東方饅頭拾転録 【本編完結】   作:みずしろオルカ

44 / 87
 お待たせしました。

 参護の日記です。

 今回は療養パート。

 それではどうぞ!

 今回の文字は「Χ」です。
 エックスではなく、カイと読みます。
 ギリシャ文字の大文字ですね。


海原参護の日記 Χ月

Χ月Σ(゚д゚lll)ガーン日

 

 あの戦いから早一か月。

 

 左腕が未だに治らない。

 鈴仙さんが言うには、一番損傷が激しい部位で、普通だったら切除が妥当なレベルだったらしい。

 

 波紋の力のおかげで今ではギブスで固定しておけば、ベットから起きられるぐらい位には回復している。

 

 両足の骨折はもう治りかけだが、まだ立てない。

 

 おかげで気功の鍛錬のための瞑想や、波紋の呼吸の鍛錬一秒間に十回の呼吸、十分間吸い続けて十分間吐き続ける訓練が(はかど)る。

 

 回復速度も上がるし、一挙両得というやつだ。

 

 随分と増築した家にも慣れてきたし……と言いたいところだが、怪我のせいで自室から出れないから慣れようがない。

 

 多分治ってから部屋を出たら、知らない廊下が通ってそうだ。

 

 どうやら阿求様たちの荷物の運び込みも終わったようで、ちょくちょく一日中ウチにいる人たちも増えた。

 

 私室は五部屋。

 阿求様、魔理沙、鈴仙さん、美鈴さん、萃香。

 

 客間が二部屋で、それぞれの部屋にはゆっくりたちが出入りしやすいようにドアにもう一つ小さいドアが付いている。

 

 布団ではなくベッドを採用してベッドの下の空間に収納スペースを確保。

 

 中々いい増築になったようである。

 

 まだ、見たことないがね。

 

 

 

Χ月(;^ν^)ぐぬぬ…日

 

 今日も療養していると、霊夢さんが訪ねてきた。

 

 いわゆるリクライニングベッドというやつで、上半身を起こした状態で応対することができた。

 永遠亭の技術力半端ねぇ……。

 

 色々と回りくどい言い方だったが、どうやら萃香の戦いの渇きを潤してくれたことに対してお礼を言ってくれた。

 

 数百年もの間、弾幕ごっこで満たすしかない欲求を、俺は満たしてやったようだ。

 

 正直、俺は戦いに渇いたことは無い。

 

 あのバケモノ染みて強い兄貴も、目的のために鍛えているだけであって、戦いの為ではないらしい。

 基本的にうちの家系は護る為に剣を取るタイプが多い。

 だから、戦いは手段であって、目的じゃない。

 

 そんな俺の戦いでも萃香は満足したようだ。

 

 元々萃香は博麗神社と天界の一部に住み着いていて、出身は地底らしい。

 どこにでもいるなぁっとか考えていたが、よくよく考えれば俺の家もその住み着いている場所なんだよな。

 

 ここで、Yパチュリーが食事を持ってきた。

 霊夢の分もあるのが、さすがといった所だ。

 

 ゆっくり妖怪は霊夢さんも初めて見たらしく、珍しい妖怪ねっと遠慮なくYパチュリーを持ち上げると色々と触っていた。

 

 揉まれることはゆっくり妖怪にはいいことだから黙認していると、Yパチュリーの髪艶が良くなった気がする。

 

 今思えば、霊夢さんはすごい量の霊力を内包している。

 Yパチュリーに触れている時に、無意識に与えていたのだろう。

 

 すぐに見た目に影響を与えるほどの霊力とは恐れ入る。

 

 あと、霊夢さんには萃香のセクハラ被害を報告しておいた。

 

 エターナルロリが、布団にもぐりこんだり、起きたら指を甘噛みしていたり、日がな一日中臭いを嗅がれたこともあった。

 セクハラって男が訴えてもいいよな?

