今回で決着付けるつもりが其処まで行きませんでした、おのれパンク許すまじ(血涙)
次回はマヌスをぬっころすかユーリちゃん止めるかどっちかは片付けます(願望)
第百三十一話 ディアーチェの苦悩
レヴィの一撃によって地に伏したシステムU-Dは、結界に覆われた曇天の空を見上げながら物思いに耽っていた。
何故彼女達は諦めないのだろうか? 何故様々な手を模索しながらも強大な敵と戦おうとしているのだろうか? 何故その瞳から光が消えないのだろうか? もしもこの身に破壊衝動が無ければ、もしも自分でも持て余しているどうしようもない強力な力が無ければ、自分も彼女達のようになれたのだろうか?
あのレヴィと言う娘に受けた傷が痛む、何かしらの魔法が掛かっていた事は分かるしその魔法を覚えはしたが、不思議な事に発動のさせ方が分からない。 そもそも何故仕留めたはずの彼女が生きているのかすら分からない、エンシェントマトリクスの一撃で地に伏した筈なのに……。
背中の傷から血が流れ出す、自分の身体にも赤い血が通っている事に軽い感動を覚えながらも電流による火傷と彼女のデバイスに負わされた傷の痛みに涙が溢れ出しそうになる、きっと自分の壊して来た人々もこの様な辛い思いを抱いていたのだろう。
システムU-Dには最早戦う意思はない、にも関わらずマヌスによる深淵の汚染は彼女の破壊衝動を増幅して突き動かす。
自分とは違う彼女達が羨ましい、闇に染まった自分も彼女達のような日の光が当たる場所で生きてみたい、彼女達のように信頼する仲間に囲まれたい。ーーーーけど、それ以上にその全てが妬ましく、私の持っていない全てを持っている彼女達を蹂躙してしまいたい。
システムU-Dの心に生まれた隙に付け込まれ、今まで保っていた理性が闇に塗り潰される、彼女は幽鬼のように立ち上がり暗い感情に染まった瞳でディアーチェ達を睨み付け、魄翼を巨大な翼へと変化させる、今の彼女に理性は無く、次第に己の破壊衝動に飲み込まれていった。
だが、これは戦う側からすれば非常に大きな付け入る隙、破壊衝動を抑えきれなくなったと言う事はそれなりに彼女の心が揺れ動いた事だと言う事を察したディアーチェは、勝利を確信しながらもある迷いを抱いて居た。
(あの娘は言わば暴走状態、自分を見失い本能のままに見境無く暴れているだけだ。 戦い自体は楽だろうが、いくら攻撃が通るからと言って倒しきれる程彼奴は甘くない。 それはレヴィの一撃も証明している、太陽の光の剣を纏った竜狩りの槍の一閃でさえ致命傷足り得なかったのだからな……。 ならば彼奴の正気を取り戻させるしか勝利する方法は無いのだが、そうなると問題は我自身となるか……)
システムU-Dの言葉を真に受けるならば、彼女は深淵による汚染を受けてあの状態になっている。ならば闇術師が感情の起伏が激しく、自分の欲求を抑える事が出来ないように、彼女の自分が抑えきれないと言う話もあながち間違いでは無いのだろう。
解決策としては彼女の内に巣食っている深淵を浄化してしまえば済むだけの単純な話、しかしこの解決策には大きな問題点が存在する。
(彼奴を浄化するには月明かりの大剣の魔力をその身に叩き込む必要がある。 だが父上は邪神と交戦中な上、結界によって我らと分断されておる、何より此処で父上に泣き付きたくは無い。 となれば我が父上から賜った月明かりの大剣を使うしかないのだが…………、悲しい事にこの聖剣は未だに我を主人として認めてくれていない)
嘗てブレンの息子達がそれぞれの武器を持って家を飛び出して行った際に彼は自分の娘達にも武器を渡していた。シュテルには最初から最後まで彼を支えてきたハルバードと黒竜を討った際に手に入れた大剣を、レヴィには四騎士の長から餞別として渡された竜狩りの槍を、そしてディアーチェには不死の英雄の代名詞とも呼べる月明かりの大剣を、そして最後にそれぞれへ呪術の火、太陽のタリスマン、ローガンの杖を渡している。
