多少のネタバレを含みますが、本編とは関係の無い平行世界とかifとかみたいな感じで見て頂ければ幸いです。
追記
真改の前にバージルにしていたのですが修正し忘れてましたごめんなさい。・゜・(ノД`)・゜・。
第百話 始まりの火
目の前に見える白い霧、多分この先に彼は居るのだろう。何のために私を此処に連れて来たのか、如何して私なのか、色々言いたい事はあるし、聞きたい事もある。
だからその答えを聞く為に私は意を決してその霧を潜っていった。
「ようこそ、始まりの地へ。私は君達が言う所の神、不死の英雄と言う者だ」
以後お見知り置きを、そう言った彼は優雅な一礼を私に見せてくれましたが、私はその彼の容姿に『やっぱり』と言う気持ちで一杯となりました。先ほど私が見た彼がそこに立っていたからです。
「ブレンくん、なんだよね?」
「正確には私に名前など存在しないが、ここはそうだと言っておこう」
私の疑問に、彼は肯定の言葉を返した。 半ば予想はしていたけれど、やっぱり衝撃は大きかった。
「じゃあ、如何して私を此処に?」
「勿論、私が死ぬ為に、君に殺される為にだよ、我が女神」
何を、言っているのだろう?
如何して彼が死ななくてはならないのだろうか、如何して私が彼を殺さなくてはならないのだろうか? 全く理解出来無い彼のその言葉になにも返す事が出来なかった。 けど、彼はそんな私を御構い無しに次々に全てを語り始めた。
「始めて君と出会った時に、私は確信したのだよ。君以外に私を殺せる者は居ないとね。その後、私は君の成長を待ち、ある程度の実力を持った頃に私を討って貰うと言う計画を立てた。君は私の望む通りに成長し、私を殺す資格を得たのだ。どれほど私がこの瞬間を切望した事かッ!! そうだとも、私は今、この瞬間を数十万年は渇望し続けていたのだ!! さあ、私を解放してくれたまえ我が女神よ!!」
「ど、如何して!? 如何してブレンくんが死ななきゃならないの!!」
「それは私が神だからだよ。この世に神は不要なのだ、人間の世界なのだから人間が頂点でなければならない、それは私も例外でないのだ。 私の意思一つ、指先一つで全てが左右される世界など反吐が出る、そもそも神の身体自体虫唾が走るのだ、このような下劣な姿でおめおめと生きながらえている事自体が認め難い屈辱ッ!! もう十二分に生きた!! 全てを知った、理解したッ!! だから死なせてくれ、私は神である事に耐えられ無いんだッ!!」
「ッ!! でもっ!! だからって!!」
「これは決定事項なのだよ、最早語り合いでどうにかなる段階では無い、私は死ななくてはならない、何より私がそれを望んでいるのだから」
「…………嫌だよ」
「なに?」
「私は、貴方を殺してなんかあげない。 絶対に生きて貰います!!」
真っ直ぐに私を見つめながらそう返した彼でしたが、その瞳には光は無く、無理矢理そう思い込んでいるような、追い詰められた人のような悲しい顔をして居ました。 確かに、彼のその思いは本当なんでしょう、本当に死にたくて、終わりたくてたまらないのでしょう。 けど、私には彼はまだ、もう少しだけ生きたいと思っているように思えてなりません。彼は自分ではその思いに気が付いていないだけで、本心ではまだ生に未練があるのでは無いか、と私は彼の独白で漠然とそう思ったのです。
ですが、もしも、もしも本心から死にたがっていても、私は彼を殺してなんかあげません。 今までみんなと、私と過ごしてきた日々を捨ててまで死にたがるなんて、私は認めません。 一方的に好きだと言い放って、また一方的に死にたいなんて言い放つなんて、そんなの許せない、私の意見も聞いて貰わないと納得出来無いんだ。
そんな性根は全力全開で叩き直して、生きて貰います。
私がレイジングハートを真っ直ぐに向け、叫ぶように彼に言い放つと、彼は手で顔を覆いながら大声で笑い始めました。 愉快でしょうが無いと言わんばかりの笑い声を暫く上げていたかと思うと、今までとは比べ物とならない威圧感を纏って私に剣先を突き付けました。
「そうか、君は私に生きていて欲しいか。 私とは相容れぬ意見だな。 ならば、それを通す為に杖を握ったのなら、私を降して見せろ!! 私の自滅願望が上か、それとも君の思いが上か!! 戦って証明して見せろ!! 今、この瞬間は、力こそが全てだ!!」