 

 それを聞いた霊夢さんが、「あの幼女姿のおっさんが!」っと言いながら部屋を出て行った。

 多分萃香の所だろうな。

 

 萃香の悲鳴が聞こえたのはそれから少ししてからだった。

 

 

 

Χ月ヽ(´ー`)ノマターリ日

 

 阿求様は幻想郷縁起をこちらでも編纂できるような環境を私室に揃えたようだ。

 

 朝一で俺を見舞いに来てくれた。

 

 阿求様は魔理沙と一緒にずっと俺を看病し続けてくれた人だ。

 

 鈴仙さんは永遠亭から機材や資材を持って来ていて、看病というよりは道具をそろえたり、最低限の看病の仕方をレクチャーしてくれた存在だ。

 

 そのおかげで俺はこうして治療に集中できる。

 

 阿求様と出会って二年になるが、最初の一年がほとんど交流が無かった。

 

 交流するようになったのは、Yパチュリーを拾った時からだ。

 ゆっくり妖怪は珍しく、縁起にも記述はほとんどなかったらしい。

 

 それを拾ってきた俺が阿求様に相談することで、こうして交流を持てた。

 

 阿求様は俺を騙すように危険な里の境界近くに住まわせたことを気に病んでいたらしいが、むしろ里の番人として早く里に馴染めた上に、いわゆるグレーゾーンの場所だから妖怪が出入りしても住み着いても大きな問題にはならない。

 

 だからこうして、人も妖怪も寄り合ってワイワイやっていられるのだ。

 

 まぁ、時たま死に掛けるのはどうしようもないのだろう。

 

 左腕以外は順調に回復しているが、左は本当に治りが遅い。

 阿求様も気にしていたが、一度立って歩けるようになったら、永遠亭に直接足を運ぶことにしよう。

 切除も考えられていたほどの怪我だ。放置しておいていいはずもないし、治りが遅いのも気になる。

 

 左手が使えないせいで、阿求様に身体を拭いてもらうことになった。

 恥ずかしそうな表情をしていたが、上半身だけとはいえ男の裸体を恥ずかしがるのはある意味当然か。

 

 最近は萃香の奴のせいで女性像が壊れつつあるな。

 

 

 

Χ月( ´_ゝ`)σ)Д`)ツンツン日

 

 ゆっくり達の介護スキルも相当上がったな。

 

 Yフランなんて、包帯の端を咥えて、回転しながら胴体の周りを回る。

 俺の包帯を全身に巻きつけたまま、どこか誇らしそうに部屋を出ていく。

 そうして、Yレミリアが全身に巻きつけた包帯を逆の手順で胴体に巻きつけていく。

 

 すべて終わった後の、この姉妹の満足そうな表情が可愛い。

 

 どんなもんだ!

 

 とでも言っているようだ。

 

 撫でてやると、満足そうに鳴いてから外に出ていく。

 

 入れ替わる様に霊夢さんが訪ねてきた。

 

 どうやら、治療用の札の貼り直しに来たようだ。

 強力な治療結界らしいのだが、その分持続力に難があるらしい。

 

 それでも半日以上持つのは彼女の優秀さゆえか?

 

 どうも、萃香の件で想像以上に彼女が恩を感じているらしい。

 気にしないでいいとも言ったが、「別に気にしてないわよ。めんどい雑魚をアンタに任せた方が私も楽だしね」っと言って続ける予定のようだ。

 

 度々萃香がセクハラに来て霊夢に怒られている様子は恒例の流れの様な物になっている。

 

 一種の漫才みたいな流れなのは面白かった。

 

 

 

Χ月☆-(ノ´∀`)人(´∀`*)ノイエーイ日

 

 阿求様が洗った包帯を丁寧に巻き取ってくれていた。

 

 固定するための支えを固縛するのが目的の包帯だけど、どうやっても汗や垢で汚れる。

 

