珍しくシリアス、それと若干のR-18的展開が含まれてます。
第百二十二話 囚われの姫
目の前の闇術師が私に杖を向ける、魔術の使用には魔法陣などの前置きが無く、何時発動するか分からないと言う共通した厄介な特徴と、才能の有無に関わらず常に一定の威力が出るのでデバイスに登録すればどんな人でも容易に扱えると言う汎用性を持っている。
しかし、それはデバイスを仲介して使用した場合の話であって、本来の形の魔術ならばその威力は計り知れない物となるらしい。 子供の時にパパが何気無く教えてくれた事だけど、こんな所で役に立つとは思わなかった。
彼の杖から魔術が放たれる前にその懐に飛び込み、顎をめがけてアッパーを振り上げる。 以前の戦いで、彼の闇術は本来の性能を発揮している事は知っているので下手に避ければ、その圧倒的なパワーで押し切られてしまう。自分から仕掛けるのは私の戦闘スタイルから外れているけれど、この場合は仕方ない。
ただ少し予想外だった事は、彼の膝が私の脇腹に突き刺さった事と、彼がソウルから朽ちた斧槍とねじくれた骨のような鎌を取り出した事だった。
「前の戦いじゃあ似合わねぇ固定砲台染みた事やってたが、本来の俺の戦闘スタイルはコッチなんだ、テメェ見てぇな小娘如きそのペンダントが無くても勝てるんだよ、じわじわと嬲り殺してやるからありがたく思いなよ」
「それはありがた迷惑って奴かな?」
彼の持つ二つの武器からは禍々しい気配が滲み出ていて、見てくれだけの武器では無い事が一目瞭然だった。 しかも相手の持つ武器は両方共が長物、間合いの測り方もリーチの差もしっかりと念頭に置いた戦いを心掛けないとならない。
先ほどの膝蹴りの威力から察するに、彼の身体は良く鍛えられている事が分かる、相手が長物だから懐に飛び込めば安全なんて言う甘い考えはしない方が良いかな?
前にパパがお休みの日に家の物干し竿を槍に見立てて勝負してくれた事があったけど、あの時は本当に手も足も出なくて悔しい思いをした事があった。
懐へ潜り込めば鋭い蹴りと石突きによる打撃に打ちのめされ、それを嫌って離れれば刺突の雨が踏み込みを躊躇させ、引け腰になった踏み込みを迎撃するように薙ぎ払われる斬撃、結局一撃も与えられずに封殺されてしまった。 その後、パパの本気に物干し竿が耐えられ無くって折れちゃったからママ達にお説教されてたのが少しかっこ悪かったけど。
でも、そのお陰で槍の動きは分かっているからそっちは大丈夫、けどもう一つの鎌の動きが分からない事には中々攻め込み辛い、此処は暫く守りに徹するべきだね。
そう思った矢先、私の目から攻めっ気が無くなった事を悟られてしまったのか、彼が歪んだ笑みを貼り付けながら大鎌を構えて大きく踏み込み、私の懐へと潜り込む。 彼のその動きに合わせて咄嗟に拳を横殴りに出したものの、彼は大鎌を下から掬い上げるように私の胴を両断するように斬り上げて来た。
地面スレスレの超低空から跳ね上げるように斬り裂かれた一閃、警戒していたのに反応が遅れる程鋭く速いその斬撃は、私の右の脇腹から左肩に掛けてを斬り裂き鮮血を吹き上げさせる。 斬撃の瞬間に無理やり身体を捻って致命傷を避けたけれど、此処で後ろに退いてはもう一つの武器によって止めを刺されてしまう。 だから彼の股間を蹴り上げ、痛みに悶絶しているところに拳を打ち下ろし、廃墟の床をぶち抜いて彼を下の階に叩き落した。
無理に攻撃をした所為で傷口がひろがってしまったけれど、此処で攻撃を返さなかったら多分私はやられてた。 時には強引な手段に出る事も生き延びる為のコツだとパパが何時も言ってたけど、こう言う事だったんだね。クリスに応急処置を頼みながらその場から離れ、近くの物陰で息を殺しながら傷が塞がるのを待つ、最悪出血さえ止まれば今の所は戦えるから、それを最優先して貰って居るんだけど中々上手く治療が進まない。
闇の力による呪いのような物なのかはたまた単にあの武器の特性なのかは定かでは無いけど、このままでは出血によって気を失ってしまう、そうなれば私はパパに対する人質となり、彼の欲望の捌け口にされてしまうだろう。
女としてそんな最後は迎えたく無いので、クリスの中に搭載されているかなりお高い止血剤で出血を止め、包帯をきつく締める事で傷口が開く事を防いでおく、応急処置だけどこれで何とか動けるようになった。