「全力全開で、って事だね。 分かりやすい理屈で大助かりだよ!! ブレンくん、私が勝ったら貴方の全ては私に捧げて貰います!! 生も死も、全部!! 勝手に死ぬなんて許さない、生きる事を飽きさせない!! 貴方は私の側でずっと一緒に過ごすんだ!!」
「私を討てば始まりの火が手に入ると言うのに、その言いようか。 創世の火と一個人を天秤に掛け、後者を取る。嗚呼やはり君を選んで正解だった」
私に突き付けていた剣先を、彼は無造作に横一線する。それだけで彼の背後で燃え上がっていた始まりの火が辺りに広がり、私をすり抜けて行った。 先制攻撃のようでは無かったので、ほんの少しだけ警戒を解きましたが、彼の声が先程の行為の解説をしてくれました。
「これで、この場で戦う私達に物理的な決着は無くなった。 首が飛ぼうと、心臓が潰れようと、業火にさらされ灰になろうと、その場で即座に回復するようになった。 決着を付ける方法はただ一つ、相手の心を折る事だ。 私の心を折ってみせろ!!」
「望む、所だよッ!!」
100話記念 ブレンの日記
新暦76年 ○月X日
時空管理局総帥に任命された。
先日のJS事件によって高官や将官が多数暗殺されてしまった為に体制がボロボロになっていた管理局は、早期回復の為に『英雄の再来』と言う強烈なネームバリューを持つ私を臨時の頭に据える事で可決したらしい。
『財団』との全面戦争に発展した先日の事件で、管理局の影響力が大幅に低下した為、私の肩書きを利用して聖王教会や太陽の信徒達との関係をより密にしたいと考えたのだろう。 理解は出来るし納得も出来る。しかしだ、人が事後処理に忙殺されている間に勝手に決めるのは如何なのだろうか? 一ヶ月ぶりの休暇に胸を踊らせていた私に突き付けられたこの辞令ほど残酷な物は無かった。
准将から総帥へと一足飛びどころでは無い昇進だが、なのは達とささやかなパーティーを開こう、でなければやってられん。
あぁ、挙式が遠のくなぁ。
新暦76年 ○月△日
忙し過ぎる。
総帥とは此処まで忙しい物なのか? もう一週間は不眠不休だぞ? 合間を縫って日記を記したがそれ以外に書くことが無い。
猫でも犬でも良い、手を貸してくれ……。
新暦76 X月△日
月が変わっていた。
意味が分からない、何故私はここまで働いているのだろうか? クロノにも仕事を山のように押し付けているのに私にはその十倍の量が積まれている。 しかもその全てが最重要書類なのでミスや見落としは許されない。
側にいた秘書官に聞いた所、これが終われば一時帰宅出来るらしい。 なのはに膝枕して貰って、フェイトとアリシアにマッサージをして貰って、はやての料理を食べて、アリサとすずかに更にマッサージをして貰って、ヴィヴィオをめいいっぱい愛でよう。 言い方は悪いが今日ばかりはハーレムを決意しておいて良かった。
新暦77年 ○月○日
漸く仕事が落ち着いた。
丸一年掛かるとは流石の私も予想していなかった。
それと臨時の二文字が消えた。
…………帰って寝よう。
新暦77年 ○月X日
身内だけで挙式を開いた。
元々私が18になった時に籍だけは入れていたのだが、裏での暗躍が忙しく延びに延びてしまった。 その時は此処まで身分が跳ね上がる事になるとは思いもしなかった為、大々的にする事はせずに身内だけと言う運びとなった。
私一人に対して六人の新婦と言う珍しい光景ではあったが、ミッドチルダでは良くある話らしくスタッフの人達は非常に良く動いてくれて居た。 本当は一人づつ別々に挙げて上げたかったが、休みが取れない。
新暦77年 X月X日
食卓に、トマトが並んでいる。
『今日はブレンくんに大切なお話があります』とやけに上機嫌ななのはに疑問を抱いていたらこれである。 私は未だにこの赤い食べ物を克服出来ていない、なのは達もそれを知っている為、出したとしても分かりずらくしてある筈なのだが、今日はどストレートに出されてしまった。
トマトから目を逸らしつつ、大切な話に耳を傾けると、なんとなのは、フェイト、はやてが妊娠したと言う。 その報告に私は柄にも無く大はしゃぎしてしまったのだが、トマトが食卓に並んでいる理由に思い至ってしまった。
『ヴィヴィオにも兄弟が出来るんだから、ブレンくんもヴィヴィオも好き嫌いを治そうね』
