

 

「うぉっほん!」

「あ、まだいたんかい」

 

俺は夕張から飯田に視線を移す。その表情は何か何処となく微妙な表情になっている。

 

「ご、ごめんね飯田さん。ほったらかしにして・・・」

「夕張ちゃんは謝らなくていいよ。悪いのはこ・い・つ♡」

 

そう言って俺の脚を平手打ち。痛みに耐え切れず俺は飛び上がる。

 

「ぐええええええ!!!」

 

もうただのうめき声になってしまう。それを見て夕張は申し訳なさそうにしながらも

くすくすと笑っている。

そうやって他愛もない時間を少しの間過ごしていた。

そうすると、治療室に二人の人間が入ってくる。

 

「あぁ!君、起きたんだ!」

 

快活な女性の声が聞こえてくる。

茶髪、ショートヘヤー、紫のカチューシャをした白い軍服を来た女の子。

よく見ると腰には舞鶴鎮守府に所属する提督が身に着けている軍帽が付けられている。

かぶれよ。

 

「ふんっ、ようやくお目覚めか」

 

低い声でゆっくりこちらに姿を見せる。

金髪で男にしては長い髪、白い軍服に提督だということを示す軍帽をかぶった男。

俺には見慣れない二人だった。この鎮守府の提督だろうか。

 

「始めましてだね。私、《風見鈴》。皆からは、『りんちゃん』って呼ばれてるよ!」

 

えへへ、とニコニコ笑って自己紹介を済ます。えらく明るい子だな。

そう考えていると隣にいた無愛想な男が口を挟む。

 

「誰も『りんちゃん』などとは呼んでいないけどな」

 

鼻息を荒く、腕を組んで口を開く男。それにりんちゃんは反論する。

 

「失礼だなぁ、『けんちゃん』。これからみーんなにそう呼んでもらうんだから」

「おい、『けんちゃん』はやめろ」

「あ、『すけちゃん』のほうがよかった?」

「もっとやめろ!」

 

けんちゃんとりんちゃんは息がぴったりかのように会話を進める。

その姿を見て、俺と飯田は口をそろえて

 

「いいコンビだ・・・」

 

そう呟く。もちろん、漫才コンビとしてだ。

 

「ふふっ」

 

夕張も笑いをこぼす。俺達がそういった反応をしていると、りんちゃんはごめんねといわんばかりに

ぺこりと会釈する。

 

「ごめんね、けが人の前で騒いじゃって。この人は《堀本健介》さん。これでも今年入った提督の

中でダントツのトップ成績で、超期待のルーキーなんだよ!」

 

じゃじゃーんというように手を広げて堀本提督・・・いや、けんちゃんを紹介する。

それが恥ずかしいのかけんちゃんはりんちゃんを顔から押し出す。

 

「や・め・ろ」

「ぐぬぬー・・・りんちゃんは負けませんぞぉ・・・!」

 

りんちゃんも抵抗している。何かよく分からない光景が俺の目に映っていた。

 

「飯田」

「ん?」

「世界って・・・広いな」

「あぁ、そうだな」

 

俺達は何を悟ったのか、世界の広さについて語っていた。

夕張はどうしたらいいのかわからず暫くおどおどとしていた。

 

 

 

 

 

 

けんちゃんとりんちゃんは落ち着きを取り戻して、備え付けの椅子に腰掛けて俺達と対話する姿勢をとる。

 

「えっとね、一応私も提督なんだ。けんちゃんとは同期で、一緒の時期に入隊したの」

 

つまり、女性提督。昔の戦争が起こっていた時代では考えもしないことであったが、今は現代。

女性でも政治家になれるし、提督にだってなれるのだ。

でも何でそんな新人提督達が俺に会いに来てくれたんだ?特に気にならないが謎が深まる。

 

「あ、そうそう。今日はひろくんに用があるんでした」

「ひ、ひろくん?」

 

お、俺のことか?ひろくんなんて小さいころに母に呼ばれたことあるぐらいで非常に抵抗があった。

あれ?何で俺の名前、フルネームで知ってるんだ?

俺は心当たりのある人が見当たらない。が、向こうから現れてくれる。

 

「てへっ☆」

 

飯田てめぇかあああ!!プライバシーの保護もクソもないな!

