最近レトロゲーにハマってます、クラッシュバンディクーとかマリーのアトリエとか、PS1のゲームはなんだかんだで名作が多くて楽しいです。
皆さんは今でも飽きない昔のゲームがありますか?
第百三十五話 後日談 デート一日目
未来へ帰る前に思い出作りとして是非みんなと親子でお出かけしてしましょう、と言う要望がシュテルからあった。未来からの来訪者である彼女達が用を済ませた後もこの時代に居続けると言うのは褒められた物では無いのだが、未来の俺は仕事に追われていて中々家に帰れていないらしいので、そのことに対しての埋め合わせとなればと思いそれを承諾した、順番としてはシュテル、レヴィ、ディアーチェと言う順序で一日お出かけする事になった。
そして今俺は公園でなのはとシュテルを待っている、待ち合わせ場所には十分前に到着したのだが、暇で仕方ない。シュテルが言うにはお出かけの際には待ち合わせは必須らしいのだが、少し早かったのだろうか?
ベンチに座りながら平和の象徴である鳩に餌をやりながら彼女達を待つ、暇だから今朝帰宅したシフを虐めて遊ぼうかとも思ったのだが、ひっくり返ったまま眠ってしまったのでそれを渋々断念したのだが、暇で仕方ない。
如何して、人を待つ十分と敵と戦っている十分はこうも違うのだろうか? 春の陽気も合わさって時間が非常にゆっくりと流れているように錯覚してしまう。
「これが平和の空気という奴か……」
「何を帰還兵のような事を言っているのですか?」
「お待たせ、ブレンくん」
なんだかんだで時間が過ぎていたようで、時間通りに来たなのは達に俺の独り言が聞かれてしまい、シュテルからツッコミが入れられたがこれで漸く退屈な時間から解放された。
「……所でお父さん、足元で餌を食べているそれは何ですか?」
「何って、鳩じゃないか?」
「私の記憶している鳩と言う生物はこのような生理的に受け付けないダニのようなナニカでは無かった筈ですが?」
「此奴はキサラギの作った平和の象徴『AMIDA・TYPE PEACE』通称『鳩』だ」
「鳩要素皆無だと思うんだけど……」
「鳩と同じ配色で、鳩と同じ羽音で空を飛ぶよ?」
「と、飛ぶんですか?」
「と、飛ぶの?」
「勿論飛ぶよ?」
顔を青くしたなのは達を連れてその場を離れる、なのははともかく、クールなシュテルまでも顔を青くするとは思わなかった、ちょっとした悪戯のつもりだったのだが、思った以上の反応が見れた事に大いに満足だ。
だが、この直後俺に世にも恐ろしい天罰が降る事になるとは夢にも思わなかった。
気を取り直して街の中を当てもなく歩き回る、時々ウィンドウショッピングをしたりするものの特別な事はしていない、と言うのも普通の親子のように街を歩いて見たかったらしい。未来の俺達は変に有名人らしく、何をするにしても目立ってしまうので気兼ねなく親子で出掛ける事は難しいのだとか。
少ししんみりした空気を変える為、最近噂のドリンク専門店に足を運ぶ事にした、と言ってもその店は移動販売車による出店なので、店の位置がその時々で違うのだが、探し物をしながら街を歩くのも中々楽しい物だろう。
街の大通りに構えているその店は、品質第一利益は二の次と言う経営方針で、超一流の素材を新鮮な内に使用しているにも関わらず値段もリーズナブルと言う事が人気の秘密らしい。
そんな店の中で一番人気の一品が『阿弥陀ミックス』と言う品だ。
この品はその名の通りミックスジュースで、三百円と五百円の二つの値段があり、この店の中でも割高なのだが、購入後に阿弥陀籤を使ってどんな食材を混ぜるかを決める物だ。
ギャンブル性と未知の味を求めるリピーターによって注文が後を絶たないと言う話なのだが、話の種にでもなればと思い三人分注文する事にした。
