東方饅頭拾転録 【本編完結】   作:みずしろオルカ

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 デイリーランキング2位です! ありがとうございます!

 いや、えっと・・・どういう事なのでしょう?

 お気に入りやらUAやらまさに跳ね上がるほどで、ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル 状態です。

 ☆月はこれにて終了です。




上白沢慧音の日記 ☆月

☆月○日

 

 最近、海原殿を危険な状況の中で無縁塚に護衛で連れ出した商人が、人里で白い目で見られている。

 明確な処罰はない、ということになってはいるが、海原殿を慕っている人たちからすれば、警戒や軽蔑対象になっているのも仕方がない。

 

 村八分状態になっていないだけ、珍しいが理性的な周囲だと思う。

 

 この人里に、幻想郷に住んで一年近く、海原殿の友人や彼に恩義を感じている人は増えている。

 

 何でも屋という職業柄というのもあるだろうが、彼は非常に面倒見がいい。

 三人兄弟の末っ子だというが、長男だと思ってしまうぐらいしっかりしているし、頭も良い。

 

 最初は人手の足りない農家が、次に商人、最終的に里全体に彼は優しく頼りになる存在として認められている。

 

 そんな彼を危険な目に遭わせた、それだけなら本人も公言しているが仕事だから気にするなというやつで、しぶしぶ納得できた人たちもいたのかもしれない。

 しかし、その商人は彼を見捨てて何度も逃げようとしていたのだ。あまつさえ、生贄にしようとした節すらある。

 

 あまりに仁義に欠ける話だ。

 しかも本人はしっかりとそんな商人の護衛をこなして人里に帰還したのだから、護衛としても、人間としても評価は上がった。

 

 結果的に商人の一人負け、といった所だろう。

 

 しかも、思わず笑ってしまったのだが、海原殿が何食わぬ顔で件の商人から物を購入していた。

 

 もしかしたら、この行動が商人を村八分にしていない理由なのかもしれない。

 

 村全体の雰囲気を和やかにしてくれている。

 

 ゆっくり妖怪を家に置くようになってからは更に機嫌が良さそうに買い物をする姿をみんな見ている。

 癒しとはやはり大事なのだと感じた。

 

 

 

 

☆月□日

 

 今日は久々に妹紅が訪ねて来た。

 

 お互いの近況を交換して、今日は泊まっていくことになった。

 明日は朝一で迷いの竹林の案内に行くそうなので、少し残念だ。

 

 竹林では大きな変化も無く、小さいトラブルにため息をつきながら対応しているそうだ。

 

 一応、海原殿が撃退してくれたが、注意は必要だと件の妖怪の注意を促した。

 

 妹紅は撃退した人間に対して興味を持っていたが、海原殿に会ったことは無かっただろうか?

 

 本人は会ったことは無いと言っていたからそうなのだろうが、一応里の外れで出入り口を守る様に居を構える海原殿に会ったことが無いのは珍しい。

 

 妹紅は良く人里に来るし、その際彼の家のあたりを通るはずなのだが。

 

 そう思ったが、よくよく考えてみれば私たちは飛べるのだからわざわざ徒歩で帰る必要もなかった。

 

 妹紅には機会があったら紹介することにしよう。

 

 

 

☆月×日

 

 ここ最近の商人と里の人間との確執について阿求殿に相談に来ていたのだが、その時に海原殿が訪ねてきた。

 

 驚いたことに、ゆっくり妖怪が仲間を呼んだらしい。

 

 前日に仕事終わりで居間の扉を開けたら、ゆっくりパチュリーとゆっくりレミリアが一緒にいたそうだ。

 

 海原殿が言うにはゆっくりレミリアも面倒見るというので、ゆっくり妖怪は2匹彼の家にいることになる。

 

 2匹とも里の中に見知らぬ妖怪を入れると混乱する可能性があるので留守番させているらしい。彼の配慮は助かる。私自身、実際に接してみて初めてゆっくり妖怪の危険度が低いことを信じられたが、知らない人たちはそうはいかない。

 人間と妖怪はどうしても力に差がある。能力に差がある。

 強い種族は恐怖されやすい。

 

 だから、皆にゆっくり妖怪の安全性が証明されるまで、人里に入れないのは大事なことだ。

 

 海原殿は、安全な妖怪だと分かっていても、おそらく人々の集団心理を考えて慎重に行動してくれている。

 一応、阿求殿と私で里の有力者にゆっくり妖怪の生態観察を海原殿の家でやることを知らせてある。里の門番なんて里の人から言われているぐらい信頼されている海原殿であることと、彼の家が人里の外れの方であることが納得させる要因になったようだ。

 

 だけど、まだ里の中で正体のわからない妖怪を行動させるのは不安がある。

 

 それを考慮し、余計な不安を里の人に与えないのは、思慮深い行動だ。

 

 明日は里の有力者との会合がある。

 そこで、里の理解を得られるように話をしてみよう。

 

 ここまで考えてくれたのだから、私も行動しなくては。

 

 

 

 

☆月∀日

 

 阿求殿がゆっくり妖怪を見に行っているはずだ。

 

 私も一緒に行きたかったが、里の有力者との会合で今後の里の方針を決めなくてはならない。

 ついでに、海原殿のゆっくり妖怪の生態調査に対して少しでも環境を整えてやれないかどうかも話し合った。

 

 ここは、今日中に決まることは考えていない。

 少しずつでいいから変えていき、海原殿の負担を減らすのが大事だ。

 

 今はダメでも、根気よく続けることにしよう。

 

 

 

☆月Д日

 

 今日は衝撃的なことが起こり過ぎていろいろ混乱している。

 

 海原殿の所で新しいゆっくり妖怪を見てきた。

 

 容姿は紅魔館の吸血鬼のレミリア殿のようだ。

 性格は全く違うようだが。

 

 うーうーと鳴いていて、小さい蝙蝠の羽でフラフラとだが飛び回っていた。

 あれは歓迎の飛行か何かだろうか?