父の愛用した武器達を贈られた事に喜んでいた二人と違い、当時のディアーチェはその重大さに思わず聖剣を突き返してしまった。だが、彼は優しく笑いながらディアーチェの頭を撫でつつ大丈夫だと言い切った。
『父上、折角ですがこの聖剣は私には荷が重すぎます』
『心配しなくてもディアーチェならば大丈夫さ、なにせ私のように力に振り回される事も無いだろうからね』
『……そのような話、俄かには信じられません』
『まあ、今の私は慢心とは程遠い存在だからそう思うのは無理ないかな? だが私も中々人並みに馬鹿な男だったと言うだけの話さ』
『…………』
『だから断言しよう、君は私と違って聡い子だ。 知識も豊富ながらそれをひけらかさず、自分を律する事が出来るし、広く長い視野で物事を見る事が出来ている。 そんな君だからこの聖剣を託せるんだよ』
結局その言葉と共に彼女は聖剣を手渡された、反論出来なかった事もあるが、それ以上に父の期待に背きたくなかった事もあって彼女は聖剣を受け取ることに決めたのだ。
だが、その日から聖剣からは輝きが失われ刀身は燻んでしまった。どれだけ魔力を流しても輝きが戻る事は無く、父の手に戻った時だけその美しい刀身を蘇らせる。 触る事は出来るので拒絶はされないものの聖剣に認められていないと言う事を思い知らされた。
(現在の我では刀身の透過は疎か、盾として結界を張ることも聖剣の魔力を取り出すことも光波を飛ばす事も出来はしない。 聖剣の加護による治癒能力程度ならば使えるが、これも父上に遠く及ばない。 そうなると、聖剣を直接彼奴の胸に突き立てるしかその身体に巣食う深淵を浄化する方法は無いが……。はぁ、こんな時ばかりはレヴィの無鉄砲かシュテルの頑固さが欲しいものだな……)
彼女は瞳を伏せ、一度深呼吸をして心境を整理する。
(いや、悩んでいても仕方の無い事だ。やって後悔する方がやらないで後悔よりも千倍良い、我は一人ではないのだから、駄目だったのならば成功するまで尽力すれば良いだけの事よ。 自信を持つのだ、我らならばきっと成功すると!!)
ディアーチェは月明かりの大剣を取り出し、一閃してからその切っ先をシステムU-Dに突き付ける。
「さあ、我等の旅路の最後を飾って貰うぞシステムU-D!!」
不死の英雄伝 〜舞台裏〜
NGシーン 託された聖剣
ディアーチェ(…………月明かりの大剣、か。柄の重さしか無いのに重く感じるのはやはり我が気後れしているからだろうか?)
レヴィ「ねー王様、シュテるん、折角お父さんの武器貰ったんだし模擬戦やろうよ模擬戦!!」
シュテル「ええ、構いませんよレヴィ。 私も色々と使い心地を試してみたいですから」
ディアーチェ「…………いや、我は遠慮しておこう」
レヴィ「? 如何したの王様、元気無いけど大丈夫?」
シュテル「…………ディアーチェ、貴女が何を悩んでいるかは分かりますが、初めは誰もが無力です。私も、レヴィも、ディアーチェも、そして勿論お父さんだってそうです、あまり気負うのは良くないですよ?」
ディアーチェ「そのような事は分かっておるが、この聖剣は我が理解していた以上に軽くは無かったと言う事だ。 握っただけでも真っ直ぐ振るえるのか怪しい程に、な」
レヴィ「あっ……、それって月明かりの大剣?」
シュテル「…………刀身が燻んでいてあの背筋が凍るような美しさが消えていますね」
ディアーチェ「……我の手に渡った途端にこれだ、悩むなと言う方が無理であろうよ」
ディアーチェ(父上は大丈夫だと仰ったが本当に我がこの聖剣に認められる日が来るのだろうか……)