遠くの方で階段を上がってくる足音が聞こえ、周辺を探し回る彼の姿が現れた、その瞬間に私の神経が緊張と共に研ぎ澄まされて行く。 さっきの一閃がもしも私の首を狙った物だったら、あっさりと其処から上を刈り取られていただろう。 嬲り殺しにすると言った宣言通り、彼は私をいたぶり続けるつもりのようだ。
不意打ちによるヒットアンドアウェイ、それを狙う為再び別の場所へと隠れようとした時、私の足先に何かが当たった。
恐る恐る下を見てみると、それは惨殺された人間の死体だった。
「ひぃっ!!」
「おっ、悲鳴が聞こえたって事は漸くアレを見つけたつー事だな、じゃあ俺の勝ちだ」
彼が勝利宣言と同時に、何時の間にか再び握って居た杖で床を叩くと、私の足元に転がっていた死体が大爆発を起こし、その爆風に煽られて彼の前に吹き飛ばされた。
先程の爆発は信じられない程の火力を持ち合わせていて、私が隠れていた物陰は塵一つ残らず消え去っている。 咄嗟に障壁を張ったものの、そんなものは気休めにもならずに破壊され、全身をその爆風に焼かれてしまって身動きが取れない。
勝ち誇った顔で私を見下す彼は、痛みと衝撃で動けない私からバリアジャケットを剥ぎ取りながら下品な笑いを浮かべていた。
「…………な、にが、お、起きた、の?」
「『死者の活性』死人の身体に働きかけて闇の炎を持って爆発させる闇術だ、此奴はロードランには無かったドラングレイグの面白い技だ」
「し、しゃの、身体、を、爆弾、に?」
「はははっ、最高に侮蔑の篭った目だけどよ、テメェはこれから何されるか分かってんのか?其処からきっちり生気を無くしてやるよ」
「………………くっ」
彼の手が、私が纏っていたバリアジャケットを全てはぎとり、一糸纏わぬ姿となった私の身体を撫で回し始める。 生理的な嫌悪感と、人の生命を冒涜するこの男に敗北したと言う屈辱に打ち震えていた私は最早なす術が無く、睨む事しか出来なかった。
「さあ、お待ちかねの時間だな、食欲、睡眠欲はそこそこ満たされてるし、後は性欲だけだ。 テメェは良い体してるしたっぷりと可愛がってーーーー」
彼がそう言い終わらない内に、その首に向かって銀閃が放たれ首を刎ね飛ばそうとする。 彼は前のめり気味に転がってその一撃を回避したのだが、バッサリと後ろ髪を斬られ、尚且つ返す刀に背中を斬り裂かれているようで、床には血が滴り落ちていた。
雨雲から落ちた雷光が映し出したその人影は、大人姿のパパとアインハルトさんでした。
「ヴィヴィオさん!! ご無事ですか!?」
「あ、あはは、あんまり、大丈夫じゃ、無い、かな?」
「すまないなヴィヴィオ、少々遅れてしまったようだ。 何、後は私が引き受けよう、久々にこの姿で剣を振った所為か仕留め損ねたが、二の太刀でそれも修正できた、大船に乗ったつもりでいたまえ」
あぁ、これでもう安心だ。
不死の英雄伝 〜 舞台裏 〜
NGシーン 必殺大人モード!!
ブレン「取り敢えず戦いやすいように始まりの火を使って肉体だけ嘗ての姿に戻しておこう。 下手をすると子供のままでは色々と手遅れになるかも知れないからな」
アインハルト「うっ、うぅぅ……」
ブレン(大人モード)「? 目を覚ましそうなだな」
アインハルト「うわぁぁぁぁぁあ!! はっ、夢? 延々と面白いんだか面白くないんだか分からない作品展に出ていた気がします源氏バンザイ」
ブレン「目が覚めたか、随分と魘されていたけど大丈夫かね?」(寝てるアインハルトを吐息が掛かる距離で覗きこみながら)
アインハルト「か、顔が、顔が近いです!!」
ブレン「何も顔を近付けただけで赤面する事は無かろうに、初心な娘のようだな。 しかし、そんな君に悲しいお知らせがある、余程魘されて居たのかシャツが肌蹴てあられもない姿になっているよ。 嫁入り前の娘が男の前で柔肌を晒すのは余り宜しくないと思うのだが、最近の娘はそうでも無いのかな?」
アインハルト「へっ? あっ!! あの、えっと、その、これはですね!! 色々ありましてそれでその……きゅ〜」
ブレン「…………ティオ、だったか? 悪いが彼女を起こしてやってくれ、私が起こすと肝心な話が出来そうに無い」
ティオ(了解)