第百十二話 状況把握
(もー、二人ともおそいなー、僕もうお腹ぺこぺこなんだぞー!! 念話を飛ばしても何時もの口論をしていて気付いてくれないし、もう入っちゃうぞ!!)
ドラングレイグでは味気無い食事ばかりで、甘い物も無ければカレーも無かった、その所為か彼女は我慢の限界に達し財布と相談しながら何皿食べるか考えようとした時、ある事に気が付いた。
「あれ? ポケットに穴が開いて……財布が無いぃぃぃい!! どうして!? 僕はあの闇術師からは一撃も貰ってないよ!? 煙の騎士と戦った時? アーロンと戦った時? それとも白王? 駄目だ思い当たる節が多過ぎるよ!?」
嘘だ嘘だと言いながらポケットを引っ張り出し、上着を脱いでバサバサと振りながら財布を探すレヴィ、しかしシャツ一枚になったにも関わらずに財布見つからず、恨めしそうにカレー屋を眺める事しか出来なかった。
そして、そんな少女に忍び寄る一人の女性が居たーー。
「ねぇそこの貴女、そんなところで項垂れてどうしたのかしら?」
プレシアだった。
素晴らしい笑顔を浮かべたプレシアが優しい声でレヴィの肩を軽く叩く、買い出しの帰りだった彼女の手にはソーダ飴が握られており、それをレヴィに差し出しながら話を聞き出そうとしているのだろう。
「ほら、店先で何時迄もそうしていると他の人の迷惑になるわ、良ければ私の家に来ないかしら? 今日はカレーだからご馳走するわよ?」
「ほ、本当!! わーい、おばあちゃん大好き!!」
「お、おばあちゃん……」
流石のプレシアも見ず知らずの少女に『おばあちゃん』呼ばわりは堪えたのだろうか? わなわなと震えているように見える。
(フェイトにそっくりな娘が私の事をおばあちゃんって、ああ何て幸せ、今日からこの娘は私の孫よ!! 誰がなんと言おうと異論は認めないわ!!)
鼻血を出しながら恍惚としているプレシア、何時も見慣れているレヴィはプレシアの手を引きながら『早く行こーよー』とプレシアを急かしている。
(今日、私は死ぬのかしら?)
レヴィを連れて帰宅したプレシア、玄関先で彼女の帰りを出た迎えたリニスはソーダ飴を舐めているレヴィと、それを見て鼻血を出しているプレシアを見てある結論に至る。
「プレシア、その娘は一体何処で……」
「カレー屋の前で拾ったのよ」
「拾ったって……、犬猫みたいに言わないで下さい!!」
「良いじゃない、この娘も私をおばあちゃんって言ってくれてるんだから、そんな些細な事は置いておくとして、早くカレーを作りましょう」
超理論を展開し始めたプレシアに何を言っても無駄だと知っているリニスは溜息を付いて渋々プレシアの言う通りに食事を優先する事にした。
リビングではフェイト達とカレーを待ち望むレヴィが向かい合って居た。なのはからの念話で自分達に似た娘達と出会った、と言われたフェイトは何となくこの娘もその一人なんだろうな、と感じていた。
「えっと、レヴィ、で良いんだよね?」
「目元とかフェイトにそっくりだよね?」
「ほんとだねぇ、匂いも似てるし他人とは思えないや」
「うん、だって親子だし?」
「「「「「えっ?」」」」」
隠す気の無いレヴィの一言で場が凍り付く、特に親子と言われたフェイトは状況がいまいち飲み込めていなかったのだが、同時にいち早く復活したのもフェイトだった。
「えっと、私がお母さんで、お父さんは誰なのかな?」
「お父さんの事? お父さんの名前は『ブレン・シュトッフ』だよ?」
レヴィのその言葉に喜びを隠せないフェイトだったが、何故レヴィがこの時代に来たかと言う話を始めると、次第に浮かれた表情が引き締まって行く、側で聞いていたプレシア達もその深刻さに顔を顰めていた。
レヴィは語る、初任務で『割れたペンダント』と呼ばれる神の時代の遺物の護衛に当たっていた事、輸送中に一人の闇術師に襲撃を受けてそれを強奪された事、闇術師は邪神の復活を目論んでいる事、強奪されたペンダントは時を渡る力を持っている事、そしてその追撃の為に過去に来ている事。
『五対一で捕まえらんなかったんだよねー』とあっけらかんとしているレヴィだったが、その声は震えており悔しさが滲み出ていた。
「本当は僕らで何とかしないといけないんだろうし、過去のお母さん達に頼むのは筋違いなんだろうけど、僕らは万全の体制で戦ったのに取り逃がしちゃってるからさ、出来ればお母さん達にも手伝って欲しいんだ」
肩を落としながら申し訳無さそうにそう頼み込むレヴィ、彼女は自分のこのお願いが下手をしなくても過去に干渉する事になるのは理解している。だが、ドラングレイグで戦った邪神の欠片達によって深淵の力の恐ろしさを身に染みて教え込まれた、その権現とも呼べる邪神マヌスの復活は何としても阻止しなくてはならない。
ほんとはこう言うのって頭の良い二人の仕事なんだよなー、と内心でボヤきながら何とかレヴィはフェイトの協力を取り付ける事に成功し、カレーにありつく事が出来たのであった。
不死の英雄伝 〜舞台裏〜
NGシーン 子供の不満
フェイト「ねぇレヴィ、未来の私ってちゃんとお母さんしてるのかな?」
レヴィ「うん、バッチリだよ?」
フェイト「ほっ、良かった」
レヴィ「でもね、出張多いし、帰って来てもすぐ寝ちゃうし、どっちかって言うとお父さんっぽいかなぁ?」
フェイト「お父、さん?」
レヴィ「大丈夫!! お父さんだって四年くらい前は忙しくて半年くらい音信不通だった時があるから普通だよ? 今年も三ヶ月くらい顔見てないし」
フェイト「ごめんね、ちゃんと帰るようにするから……」
レヴィ「それ毎回言ってるよ?」
フェイト「うぅ……」