stsの幼女成分が登場します。
色々突っ込みどころがあるかもしれませんが、その娘は前回の一件で功績を挙げてしまったブレンへの足枷です。
第百五十九話 わがままシスター
隊員達の葬儀が終わった後、俺はある大きな問題に頭を悩ませていた。
「?」
それは俺の膝の上に座って此方の表情を伺っている『ルーテシア・アルピーノ』を何故か俺が引き取る事になった事だ。普通、こう言った場合は何処かの施設に引き取らせる物だろうに……。
彼女は俺が葬儀や報告を終えて帰ると僅かな手荷物を持って玄関前で体育座りして俺を待っていた、彼女の話は要領を得なかったが、大人の人達に此処に連れて来られたと言っていた事から察するにレジアス中将の手の者達だろう。
別にルーテシアを引き取る事が嫌な訳では無い、と言うより引き取る事になってしまった以上、身寄りの無いこの娘を放り出す訳に行かないのだが、切実な問題として俺には生活能力が全く無い。
聞けばこの娘はまだ二歳、実年齢はともかく俺もまだ肉体年齢は十一歳だぞ? まさかこの歳で子育てを開始する事になるとは予想外にも程がある。
「……どうしたものかなぁ」
「どーしたのにーさん?」
「兄、さん?」
「にーさんじゃないの? じゃあとーさん?」
「要らぬ誤解を盛大に産むから父さんだけは止めてくれ……」
「ん、じゃあやっぱりにーさん」
どうやらルーテシアの中で俺は兄として定着しているようで、満足気に俺の膝を占領して居る彼女は初めから呼び名を変えるつもりは無かったようだ。
流石メガーヌさんの娘、親子代々で振り回されそうだ……。なんだかんだで増えた頭痛の種に頭を悩ませていると、どうやら妹様が退屈し始めたようで俺の服の裾を引っ張り始めた。
「にーさん、ひま」
「……隊員の葬儀とか徹夜の報告書製作が終わった所なんだよ? 今日くらい家でゆっくりしても……」
「にーさん、ひま」
「る、ルーテシア?」
「……にーさん、ひま」
「………で、出掛けようか?」
「うん、ゆーえんちとかすいぞくかんとかどーぶつえんとかにいきたい」
「…………俺、徹夜明けなんだけどなぁ」
俺に出来た妹様は実に自由奔放らしい、彼女は俺の膝の上から下りると俺を急かしながら玄関へ向かう。
身支度を整えてルーテシアと共に外へ出ると、彼女は即座に俺の背中に飛び乗り、前方を指差した。
「れっつごー」
「……躊躇う事無く背中に乗ったね、ルーテシア」
「ひろいから、つかれるもん」
俺の背中の上で膨れっ面をしながら我が家の広さに文句を垂れるルーテシア、考えれば遊びに来るなのはやクロノ達ですら敷地内で迷子になる広さだから幼子の彼女には果てし無い広さに感じるのだろう、もぞもぞと背中の上でベストポジションを探していたルーテシアはしっくり来る場所を見付けたようで、俺の頭の上に顎を置いている。
「取り敢えず、遊びに行く前に生活用品を買いに行こうか」
「せいかつようひん?」
「服とか歯ブラシとかの事だよ」
「おようふくかってくれるの?」
「ああ、当面はこの家で暮らす事になるだろうから好きなだけ買ってあげるよ」
この後、俺はルーテシアの表情がメガーヌさんが悪巧みしている時の顔にそっくりだった事に気が付かず気軽に答えてしまった事を非常に後悔するのだった。
子供用の洋服店に着いた直後にルーテシアは店内を見回し、近くに居た店員を手招きして一言。
「このみせのようふくぜんぶちょうだい」
「お、お客様、全部、ですか?」
「にーさんがすきなだけかってくれるっていったから、ぜんぶちょうだい?」
「あ、あの、妹様? さ、流石にそれをされると兄さんの貯金がかなり吹っ飛ぶんだけど……」
「すきなだけかってくれるっていったよ?」
