不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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なのはに暴言を浴びせた事がブレンの背負う心理的重圧を更に重くする、愛する者を遠ざける為に敢えて傷付けた事でブレンは深い後悔に苛まれる。


不屈の体現者 146

第百四十六話 財団の刺客

 

 

なのはを突き離したあの日から半月、彼女に心無い言葉を投げ掛けた事が俺の心にしこりを残しており、捜査官試験の勉強に手が付かなかったのでミッドチルダの街並みを一人で歩いていた。

 

少しでも暗い気持ちを払拭する為に夜の繁華街を歩いていたのだが、なのは達の事が脳裏に浮かんでしまって余計に辛くなってしまった。

 

その上、街に繰り出した時から何者かに着けられている、身近な者の気配では無く悪意や殺意を持った気配、スカリエッティの手の者だろうか?

 

 

俺は肩を落としながら人気の無い路地裏にフラフラと移動し敵を誘い出す、俺を着けている者も管理局の膝下で目立つような真似をしたくは無いだろうから此方から逃げ場の無い路地裏に態々足を運んだのだ。

 

 

「……いい加減出て来たらどうだ?」

 

「へっ、やっと気付きやがったか。 偉そうにしやがって、マジで強いのかよ?」

 

(やっと? 初めから気付いていたんだが……)

 

袋小路となっている路地裏の出入り口を塞ぐように、俺の背後には髪を金に染め、派手なネックレスやピアスなどで着飾った男がくちゃくちゃとガムを噛みながら立っていた。

 

 

「俺の名はジャック・ゴールディング、お前の首を狙って来たしがない傭兵だ。今日で後進に道を譲ってもらうぜ、老害が!!」

 

 

彼はそう言って懐から炎の様な赤いエンブレムが刻まれたカード型のデバイスを取り出し、装備を展開する。デバイスの展開が終わった彼は両手に二丁のライフルを握り、両肩にハンドガンが設置されているアーマーの様な物を着込んでいた。

 

彼の持つデバイスはどうやらストレージデバイスやインテリジェントデバイスとは全く違い、パワードスーツに近い物のようだ。

 

そのまま彼は俺に向かって両手のライフルの引き鉄を交互に引き続ける、銃口から放たれるのは実弾と青白い光線、側にあったゴミ箱の影に隠れる事でその砲火を防ぎ、反撃の機会を待つ。

 

奴の目的と依頼者を吐かせる事は確定、相手の実力を見る限り其処まで強くは見えないので半殺しにして吐かせる余裕はある、問題はどうやって奴を無力化するかだ。

 

散歩のつもりで出歩いて居たのでデバイスを部屋に置いて来てしまっている、今の俺の装備はデバイス内に収納されているので武器になる物が手元に無い。

 

鉄パイプや石ころでも転がっていれば楽なんだが、残念な事にそれらしき物は落ちていないし、そろそろ隠れているゴミ箱が破壊されてしまいそうだ。と言うかゴミ集積用の鉄製のゴミ箱とは言え、ライフルとレーザーで撃ち抜くのに多少なりとも時間が掛かるとは思わなかったよ。

 

 

ゴミ箱の耐久力に気を配りながら物影から覗いているのだが、奴の照準が滅茶苦茶な所為か飛び込むタイミングが中々掴めない。仕方ないので一、二発貰う覚悟を決めて奴の懐に飛び込む。その際に両腕を交差させて急所を守り、半壊したゴミ箱から溢れ出した空き缶を二つ蹴り飛ばして彼が両手に持った銃口を弾き、その照準をずらして奴の懐に潜り込む事に成功する。

 

相手が反応する前に両手の銃を弾き飛ばし、足払いを仕掛けて転倒させた後、脇腹を蹴り砕き、彼の身体をうつ伏せにひっくり返した後、後頭部を踏み付ける。

 

 

「グッ、い、痛ぇ……」

 

「痛いと感じている内はまだ幸せだよ、これからだよ? これから」

 

「ま、待て!! 話せば分かる!!」

 

「話は抵抗出来ない様に君を半殺しにしてからじっくりと聞かせて貰うから安心してくれ」

 

 

一時間近く彼を拷問に掛け、デバイスを取り上げると同時に此奴が洗いざらい吐いてくれた情報を整理して行く。

 

