未来組の映像残しちゃ不味いですからね。
第百三十六話 後日談 デート二日目
昨日は酷い一日だった、あの赤い刺激物を飲んだ後に子供のように恥も外聞も無く泣きじゃくりながら、なのはとシュテルに縋り付いてしまった。
情け無い所を見せてしまった上に、貴重な一日を無駄にしてしまったと落ち着いた頃に凹み倒したのだが、なのはもシュテルも『良い物を見た』と言うような顔で許してくれたのだが、その視線は非常に優しい物であり、家に帰ってからも子供扱いだった。
今日は先日のような失態はしない、何故なら今日の相手は大人しいフェイトと活発なレヴィ、きっとフェイトはレヴィに合わせて体を動かすような場所に行きたがる筈だから、昨日のような不甲斐ない姿を見せずに済むはずだ。
俺も日常生活にも慣れ、戦い以外の事もちゃんと出来ると言う事をちゃんと見せなくてはダメ親父の称号を付けられてしまう。 俺のような人間がちゃんとした『親』と言う存在になれるのか不安であったが、彼女達を見ればその心配は不要なようだし、此処はかっこいいお父さんを演じなくてはならないだろう。
待ち合わせ場所には五分前に着いたのだが、其処には既にレヴィとフェイトが到着しており、俺の事を今か今かと待っていた。
「お父さん遅いよ!! 僕達三十分も前から待ってたんだよ!!」
腰に手を当てながら仁王立ちし、俺に指を突き付けながらそうむくれるレヴィ、昨日は早過ぎたがどうやら今日は遅過ぎたようだ。
「済まないレヴィ、これでも早く家を出たつもりなんだけどなぁ……」
「王様が言ってたんだよ?『約束の時間には五分か十分前には着くように心掛けておけよ?』って、だから僕は約束の時間の十分前に遅れないように、その更に十分前のその又十分前に着くように家を出たんだ」
「私も早過ぎるとは思ったんだけど、ブレンを待たせちゃいけないと思って……」
「その結果として、君達が待つ事になったのか……」
「ねーねー、早く出掛けようよ!!」
「手を引かなくても分かってるよレヴィ、じゃあ行こうか」
レヴィはグイグイと俺とフェイトの手を引きながら先程の事など忘れたと言わんばかりに先を急かす、ニコニコと嬉しそうにしている彼女は早く遊び周りたくて仕方ないのだろう。
元気一杯に俺達を先導するレヴィに連れて行かれた先は近くのバッティングセンター、元々連れて行くつもりだったこの場所は企業連の経営する店で、様々な球速のマシーンが設置されている。
コースは弱、並、強、最強、の四つ。弱の球速は小学生程度で変化球も無い、並の球速は中学生程度で変化球も一つか二つ、強の球速はプロクラスで変化球も四つから六つ、最強とまでなると世界記録レベルの球速と物理的に不可能な動きをする全種類の変化球、如何やって再現しているのか分からないが漫画に出て来るような魔球も投げてくる、店の中に入って行ったレヴィは躊躇わずに奥の最強へと向かい、コインを投入する。『見ててねお父さん!!』と言って、張り切って打席に立ったレヴィは全力でボールを打ち返し、その全てをホームランと書かれた看板に叩き込んで行く。
フェイトは次々ボールを打ち返しているレヴィを嬉しそうに応援している、レヴィもその姿が何となく犬に見えてしまったのは秘密だ。
「…………ねえフェイト、ちょっといいかな?」
「? どうしたのブレン」
「…………お手」
「うん」
(つい興味本位でお手と言ってしまったが、まさか本当にするとは思わなかった)
何故お手を要求されたのか分からないと言った表情で首を傾げるフェイトだったが、俺は彼女の将来が心配になると共になんとも言えない快感が俺の全身を駆け巡った。 何かに目覚めてしまったような気がしたが、気を取り直してレヴィの方を見ると彼女はやりきったような顔でこっちへ駆け寄って来た。
「ほらほら、次はお父さんの番だよ?」
「えっ? 俺? いや、俺はこう言った遊びは初めてで……」
「頑張ってねブレン」
「フェイトまで……」
こうして俺は人生初の打席に立つ事となった、正直スポーツのルールなんて殆ど知らない、父さんの影響でサッカーのルールくらいは知っているがそれでも細かいところまでは分からない。 勿論バットの握り方すら分からない有様だったが、其処はレヴィに教えて貰ってバッターボックスに立つ。
取り敢えずはレヴィのやったようにバットにボールを当てれば良いだけのようだから、彼女の真似でもしようか。
