ss主人公の持つ生活スキルは零を振り切ってマイナスです(白目)
第百三十七話 後日談 デート三日目
今日はディアーチェ達と出掛ける日なのだが、俺の気分は晴れず、待ち合わせ場所でうな垂れていた。 と言うのも、先日先々日共に俺は不甲斐ない姿を晒してしまい、自分の無能さを噛み締める羽目となったからだ。
先日もあの場を去ってからもボーリングやビリヤード等をプレイしたのだが、その度に何かしらの問題を起こす事となり、目出度く『遊びすら満足に出来無い男』になってしまった。唯一ダーツだけは店内ハイスコアを叩き出したものの、ナイフ投げの延長のようなものだったため釈然としなかった。戦い以外からっきしな事は重々承知なのだが、此処まで酷いとは思っても見なかった。
だから、今日も何かしらやらかしてしまうのだろうかと憂鬱な気分となってしまったのは仕方の無い事で、缶コーヒー片手に公園のベンチで黄昏る少年と言うシュールな物が出来上がった事も仕方の無い事だ。
背後から足音が二つ聞こえ、はやて達の気配が近付いて来た所で後ろ向きな考えを頭の隅に追いやってベンチから立ち上がる。
「な、なんやリストラされたお父さんみたいな背中しとったでブレンくん……」
「……俺にだって悩みの一つや二つ位あるさ」
(父上が何をお悩みになられているのかは大体予想が付くが、一体どうしたものか……いや待てよ?)
さあ行こうかと思った矢先、ディアーチェがはやての肩を叩いて何やらヒソヒソと話し始めた。怪訝に思いながらもその様子を眺めながら、彼女達の会話が終わるの待っているとはやてが何やら愉快そうな表情を浮かべ始め、話し合いが終わると同時にニコニコと俺の方へ近付いて来た。
「なあブレンくん、ブレンくんは家事とか炊事が一切出来へんらしいけど、ほんまなん?」
「…………うん」
「ほんなら、私とディアーチェで教えたるからこれから私の家に行こか」
「えっ?」
「そうと決まったら善は急げや、今日は泊まり込みでお勉強して貰うで」
「えっ?」
「父上がお悩みのようでしたので、母上と相談した結果今日はその悩みを解決する事になりました、お買い物にも付き合って頂きますので、お願いいたしますね?」
何故かあれよあれよと話が進み八神家に向かう事となってしまった、嫌な予感しかしないんだが……。
そんな不安を抱えたまま俺は彼女達にスーパーまで連れて行かれ、料理の材料を買う事となった。
今日はハンバーグにするらしく、その材料が次々とカゴに入れられて行く。今日は色々と安い日らしく、はやてもディアーチェも真剣な目付きで食材と睨めっこをしている。
俺は手持ち無沙汰にその様子を眺める事しか出来ず、もっぱら荷物持ち担当となっている。先程値段も見ずに食材をカゴに放り込んだ所為で割と真面目に説教を受けたので非常に肩身が狭い、……主婦と言う生き物は怖いな。
なんだかんだで大量の食材を買い込んだ二人と共に八神家へと到着、出迎えてくれたのはリィンフォースとシステムU-D、もとい『ユーリ・エーベルヴァイン』彼女の名前はディアーチェが命名しており、順調に回復しているようだ。
「いらっしゃいませ、ブレン殿。 主人はやてから事情は伺っております」
「えっと、あの、先日は治療して頂き有難うございます、御礼が遅れてしまって申し訳ありません」
ぺこぺこと可愛らしく頭を下げるユーリ、以前の彼女は俺と同じように無表情だったのだが、今は真逆となり喜怒哀楽がはっきりと浮かぶようになったらしい。確かに、本当に申し訳無さそうな顔で頭を下げている彼女はポーカーフェイスとは無縁のようだ、謝り倒していた彼女は嬉しそうにディアーチェに抱き付いている。なんだろう、彼女もフェイトと同じような雰囲気を醸し出している。
「ディアーチェ〜」
「こ、これユーリ!! 父上の前だぞ!? 少しは我慢せぬか!!」
「おやおや、お熱い事ですなぁ〜。 それじゃあ後は若い二人に任せて、私らも目的を果たそか」
「は、母上!?」
ディアーチェを放置して俺を台所へと連れて行くはやて、買い物の時は二人に叱られてしまったので今回は汚名返上と行きたい所だ。
エプロンを装着し、気合いを入れてから台所に立った俺に手渡されたのは玉ねぎ。 先ずはこれを微塵切りにするらしく、はやてが手取り足取り包丁の握り方から食材の切り方まで細かく教えてくれた。『取り敢えず一人で切って見て?』と言うので、不器用ながらも玉ねぎを切り始めて行く。
「うんうん、良えよ良えよその調子や」
「…………」
(集中しとるみたいやし、あんまり声をかけへん方が良えかな?)
