場合によっては更新出来るかも知れませんが、念のため。
第十五話 picnic in fishing
事の発端は『自然を見たり触れたりするのも感情回復の一環だよ!!』と美由希さんが日課になり始めた俺の頬を引っ張る作業をしながら暗にピクニックへ行こうとみんなに提案した事だった。
最近では店の方も落ち着き、士郎さんのリハビリも順調、俺も義手に慣れて家事の手伝いをしているので余裕が出来ているらしい。
「……そうだね、良く考えればブレン君を引き取ったと言うのにドタバタしていた所為で何もしてあげていないから丁度良いかもね」
士郎さんがスケジュールを建てながらそんな事を言い、桃子さんとどの山にするかと言う話をし始めている。
取り敢えず、その『ピクニック』と言う物がどんな行事なのか聞きたいのだが、何せ頬を弄ばれている状況だ、碌に言葉に出来そうに無い。
見上げるように美由希さんに抗議の視線を送ったのだが、『無表情な上目遣いとは……』と零しているだけで止めてくれない。
無理に抜け出そうにも、膝の上に抱き抱えられていては中々に難しい。
なのはにアイコンタクトを送って見たものの、彼女は家族水入らずで『ピクニック』に出かける事が嬉しいのか、その喜びを全身で表していて此方の視線に気付いてくれない。
最後の望みとして、恭也さんに視線を合わせ『ピクニックとは何でしょう?』と言う疑問を送る。
彼はため息を吐きながら、俺を美由希さんから取り上げピクニックについての説明をし始めた。
「ピクニックと言うものは、要するに山や海にみんなで出かけて食事をしたり運動したりする事だ」
そう言った恭也さんは美由希さんに対して『もう少しブレンの事を考えてやれ』と言ってお説教を始めていた。
それに対して、美由希さんは『だって神懸かり的にぷにぷになんだよ!?』っとよく分からない抗議をしているが、何時もそれでお説教が伸びるのに何故そんな事を言うのだろうか?
ともかく、『ピクニック』とやらの全貌が明らかになった。
最近釣りを始めたから湖や川があると嬉しいな。
そんな事を考えていたらなのはが船を漕ぎ始めたので、彼女の部屋まで連れて行き、自分も部屋に戻って寝る事にする。
ピクニック当日。
士郎さん達の荷物の積み込みを手伝いながら、装備の最終チェックを済ませる。
大した装備はしていないが、ズボンの裾にナイフを二本づつ仕込み、服の裏、胸の位置に暗銀の残滅を用意している、コレで万一不意を突かれてもそれなりに対応出来る。
本当は髪の中に仕込みたかったが長さが微妙に足りず断念、それに美由希さんに後ろから良く抱き抱えられるので後方に仕込むのは宜しくないと判断した。
荷物の積み込みが終わり、みんなで車に乗り込んで行く。
八人乗りの車なので席順は運転席に士郎さん、助手席に桃子さん、中央の席に恭也さんと美由希さん、後ろの席に俺となのは、それとケージに入れられたシフとなっている。
ピクニックの場所までの道中は窓の外に流れる景色を見たのだが、なのはが退屈そうにしていた為に昔の事を話して聞かせて居たのだが、驚いた事に士郎さん達を含めたみんなが静かに聞き入っていた。
「ーーーーそうしてクラーグは討たれ、二つ目の目覚ましの鐘の音がロードランに響き渡り……って、みなさんどうしたんです?」
「いや………、かなり原典に近い話だなと思ってな、続けてくれ」
神妙な顔をしていた恭也さんとは対象的に美由希さんがなのはと一緒になって次を急かしている為、鐘を鳴らした後の話を懐かしみながら話していった。
そうして居る内に目的地に到着したようなので、途中で話を切り上げながら荷物の運び出しを手伝って行く。
その後はお昼をみんなで食べた後、シフをなのはに預けて川のせせらぎを頼りに水辺へと到着する。
彼女と遊んで居たかったが、折角釣りに興味が湧き始めたのだ、どうせなら大物を釣って彼女に見せてやろう。
途中で捕まえた虫を餌にして釣り糸を垂らし、神経を釣竿に集中して行く。
以前釣りをした際、釣竿を使うとは知らず、ただ魚を捕まえれば良い物と勘違いしていた為竜狩りの槍を水に突っ込んで放電したのだが、後で違いに気付き今では猛省している。
後で知った事だが、アレは禁止されているガチンコ漁より酷い。
釣り糸を垂らして数十分、急に大きな当たりが来たので思いっきり引き上げる。
釣れた魚には手足が生えていた。
と言うより寧ろこいつは魚じゃない、両生類に近いような………。
普段なら此処でお手上げだったが、今日はムラクモ出版の『川の生き物図鑑〜ナニカサレタヨウダ〜』を持参して来ている為抜かりは無い。
これによると、コレはオオサンショウウオと言うものらしく、特別天然記念物とされているそうだ。
図鑑にも『食べてはいけません、持って帰ってはいけません、もしやってしまったら我々にナニカサレマス』と書かれているため、なのはに見せてあげたかったが諦めてリリースする他なかった。
二度目のトライ、今度は糸を垂らした瞬間にヒットした。
糸を切らないように釣り上げ、手元まで掛かった獲物を手繰り寄せる。
今度掛かったのは、槌のような胴の太い蛇だった。
図鑑で調べて見ると、『つちのこ』と呼ぶらしく、『実験中に逃げ出したので見つけた場合ムラクモ出版までご連絡下さい』と書かれていた。
どうやって連絡をするか悩んでいたが、その隙につちのこが糸を食い千切ってしまい気付いた時には逃げられてしまった。
その後はパッタリと当たりが止んでしまったので、俺はポイントを変えようと川沿いを上に移動するのだった。
ピクニックはもう少し続きます。
ムラクモ出版
発禁本を乱発する出版社。
融資業もしており、多額の負債を負った者を実験動物にしていると言う噂もあったり無かったり。