 だから、しっかりと毎日交換しないと不衛生なのだ。

 YレミリアやYフランが巻き取った包帯をY咲夜が洗濯して、阿求様が丁寧に巻き取ってくれたモノをYレミリアが巻く。

 

 Yパチュリーが排泄物だったり着替えだったりを手伝ったり、痛み止めが切れた時にスグに対応できるように同室で泊まったり……。

 何気に一番働いてくれているな。

 

 今度なんかやってあげないとなぁ。

 

 他のゆっくり達は掃除だったり家事だったりを分担してこなしてくれているらしい。

 

 他のゆっくり妖怪たちの話は阿求様に聞いたが、本当に二年前に比べれば雲泥の差だ。

 あの頃は周りに誰もいなかったし、怪我しても病気しても誰も居なかった。

 

 一人暮らしの風邪で、親のありがたみがわかると言うが、本当に一人でやらなきゃならなかったのは辛かった。

 

 今はこうしてたくさんの人たちに囲まれて、いやはや恵まれてるよ俺。

 

 

 

Χ月(´ε` )日

 

 今日も霊夢さんが札を交換しに来た。

 

 いくらなんでも申し訳ないので、前回来た時はYパチュリーに言ってたくさんの食材を渡したのだ。

 なにしろ、幻想郷の各方面から集まる食材たちだ。

 

 見舞いついでに、またお礼に来てくれたのだ。

 

 霊夢さんを見ていると、どうも兄貴に似ていると感じる。

 めんどくさがりで、目的が無いなら行動もしない。

 自分の才能に少しばかりうんざりしている所なんかが良く似ている。

 

 兄貴の場合は早くから目的が出来たから努力をしていたが、基本的にそんな感じの性格だ。

 

 それをつぶやいたのを聞かれたらしく、「アンタは魔理沙に似てるわよ?」なんて言われた。

 

 彼女が言うには、努力のみで今の位置にいる所とか、どんなに辛くても人の前じゃ笑顔でいる所とか、届かないと分かっているのに手を伸ばすことに躊躇いが無い所が似ているのだそうだ。

 

 気恥ずかしくなるが、おおむね当たっているな。

 

 だから、意外と早く打ち解けたのはこの辺りが関係しているのかもな。

 

 そこからは兄の話を根掘り葉掘り聞かれた。

 

 似てると言われたことで気になったのかもしれない。

 

 天才同士感じるものがあるのかね?

 

 

 

Χ月( ;・`д・´)ナ、ナンダッテー!!日

 

 今日はあ…ありのまま 今日起こった事を書くぜ!

 

「おれは 自室で眠っていたと思ったら、いつのまにか阿求様と萃香の説教中に起きてしまった」

 

 な… 何を言っているのか わからねーと思うが 

 

 おれも 何をされたのか わからなかった…

 

 頭がどうにかなりそうだった… タイミングだとか間の悪さだとか

 

 そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

 

 もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…。

 

 

 なんでも、萃香がまた俺にセクハラしようとして阿求様に見つかったらしい。

 

 というか、胸辺りが濡れているし、セクハラは事後っぽいな。

 

 Yパチュリーが胸を拭いてくれたが、まだ阿求様は説教中。

 

 その間も驚いたことに萃香は正座の姿勢のまま逆らうことなく聞いていた。

 

 ただ、たった一言で阿求様をヒートアップさせた。

 

「阿求もやりなよ?」

 

 そりゃ怒るってお前……。

 

 その言葉を聞いた瞬間、怒りマークを頭に付けて萃香の腕を掴んで別の部屋に連れて行ってしまった。

 

 夜に萃香に会ったが、フラフラだった。

 どんな説教を!?




 いかがだったでしょうか?

 波紋も気功も使えるのにこうも治りが遅いのは重症であるのも理由の一つです。

 もっとゆっくりを可愛く書きたいなぁ。

 反動でバトルパートが過剰になりそうですが。

 それでは、また読んでくださいね!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。