「も、物には限度が……」
「すきなだけかってくれるんだよね?」
「あ、あははは、本気?」
「……にーさんはうそつきなの?」
大粒の涙を溜めながら悲しそうに嘘吐きなのかと聞くルーテシア、実に末恐ろしい幼児である。
結局、俺はルーテシアの涙目に逆らう事が出来ず、彼女の宣言通りに店の洋服を全て購入する羽目になり、貯金の三分の二が一発で吹き飛んだ。
女の子は何かとお金が掛かると言う話だが、此処までとは思わなかった……。
なのは達のデートですら此処までの出費は無い、と言うかなのはは家電を見てるだけで満足するし、フェイトは一緒に出歩くだけで満足してくれる、逆にはやては無駄使いすると非常に怒るので、色々と新鮮な体験だった……。
(みんなにどう言い訳しよう……)
「にーさん、おなかへった」
「ああ…うん…、何か食べに行こうか……」
「なんでもすきなだけたべていいの?」
「そんな事されたらお金が無くなってしまいます妹様……」
「こーきゅーりょうりとかたべたかったのに……」
残念そうに肩を落とすルーテシアだが、そもそもこの娘は二歳児だ、仮に要望通りに高級料理を食べさせた所で味が分からないだろう、と言うか二歳児には何を食べさせたら良いんだ?
取り敢えず、分からないことは無限書庫にいるユーノに聞けば大体は答えてくれるので彼に連絡を入れる事にする。
「もしもし、ユーノか? ちょっと聞きたい事がーー」
『何!? また僕を辞典扱いする気!? 今忙しいから手短に要件だけ言ってッ!!』
『ユーノ司書!! 例の本が暴れまわってます!!』
『だから置き場所考えてって言ったんですよぉぉぉお!! ああぁ……折角封印処理してちゃんと配置し直してた神の書物達がまた乱雑に散らばって行く……四徹目確定だ……』
「……御愁傷様だな」
『で? 何? また前みたいに目玉焼きの作り方見たいな下らない事聞く気? 流石の僕も本気でキレるよ?』
「じゃあ手短に、二歳児って何を食べさせたら良いのかな?」
『……まだ、小学生だよね? もう子供作っちゃったの?』
この男は何を言っているんだろうか? 徹夜のしすぎで思考回路が可笑しくなっているんだろうか?
『まあ、良いや、詳しい話は今度聞くとして、二歳児なら普通の食事でOKだけど偏った食事にならないように注意してね?』
「すまないね、ユーノ。 お陰で助かったよ」
『悪いと思ってんなら、僕の代わりに今から無限書庫に来て君が持ち込んだあの書物達をなんとかしてくれないかな!! 最近持ち込まれた別の書物達ととんでも反応起こして縦横無尽に動き回ってるんだ!! この整理が終わらないと僕は家に帰れなーー』
切羽詰まった声色だったが、今は妹様の機嫌を優先させて貰う為に途中で通話を切り、電源を切っておく。
ほっと一息付いた所でルーテシアのお腹が可愛らしく音を立て始めた為、近くのファミレスに寄るのだった。
ブレンの日記
新暦67年 ◯月X日
今日、俺に妹が出来た。
恐らく砂漠の狼撃破と言う功績を上げた俺がこれ以上別のリンクス関連の戦場に首を突っ込めない様、ルーテシアと言うアキレス腱を抱えさせる事で身動きを取り辛くする事が目的だと推測している。
神輿として利用したい側にして見れば捨て身の戦い方をする俺は見ていて心臓に悪く、毎回毎回大なり小なりの傷を負っている所を見せられてはたまった物ではないだろう。
彼らも直接的な圧力や間接的な妨害では俺が止まらない事はクロノの下に居たことから分かりきっているはず、ルーテシアがメガーヌさんの娘な以上俺が断れないと踏んでいたのかも知れない。
……………………悔しい事に、俺は彼らの思惑通り暫くは子育てに奔走する事になりそうだ。