日常を辞めるぞォォォオ‼︎
と言う訳でバトルフェイズです。
第十七話 picnic in hunting
ポイントを変え川の上流で糸を垂らし当たりを待っていると、急に辺り一帯が静かになり鳥の鳴き声一つしなくなった。
唯一聞こえる音は川のせせらぎの音だけ。
闇霊の侵入を受けた時や此方から侵入する時とは違った感覚、周囲と自分が切り離されて隔離されたような印象を受けた。
「よお少年、こんな所で川釣りかい?」
周囲を警戒しながら釣り糸を垂らしたままにしていると、後ろから川縁の小石を踏みながら歩み寄ってくる男が一人。
その声の主を確認してみると、黒い軍服のような制服に身を包んだ茶髪の少年が立っている。
その年の頃は今の俺より5〜6才年上と言った所か。
彼は俺の空のバケツを覗き込みながら、『あらら』と零している。
「少年まだ一匹も釣れてないじゃないか、残念だな」
「一応、君と言う大物は釣れたみたいだよ、殺し屋さん?」
釣り竿を回収しながら足元のナイフを抜き、俺の隣で獣のような殺気をばら撒いている彼に投げ付ける。
そのナイフを彼は大きく距離を離すように飛び退いて回避し、俺の殺気に冷や汗を流しながら口笛を吹き、臨戦態勢に入る。
「いきなりな挨拶じゃないか、名乗りくらい上げやがれってんだ」
彼は軽口を叩き、咳払いを一つ付いて大仰な動きで胸に手を当て自己紹介を始める。
「俺の名は元・時空管理局執務官、『ジャック・ザ・リッパー』遊ぶ金欲しさに少年を殺しに来ました」
「時空管理局?聞いたことの無い組織だね」
俺の疑問に、彼は『ああ、此処は管理外世界だったな、悪い悪い』と戯けながら自己紹介の続きを始める。
「管理局ってのは、要するに『我々が世界を管理して平和にしよう』って認識で構わないぜ?」
軽い口調だが彼に隙は無く、懐から一枚のカードを取り出し『set up』と口にした。
その瞬間カードが分解され、彼の手に身の丈を遥かに越える四枚刃の大鎌が展開する。
彼の服装も変わっていて、制服の上に黒いロングコートが追加され、全身にシルバーのチェーンがアクセサリーとして装備されている。
これらは俺の全く知らない魔術なのだろう、少なくともロードランではこのような物は見たことも聞いたことも無い。
彼はそんな俺を余所に、四枚刃の大鎌をくるくると回し始め、おどけるように愚痴をこぼしている。
「しっかし、まさか同期のクロノに連続殺人がバレるとは思わなかった、あと二人で百人斬りだったのによ〜」
彼が肩を落とし、ため息を吐いたかと思った矢先だった。
その顔に獰猛な笑みを浮かべながら更に殺気を放ち、手にした大鎌を肩に担ぐ。
「てな訳で、クロノを百人目にすると決めたからとっとと死ね」
そう言って彼は踏み込みと共に大鎌を一閃する。
その一撃をしゃがむ事で回避し、足元にある小石を彼の目に投げつけながら水面蹴りを放つ。
小石に気を取られた彼の足が払われた隙に髪の中から暗銀の残滅を取り出し、彼の心臓に向けて突き立てる。
完全に意表を突いた為これで決着かと思ったが、彼の前に魔力の壁が現れて俺の刃を受け止めていた。
舌打ちを吐きながら彼を蹴り飛ばして距離を取る。
相手の魔術が完全に未知だからこそ、速攻でケリを付けたかったがそんなに甘くはないか。
彼が起き上がる前にアルトリウスの大盾と、混沌の刃を取り出して反撃に備える。
「ちっ、中々やるじゃないか、ならこんなんどうよ?」
彼はそう呟きながら大鎌の刃を取り外し、『チェーンバインド』と唱え、魔力で編まれた鎖を鎌に装着する。