「…………あっ」
「ん? どないしたん?」
「指、切っちゃった」
「初めてやししゃあーないしゃあーない、消毒と絆創膏貼ったるからちょっと待ってな〜」
包丁の斬り方と剣の斬り方が全く違う所為でつい指を斬ってしまった、傷は浅いが何気にショックを隠せない。 はやては消毒液と絆創膏を取りに行ったが、この程度の傷なら血も直ぐに止まるだろうから水で濯いで続きを始めよう。
「お待たせやブレンくん、いやーヴィータが遊びに行ってて良かったなぁ、居ったらきっと慌て……ってどないしたん!?」
「…………手が、滑った」
はやてが居ない間に微塵切りを終わらせようとした所、食材を抑えていた左手が滑り、そのまま手の甲を切ってしまった。 しかも此方の傷はかなり深く骨まで見えている、出血も止めどなく流れているし、かなりの重傷のようだ。
はやてはなんとも言え無い声をあげながらシャマルを呼びにリビングへと走って行き、その喧騒を聞き付けたディアーチェが入れ替わりに台所に入って来た。
左手の傷は深いが死ぬような傷では無いし、手も問題無く動くので残りも切るだけ切ってしまおうと思ったのだが、後ろからディアーチェに羽交い締めにされた挙句に包丁を取り上げられてしまった。
その後に慌ただしくシャマルが台所に駆け込んで来る事となり、治療と共に俺はそのまま台所から担ぎ出されてしまった。 その際に、鮮血に染まった挙句骨まで見えている俺の左手を見て目を回して失神してしまったユーリも共に台所から連れ出され、結局食事ははやてとディアーチェが作る事となり、その後も次々とやらかしてしまった所為で家事厳禁の御達しを受けてしまった。
後にはやては語る、『彼の生活スキルの低さは想像を絶する物だった』と。
不死の英雄伝 〜舞台裏〜
NGシーン 英雄も人の子
ヴィータ「ただいま〜、ってあれ? 何でみんなこんなに疲れてんだ?」(ゲートボール帰り)
シグナム「うむ、どうやら我々が出掛けている間にひと騒動あったようだな」(剣道場帰り)
ザフィーラ「……ああ、今ブレンが来ていてな」
ヴィータ「えっ、マジかよ!?」
シグナム「それとこれとどう関係が?」
ザフィーラ「…………英雄も完璧超人では無かったと言う事だ」(遠い目)
ヴィータ&シグナム「????」
ザフィーラ「見てみろ」
洗濯機(周囲一帯が泡まみれ)
お風呂(混ぜるな危険を混ぜて塩素ガス発生中)
掃除機(息絶えている……)
ザフィーラ「今日一日で俺の中での英雄像が崩れ去った」
ヴィータ「ぶ、ブレンはどうしてんだよ?」
ザフィーラ「リビングで体育座りしながらユーリに慰められている」
ブレン「どうせ俺は戦うしか能の無い無能だよ……」
ユーリ「だ、大丈夫ですよ!! 人には得て不得手がありますから!!」
ブレン「一応、神様でした……」
ユーリ「か、神様だってきっと出来る事と出来ない事が有りますよ!!」