 その後に、海原殿の頭に降りては自慢げにうーうー鳴いていた。

 

 可愛かったのだが、ゆっくりパチュリーにもてなしの茶を出されたときは情けないことに固まってしまった。

 

 お茶を出されて、礼を言おうと顔を向けたらゆっくり妖怪が居て、「ゆっくりしていってね!」と言われては固まろうというものだ。

 

 しかし、阿求殿はすぐに対応できたらしい。

 

 可愛いは可愛いのだが、予想外の行動で情けないところを見せてしまったことが少しばかり心残りだった。

 

 阿求殿の所に立ち寄って報告した時、この戸惑いを話したが

 

「背伸びしている姉妹のお姉ちゃんみたいでかわいいじゃないですか」

 

 と言われた。

 

 なるほど、そういう見方もあるのか。

 

 

 

 

☆月ш日

 

 海原殿が撃退した妖怪が再び活動を開始した。

 襲撃を受けた場所が徐々に人里に向かってきている。

 

 博麗の巫女の言う通り、この時点で処分対象になったのだろう。

 

 今回の件で人間を襲うのを自粛していれば、程よく人間に畏れを与える妖怪になっただろう。

 しかし、人間に復讐するため暴れ始めたのなら、これは畏れを駆逐する人間と妖怪の共通の敵というものに成り下がった。

 

 今日と明日は里に厳戒態勢を敷いて、博麗の巫女に退治を頼むのが最善だろう。

 

 もう博麗神社に使いは向かわせている。

 

 あとは、博麗の巫女が動いてくれるのを待ちつつ、里を守るのが最善だろう。

 

 海原殿が一番最初に妖怪に会うだろう。海原殿をだまして連れて行った商人の言っていた戦いが、もしかしたら見れるかもしれない。

 

 海原殿の全力戦闘。

 不謹慎かもしれないが、少し見てみたいと思ってしまった。

 

 

 

☆月И日

 

 海原殿の戦闘。

 今日はそれを見れたのだが、あれは人としての領域ギリギリまで鍛えたのだろうか?

 彼は、規格外の強さを見せてくれた。

 

 波紋の呼吸法と彼は言っていたが、歴史の中では仙道の奥義だったはずだ。

 

 歴史の中でたった二回、三国志時代において波紋使いの親子がいたという歴史があった。

 それより古い波紋の歴史は確認していない。

 

 そこに記されていた波紋と海原殿が使う波紋は同じものなのだろう。

 

 三国時代の仙道は何名かの弟子に継承されて各地に散らばっている。

 

 彼もその弟子の子孫なのだろう。

 

 速さを中心とした戦闘技法。

 強化した身体と兄弟に叩き込まれたという技術。

 

 人間故に威力が無い。しかし、ゆっくりパチュリーの魔法で強化されているという杖が十分以上に海原殿の戦いを支えている。

 

 足を狙い、機動力を奪った後に一度骨折させたという腕を執拗に狙い、両腕を骨折にまで追い込んだこの戦いは人間と妖怪の戦いとはとても思えなかった。

 

 骨折させた妖怪の腕はおそらく治ることは無い。

 

 逃げていく妖怪の両腕は力無く垂れ下がり、腕は変色し、腫れ上がっていた。

 

 おそらく、適切な治療をしなければ壊死するだろう。そして、あの妖怪は適切な治療をする術がない。

 

 人間からも妖怪からも外れた存在はこうして消えていく。

 

 あえて止めを刺さずに、人里には襲えば返り討ちにされるぐらいの戦力があると他の妖怪に喧伝する。そうすることで、今回の様な人里を襲うという愚行をさせないための行動だ。

 

 今回の戦いで海原殿は三度地面に叩きつけられ、二度木々に弾き飛ばされていた。

 

 阿求殿と相談して少々高額な報酬を渡してしっかりと休んでもらうようにしなければならない。

 

 いくら波紋が身体の活性化を行う技法だとしてもダメージは残るのだから。

 

 海原参護。

 彼は冷静で、人里を守る行動をしてくれる優しさと、妖怪を見せしめに使うほどの強かな行動力がある、それでいて一緒にいて安心できる春の風を思わせる青年だ。

 




 いかがでしたでしょうか?

 いろいろと温かい感想いただきまして、うれしい限りです。

 参護の日記が他の日記の基本になるので、ちょっと時間がかかると思います。


 三国時代の歴史に実際波紋の使い手がいた記述はありませんのでご注意ください。

 海原の家が存在するに当たり、その血筋だと思っていただければと思います。



 次回をお楽しみに!

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