不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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今回で未来組が帰還します。


不屈の体現者 139

第百三十九話 別れの時

 

割れたペンダントも回収し終わり、未来からの来訪者達の思い出作りが終わった今、最早彼女達がこの時代に居る目的が無くなった。

 

俺達は彼女達の帰還を見送る為に海鳴公園に結界を張りながら集まったのだが、此処である一つの問題が浮き彫りとなった。

 

それは、彼女達の中で割れたペンダントを使用出来る者が居ないと言う事だ。彼女達の時間旅行は闇術師の転移に便乗する形で行っていた物で、いざペンダントを手に入れたとしてもその使用法が分からなかったのだ。

 

そう考えるとあの闇術師は正に稀代の天才とも呼べる男だったのだろう、人間の身で自分の手足のようにこのペンダントを使用していたのだから。

 

しかし、俺がそのペンダントの使用法を教えようにも未だに理屈を理解しておらず、感覚的な物でしか使用出来ない為、人に教えると言う事が出来無い。

 

俺が彼女達を連れて未来に転移すると言う手段も無くは無いが、その場合帰還するためにもう一度ペンダントを使用しなくてはならず、俺の手元に割れたペンダントが残ってしまう。

 

タイムパラドックスを無くす為に、俺はこの一件に関わった人間全てに始まりの火を使った暗示を掛けて事件そのものを無かった事にしようと考えているので、事の発端であるこれが手元に残ってしまっては困るのだ。

 

これと同じ理屈で、マヌス撃破時に俺の中に流れ込んできた奴の装備も未来に送らなければならない、発端どころか元凶の一つであるこれらは欠片すらこの時代に置いておく事が出来ない。

 

最後の最後で直面した大きな問題に溜息を零しつつ、腕を組みながら力業以外の方法で彼女達を元の時代に送る方法は無いものかと頭を悩ませて見たものの、時間的な問題からあまり良い案が浮かばない。

 

なのは達から何かしらのアイディアを貰えないかとも思ったのだが、考えれば俺自体がこのペンダントを理解しきれていないのだからアイディアを貰った所でそれを生かす術が無い。

 

一縷の望みに掛けてシフにアドバイスを求めて見たものの、彼もまた性能は理解しているがその構造は理解出来ていないらしく、残念そうに首を振っていた。

 

何時、誰が、何の為に作ったのか全く分からないこのペンダント、 俺のソウル内に溜め込んでいる公爵の書庫内の全ての書物を粗探しすればその出自や詳しい構造の載った書物が出てくるかもしれないが、あの書物は一日二日で読み終える事の出来る量ではないし、今の俺はソウルから出した物を再び戻す事が出来無い、もしこれで目的の物が見つからなければ骨折り損と言う奴となる。

 

世界そのものにどのような影響を及ぼすのか分からないので猛烈に気が進まないがこの際仕方ない、力業を敢行しよう。そもそも暗示とは言え、彼女らの帰還に合わせて俺自身を含む関係者全員の記憶に鍵を掛け無くてはならない、しかも、丸々消してしまっては返って怪しまれてしまう為、当たり障りの無い記憶に差し替えなければならず、且つ矛盾が全くないようにしなければならない、手段を長々と選んでいてはその作業に俺が忙殺されてしまうのだ。

 

 

「……みんな別れの挨拶はすませたかな? 非常に不本意だけど、なんとかする方法があるから未来組とユーリはこっちにおいで」

 

 

未来組の面々は俺の言葉に素直に従い、俺が指定した場所の上に立つ。

 

その際にディアーチェから割れたペンダントを借り、大王の大剣に始まりの火を纏いながら割れたペンダントを額に押し付けながら意識を集中させ、その力を解放する。

このペンダントを通して見るのは二十年後のこの場所、そして彼女達がこの時代に転移した日から一週間後に彼女達を送る事が出来るように調整しながら大王の大剣を縦に一閃する。

 

何もない空間、普通ならばこんな所で剣を振ったとしても只々虚しく刃が空を切るだけの話なのだが、俺はこの世界の構成そのものを理解しているため空間を斬る事が出来る。今回はそれを応用して始まりの火を纏った状態の大王の大剣と割れたペンダントを使った未来視で『空間』では無く『時空』を斬った。

 

これによって無理矢理未来と過去を繋げ、彼女達を帰還させる事が出来るのだが、この方法は世界そのものに確実に負担を掛ける為余り褒められた手段では無い。

 

それに、俺はこの世界を創造した際に神による干渉を防止する為に世界自体にある程度の自己修復機能を備え付けているので、この力業も長くは持たない。今は始まりの火を使って時空が閉じるのを防止しているが、今の俺では其処までの時間は稼げない。

 

 

唖然としていた未来組に割れたペンダントとマヌスの装備全てを手渡した後、別れの言葉を告げずに彼女等を時空の裂け目に放り込んでから斬った時空を元に戻す。

 

感動も何も無い別れになってしまったが、向こうには俺が迎えに来ていたようだから、別れの言葉は言わなくても良かっただろう。

 

彼女達は未来の俺に任せて、俺は俺の作業を終わらせてしまおう。

 

 

 

半ば強引に未来に返されたディアーチェ達は公園のベンチに座りながら彼女等の帰りを待つブレンの姿を見て旅の終わりと事件の解決を漸く実感し、各々が『やっと帰って来れた』と言う安堵の息を零すと共に『何故忙しい父が此処に居るのか』と言う疑問に首を傾げていた。