 

「そう!ひろくん!」

 

あーあーと俺はもう半分諦め気味に頷く。こういう女は多分強制しても聞いてくれない。

実際けんちゃんがそうだからだ。

 

「それでね、ひろくんは憲兵さんなんだよね?」

「せやで」

 

俺はそう短く答える。そう言うとりんちゃんはうんうんと頷く。

 

「そっか。そこの飯田さんからちょっと聞いたんだけど、すっごく強いんだってね!」

 

また飯田か。お前は俺の情報を何勝手に流してるんだ。

 

「憲兵さんの演習でも負けなし!上官さんお墨付きの戦闘能力を兼ね備えてるって!」

「それに、今時の憲兵には珍しい槍使いとも聞いた」

 

けんちゃんとりんちゃんが俺の情報を話し続ける。

まだ続くということは、飯田本当に結構もらしやがったな。

 

「すごいよね~!しかも、今回は夕張ちゃんを守るために、艦娘相手に戦ったんだってね!」

「まぁ、当本人はその反動でこうして療養しているのだがな」

 

りんちゃんは俺の顔に近づいて尊敬の眼差しで見つめる。

けんちゃんはそれと対象に自分の髪をかき上げて俺から視線をそらす。

 

「かっこいいよね~、私も男の人に守られたいな~」

「一生無理だな、馬鹿女」

「なによ~けんちゃんだって、女の子を守れる男の子にならないとだめだぞ!」

「余計なお世話だ」

 

ふんっと言ってそっぽ向くけんちゃん。これがいわゆるツンデレって奴なのか?

いつかはデレると信じて。

そのコントを見終わると俺は口を開く。

 

「んで、今日は俺の見舞いだけに来てくれたんか?悪いけど俺は君らのことほんま何も知らんねんけど」

 

そう言うと二人は向き合って頷く。

そしてけんちゃんが先に口を開く。

 

「あぁ。『今日は』見舞いだけに来た」

「今は安静にしてなきゃ駄目だしね~」

 

りんちゃんはうんうんと頷いては、痛みを感じないように肩を優しく撫でてくれる。

 

「んじゃ、お大事に!今度またいろいろお話したいな!」

「では、失礼する」

 

二人は治療室を出て行く。なんかよく分からない二人組みだった。

 

「どうだ、変な奴らだったろ?」

「いろいろしゃべりすぎや」

 

俺は不満そうな表情を浮かべる。そして、飯田が先に口を開く。

 

「艦娘については、あいつらからいろいろ教わった。お前が慌てていた理由も分かった。

手助けしてやれなくて、ごめんな」

 

飯田は俺に視線を合わせて話す。真顔になった飯田を見ては俺は首を横に振る。

 

「ええよ、別に。艦娘に関しては基本的には機密事項やし、それにお前は夕張をここまで

運んでくれたやん」

「ついでにお前もな」

 

感謝の言葉を伝えていると、飯田は意地悪い笑みを浮かべて放った言葉に俺はぐうの音もでない。

 

「せ・・・せやな」

「しっかり感謝してくれよなー」

 

俺は汗を流して視線をそらす。その姿を見て飯田はにやつきを隠せない。

 

「おっと、そろそろ仕事の時間だ。おとなしくしてろよ~」

 

そう言って飯田はひらひらと手を振って治療室を後にする。

治療室の主は今外出しているようで、俺はこの空間夕張と二人きりになった。

 

「あぁ~暇やなぁ~」

「そうね・・・暇ね・・・」

 

俺と夕張は窓の外を見てはそう呟く。

夕張はある程度自由に身体を動かせるものの、俺に関しては今日はちょっと厳しい。

 

「そういや、俺っていつ倒れてたん?」

 

不意に疑問に思ったことを呟く。

今は午後2時。普通に考えたら3時間ほど倒れていたと考えるのが妥当だ。

 

「昨日の11時ぐらいだったと思うけど・・・」

「うわぁ・・・」

 

一日中寝てたってことかよ!なんか人生損した気分だ・・・。

考えたら3時間で夕張がここまで体調よくなるわけないもんな。

身体は大丈夫かもしれないが、精神的に・・・な。

 

「あ~今日はゲームでけへんわ~つらいわ~」

 

俺は退屈な療養生活に俺は本音を漏らす。

そう言ってると夕張は一人にやつく。

 

「ふっふっふ・・・」

 

そう言って布団の中から夕張はあるものを取り出す。

 

「なっ!?」

 

俺はその取り出したものを見て驚愕する。

なんと、テレビゲーム機のコントローラー。いつの間にそんなもの持ち込んだお前!

 

「今日の朝、こっそり持ち込んだんだ~」

 

いいだろいいだろ~と言わんばかりに見せびらかす。

なんだこの敗北感。他の人からしたら非常に呆れることだが全く動けない自分が憎い!

