雪合戦、かまくら作ったり雪だるま作ったりとほのぼのしてそうですね(一部を除く)
第百五話 仁義無き雪合戦
はやて達との懇親会も兼ねたアリシア主催の雪合戦、其処は正に戦場のようになっていた。
フェイトとすずかによる爆撃にも似た雪玉、守護騎士達の中からヴィータも参戦している為、着弾によって舞い上げられる積雪、雪合戦が此処まで激しい物だとは夢にも思わなかった。 アリサとアリシアは開始して数分で雪だるまにされ、俺となのはは塹壕を作って其処に身を隠している。 不緩衝地帯として、はやての居る場所にはかまくらが作られていて、出入り口をシグナムとリィンフォースが警備している、雪だるまにされていたアリサとアリシアは、ザフィーラとシャマルと一緒に餅を焼きながらお汁粉作ったりして暖を取っている。 折角連れて来たシフもあまりの弾幕の濃さとパワーに尻尾を巻いてかまくらに逃げ込んでしまった。 はやての側で震えている事から察するに、どうやら奴は野生を忘れてしまったようだ、シフの横でアルフが呆れている。今度見知らぬ山奥にでも放り込んでこようかな? そうすれば少しは昔を思い出せるだろう。
現実逃避はともかく、なんとかしてなのはを彼処へ連れて行きたい所なのだが、少し顔を出しただけで狙い撃ちにされるので頭を上げる事が出来無い。
しかし何時までも隠れていてはらちがあかないので、この日の為に購入しておいた純白のコートをなのはに被せ、周りの風景に紛れ込ませて見つからないようにしてから、攻めに出る事にした。
とは言え、正面からこの雪玉の嵐の中に潜り込むのは自殺行為、先ずは崩しやすいフェイトを倒す為に着弾の衝撃によって出来た積雪の凹凸に身を隠しながら、何処ぞの特殊部隊のような白いスーツに身を包んだプレシアさんの元へと歩み寄る。
彼女はスナイパーのように匍匐しながら見るからに特注のカメラを二台回し、アリシアとフェイトの姿を涎を垂らしながら盗撮していた。
気配と存在感を断ちながら彼女の背後に回り込み、シャツを脱いで、それを旗代わりにフェイトだけに見えるように大きく振る。 動体視力の良いフェイトは反射的に其処へ向かって雪玉を叩き付けるだろう、しかし、此処に居るのは俺だけでなく、盗撮に勤しんでいるプレシアさんも居る。 彼女を犠牲にする事でフェイトの動きを止める作戦だ、罪悪感は無い、寧ろこの人なら娘の雪玉を受けて鼻血を出して喜ぶだろう。
予想通り、フェイトの豪速球がプレシアさんを撃ち抜き、鼻血を出して喜んでいる彼女を発見したフェイトが、その光景に混乱している間に顔に向けて雪玉を投げ付けリタイアさせる。
これで頭数が減って残り二人、吸血鬼のすずかと守護騎士のヴィータ、一筋縄では行かないのが分かるので雪玉を一つ握り、左手には先ほど脱いでいたシャツを持っておく。
さっきの狙撃で俺の存在がバレてしまったようで、すずかからは容赦無く砲撃が繰り出される、案の定と言えば良いのか、ヴィータは俺の援護に回ろうとしていたのだが、俺に気を取られた一瞬を狙い撃たれてしまっていた。 まあまだ俺に慣れてないから仕方ないと言えば仕方ないのかな?
すずかとの一対一、彼女の一発一発は非常に重いので何とかそれを躱す方法を考えなくてはならない。 それと、何故か先ほどから身体が妙に気怠いし肌寒い、インナー一枚だからだろうか? と言うか先ほどまでのすずかの猛攻がピタリと止んでいる、焦らしているつもりなのだろうか? 持久戦なら何時迄も待ってみせるぞ。
「えっと、ブレンくん?」
「……どうした、すずか」
「顔、赤いよ?」
「? だからどうしたのさ」
彼女は何を言っているのだろうか? 俺の顔は赤くは無い、どちらかと言うと色白な方だと思うのだが……、そうか分かったぞ!! 適当な事を言って俺に隙を作らせるつもりだな?
悪いがその手には乗らんぞ。 …………いかんな、寒気と頭痛がして来た、視界も定まらん。なんだったかな、ああ、思い出した、これ、風邪、か?
気が付けば、はやての家でシャマルに看病されていた、既にアリサ達にも魔法の事は告げてあるので気兼ね無く治療して貰えているのだが、我ながら不甲斐ない。
朦朧とした意識の中で、取り敢えず何故風邪をひいたのかと言う事を考える。 普通に考えればコートもシャツも脱いでインナーだけになっているからで終わる話だろうが、仮にも神だった俺は病的な物とは無縁の筈、それを踏まえての行動だった訳だが、裏目に出たようだ。 風邪をひく身体になってしまった原因を探ろうにも、こんな状態ではまともに頭が回らない、後で考えよう。
今考えるべき事は、体を拭くと言う名目で俺の服を剥ぎ取った彼女達にどう言った反応を返せば良いのか、という事か。恥じらいが無い訳では無いのだろう、彼女達も頬を染めている、アリサとすずかは前に温泉で見ただろうに、そもそも顔を赤らめるなら止めてくれ、アリシアにフェイト、手で顔を覆うのは良いが指の隙間から覗いているのが見えてるぞ、後はやて、下は色々とマズイ、少女らしい恥じらいは何処へ行った、思春期にはまだ早いぞ。
ブレンの日記
新暦65年
◯月X日
雪合戦をした。
この日ははやて達との懇親会も兼ねて雪合戦をする事になった、昨日の時点で事前に俺の正体や魔法等に関してをメールでアリサとすずかに送っていたのだが、アリサから『明日ぶん殴る、そんな話をメールで済ますな』との返信があり、その通りに殴り飛ばされた。 俺の周りの人物は皆態度が変わらないようで少し安心したのは秘密だ。
だが、守護騎士に関しては態度が変わり過ぎていて反応に困る、特にヴィータに関しては狂信者レベルで慕ってくれている、取り敢えずは守護騎士達に名前で呼んでくれと頼んでおいた『英雄様』呼ばわりはあまり好きでは無いからね。
皆素直に俺の頼みを聞いてくれたのだが、やはりと言うか案の定と言うか、ヴィータだけ中々抵抗があるらしく『ぶ、ブレン……さま』と様付けが暫く取れなかった。 指を突き合わせてもじもじとしている姿は何処か背徳的な感情を思わせるものの、やはり様付けは好きになれない為、しばらく視線を合わせて抗議していたのだが、彼女は顔を赤くして失神してしまった。 ベルカでは何処まで俺は崇められていたんだ。
雪合戦の最中に風邪をひいてしまった、色々考えていた事は覚えているが、なのはを筆頭にみんながみんなして俺の体を拭いたり、お粥をあーんしたり、添い寝をしたりと手厚い看病をしてくれた事で全て吹き飛んでしまった。
有難いし、感謝もしているが、それで全員風邪が移ってしまっては本末転倒なのでは無いだろうか? 俺もお返しに看病してあげるべきなのだろうか。