そのまま四つの刃を鎖鎌とし俺を襲撃し始めるが、そう言った変則的な攻撃は嘗ての放浪者で体験している。
四方向から叩き込まれる刃を其々居合い斬りで両断して行く。
彼は俺の対応に苦虫を噛み潰したような顔をして刃を回収し、今度は槍状に可変させる。
刺股のようになった彼の四枚刃の切っ先とそれらを対角線で結んだ中央に其々魔力が収束して行く。
「俺の取って置きを喰らいな、ブレイズキャノン5連打ァ!!」
俺は彼の魔力の収束に合わせて一気に踏み込み、居合い抜きで斬り捨てるつもりだったのだが急に手足が魔力によって拘束される。
熱量を感じる5つの砲撃、それを撃たれる前に潰したかったのだが、こうなっては仕方ない。
左腕の義手に魔力を流し込んで強引に拘束を引き千切り、アルトリウスの大盾で受け止める。
盾を中心に巨大な爆発が起こり視界を潰される。
そして、足が止まった俺を彼の刺股となった大鎌が挟み込む。
「捕まえたぜ、このまま真っ二つに挟み切ってやる」
アルトリウスの大盾ごと俺を握り潰そうとしているのだろうが、生半可な物ではこの盾は突破出来はしない。
これは彼の必殺パターンだったのか、傷一つ付かないアルトリウスの大盾に驚愕している。
その隙に彼の大鎌の付け根を混沌の刃で切断し、返す刀で彼の胸を袈裟斬りにする。
彼は斬り裂かれた胸を抑えながらその場から飛び退き、あり得ないと言った顔をしている。
「鉄壁の三角の大盾に魂を魅了される程美しい班流紋の刃、だと!?そいつは、まさか……!!」
彼が何かに驚愕しているが同時に隙だらけとなっているため、ソウルからローガンの杖を取り出し闇の玉を彼に叩き込んで上半身を消し飛ばす。
彼の絶命と同時に辺りの音が戻り、元の世界に帰ったと感じた。
取り敢えず殺してしまったが、良く考えれば隔離されたままとなっていた可能性もあった為、かなり綱渡り的だったな。
遠くからなのはが俺を呼ぶ声が聞こえる、太陽を見てみるとかなり傾いているのが分かった。
そろそろ彼女の元に戻るとしよう。
そう思ってバケツを掴んだ時だった。
「…………あ、魚」
俺は肩を落とし、結局ボウズのままで彼女の元へ帰るのだった。
人物図鑑
ジャック・ザ・リッパー
クロノ・ハラオウンの同期にして親友だった男。
幼少期より殺人衝動と言う精神疾患を抱えており、それから目を背けるように時空管理局へ入局。
その際に切磋琢磨し合う友人としてクロノと出会い、互いに高め合う。
時を経るごとに強くなる自身の殺人衝動から逃げるために、犯罪や不正に対しては人一倍厳しく『鋼の規律』と渾名されるほど誠実な男だった。
よくクロノと共に『腐り始めている管理局の上層部を如何やって正すか』と言う議論を熱く語り合う姿が目撃されていた。
クロノと共に最年少執務官となってからは上司であろうと権力者であろうと間違っているならば躊躇無く糾弾し、不正や汚職をするものや犯罪者などには一切容赦せず必ず検挙し、その罪を白日の下に晒していた。
そうして、そのデバイスの形状から『死神』と呼ばれるようになった彼の転機はとある事件。
ある実験の失敗を一人の研究者に押し付け、追及を逃れた男を拘束しようとした際に、逃走した男が車に撥ねられ事故死する。
その際に見た死体が彼の殺人衝動を解放、これ以降彼は殺人鬼となり三ヶ月と少しの間彼は毎日殺しを続ける。
それを僅かな違和感からクロノに勘付かれてしまい、逮捕される前に逃走。
その後はとある少年の殺害依頼を受けてブレンの前に現れた。
モデルはドラマ『相棒』に出てくる『浅倉緑郎』