 

「………………私としては三ヶ月振りとなるのだけど、君達にとっては昨日の今日だから其処まで懐かしさは無いのかな?」

 

 

少し戯けたように語るブレンだが、彼の装いは私服であり、見るからに仕事帰りでは無い。サングラスを掛けては居るものの、多忙な父が何故プライベートの姿で此処に居るのかと言う問い掛けをディアーチェが代表して投げ掛ける。

 

 

「あの、父上? 何故ここに?」

 

「父親が娘とその友人を迎えに来てはいけないのかな?」

 

「いえ、そう言う意味では無くてですね……」

 

「娘を思う父の愛、とでも言えばシュテルが喜びそうだけど、単純な話が今日この時間にこの場所に来られるようにスケジュールを合わせただけの話だよ」

 

「(くっ、流石お父さん、上げて落とすとはやってくれますね……)待って下さいお父さん、それでは色々と説明が付かない部分が出てきます」

 

「シュテル、本音と建前を間違えなかったのは評価するが、表情で何を考えてるかバレバレだよ? それと、面倒なタイムパラドックスに関してはちょっとした細工をしてあったと言う事だよ?」

 

過去にブレンはタイムパラドックスを起こさない為に関係者全員に暗示を掛けて記憶の改竄を行ったが、暗示と言うものは何時迄も続く物ではなくいずれ解けてしまうもの、なので彼は初めから何時何時迄と言う風に暗示自体にタイムリミットを掛ける事にし、その指定した時間と言うものがディアーチェ達が過去に転移した日、と言う訳だったのだ。

 

「要は君達が過去に渡った時点で私達は過去の事件を思い出し、その行方と帰って来る場所を知ったから迎えに来たのさ」

 

「何と言うか、パパって本当に色々手回しが良いよね……」

 

「そうでなければ総帥等という職には着けないさ、何せ私の肩には局員を含めた管理世界全ての人の人生が乗っている。それにだ、上が無能では下の者を路頭に迷わせる事になる、私が引退するまではそうはさせんよ」

 

「あ、あの!! お久しぶり…で良いのでしょうか? ユーリです」

 

「久しぶりだねユーリ、一応君を養女として迎え入れる手続きは済ませておいた、この時代でも色々と見て感じて学ぶと良い」

 

「は、はい!!」

 

「それとアインハルト、ヴィヴィオに付き合ってくれて有難う、お礼と言っては何だが私に出来る範囲でなら何でも言う事を聞くので遠慮なく申し付けてくれ」

 

「い、いえ!! 私は私の思うように戦った訳ですから御礼なんてそんな!?」

 

「人の好意は素直に受け取りたまえ、暫く私は休みだから明日明後日には返事を聞こう、それまで宿題だ」

 

「うぅ…、はい…」

 

「お父さん、話長いよ〜。 折角の休みなんでしょ? 早くお家に帰って僕らの武勇伝聞いてよ〜!! 後、肩車もやって?」

 

「ああ、君達の旅路の話は楽しみにしているよレヴィ、ほら肩車だ」

 

「えへへ、お父さんありがとう!!」

 

「ああ、そうそう、言い忘れる所だったよ」

 

『?』

 

「みんな、おかえり」

 

『……ただいま!!」





今回で邪神編が終了です。

因みに邪神の装備自体には害が無いですので、一応誰かの装備品として使用出来ますが、全員の印象がもれなく『牛乳塗れの犬を拭いた雑巾レベル』ですので使用する人は居ないかと。

以下おまけ

不死の英雄伝 〜 舞台裏 〜

NGシーン ブレンの釣果歴


シュテル「そう言えばお父さん、一つ聞きたいことがありました」

ブレン「何かな?」

シュテル「…………お父さんの釣果歴です」

ディアーチェ「ば、馬鹿者!! 父上がまともな物を釣る訳が無いのは目に見えているだろうが!! 怖いもの見たさに聞くでない!!」

シュテル「だって、ツチノコを釣ったと言ってるんですよ? 他にも何か釣ってるかも知れないじゃないですか、逆に気になりますよ」

ブレン「ああツチノコか、アレなら二十歳頃の時にもう一度釣り上げてね、記念に今度は魚拓を取ったんだ。 多分まだ蔵の中に魚拓が残ってると思うよ?」

シュテル&ディアーチェ「…………」

レヴィ「後、お父さんは河童も釣ったんだよね、僕前に魚拓見せて貰ったんだよ? すごいでしょ!!」

ブレン「一回目に釣り上げた時は突然変異した亀かと思ってね、暴れる河童を叩きのめした後に魚拓を取ってからそのまま最寄りのケミカルダイン動物病院に持ち込んだよ、実に高く売れた。 ただ少し気になったのは『これで我々は河童に脚を掴まれる心配が無くなった!! 次は天狗を探すぞ!!』とか、『此奴どうします? 生きてますけど』『丁重に扱えよ、UMAには人権も無ければ動物愛護法も関係無い、違法な実験を大手を振って行えるからな』とか言って居たのが気になったが」

シュテル&ディアーチェ 「(∩ ゚д゚)アーアーキコエナーイ」

ヴィヴィオ(パパの釣果歴だけは聞いちゃ駄目だよ……)
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