ストラング「ぐわぁぁぁあ、クライン……」
今際の際に男の名を叫ぶ男(震え声)
第百九話 フェイトとデート
『国家解体戦争。それは企業による世界への反逆、それまでのアーマード・コアとは次元の違うネクストによる蹂躙。 国家は滅び、世界を企業が管理した世界、その世界で戦火によって家族を失った一人の少年が居た。生きる希望も目的も無く、その日暮らしで衰弱死を待つばかりだったその少年はジャンク品の山から一機の赤い機体を発見した、各パーツをカスタムされたACのように見えたのだが、見た事も聞いた事も無いフォルム、これが少年と伝説の運命の出会いだったーーーー。 『AC4〜舞い降りる紅き熾天使〜』劇場公開中!!』
商店街の福引で見事宣伝中の映画のペアチケットを手に入れたフェイト、彼女は高町家の前をペアチケット片手に右往左往していた。
と言うのも、母と姉との買い物で福引券を手に入れ、何気無くそれを回したのだが、それが大当たり。 この映画はアクア・ビットマンのスピンオフ作品で、ブレンも見たがっていた代物だ、これを口実にすればそのままデートが出来るし自分も見たかったので一石二鳥、あわよくば告白までいけるかもしれないのだが、彼女は非常に躊躇っていた。
(どうしよう!? ブレンとデート出来るって思ったから此処まで遂勢い良く来ちゃったけど、これって私からデートに誘わなきゃならないって事だよね!? ど、どうやって!? デートなんて初めてだから分かんないよぉ……、本当にどうやって誘えば良いんだろう? 一旦帰って母さんに聞いてこようかな、いやでもこの勢いを逃したら誘えないだろうし……、あぁ戦ってる時よりも緊張するよぉ……)
顔を赤くしながらチケットを見つめてうろうろとしていた彼女は、姉が言っていた『女は度胸』と言う言葉を思い出し、震える指でインターホンを押し込む。 チャイムが鳴り、ややあってパタパタと廊下を走る音がして玄関の扉が開いた。
「は〜い、ってフェイトちゃん? どうしたの?」
「えっと……、ブレン、居る、かな?」
「ブレンくんは一週間位前からミッドでクロノくんと一緒にお仕事だけど……」
「えっ……」
フェイトの中で立てていたデートプランが音を立てて崩れて行った、本人が不在ではデートは出来無い。 闇の書事件の後皆管理局入りしていた為、彼女は仕事なら仕方ないと言う諦めとの感情と共に、クロノに対する恨めしい思いを抱きながら内心で呪詛の言葉を吐いていた。
しかも仕事の詳細を聞けば、大規模な麻薬密売グループの一斉摘発と殲滅、相手は質量兵器で武装し尽くし、此方が局員と分かると容赦無く発砲して来る為、経験豊富な人材が足りずブレンや守護騎士達を借り出しているらしい。
本来なら四日前に帰って来る筈だったのだが、このグループは様々な犯罪組織と繋がっていたらしく、芋づる式に片端から摘発する事となってしまい、帰宅の目処が立っていないそうだ。
(うぅ〜、逆恨みだけど恨むよクロノ……)
取り敢えず彼女はなのはに彼が帰って来たら連絡を入れて欲しいと言う旨を伝え、『きっと暫く帰ってこないんだろうなぁ……』などと思い、肩を落としてトボトボと帰宅して行った。だが、彼女は知らなかったが、本日のフェイトは恐ろしい程幸運であった。
「どうしたのさフェイト、妙にショボくれちゃってさ」
肩を落として帰宅するフェイトの背中にブレンの声が掛かる、慌て彼女が振り向くと其処には見るからに疲れが見えるブレンが立っていた。
「あっ、ブレン……、疲れてるみたいだけど大丈夫?」
「ちょっと、眠いかな? でも大丈夫」
「本当? 無理してない?」
「本当だよ、だから悩みがあるなら言ってごらんよ、力になるからさ」
「えっと、じゃあ、その、これ……、一緒にどうかな?」
「例の映画のチケット? ああ、喜んで」