 

「この前のゲーム、やろうと思ってるんだけど、私まだ二章までしか進んでないんだ」

「そうなんかいな。俺のとこより手前やな」

 

二章とはどの辺りだっけと俺は思い出す。

そうしていると夕張が口を開く。

 

「分からないところがあるんだ、教えてくれないかな?」

 

照れ笑いをする夕張。それを見て不思議といい気分になり、俺は返事をする。

 

「ええで。テレビ画面遠いから微妙に見えづらいけどな」

「あはは、あくまで治療室の備え付けのテレビだからね」

 

夕張は身体を起こし、ゲーム機の電源を付けて画面に向き合う。

見慣れたゲームのオープニング、タイトル画面、ロード画面にそれらのBGM。

俺はこのとき、こんなマイナーなゲームをやってる人が近くにいるんだなと改めて実感する。

ロード画面が終わり、ゲームが始まると、その開始地点を見たら俺はある程度思い出す。

 

「あ、そこか」

「覚えてるんだ」

「俺もそこはめんどかったわ~」

 

思い出しながら笑いがこみ上げる。ゲームで共感できるのはやっぱりいいな。

それが誰もやってなさそうなマイナーゲームなら尚更だ。

 

「ここの謎解き難しくてね~。全部教えてもらうのはあれだし、ヒントだけもらえないかな?」

 

夕張がこちらを見て頼み込んでくる。俺は起き上がることができないため、口だけで説明していく。

 

「ここはな、松明を使うことが重要やねん」

「でもこれって明かりを灯すためのもの・・・だよね?」

 

夕張は首を傾げる。今夕張が攻略しているダンジョンは、松明で明かりをつけて進んでいく

暗闇の洞窟だ。どこかのモンスターゲームのひでんマシンの技で全部明るくなったりしないから

明かりを灯す松明がすごく重要である。

あれ?今はわざマシンだっけか。まぁそんなことはどうだっていい。

謎解きとはそういうところに食いついてくる。松明は、明かりだという人間の勝手な

決定意識を利用した、単純明快なトリック。

 

「あとは自分で考えてみ」

「むぅ・・・意外と手厳しい」

 

夕張はそう呟くとやってやるぞーと言った感じでゲームに打ち込む。

俺はその姿が微笑ましく思えて思わず笑ってしまう。

 

「たまには・・・こういうのもええな」

 

俺はこの何気ない日常に、喜びを感じていた。

 

「・・・くいっ」

 

俺は少しだけ身体を動かす。

 

「いでぇえええええ!!!」

「うわぁ!!」

 

夕張は驚いてこちらを振り向く。

やっぱり・・・身体だけは何とかしてくれえええええ!!

 

 

 

 

 

 

同時刻、演武場で人が話し込んでいる姿が見られた。

飯田憲兵、堀本提督、風見提督の三人だ。

 

「しっかし、ひどい有様だなぁ」

 

飯田は砲撃跡などで荒れ果てた演武場を見て呟く。

 

「本当に艦娘と戦ってたんですね~あの人」

「同じ人間として信じられんな」

 

堀本と風見は関心している。

 

「まぁ、あいつはちょっと特別な奴だからな」

「あぁ、飯田さんは見ちゃったんでしたっけ?」

 

風見は飯田の顔を覗き込んで意地悪い顔で笑う。

飯田は深く帽子をかぶってくすくすと笑っている。

 

「何かあるとは思っていたが、まさかあそこまで『出来てる』とは思ってもなかったよ」

「飯田さんがそう言うなら、それほどだったのか・・・」

 

堀本は腕を組んで考えるような動作をする。

 

「どちらにせよ、お前達はいつか、あいつを頼ることになるだろうな」

 

飯田はそう言って執務棟に目をやる。

 

「刻み込まれたあれ・・・相当自分を追い詰めたんだろうな・・・あいつ」

 

そう呟くと堀本と風見のほうに振り返り、手をぱんぱんと叩く。

 

「さぁ、後片付けの続きだ。ここ片付けないと俺達の演習ができないんだ」

「へぇ~い」

 

風見は面倒臭そうに返事する。堀本は頷き、黙々と作業をする。

そうしているうちに、二人の少女が三人の下へ駆けつける。

 

「あ、《榛名》だ~!おかえり~!」

「ただいまです、風見提督!」

「もう、りんちゃんって呼んでよ~!」

「さ、さすがにそれは・・・」

 

駆け寄ってきた艦娘、榛名は元気に挨拶する。

巫女服をベースにした服装に、黒髪ロングヘヤーに電探に見立てたカチューシャを身に付けている。

彼女は風見から出た言葉に戸惑い、言葉を詰まらせる。

 

「榛名が困っているだろ、やめてやれ」

「え~、困ってるの~?」

 

風見がぶーぶーと言う。その姿を見て堀本は風見にこつんと拳骨一発。風見は蹲る。

そんなやり取りをしていると、もう一人の艦娘が堀本に話しかける。

 

「堀本提督!航空母艦《蒼龍》、ただいま帰投しました!」

「ご苦労」

 

