東方饅頭拾転録 【本編完結】   作:みずしろオルカ

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 阿求の日記

 基本になる海原参護の日記が完成すれば早めに投稿できるんだけどなぁ。

 というわけでどうぞ。

 主人公の家族とか力が少し出てきます。


稗田阿求の日記 △月

△月×日

 

 今日も参護さんの所にお邪魔した。

 

 ゆっくり妖怪のさらなる情報が手に入って、少し参護さんとお話をした。

 

 参護さんのご家族のこと、下級とはいえ妖怪を相手に戦える力のこと。

 道理でと、納得できるような部分と、驚きで思考停止しそうな部分と様々だった。

 

 参護さんのお父上は歴史の浅い魔術師で、その家の三番目の子供として生まれたそうだ。

 魔術師としての稼業は長男が継ぎ、次男は守り・支えたい人物が居るのだと旅立ったらしい。

 

 彼はそんな家族の中で育ち、特に次男の方は強さの桁が違うらしく、彼に鍛えられていたため今のような戦闘力を手に入れたのだそうだ。

 

 彼曰く、今の兄なら上級妖怪すら相手取れるはずだ。とのこと。

 少し大げさかと思ったけど、彼の持っている特殊な呼吸法から生まれる力。

 波紋の呼吸と本人は言っていたけど、その才能も桁が違うのだそうだ。

 

 元々、呼吸法で自然治癒力を増やし、傷を治して痛みを和らげるという技術がある。

 それを、戦いに特化させた人が波紋戦士というらしい。

 

 彼もまた波紋戦士の端くれなのだとか。

 

 幻想郷には無かった力だ。

 紅魔館の門番が気を操れるけど、それとも似て非なる力。

 

 少しだけ、その力を私の身体に流してもらったけど、暖かくてとても優しい気持ちになった。

 

 他人よりも身体の弱い私だけど不思議なことに疲労感や倦怠感が取れ、清々しい気分になれる。

 

 これは、また参護さんの家にお邪魔する理由が増えちゃいましたね。

 

 

 

△月○日

 

 昨日、参護さんが私に使ってくれた波紋の力が未だに身体の中に残ってくれている。

 

 身体の調子がとても良く、まるで羽があちこちに生えているかのような感覚。

 

 うっかり、編纂中に指先を切ってしまったのだけれど、数分もしないうちに傷がふさがって、気付いたら治っていた。

 

 波紋の力とはここまですごい力なのかと今日一日驚きっぱなしだった。

 

 試しに派手に動いてみたいと思ったけど、参護さんに調子がいいのは力が効いている間だけで、効果が切れれば過剰な負荷は筋肉痛になって返ってくると助言を受けた。

 

 うん、今日一日はおとなしく過ごすとしよう。

 

 

 

△月□日

 

 今日も気分爽快だった。

 

 だけど、波紋の力自体は効果が切れているようで、いつもの感覚だった。

 

 筋肉痛も無く、普通に気分爽快な一日だった。

 

 気分が良かったので街に出て散歩を楽しんでいたら、参護さんを見かけた。

 

 内職の完成品を店に卸して、本屋で何冊か本を購入していた。

 確か、ゆっくり妖怪は紅魔館の魔女の姿をしていた。だとすれば、あのゆっくり妖怪が好むのは本であると考えられる。

 近々、家から何冊か貸してあげようかな?

 

 参護さん自身も本は嫌いではないようだった。何度かお邪魔して、本棚に多くの本がおさめられているのを見ている。

 

 私も幻想郷縁起を編纂するにあたって多くの書物を読んでいるから、本の量はかなりのものがある。

 

 何冊か持っていくことにして、それはそうと里で見かけた参護さんは一年間でかなり馴染んでいると思う。

 

 彼はそれを私のおかげだと言ってくれたけど、そんなことはない。

 あの光景は彼の人徳だと思うし、彼じゃなかったらこんな風にならなかったと思う。だから、私のおかげではなく、彼の働きの結果だ。

 

 紅茶用のティーポット一式を購入したのを見て少し気になったが、紅茶が好きなのだろうか?

 

 

 

△月×日

 

 今日の私は少し機嫌が悪い。

 

 無縁塚まで物資の調達に出た人間が、最近この辺りで暴れまわっている妖怪に鉢合わせたと、夕方頃に家の者から報告を受けた。

 

 評価としては下級妖怪になるのだが、最近人間を襲っては凶暴化して、ほぼ中級妖怪と言ってもいいほどになってしまっていた。

 

 近々、霊夢さんに頼んで討伐してもらう予定だっただけに余計に驚いた。

 しかも、この商人の護衛に行っていたのが、参護さんだったというのだから二重に驚きだ。

 

 商人曰く、帰りに件の妖怪に出会い、護衛である参護さんが杖術で撃退。かなり、戦いが長引いて今の時間帯になったということだった。

 

 彼の戦闘を見ていた商人から戦闘の様子を一部始終報告を受けた。

 

 杖術を巧みに操り、先日教えてもらった波紋の力で身体を強化。

 壁や木々を足場にして飛び回りながら一撃を叩き込んでいたそうだ。

 

 彼は自分を弱いと謙遜(けんそん)していたが、肉弾戦では確実に上位に入る実力者だろう。

 

 しかし、何度も地面に叩きつけられたり、尻尾で吹き飛ばされたりしていて正直聞いていて血の気が引く想いだった。

 

 これは明日、慧音さんを伴って彼に説教をしに行くことにしよう。

 しっかりと休んでもらわなければ駄目だ。

 

 

 

△月∀日

 

 今日は朝一で慧音さんの所へ行き、その後二人で参護さんの所へ行ってきた。

 

 笑ってしまうことに参護さんは朝一で行った私たちより先に起きていて、あろうことか新しい武器とやらの素振りをしていた。

 上半身をはだけるぐらいに汗だくになりながら、華麗な舞踏をしているかのような動き。

 

 正直、見惚れてしまってもおかしくない光景だったけど、それ以上に彼への怒りが爆発してしまった。

 

 二人で彼を説教した後に、今日と明日は十分以上に休むように念を押した。

 

 ほぼ中級妖怪相手に大立ち回りをしておいて、しかもボロボロになって帰ってきて、次の日の朝には武器の素振りをするその自己愛の薄さに呆れが出てくる。

 

 慧音さんと二人で食事を用意して、部屋を軽く掃除してから解散となった。

 

 よくよく考えると、異性のために食事を作ったり、掃除したりと通い妻のようだと思い、ちょっと恥ずかしい気分になった。

 慧音さんも一緒だったし、そんな噂が立つこともないだろう。

 

 ゆっくり妖怪も心配だったのだろうか?

 私たちが説教している中、しきりに頷いていたのが印象的だった。

 

 

 

△月☆日

 

 今日は私も慧音さんも参護さんの家に行くことはできないので、事情を話して里に薬を売りに来る月の兎である鈴仙さんに里に来るついでと、帰るついでに様子を見てくれるように頼んだ。

 

 もし、無茶をしているようなら少々強引な手を使っても休ませてくれと念を押しておいた。

 苦笑気味だったのが印象的だった。

 

 彼のおかげで問題の妖怪を撃退し、里の安全が守られたことは喜ばしいのだけれど、霊夢さんや魔理沙さんの様に、妖怪退治が専門というわけじゃないのだから。

 

 どうか、彼が無茶をしていませんように。

 

 




 いかがだったでしょうか?

 慧音日記は後日にします。

 それでは、読んでいただきありがとうございました!

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