五百円の阿弥陀ミックスは五つの食材が入るコース、先ず初めにクジを引いたのはシュテル、彼女が引いた物は林檎、オレンジ、葡萄、苺、メロンと言うフルーツミックスとなった、シュテルは明らかに胸を撫で下ろしてほっとしている。
次に引いたのはなのは、彼女の引いた食材はチョコレートソース、生クリーム、牛乳、コーヒー、三温糖、聞いただけで甘ったるさが伝わる内容である、なのはの表情も引きつっている。
最後は俺、引いた食材は、千倍濃縮トマトピューレ、千倍濃縮デスソース、片栗粉、熱湯、花山椒、拷問以外の何者でもない。縋るようになのはに助けを求めたが、彼女は目を逸らしながら黙々と甘ったるいそれを飲んでいる、シュテルに助けを求めようとしたが、彼女は野良猫に芸を仕込む事に没頭しているフリをしている。
捨てる事も考えたが、この店の食材は超一流、輸送費や原価の問題から薄利多売をしているこの店の努力を無駄にしてしまうのでは無いか? と思い留まり捨てるに捨てれない。
溶岩のような見た目、イザリスの混沌をそのまま押し込んだようなそれはゴポゴポと音を立てている。 ストローは無く、特別な比率で配合された片栗粉が液体だった物をスライム状に変質させ、明らかに喉に絡み付くようになっている。 何時ぞやのジュースとは明らかに格が違うオーラを纏ったこのジュースらしき物は超濃厚なトマト臭と超濃厚な刺激臭を漂わせている、手が滑ったフリをしながらさりげなくコップを傾けたのだが、一滴も落ちてこない。 混ぜた物は本当に片栗粉なのか? 未知の化学薬品か何かじゃ無いのか?
遂になのはも猫と戯れながら俺を意識の外へと追いやっている、これはもう飲むしか無いのだろうか? 飲まずに済む方法は無いのか? ……何時までもグダグダ言っていても仕方ない、こうなったら我慢して一気飲みするしか無い。
多分死にはしないだろう。
勿論そんな物に耐えられる訳も無く、意地と気合いで無理矢理飲み干したブレンはなのはに抱き付いて子供のように号泣、なのはとシュテルに慰められた彼は、べえべえと恥も外聞もなく泣き叫び暫く幼児退行する羽目になったのであった。
私達は泣いて幼児退行してしまったブレンくんをあやしながら、公園まで戻って来ました。
「うわぁぁぁぁあん!! もう嫌だ!!なんで俺ばっかりこんな目に合うんだよぉぉぉ……」
「だ、大丈夫? ブレンくん」
「お父さんが泣いてる姿なんて初めて見ましたね(ルシフェリオンに録画しておきましょう)」
「ひっく、ひっく、辛いよ〜、トマトだよ〜、痛いよ〜」
「よしよし、大丈夫だよ、私が居るからね?」
こうして泣いているブレンくんを見ていると、昔の彼を思い出し、何だか少しだけ嬉しくなりました。
と言うのも、私と出会った当初の彼は物事を知らない所の話では無く、一般常識と感情の大半が欠落したような存在だったからです。中でも一番印象的だったのが、食事と言う『行為』を知らなかったと言う事で、その時の衝撃は今でも忘れられません。
食器の使い方も、目の前の食べ物を如何するのかさえ忘れてしまっていた彼が、こうしてみっともなく泣いたり喚いたり出来るようになったと言う事は今の彼は失った物を新たに手に入れた証だから。
それに、私と一緒になって隣で彼の頭を撫でているシュテルが居ます。私によく似ている彼女はあの死にたがりだった彼と私との間に出来た未来の娘、他にもヴィヴィオにレヴィにディアーチェ、後は旅に出たと言う息子達、未来のブレンくんはきっと幸せ一杯です。
(だから、これからみんなと一緒に沢山泣いたり笑ったりしようね、ブレンくん)
ブレンくんはこの一軒でより一層トマトと辛い物が嫌いになりました、これで彼の好き嫌いが筋金入りになりましたね(白目)