第十話 silent killer
カーテンの隙間から射す光に目を覚まし、ベットの上から起きる。
俺が高町家に引き取られて数日たった。
その間に士郎さんも目を覚まし、改めて居候となる旨を伝えたのだが、その際に彼は俺の目を見つめながら暫く悩んでいたが、やがて俺の頭を撫でながら『ようこそ、高町家へ』と言ってくれた。
何が彼にその判断をさせたのかは分からなかったが、『君が悪い子でないのは目を見れば分かるよ』と彼は言っていた。
恭也さんとはまだ少しぎこちないが、ゆっくりと歩み寄って行けば良いさ。
寝巻きを着替え、洗面所で顔を洗いながら、寝惚け眼ななのはに顔を洗わせて食卓に着く。
今日は洋食と言うものらしく、パンやスクランブルエッグ等の食べやすいものが並んでいた。
気を使わせてしまったようで申し訳無かったが、実際問題フォークやスプーンと言った物すらまともに扱えなかったので仕方ない。
見よう見まねでみんなのように食器を使ってみるのだが、スープを零したり、掬えなかったりと散々で肩を落としてしまう。
そんな俺を見かねたのか、なのはや美由希さんが『あーん』と言いながら食べさせてくれたが、本当に申し訳無い。
そして、なのはが最後の一口を俺に食べさせようとした時、視界の端に何かが映った。
窓の外から見える俺の頭に飛来する何か、思わずなのはを抱き抱え、その場から飛び退いた。
窓を粉砕し、床を抉り抜いたそれに士郎さんと恭也さん、美由希さんが反応し、桃子さんを連れて窓から離れる。
なのはは何が起きたのか分からず目を白黒させているが、そのまま彼女を抱き止めながら窓の外に目を向ける。
今の一撃、俺を狙った物だった。
なのはを離し、改めて窓から外に顔を見せる。
其処に叩き込まれた第二射、壁の裏に隠れながらそれを回避し、此処から逃げ出す方法を考える。
俺が狙われているならば此処から離れればみんなに被害は行かない筈。
何より、俺の側にはなのはがいる、彼女が巻き添えを喰らう可能性がある以上、どのみちこのままでは居られない。
思い切って割れた窓から外に飛び出し、士郎さん達の制止を振り切って何とか家の外に出る。
シフを連れて行きたかったが、彼にはなのは達を守るように指示をし、狙撃を避けるために通勤中の人混みへ紛れ混む。
これが、俺の生命を賭けたかくれんぼの始まりだった。
高町家から数キロ先の廃ビルの屋上にその男は居た。
「ちっ、何気ない日常の一瞬を突いても避けやがるのかよ」
そうこぼした彼も極力無関係な人間を殺すような真似はしたく無かった為、炸裂焼夷弾を使わずターゲットが街中に逃げるのをわざと見逃した。
それにこのビルの屋上からは街全体を見渡せるので、彼を見失う事は無く、万一人混みや物陰に隠れたとしても彼が垂れ流している魔力によって位置を割り出せる。
「この弾は挨拶代わりの通常弾だからな、安心するのはまだ早いぜ?」
彼はそう言って、改めてスコープを覗き、今度はあるポイントを狙い撃つ。
そこは彼が今日の日に備えて、路地裏などの人目に付かない場所に設置した鉄柱だった。
この鉄柱は魔法が掛かっていて、彼の放った銃弾を跳弾させる事が出来る。
あのボウヤは殺気や気配に敏感みたいだったからな。
音も殺意も気配も無い弾丸、果たしてそいつをボウヤは避けられるかい?
俺は人混みを縫うようにして逃げていたのだが、足をいきなり撃ち抜かれ地面に転がってしまう。
弾が飛んできた場所を傷口から判断すると背後の路地裏から撃たれたようだ。
痛む足を抑えながら混沌の刃を取り出してその路地裏に向かって行く。
勢い良く路地裏に飛び込んだのだが、其処に有ったのは一本の鉄柱。
それに首を傾げていると、またも背後から右肩を撃ち抜かれた。
月明かりの大剣を取り出し、それを盾にしながら傷を癒し、打開策を考える。
朝食時の一撃は、弾丸が視界に映った事と、本当に僅かな殺気が感じられた為狙撃に勘付いた。
だが、急に殺気の位置と弾道が噛み合わなくなり、まともに二発も貰ってしまった。
その謎に頭を悩ませている時に、一発の弾丸によって月明かりの大剣ごとその場から弾き飛ばされた。
跳弾を自在に扱うスナイパーって……。
ちゃんと高町家の男衆も活躍しますよ。