先日、友人宅でブラボを少しだけやらせて貰いました。
とっつきがあるとは思わなかった……。
第百二十八話 光と闇
結界で隔てられた先で自分の大切な人達が戦っている、結界を斬り裂いて彼女達を助けに行きたいのだが、俺の前には邪神が立っている。 しかも俺の経験を所有しているのだから必ずその一瞬の隙を突かれてしまう、人間だった頃ならいざ知らず、今の俺では奴の深淵の力は正に天敵、その一瞬で決着が着いてしまう可能性がある、奴を先に片付け無くては……。
「ククッ、貴様の考えている事が手に取るように分かる、我を滅し、その後にあの小娘らを救いに行こうとしているのだろうが、そうは行かんぞ」
マヌスは杖を振り上げ追う者たちを展開する、彼の周りに漂う五つの巨大な闇の弾丸に浮かぶ顔が俺を見つめ、一つ一つが起動した。
人間性を求め、それに吸い寄せられながら何処までも追跡して来る彼らを振り切る事は出来無い。 そもそも嘗てのように奴の体が巨大ならばこの闇の弾丸を処理する所なのだが、今の奴は人型なのだ。
俺ならば追うものを目くらましに闇術を使用する、もしくはあの大鎌を投げ付け、それに反応した所をあの短弓を使って狙い撃つ。 対処を誤れば幕引きとなる、だから此処は敢えて襲い掛かってくる追うもの達の下を潜り抜け、奴の全身を視界へと納める。
弾速の遅い追う者たちへと走って行き、その下をスライディングしながら潜り抜ける、その後ソウルの中にしまってあるナイフを手甲のグローブ内に仕込みながら奴を注視する。 追う者たちによって視界が覆われていた所為で気が付かなかったが、奴の杖先が俺に向いている。 即座に先ほどグローブに仕込んだ毒ナイフを奴の杖を握る左手に投げ付け、奴の闇術の行使を中断させようとする。
投げ付けた毒ナイフは奴の手首を貫いたが、それと同時に闇術が発動し、俺の周りへ闇の霧が発生する。 咄嗟に息を止め、真横へと飛び退きながらその霧から身体を引き摺り出したのだが、鎧の金属音で位置を割り出されたのか、先ほど俺が投擲した毒ナイフを全く同じ場所へと投げ返された。
手甲の隙間へと突き刺さる毒ナイフ、全身に毒が回り出し倦怠感と息苦しさが襲い掛かる、この苦痛から逃れる為に苔玉を取り出したのだが、闇の霧の中から大鎌を構えたマヌスが俺に斬り掛かって来た。 しかし、その顔には苦悶の表情がありありと浮かんでおり、奴もまた毒に蝕まれている事がはっきりと分かった。
振るわれた斬撃は右から左へと流れる一文字斬り、避けようにも左手からは追う者達が迫ってきている、避けたところでアレに見舞われてしまえばひとたまりも無いだろう。
俺は舌打ちを零しながら左手のアルトリウスの大盾で追う者たちを防ぎ、右から襲い掛かる斬撃を月明かりの大剣を硬質化させて盾代わりにする。 全身に回る毒の所為で追う者達の着弾による衝撃を殺しきれず、アルトリウスの大盾が弾き上げられる。 そしてガラ空きとなった胴体に振り抜かれたマヌスの大杖が俺の肺から酸素を全て吐き出させる。
幸いな事に奴の一撃が毒ナイフによってあまり腰が入っておらず、鎧越しだった事もあってか後を引くようなダメージは無かった。身体が酸素を求めているのを無視して、奴の左腕を捻り上げ、肝臓部分に膝蹴りを叩き込む。
膝から伝わる鈍い感覚、二〜三本肋骨が折れたのだろう、痛みと衝撃でマヌスが脇腹を抑えながら膝をつき、胃液と唾液が入り混じった液体を地面へと吐いている。邪神としてでの姿では味わえない痛みに奴が悶えている隙にもう一撃入れたかったが、限界が近かったので大きく息を吸ってしまった。 そして、その一瞬を見逃す程マヌスは甘くなかった。
息を吸っている瞬間に苦痛に顔を歪めながらマヌスが俺の足を払い、右足に大杖を振り下ろす。完全に隙を突かれてしまったため、なんのダメージコントロールも出来なかった俺はその一撃で右足の骨を砕かれてしまった。
これで踏み込みが潰され、回避や攻撃に移り辛くなってしまったが、痛みに悶える前にデバイスを取り出して奴の左腕をチェーンバインドで吊るし上げて無理矢理関節を引っこ抜く。
肩や肘が外れる音が響き渡り、奴の左腕がだらしなく垂れ下がる。しかし、これではまだはめ直されてしまうので、其処から一気に左腕を捩じり上げて二〜三回転させ、腕自体をズタズタにする。これで奴の大型武器をある程度制限出来た。 あの左腕では大杖を振るう事も、持ち上げる事も出来無いだろう、だが此方は右足を潰されてしまった。 一対一の交換だが、中々高い代償だった。
腰に差している混沌の刃を引き抜き、膝から土踏まずまで一気に突き刺し、鉄心代わりにしながら折れた右足で無理矢理立ち上がり、月明かりの大剣を構える。
洒落にならない程の激痛が走っているし、毒で震えていた手でそんな真似をした所為か動脈を斬った感覚があったので、右足は夥しい出血に見舞われていた。
刃を内側にして突き刺した所為か一歩足を踏み出す度に肉と骨が切断される感覚が俺を襲っているが、動作自体は問題無く行える。
今度こそ解毒剤の苔を使った後、月明かりの大剣を正眼に構えてマヌスへ切っ先を向ける。
奴は捩れた左腕に大杖を縛り付けている、多少強引にでも闇術を行使するつもりなのだろう、奴の左腕は右足の代償にしては安過ぎたか。
内心で舌打ちをしていると、奴が俺に向かって斧槍を突き出してきた。
「無様だな、英雄」
「貴様も大概では無いか? あまり人の事を言えんぞ、邪神」
「我は良いのだよ。 貴様と違って我の背中には何も乗ってはおらぬからな」
「…………何が言いたい」
愉快そうに笑う邪神が何を言いたいのかは分からない、だが奴の言う事は何故か感に触る、昔ならばこれ程物事に腹を立てることは無かったのにな。
「なに、実に簡単な話だ、貴様の背中にあの小娘達を背負う事はできぬという事だよ、英雄」
「…………なに?」
「我ごときに苦戦しているようではあの娘らの中の一人すら背負う事はできんよ。 何故なら、貴様の背中は貴様一人で精一杯だからだ」
「………………」
「確かに貴様は始まりの火を手にして神となった。だが、しかし、その背中は世界を背負う程広くは無い、背負った物が零れ落ち、其処から我や転生者と言ったボロが出たのは当然よなァ」
奴は嘲笑う、お前は愚かな男だと。 お前は万人を救う英雄の器では無く、唯の血に濡れた愚者でしか無いと。
「貴様は、殺す事と壊す事しか出来ぬ、我と同じなのだ」
「それだけか?」
奴の戯言はとうの昔に自覚している、だからこそ、なのはが共に背負うと言ってくれた時、俺は決めたのだ。
話は終わりだと言わんばかりに月明かりの大剣を一閃し、奴を黙らせる。
「私を揺さぶりたいのなら0点だ、私はもう迷わない、もう揺るがない。 共に歩んでくれる人が居るから、寄り添ってくれる人がいるから、その程度では私の剣は揺れんよ」
今回はNGも日記も思いつかなかったので無しです。