そんな事を思いながらネットの後ろにいる二人を見ると、キラキラと目を輝かせながら俺を見ていた。二人ともありありと期待していますと言わんばかりの表情で此方を見つめている、何となく逆らい難い物を感じたので少し本気を出してチャレンジして見ようと思い直し、コインを入れる前に一度深く深呼吸をして気持ちを切り替える。
俺の気配が変わった事に気が付いたのか、後ろの二人が固唾を飲んで見守る中でコインを投入する。バットを両手で握り、ボールが射出される瞬間を待ちながら精神を集中、何が飛んできても反応出来るようにする。
バットの重さは片手剣程度、これならば降り遅れる心配も無いし、いざとなればアルトリウスのように無理やり軌道を変えればボールを打ち返す事も出来るだろう。
そうして放たれた運命の第一球、それは最速の直球だった。
タイミングを合わせ、左足を踏み込みながら腰を捻りつつ、全身に掛かる力を余す事なくバットに乗せて勢い良く振り抜いた結果、インパクトの瞬間にボールが爆散した。
凄まじい炸裂音と共に粉砕されたボール、爆音に連られて俺を見つめる一般の方々、予想外の事態におろおろするフェイト、手放しで凄い凄いとはしゃいでいるレヴィ、……気合いを入れすぎた。
しかし、コインを入れたばかりのピッチングマシーンは止まってくれない、俺も感覚を戦闘時のそれに切り替えてしまった以上引っ込みが付かないし加減も出来ない、このまま行き着く所まで行くしかない。
衆人環視の中で放たれた第二球、先程と同じような球速だがボールに掛けられた回転が先ほどとは違う、これが世に言う変化球という奴なのだろう。
どれほど曲がるのか見極めようとしていると、物理的にあり得ない程直角に俺へと曲がって来た。 思わず避けてしまったが、ボールの軌道は俺の頭部を直撃する物だった。これがビーンボールと言う奴か、マシーンの癖に味な真似をするじゃ無いか。
少し頭に来たのと、何時の間にかギャラリーが増え始めて来たのであのマシーンを故障させる方向へシフトチェンジする。 狙うのは射出口、ボールを粉砕しないように加減しながら打ち返し球詰まりを起こさせる。
そんな意気込みを知ってか知らずか、一投目と同じ球速のボールがこれまた物理的にあり得ない動きで急降下、しかしボール回転の違いで変化球だと言うのは分かっていたので、バットの軌道を無理やり変えて先端ですくい上げるように打ち返す。
俺の打った球は狙い通り発射口に叩き込まれた。誤算だったのは加減が甘く、ピッチングマシーンの射出口を曲げてしまったと言う事と、当たりどころが悪かったらしく只管ボールを吐き出し始めた事だ。 その結果殺人的な速さのボールがあらぬ方向へと放たれ始め、その場に居たギャラリー全員に襲い掛かり始めた。
阿鼻叫喚となった店内だったが、レヴィは楽しそうに四方から飛んで来るボールを打ち返しているし、フェイトもレヴィに言われてボールを打ち返している。 妙に張り切っている所を見るにかっこいい所をレヴィに見せたいのだろうと思う。
……………俺は遊ぶ事すら満足に出来んのか。
不死の英雄伝 〜 舞台裏 〜
NGシーン 私の屍を越えて行け
プレシア「………」
リニス「………」
プレシア「……リニス、玄関から退きなさい」
リニス「構いませんが、その場合貴女が持っている全ての撮影機材を置いていって貰いますよ?」
プレシア「断る、と言ったら?」
リニス「貴女の持っているフェイトとアリシアのアルバムから録画映像から、何から何まで灰にします」
プレシア「くっ、鬼!! 悪魔!! ド畜生!! ド外道!!」
リニス「なんとでも言ってください、これ以上話をややこしくされてはブレンさんがタイムパラドックスを修正しきれなくなりますので」
プレシア「……如何あっても其処を離れる気は無いのね?」
リニス「撮影をやめろと言っているだけで行くなとまでは言ってないんですが……」
プレシア「……こうなったら実力行使しかないわね」
リニス「受けて立ちますよプレシア、貴女が健康体になったお陰で私も強くなりましたから」
アリシア(ね、ねぇアルフ?)
アルフ(な、なんだい? アリシア)
アリシア(私シフで遊んでくるから留守番よろしくね〜。あっ、お母さん達の喧嘩終わったら教えてね?)
アルフ(ちょっ、あたし一人こんな魔境に置いてく気かい!?)
アリシア(…………じゃ、そういう事で!!)
アルフ(に、逃げたーーー!!)