不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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『砂漠の狼 アマジーグ』

彼はマグリブと名付けられた管理世界出身だった。

その世界は緑溢れ陽光煌めく美しい世界であり、希少資源が多数産出される星だった。

しかし、管理局による管理が始まると共に星は隅々まで開拓され、埋蔵資源は地下深くまで根刮ぎ掘り尽くされた。

緑は刈られ、水源は枯れ果てたこの世界に残ったものは見渡す限りの砂漠と荒野、原住民は次々とこの星を捨てて行った。

だが、全ての資源が枯渇したにも関わらず、この星は大気汚染や水質汚染を気にせずに住む世界として未だに管理局の支配下に存在するのだったーーーー。




不屈の体現者 157

第百五十七話 砂漠の狼

 

 

覚悟を決めたアマジーグの特攻、仲間の為に負ける事を許さなかった彼は生命を捨ててでも目の前の敵を道ずれにする為に己の持つ全てを賭ける。

 

爆発的な加速を得る事が出来るオーバードブースト、アマジーグはリンクスに多大な負荷を与えるその機能を維持しながら一瞬溜めを置いたクイックブースト、二段クイックブーストを発動、通常のクイックブーストよりも高加速なそれはオーバードブーストにカウンターを合わせようとしていたブレンの顔面を盛大に蹴り飛ばす。

 

 

首を引っこ抜かれたような衝撃と共にブレンの身体が鎧ごと宙に浮き上がる、更にアマジーグは連続で二段クイックブーストを使用して膝蹴りをブレンの胸へと捩じ込み、鎧越しではあったがハートブレイクショットの原理で彼の心臓の鼓動を一瞬だけ停止させる、この時ブレンの手からハルバードが滑り落ちる。

 

その後、意識はハッキリしているものの思うように身体が動かせなくなったブレンの首を掴み、クイックターンを利用して地面へ叩きつけ、彼が起き上がる前にその身体を踏み付けながら額にライフルの銃口を押し付ける。

 

「足掻くな……、運命を受け入れろッ!!」

 

 

まるで痛覚がないかの如くに打たれ強く、死に対する恐怖が微塵も感じられないブレンを殺す為には確実な死を与える事が望ましいと判断したアマジーグは超至近距離のヘッドショットを狙ったのだが、数多の逆境を跳ね除けて来たこの男を仕留めるにはまだ甘い。

 

正に引き金を引こうとしたその一瞬、アマジーグの右手首が黄金の軌跡によって刎ね飛ばされる。

 

リンクス特有のオイルのようなどす黒い人工血液を撒き散らしながら弧を描いて宙を舞うアマジーグの右手、彼の手首を切断した剣は四騎士が一人、王の刃キアランから託された黄金の残光。

 

その名の由来の通り、美しい黄金の軌跡を描くこの剣は傷口からの出血を増幅させる、右手を切断されたアマジーグは止まらない出血を無視しながら後ろに飛び退き、右手と共に刎ね飛ばされたアサルトライフルを回収しに向かう為に至近距離でショットガンを放ち、ブレンの動きを止めに掛かるが、それよりも先にブレンの残光がアマジーグの装甲の隙間に滑り込み、致死量を超えた出血を強いる。

 

アマジーグの意識が途切れそうになったものの、ネクストとの繋がりを更に強固にする為、ネクストに接続する為に掛かる精神負荷を全て飲み込む事で肉体が死んでいるにも関わらず無理矢理身体を突き動かし、ブレンの頭部をショットガンで殴り付けながら引き鉄を引く。

 

ブレンの頭部を狙った散弾が銃口から放たれようとした瞬間、痛烈な打撃で額を割られたブレンは最後のカードリッジを自分と散弾の間に投げ込んで暴発させる事で死を間逃れたものの、このカードリッジはフェイトの物、彼女の魔力はなのは程では無いにしろ非凡な物に変わりなく、ブレンとアマジーグの間で大爆発を起こし、互いに吹き飛ばされる。

 