なのはの花のような笑顔から放たれる死刑宣告、見ればヴィヴィオの皿にはピーマンのフルコースが並んでいる、なのはの意見には大いに賛成だが、心の準備が……。
私のその思いを見透かしたかの如くに私に向けられた笑顔、素敵な笑顔であったが、逆らえないナニカを兼ね備えていた。 私が出来ることは、これを食べる事だけだ。
おお、神よ、貴方は何故トマトなどと言う食べ物を創造なさったのですか。 返答次第ではその首を取りに、…………神は私だった。
追記
一ヶ月後にアリシア、アリサ、すずかも妊娠したとの報告を受けた、職場でまた大喜びをしていたら、無慈悲に書類の山が積まれていた。
新暦78年 ○月X〜□日
なのは達の出産日、この数日の為に不眠不休でデスクワークや各世界の有力者との面談などの仕事を片付け、私以外でもこなせる仕事は全て他人に押し付けた。 特にクロノには山のように仕事を押し付けた。
なのは達は女の子を、アリシア達は男の子を出産してくれた。
名前は其々『シュテル』『レヴィ』『ディアーチェ』『オルステッド』『カイム』『真改』と名付けた。
真改に関しては、月村家に合わせて和名にしてくれとさり気無く要望があった。
新暦79年 ○月X日
ヴィヴィオのスパー相手として少し手合わせした。
本来、学者型であるヴィヴィオには近接戦は型が合わない為、それのカバー方法を教える事が目的だ。
だが大人モードで掛かってきた為、つい反射的に身体が動き、完膚無きまで叩きのめしてしまった。第一線から長く退いて居たとは言え、身体に染み付いた動きとは色褪せないものなのだな、加減が一切出来なかった。
その所為で目を回しているヴィヴィオの横で涙目のフェイトの可愛らしいお説教と、なのはの逆らえないお説教を受ける羽目となったのだが。
それから目を覚ましたヴィヴィオに戦いの基礎を教えながら戦っていたのだが、手加減するとヴィヴィオが怒るので、またのしてしまい、またお説教を貰ってしました。
新暦79年 ○月□日
ヴィヴィオの友人であるアインハルトと言う少女と戦う事になった。
『ヴィヴィオさん。私が貴女の仇を取ります!!』
と、非常に張り切っていたのだが、気の毒になるほど緊張していてガッチガチだった。取り敢えず彼女の両肩に手を置き、深呼吸させて落ち着かせようとしたのだが、目線を合わせていたのか悪かったのか顔を目を回しながら真っ赤にして倒れてしまった。
聞けば覇王の血筋らしく、古代ベルカから代々太陽の信徒だったらしい。 ヴィータ並に私の事に詳しく、肩に手を置かれただけでも卒倒ものだと言うのに目線を合わせてくれた事で失神してしまったと言う。
実は、彼女は私がヴィヴィオの父親だと知らされて居なかったらしいのだが、仇を取る言った手前『やっぱり無かった事に……』とも言えなかったそうだ。
お詫びに私の正体を教えてあげたのだが、また失神してしまい、彼女は今日はお泊まりする事となってしまった。
ヴィータも同じような反応だったなぁ。
新暦85年 ○月X日
息子達が家出した。
真改とカイムは置き手紙に『血が騒ぐ』と書いてそのま失踪、オルステッドは二人を連れて帰ると言って出て行ってしまった。
それだけなら、私も仕方ないな程度で済ませて居たかも知れないが、あの二人はとんでも無い事をやらかして行った。
真改は私の混沌の刃を、カイムはよりにもよって大王の大剣を駄賃代わりに持って行った事だ。 さりげなくオルステッドもアルトリウスの大剣と大盾を持って行った。
職権乱用は出来無い為、取り敢えず捜索願を出すだけ出しておいたのだが、見つからないだろうなぁ。
追記
後日、シュテルには私の持っていた炎のハルバードと黒竜の大剣を、レヴィには竜狩りの槍を、ディアーチェには月明かりの大剣を手渡しておいた。
何があるか分からないからね。
それと、ディアーチェからお説教を貰った。
『父上は武具の管理が雑過ぎます!! あの二人には戦闘狂の気があるのは常々感じておられた筈、なのに何故鍵も掛けていない部屋の傘立てに無造作に刺しておくのですか!! 武器が泣きますぞ!!』
延々と正座をさせられながらなのは達が帰って来るまで説教をされ、その後なのは達から更にお説教を貰う事になった。
娘からの罵倒やお説教も良いものだ。
ps
父上、本棚の掃除をしていた際にこの日記を見つけたのですが、どうやら貴方には反省が全く足り無いようですね、次の休日は覚悟しておいて下さいね。