先ず、俺の首には財団によって大々的に莫大な賞金が掛けられており、多くの傭兵やフリーランスの魔導師が俺を狙っていると言う。

 

そしてこのカード型のデバイス、『アーマード・コア』は財団が独自に開発したデバイスの一つで、一般的な魔法の触媒としてでは無く兵器として開発された物らしい。

 

『アーマード・コア』その名の通り、パワードスーツの胴体部分を中心にして様々なパーツを組み替える事で凡ゆる場面や状況に対応する事が可能であり、更に使用者の細かな癖に合わせたカスタムをする事も出来る。

 

『リンカーコアさえ持っていれば幼い子供ですら手軽に兵士へと作り上げる事が出来る』と言うキャッチフレーズで売り出されているそうだ。

 

其処まで話した後、彼は気を失ってしまった。後頭部を踏み付けながら徹底して暴言を叩き付けていたのが悪かったのか、はっきりした物言いをしなかったり、言い淀んだりする度に骨を折って行ったのが不味かったのか分からないが蹴っても殴っても起きなかったのでそのまま隊舎まで連れ帰る事にしたのだが、この男のデバイスに通信が入った。

 

スカリエッティのように映像の投影は無かったものの、音声ははっきり聞こえており俺に馴れ馴れしく話しかけてきた

 

『やあ始めまして英雄殿、僕は『財団』と名乗らせて貰っている者だ。先日はドクが失礼したね、彼女達のクローンは君では無く本人達に向かわせるべきだった。でなければ君も其処まで焦燥しなかっただろうに』

 

「……とことん性根が腐っているな貴様ら」

 

『クククッ、それが人間と言う生き物だ。君は嘗て人間の可能性を謳ったそうだが人類に可能性などありはしない』

 

 

デバイスの通信越しに聞こえる男の声は表面上こそは丁寧なのだが、奴の口から吐き出される言葉の節々には俺に対する嫌悪感がはっきりと含まれていた。

 

 

『何時迄も争い事を起こし全く進歩の無い人類など、この世界に存在する価値などありはしないだろう? 今世界に真に必要な物は森羅万象凡ゆる全てを管理する優秀な管理者なのだよ』

 

「それが貴様だと言いたいのか?」

 

『そうとも。生きとし生けるもの全てを抹殺し、その個体情報を手に入れ電脳世界を作り上げ、世界の行く末を正しい方向へと導くのが我々財団の目的、ドクのように手段と目的が入れ替わっている者とは同一視しないでいただきたいね』

 

「……狂ってるよ、貴様ら」

 

『ふうん、君が狂気を口にするのかい?』

 

「ああそうだ、貴様らは世界の癌、まともじゃない」

 

『ありがたいことに僕等の狂気は君と言う神が保障してくれるというわけだ、よろしいならば此方も問おう』

 

そう言って財団は吐き捨てるように俺に質問を投げ返す。

 

 

『神である君の正気は、一体何処の誰が保証してくれるのかね?』

 

「…………」

 

『僕を何処の誰だと思っているんだ? 物心付かない子供ですら兵器に作り上げる死の商人だぞ? 一体何人殺したと思っているのかね? 狂ってる? 何を今更、十年ほど言うのが遅いね』

 

ケタケタと笑いを隠さずに俺への挑発を続ける財団、奴も又狂った思想の元に俺に立ちはだかるだけの敵。

 

ーーーー敵は、斬らねば。

 

 

『そう言う事だから、今日は宣戦布告をしに来ただけだからこれで失礼するよ? 良い夢を』

 

 

最後にそう言い残し通信が途切れる、『ジェイル・スカリエッティ』に『財団』、何方も俺が作り出してしまった存在なのだから俺が始末を付けなくてはならない。

 

身勝手な決意を改め、俺は隊舎に戻る。

 

この暫く後に俺は今の自分がどれほど愚かな行為をしているのか分からされる事になるのだが、今の俺はその事に全く気付いていなかった。

 

 

 





財団からの刺客、デバイス『フレイムフライ』を操る傭兵ジャック・ゴールディング、彼を八つ当たり気味に半殺しにしたブレンは財団の目的を知る。

人類の破滅と再管理を望む彼の言葉は到底許容出来る物ではなかった、自分が産み出した存在だからこそ自分の手で片付け無くてはと言う思い込みが、とある少女の異変を見過ごす事に繋がるのだった。
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