不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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本日の加害者 ブレン

本日の被害者 ユーノ


不屈の体現者 140

第百四十話 ユーノ司書の優雅な一日

 

無限書庫の司書を勤めているユーノの朝は早い。

 

早朝に目を覚ますと同時に顔を洗い、サウナスーツに身を包んで二時間程ジョギングを開始して身体を温める。何日も泊まり込みで資料を探す無限書庫の司書は体力無くして務まらない為、彼はこうして毎朝ジョギングしながら体力を付けているのだ。

 

最近は疫病神(ブレン)と出会わず、又彼の非常識に胃と頭を痛める事も無く順風満帆な日々を過ごしている彼の足取りは軽く、ロードワークを終えてシャワーを浴びた後、朝食を食べた後そのまま出勤する。

 

この日もまた、何時ものように多方面から依頼される資料を探しながら無限書庫内の蔵書を整理する一日が始まるのだろうとユーノが思っていた矢先に事件は起きる。

 

 

ユーノが無限書庫に到着した瞬間、入り口にトラブルメーカーな友人の姿が見えてしまったのだ。

 

 

「やあユーノ、久しぶりだな。 元気してたかい?」

 

「あ、ああ元気だよ、最近頭痛薬と胃薬から解放されつつあるからね (頼むから厄介事だけは辞めて!! 世間話だけで済ませてくれ!!)」

 

「実は頼みがあるんだ」

 

「た、頼みって?(まだだ、まだ希望を捨てるな僕!! まだ厄介事と決まった訳じゃない!!)」

 

「これの事なんだけどさ、他に頼めそうな人材が居ないんだ」

 

そう言ってブレンが取り出したのは一冊の本だった。一見唯の本にも見えるが、冊子に描かれている文字はこの世界のどの文字にも該当せず、翻訳魔法にも反応しなかった。

 

しかし、その本を見たユーノの額から冷や汗が一筋流れ、彼の頬を伝う、『あ、ヤバイ、この本、本当にヤバイ奴だ』、彼のスクライア一族としての直感がプッシュされ、その書物の危険性を肌で理解する。

 

そんな様子を知ってか知らずか、ブレンはユーノの胃にダメージを及ぼす一言を告げる。

 

 

「これは『白竜 シース』直筆の研究資料でね、この中には彼を狂気の底に叩き落とした結晶の力の研究内容が記されている、普通の人が何の準備も無しにまともに目を通せば廃人コースまっしぐらになる代物だ。しかも準備をしても尚『ビックハット ローガン』のように飲まれてしまう可能性もある。 これを含め、当時俺が根刮ぎ掻っ払って来た公爵の書庫内の全ての蔵書を無限書庫に納めるつもりなんだが、協力してくれないか?」

 

「……一応聞くけど、如何してそんな代物を寄付しようと?」

 

「俺にはもう不要な物だし、何時迄もソウルの中に死蔵して居ては勿体無いだろう? こんな物でもいずれ誰かが何かの役に立てるはずだと思ったんだ。 もし忙しいのなら俺が勝手に片付けるけど、どうだろうか?」

 

この瞬間、ユーノの平穏な日々は音を立てながら崩れ去る事が確定する。

 

其処まで嫌なら断れば良いと思うだろうが、色々と吹っ切れた後のブレンは管理局員として真面目に活動しており、且つクロノの直属の部下として働いて居る為、この時代から割と多忙であっちこっち飛び回っているのである。

 

そんな彼が神代の書物を無限書庫に納める際に時間の掛かる封印処理を施す訳も無く、と言うか彼の才能では封印処理を行えるかも分からず、確実に無造作に無限書庫内に放置するだろう、そんな物を知らず知らずの内に手に取ってしまったら悲惨な事になる事は目に見えている。

 

勝手に倉庫内に危険物をばら撒かれるか、ちゃんと整理した上で此方が指示した一ヶ所に纏めさせるか、最早答えは出たような物であり、ユーノは断る事が出来なかった。

 

 

「はぁ、じゃあ急いでスペース開けるから少し待っててね? 間違ってもその辺の棚とかに置いとかないでよ?」

 

そう言って、ユーノが未整理な一角を片ずけて空きスペースを作ろうとした時、ブレンの通信機が音を鳴らす。

 

「クロノからだな、此方ブレンだ」

 

『すまないなブレン、実は質量兵器の大量密輸が近々行なわれると言うタレコミがあった。 裏も取ったし、間違いは無さそうなんだが、少し問題があってな』

 

「管理局に内通者でも居たのかい?」

 

『そうだ、通信越しでこれ以上の情報は開示出来無いが、こっちは逃げられる前に僕が捕縛に向かう。 君はーー』

 

「密輸者の逮捕、鎮圧だな?」

 

『そうだ、詳しい日時や作戦等を打ち合わせるから一度こっちまで戻って来てくれ』

 

「了解、すまんなねユーノ、埋め合わせは必ずするから後は頼んだ」

 

「はあッ!? ちょっとまッ…………行っちゃった」

 

嵐のように現れ、嵐のように去って行ったブレンの後には超危険物が山盛りになっていた。

 

ユーノは遠い目をしながら携帯電話を取り出してシャマルの番号にコールし、胃薬と頭痛薬の増量を頼んだ後死神のようなオーラを放っているそれらの整理作業に移っていったのだが、どれがどのような書物なのか一切分からない状態からの選別作業は困難を極める事となり、碌に手がつけられ無かったので、ユーノは神代の書物が固まっている区画を他の司書達と共に封鎖し、翻訳者のブレンが帰って来るのを待つ事になってしまった。

 

 

しかし、間が悪い事にこの直後行われたブレンとクロノの質量兵器密売組織摘発作戦が二ヶ月以上も掛かる大捕物となってしまい、その間無限書庫内には異常に存在感を放つ書物が無造作に放置される事となる。

 




この後、ちゃんとブレンは無限書庫に戻って来て翻訳作業に不眠不休の二ヶ月を更に費やす事になりました。

ユーノ「倍プッシュだ……!! まだまだ終わらせない……!! 地獄の縁が見えるまでッ……!!」


次回 名探偵?アリシア
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