笑顔でチケットを受け取るブレン、フェイトは思わず舞い上がってしまった。ブレンとのデートが無事に決まり、しかもそれを笑顔で了承してくれた事にだらし無い笑みを浮かべながら帰宅、フェイトは出迎えてくれた母に向かって勢い良く抱き着き、興奮しながら身振り手振りを付け加えてデートが決まった事を報告、半ば自分の世界に入りながらクローゼットの中からデートの際に着て行く服を選んでいった。
そうして迎えたデート当日、待ち合わせの十分前に待ち合わせ場所に着いてしまったフェイトだったが、既にブレンは到着していて、近くのベンチでフェイトを待っていた。
「待たせちゃった、かな?」
「いや、俺も今来た所だよ、立ち話もなんだし行こうかフェイト」
「う、うん」
さり気なく手を引かれてブレンの後に続くフェイト、彼女達は映画館までの道を談笑しながら手を繋いで歩く。 ブレンはさり気なく車道側を歩き、歩幅もフェイトに合わせている。 こっそりと後をつけてきていたテスタロッサ家一同は、まさか非常識な彼が紳士的な行動に移れるとは……、と失礼な思いを抱いていた。
それからもブレンはしっかりとフェイトをリードして行き、彼女の初デートは最高の結果となった。 アリシアは『次は私もデートして貰おっと』と意気込み、プレシアは『私も彼のような恋人が欲しかったわね』と若き日の事を思い出している。 尚、二人が思い思いに考え事に耽っている間、後ろでリニスが警察の方々に職質を受けており、説明に必死になっていた。 アルフは子犬モードなので役に立たず、覗きに夢中の彼女達は自分達の危機に気が付いていない。『帰ったらお説教ですね』と青筋を浮かべたリニスに末っ子の覗きに夢中の親娘が気がつくのはまだ後のようである。
新暦65年 ◯月X日
漸く密売グループを潰す事が出来た。
連中は此方の動きを察知する嗅覚が異常に高く、俺は勿論クロノとシャマル先生も内通者が居るだろうと判断、適度に連中を追いつつ奴らに情報を渡している奴らを炙り出す事にした。
新暦65年 ◯月X日
かなり上層部まで薬をキメている奴らが居たようだ、お陰で本当に大捕物となってしまった。
捜査令状を申請しようにも、そこにも内通者が居る所為で令状が降りて来ない事は分かっている。 なので少々強引だが内通者の住所を調べ、月明かりの大剣の光波を使って彼らの自宅壁を消し飛ばし、半ば強盗のように押し入って麻薬を使用している所を現行犯でしょっ引いた。 文句も始末書も後で聞いてやるし書いてやるから今はともかくネズミ狩りだ。
新暦65年 ◯月X日
忙しいのでシフを召喚した。
彼に片っ端から麻薬か硝煙の匂いがする者をしょっぴくように指示し、マフィアや反管理局勢力とのゲリラ戦のど真ん中に放り込んだ。 働き次第ではペディグリーチャムを好きなだけ食わしてやると言ったら張り切って暴れ出した。
新暦65年 ◯月X日
漸く連中を根絶やしに出来た、本当に疲れた。
説教を受けながら始末書と報告書を製作する中、シフのアホが俺の状態を考えずにペディグリーチャムを要求して来た。 取り敢えずゲンコツをくれてやった、お前の大好きなペディグリーチャムは地球に帰ってからに決まってるだろうが。
新暦65年 ◯月X日
この一週間不眠不休で働き、漸く帰宅出来た。
その途中に妙に落ち込んでいたフェイトと出くわした、この世の終わりのような表情を浮かべていた為、どうしたのかと聞くと、彼女は映画のチケットを差し出してきた。
その映画はアクア・ビットマンのスピンオフ作品で、もしもビットマンが居なかったら? と言うifストーリーの第四弾である。 仕事に疲れ切っていた俺にこの申し出はリフレッシュ出来るいい機会であった。 二つ返事で了承したのだが、彼女は最高に喜んでくれていた。 当日は俺がリードしなくてはな。