……あっ(察し
やった人なら分かるよね(白目)
第百五十五話 英雄対英雄
作戦決行日、俺は作戦エリアから五キロ程離れた高台からゴーの大弓を引き、神経を研ぎ澄ませていた。
アマジーグはリンクスの中でも適正値が低く、リンクス化による後遺症や副作用によって苦しんでいる姿が度々目撃されている、実際こうして彼らの陣地に目を向けていると皆一様にアマジーグを気遣っている姿が見える。
彼は最早自力では立って歩く事すらままならないようで、肩を借りながら装甲車に乗り込み、周囲の哨戒任務に着いている。
其処までして護りたい物があると言う事だろうが情けは掛けない、ゴーの大弓に炭松脂を塗った大矢を番えながらアマジーグを乗せた装甲車へ向けて狙いを定めて行く、悪いが俺に騎士道精神などと言う物は無い、疲弊し切っているならば好都合、このまま暗殺されて貰おうか。
装甲車が十分拠点から離れた所で矢を放ち、装甲車のオイルタンクを狙い撃ちにする、この一撃は単眼の黒竜の鱗を撃ち抜いた物、どれ程強靭で堅固な装甲であろうと容易く撃ち抜ける。
着弾と共に装甲車が爆発し車体が業火に包まれて行く、だが残念な事に仕留め損ねてしまったようだ、撃ち込んだ矢によるガソリンの引火の際に爆炎から飛び出した影が見えた、赤いパワードスーツ、恐らくアレが砂漠の狼アマジーグ。
彼は空中で静止し、辺りを見渡しながら俺を発見すると、オーバードブーストを起動しながら俺に向かって一直線に向かって来る。
迎撃する為十本程矢を放ったのだが、彼のネクスト、バルバロイに搭載されているミサイルやアサルトライフルで軌道を逸らされてしまい、迎撃には至らなかった。
「不意打ちとは……犬に相応しい諸行、容赦せん!!」
「レジスタンスが騎士道精神を語るとは……面白い世の中になったものだね」
俺は大王の大剣を取り出し、始まりの火を使って肉体を成長させ、鎧を纏う。
アマジーグは俺の姿が急成長した事に僅かに驚きの表情を浮かべたものの、直ぐに気を引き締め直して銃口を此方に向ける。
「……その武装、貴様『英雄の再来』か」
「だったら如何するんだい?」
「不死の英雄の名を冠しているにも関わらず、管理局に与するとはな……」
「知った事か、私は私の思うように戦っている、君に幻滅されようと構うものか」
大王の大剣をデバイスに格納し、月明かりの大剣を取り出して問答無用と言わんばかりに光波を射出、彼がクイックブーストで回避した瞬間にローガンの杖を取り出して結晶魔法の武器を発動して月明かりの大剣を強化、更に追う者たちを展開し、闇の玉をアマジーグの回避先に向けて放つ。
俺はなのはとリンカーコアを交換した為に魔法が使えなくなったのだが、昔から使用している魔術は根本から構造が違い、魔力だけで無くソウルを使用する物なので問題無く使用できる。
聖剣の光波を回避したアマジーグは回避先を狙い撃たれた事を察するや否やプライマルアーマーを前面に展開して闇の玉を防ごうとする。
ネクストの展開するプライマルアーマーは魔法はおろか質量兵器すら防ぎきる能力を持ってはいるが、あくまでそれらは現代技術の物、だが俺の放った闇の玉はロードラン時代に猛威を振るった闇術の一つ、幾らプライマルアーマーであっても防ぎきれる物ではない。
闇の玉が着弾すると同時にアマジーグの展開したプライマルアーマーが弾け飛ぶ、アマジーグはたった一発の魔術で鉄壁のアーマーが剥がされた事に舌打ちをしながらも、左手のショットガンと右手のライフルを交互に放ちながら後退する。
上空から雨のように俺に襲い掛かる散弾、左腕に紋章の盾を取り出し頭部を守りながらエンチャントの施された月明かりの大剣に魔力を込めて行く、壊れたリンカーコアからでは無くロードラン時代に得た俺自身の魔力と結晶の力が掛け合わされた聖剣は白く輝き、見るもの全てが平伏するような威圧感と神聖さを放ち始める。
アマジークは頭部の守りが硬く、必殺の一撃が繰り出されつつあると見るや機械のような精密さで鎧の隙間を縫うようにライフルの弾丸を俺の両足に撃ち込み、膝を突かせようとするが、その程度で膝を折ってやるものか。
その思いに応じ、聖剣の輝きと威圧感が更に強く重くなって行き、それに比例してアマジーグの攻勢がより一層強く激しくなって行く、散弾の雨とライフルの精密射撃に加え、背中に背負っているミサイルポットから無数の弾頭が俺に飛来、途切れる事の無い爆発と実弾のカーテンが俺をその場に釘付けにする。
流石に英雄と称えられる男なだけはある、常人ならば立っていることすら出来なくなる程の力を放っている月明かりの大剣と対峙し、尚も闘志が溢れている。
自分の兵装では火力不足な事は理解しているのだろうが、それでも彼は逃げずに立ち向かっている。仲間の為、誇りの為、自分の信じた大義の為、他ならぬ彼自身が引くことを良しとしないのだろう。
彼の持つ不退転の決意、それを打ち砕くように聖剣を一閃、結晶のエンチャントが施され全ての力が限界以上にまで引き出された特大の光波を射出、未だ嘗て無い程に巨大な光波は彼一人が作り出していた鉛の雨を全て飲み込みながら一直線に突き進む、アマジーグは再びクイックブーストで光波を回避すると苦々しく口を開く。
「神よッ……どうしてッ……、正義はそれなのにッ……」
一見すれば神頼みに聞こえる台詞だが、それでも彼は銃を下ろさずに俺を睨みつけている、死ぬ覚悟など疾うに出来ているだろうが、それでも勝つ事を諦めるつもりは無いのだろう。
聖剣を構え直して再び光波を射出しようとした矢先、俺の視界の端に閃光が映り、反射的にその場を飛び退いた。
その瞬間、俺の立っていた場所を大口径のレーザーが通過する、魔法とは全く違うネクスト特有の攻撃の一つであるレーザー兵器。
マグリブ解放戦線の保有するリンクスは二人、当たり前だが一人はアマジーグ、保有ネクストは軽量フレームのバルバロイ、もう一人はススと言う人物なのだが、彼の保有するネクストはアシュートミニアと言う重量フレームのタンク型であり、兵装も実弾のみだと聞いている。
だからこそ、この大口径レーザーの正体が掴めなかったが、この直後にオーバードブーストを吹かせながら乱入して来た男のオープンチャンネルの通信で合点がいった。
『リンクス、ジョシュア=オブライエンだ、救援に向かう。持ちこたえてくれ』
どうやら、俺が隊長達に合流出来るのはまだ先のようだ。
バルバロイ+ホワイトグリント、この組み合わせに葬られたリンクスは如何程に……(震え声)