既に動く屍となっているアマジーグは魔力の爆発をオーバードブーストと二段クイックブーストを併用して突破、爆発の余波で吹き飛ばされたライフルの回収は諦め、ブレンの追撃を選択した彼はミサイルを発射する。

 

アマジーグは爆風によって倒れ込んでいるブレンにミサイルの雨を避ける術は無いと思っていたが、彼はアルトリウスの大剣を取り出すと共に深淵歩きの超反応でその場で左腕一本で飛び起き、飛来するミサイルを足場にしてアマジーグの心臓目掛けて特攻する。

 

ミサイルと言う足場だったにも関わらず超人的な踏み込みをして見せたブレンの一撃はバルバロイの装甲を貫き、アマジーグの心臓を確実に潰したものの、既に死人である彼には効果は薄く、逆に再びショットガンをこめかみに突き付けられる。

 

心臓を潰したにも関わらず、平然と動いて見せるアマジーグを見たブレンは突き刺したアルトリウスの大剣を手放し、大王の大剣を取り出して彼の全身を火達磨に変え、彼の所有する火器を誘爆させる。

 

最早デバイスとして機能しなくなったバルバロイ、装甲が融解し、全身が燃える中、デバイスと繋がる事で生命を繋ぎ止めていたアマジーグは最期の抵抗と言わんばかりに二段クイックブーストを使用してブレンに抱き着き、燃える炎をブレンに燃え移らせる。

 

 

「……最期に、一つ、聞きたい…貴様は、その力で……何を守る?」

 

「私が、守りたいと思った何もかもを……」

 

自身の身体に大王の大剣の炎が燃え移る中でアマジーグから投げ掛けられた質問、それにブレンは即答し、彼の胸に突き刺さるアルトリウスの大剣を横薙ぎにし、胴体を両断する。

 

「…終わり…か……、或いは貴様も……同じ…だれ…か……」

 

 

砂漠の大地に斬り捨てられたアマジーグは納得した様な表情を浮かべてそのまま目を閉じる。デバイスを破壊された上に身体を一刀両断されている為、最早命を繋ぎ止める事が出来ず、生まれ故郷の砂漠を肌で感じながら息を引き取り、大王の大剣の炎によって両断された下半身と共に灰となった。

ブレンは斬り捨てたアマジーグを一瞥すると、身体に燃え移った炎を消火する為に大王の大剣を使って水を作り出し、身体を焼く炎を消火して行く。

 

そして、アマジーグ撃破の報をゼストに入れる為、デバイスの通信機能を起動するが、帰って来るのはノイズのみ。

 

続け様にメガーヌとクイントに連絡を入れるもやはりノイズが帰って来るばかり、他の隊員達全員に連絡を入れるも結果は変わらず。

 

ブレンはこの状況で楽観的な推測をする男では無い、十中八九全滅したのだろうと察し、拳を握り締める。

 

 

こうして、英雄と英雄の戦いは互いに守りたかった仲間を失う結末を迎えるのだったーー。

 





ーーーー幼き頃から管理局の傲慢さを呪っていたアマジーグはこの星を捨てずに残った僅かな人員を掻き集め、マグリブ解放戦線を立ち上げるものの、正規の訓練を受けている管理局員達に手も足も出ず弾圧され続けた。

そんなある日、ドクターと名乗る白衣の男と彼の持つ通信機から聞こえる財団の声が無力に嘆く彼に手を差し伸べ、悪魔の力を与える。

自身の人生を犠牲にして手に入れたリンクスの力、持ち主をパーツの一つとしか見ていないネクストと言うデバイス、このたった二つによってマグリブに展開している管理局の工場地帯は壊滅、報復に出た管理局側の戦力を悉く打ち破り、多数の拠点を抑えたアマジーグはマグリブ解放戦線の初期メンバーと共にドクターの研究所の防衛任務に着任し、管理局の切り札である『不死の英雄の再来 ブレン・シュトッフ』と交戦、壮絶な最期を遂げる。

故郷を圧政から解放し、元通りにしようとしたアマジーグは管理局の英雄に及ばず、砂漠の狼は砂漠に散った。
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