東方饅頭拾転録 【本編完結】   作:みずしろオルカ

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 勢いで同月同日別視点

 あっきゅんの日記です。



稗田阿求の日記 〇月

○月×日

 

 幻想郷縁起の編纂(へんさん)も今日の所は一段落ついた。

 家の者の話だと、今日は森の方からものすごい悲鳴が上がったらしい。

 

 男性のものだと言っていたが、里の誰かが妖怪に襲われたのだろうか?

 だとすれば、悲鳴を上げた本人は無事なのだろうか?

 

 今のところ行方不明の者の話は来ていないが、里の外れに住んでいる彼のこともある。

 一人暮らしをしている人たちへの確認をしなくては……。

 

 

○月△日

 

 今日、里の外れに住んでいる『海原 参護』さんが八百屋で目撃されたと報告を受けた。

 正直安堵している。

 

 彼は私が頼んで里の外れに住んでもらった経緯がある。

 慧音さん以外で妖怪に対応できる数少ない戦力でもあるし、村の周辺への警戒をしてもらうためにも彼を里外れに住まわせたのだ。

 

 里の警備という面での心配もあるけど、それ以上に無邪気にお礼を言っていた彼が死んでしまうということは心苦しいものがある。

 

 近いうちに、何かお礼をした方がいいのだろうか?

 

 

 

○月□日

 

 今日は参護さんが家を訪ねて来てくれた。

 

 珍しい妖怪を拾ったので、害が無いか・生態はどのようなものかを知りたかったらしい。

 だけど、残念ながら私の知識の中にも、過去の幻想郷縁起にも、『まんじゅう族ゆっくり妖怪』という記述のみで、生態も危険度も何も記されていなかった。

 

 非常に珍しい妖怪だ。

 

 彼が言うには二日程、家で生活を共にしたが人懐っこくて害が無いと思われるそうだ。

 昨日のお礼の件もあったので、正式にゆっくり妖怪の生態調査を依頼した。

 

 彼は快く引き受けてくれた。

 少しの罪悪感。

 

 彼を妖怪への壁のような扱いをしたのだから当然かもしれない。

 だというのに、私に様付けで敬ってくれるし、時々魚などの食材もおすそ分けしてくれる。

 

 ……うん、依頼料は多めに出してあげよう。

 

 

 

○月◇日

 

 今日、参護さんが川魚を持ってきてくれた。

 

 幻想郷で魚は川と湖にしかおらず、妖怪の脅威も相まって非常に高価だ。

 

 まだ、里の中で飼育できる家畜たちの方が値段が良心的だ。

 

 それをおすそ分けしてくれるのだ。本人はどうやら住む場所を提供してくれたことを感謝してくれているようだけど、私はそんな善意で彼を住まわせたわけじゃないから罪悪感がある。

 

 彼が来てから一年ぐらい経つけど、私の想像以上に里は平和になった。

 

 そもそも、人里へ来る妖怪は八雲紫が決めたルールを理解しない低級妖怪だ。それでも、戦闘力を持たない一般人には十分に脅威。

 彼があそこに住んでくれてから、妖怪の被害は目に見えて少なくなったのだから里の人間も感謝しているようだ。

 

 今は何でも屋と称して活動しているみたいだけど、キチンと暮らせているようで安心する。

 

 やっぱり、謝罪の意味も含めてしっかりとした対応をしなくてはならないだろう。

 

 明日、参護さんの家に行こう。

 

 

 

○月☆日

 

 参護さんの家に行ってきた。

 

 少々広い物件で、普通なら家族が住むような家に一人暮らし。

 それでも、縄を編んだり、障子の紙を張り替えたり、草履や下駄を作ったりと戦い以外でも仕事をしているようで、空いている部屋にはそれらの道具が置いてあった。

 

 私がお邪魔するとにこやかに応対してくれた。

 同居しているゆっくり妖怪も私に対して警戒することなく、座っている膝に体を()り寄せて来る。

 

 参護さんが言うには、食べるものは人間と同じで、元となった人物(この場合は紅魔館の魔女だが)に性格や行動が似ていること、心配になるぐらい警戒心が低いことが分かったことなのだそうだ。

 

 それをメモしながら、それとなく聞いてみた。

 雑談のようにして、罪悪感に痛む質問をしてみた。

 

「里の外れで妖怪の襲来もある場所に住まわされて恨んでいませんか?」

 

 その質問に、参護さんは

 

「いいえ、来たばかりの人間に住居を用意してくれたばかりか、里を守ることで住人から信用が得られやすいので助かっています。恨むなんてことはありませんよ」

 

 雑談の中での事だったので彼が覚えているかどうかわからないけど、少しだけ私の中の罪悪感が和らいでくれた、そんな気がした。

 

 この回答のうれしさと、珍しいゆっくり妖怪の情報が得られたので、少々奮発して依頼料を置いてきた。

 

 彼が良い人で良かった。

 

 

 

○月И日

 

 昨日のおかげか、今日一日気分がよかった。

 

 里の人たちにも、機嫌がいいと指摘されるぐらいだった。

 少し恥ずかしい。

 

 今日は、慧音さんの所に参護さんへ依頼をしていることとその内容を伝えました。

 

 里の中でも上位の実力者である彼女には、彼がしている妖怪の調査は私からの直々の依頼であること、すでに数日暮らしているが、犬猫よりも安全だと思われることを話した。

 

 慧音さんも理解を示してくれた。

 

 私の仕事である幻想郷縁起を完成させる一環と理解してくれたようだ。

 

 慧音さんはどうやら参護さんと少しばかり交流があるようで、彼なら大丈夫だろうと信頼しているようだった。

 

 この一年で彼も里に溶け込めているようで安心した。

 

 

 

○月∀日

 

 先日の情報をもとに、幻想郷縁起を編纂していた。

 

 ゆっくり妖怪の情報は随分と長い間追記されていなかったようで、編纂をする身としてはこれからここの部分が編纂することができるのはうれしい。

 

 定期的に参護さんの所に行って情報を貰うのと、私自身の目でゆっくり妖怪を観察させて貰おう。

 

 あの人懐っこいゆっくり妖怪と遊ぶのも悪くないと思う。

 

 ずっと、編纂していたので気晴らしに外に出る事も必要だ。

 

 明日にでも伺ってみようと思う。

 




 いかがだったでしょうか?

 かなり短くまとまっちゃいましたね。

 次はもっと文字数多く書きたいものです。

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