榛名と打って変わって、こちらははきはきとした声、綺麗な姿勢で敬礼して、蒼龍は帰投報告をする。

見た目は紺色の髪にツインテール、緑色の着物に包まれている。

 

「小室提督はまだ暫く寝込んでいる様子。彼の艦娘達はある程度回復しており、海戦には問題ないとのこと。

池宮憲兵、上手いこと傷つけないように戦っていたようですね」

「ものすごーく怒ってたらしいけど、そういうことはきっちりしてるんだね~」

 

蒼龍の報告に、風見提督が首を突っ込む。そして、榛名も口を開く。

 

「次に榛名ですね。やっぱり、鎮守府に残っていた《谷岡派》の提督達はグルだったようです。

演習任務やら休暇やらも、谷岡提督が操作した可能性が高いと考えられます」

「ふん、やはりいけ好かない奴らだ」

 

榛名の報告を聞いて堀本が反応し、鼻息を荒くする。

 

「んじゃ、池宮が谷岡提督の護衛っていうのも作戦の一つなんだろうな。

電話して正解だったぜ」

「だが、もし電話に出なかったらどうしてたのだ?」

 

堀本が疑問に思い、飯田に尋ねる。

飯田はニヤニヤと気味悪い笑みを浮かべる。

 

「あいつのスマホのマナーモードにするボタン、俺が潰したんだ」

「うわぁ・・・」

 

風見、榛名、蒼龍の三人は顔を歪ませて引く。さすがにそこまで引かれて少し飯田が落ち込む。

 

「いいじゃねぇか・・・こうして夕張ちゃんも無事だったわけだし」

 

俺の行動に間違いはなかったんだ!と言い聞かせるように声を張る。

 

「だが、この程度で終わるのだろうか」

 

堀本はとっさに呟く。それを聞いて周り全員真顔になる。

 

「ならないだろうな。逆に、これからはどんどん激化すると思う」

 

飯田はそう話す。堀本、風見も頷く。

 

「なんとか、こっち側に引き入れたいですね、池宮憲兵を」

「大丈夫さ、あいつならきっと、自然とこっちに来るさ」

 

飯田の根拠のない自信。だが、彼の顔は自信に満ち溢れていた。

 

「なんせ、俺の漫才コンビの相方だからな」

 

屈託の無い笑顔を、皆に見せた。その顔を見て、皆が笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったああああ!!クリアだよ!池宮さん!!」

 

ダンジョンをクリアして、最奥のボスを倒した夕張。

それを見て俺は賞賛の言葉を送る。

 

「やったやん!ボスは楽勝やったな」

「アレだけダンジョン動き回ってたから自然にレベル上がっちゃったからね~」

 

夕張は道中を思い出しながら語る。

松明の謎の種は、まずはとある小部屋に入ってろうそくに火をつける。それで小部屋が明るくなる。

だが、それだけでは足りない。違う部屋から持ってきた灯油を使って、下のカーペットを濡らすんだ。

さらに他の部屋から持ってきた木の枝にハンカチを巻き、灯油を濡らして引火させる。

それをカーペットに放り投げると、下へと続く階段が現れるっていうものだ。

・・・でも、灯油かけられたカーペットに火なんて投げ入れると大惨事だろっていうのは

ゲームのお約束みたいなものなんで気にしないでほしい。

 

この探索までで、かなりの雑魚モンスターと戦っており、夕張のレベルはボスを軽くあしらえるほど

強くなっていた。ボス戦は余裕で、無事第二章クリアだ。

 

「今振り返ってみれば、結構単純な謎だったね」

「松明が大事なんやな」

「そうだね」

 

夕張はうんうんと呟く。俺も松明言い過ぎて夢で出てきそうな勢いだ。

一旦セーブして、電源を落とす夕張。

そして、俺のほうに向いて口を開く。

 

「ねぇ、池宮さん」

「ん?」

 

俺は顔だけしか向けることができずにそのまま返答する。

そして、夕張は笑顔を作って話しかける。

 

「楽しいね」

 

たった一言だが、そこにはたくさんの思いが詰め込まれていた。

俺が懸命に繋いだ夕張の命。その価値を夕張は理解し、喜びと共に、俺に一言で示してくれた。

それが嬉しくて堪らなかった。痛みなんて忘れるレベルに。

 

「俺も、楽しいで」

 

笑顔。治療室は笑顔であふれていた。




新キャラ・・・というか新提督登場!これからいろいろ伏線張り巡らせていきたいなーとかなんとか。次の2~3話ぐらいは戦闘なしかも。暫くは怪我で動けないメロンちゃんと憲兵くんの絡み、他キャラの動向にご期待くださいということで。
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