少しの間妹様編?的な感じになります、stsが遠くなるけどこの子を少し強くしたいので。
第百六十一話 妹様と地球暮らし
朝食を食べた後、俺はなのはの車椅子を押しながら背中にルーテシアを背負って街中を散歩している、暫く此方で暮らすと決めたので、ルーテシアに街の案内をする為になのはと共に彼方此方を説明する事が目的なのだが、どうやら妹様は眼に映る全てが新鮮なようで、キョロキョロと周りを見渡していて非常に大人しい。
なのはと共にその様子を微笑ましく思っていたら、この自由奔放な妹様は何かを発見し、それが気になるようで、俺の髪の毛を引っ張り始めた。
「にーさん、あれなに?」
「妹様? 髪の毛を引っ張るのは止めてくれ……」
グイグイと髪の毛をその方向へと引っ張るルーテシアに抗議を入れると、彼女は髪の毛から手を離し、少しだけ考える素振りを見せたかと思うと、おもむろに俺の頭を掴み、思いっきり横に捻った。
完全に気を抜いていた所為で派手な音が俺の首元から辺りに鳴り響き、寝違えたような痛みが首に走り出した。
「……あれ、なに?」
「妹様? 不意打ちで首をやるのは止めてくれ……」
「えっと、ブレンくん? 派手な音が首からしたけど……大丈夫?」
「折れては無いし、脊椎も大丈夫みたいだから平気だよ」
車椅子のなのはが心配してくれたが、早々に妹様の知的好奇心を埋めなくてはどんな目に合わされるか分かった物じゃないので、彼女が気になっているそれを探したところ、どうやら街中を全力で走っている河童に興味を示したようだ、と言うか何故河童が街を闊歩しているのだろうか?
良く目を凝らして見てみれば、奴は前に俺が釣ってそのままケミカルダイン動物病院に売り飛ばした個体だったような気がして来た。
なのはが唖然とした顔でオリンピック選手ばりの走りをしている河童を見ているが、それより気になるのは必死に走っている河童に注射痕や手術痕が残っている事だ、連中は本当にUMAをモルモット扱いしていたんだね。
取り敢えず、ルーテシアの疑問を解消する為に河童の説明とUMAについてを分かりやすく教えていると、俺達の前に一台の黒塗りの車が停車し、中にいた白衣の男が河童の行方を知らないかと聞いてきた。
別に隠し立てする気は無いので素直に答えると、お礼もそこそこに彼らはスポーツカー並みの速度で車を爆走させて行った。
「……ブレンくん、この街ってこんなに物騒だった?」
「今更じゃ無いかな、この街は今も昔も変わらないよ」
「…………だよね」
なのはが色々と諦めきったような表情を浮かべていると、どうやら妹様がまた別の何かに興味を惹かれたようで、さっきとは真逆の方向へ俺の首を捻ってくれた、どうやら彼女の中では『知的好奇心>俺への被害』らしい。
「にいさん、あのおみせはなにをうってるの?」
彼女が興味を示した店には『祝!! 阿弥陀ミックス、売り上げ百万杯突破!!』と銘打たれた旗が立てられていた。
阿弥陀ミックス? 何故だろうか、飲んだ事は無いはずだが身体が拒否反応を起こしているような気がする。
無意識の内に足がその店から離れようとしていたが、その行為が余計に妹様の気を引いたらしく、彼女は俺の背中から降りると俺の服の裾を引っ張りながら店に向かって歩き始めたので渋々彼女に従う事にした。
彼女は店内に入ると俺から小遣いを貰って一目散にカウンターへと向かって行った。
俺はなのはと共に店内の長椅子に腰掛け、彼女を膝の上に乗せながらウキウキとした表情で阿弥陀籤を引いているルーテシアを眺めていたのだが、その表情を見たなのはが地味にグサリとくる一言を放った。
「ブレンくんって、ルーテシアちゃんに甘いよね、もしかしてシスコンさんなのかな?」
「……な、なのは?」
「なぁに? ブレンお兄ちゃん」
「……いじわるはやめてくれ」
「にゃはは、冗談だよブレンくん、でも良く考えたら一応ブレンくんは私の弟くんになるのかな?」
「そう言えばそうだったね、じゃあ今度からなのはおねえちゃんと呼ぼうか?」
「う〜ん、なんだかしっくりこないからそれはいいかな」
「そう言う問題?」
「うん、それにブレンくんは弟くんじゃなくて恋人さんだからね」
ニコニコと何時もの様に花のような笑顔を向けてくれるなのは、彼女は朝から何気にルーテシアを羨ましそうに眺めていたので膝の上に乗せて背後から抱き締めている、なのはは幸せそうに俺の手の甲に自分の手を重ね、全ての体重を俺に預けている。
そんななのはを背後から抱き締めていると、ジュースを持って来たルーテシアが不満そうに頬を膨らましながら膝の上に座るなのはを見ている。
「にいさんのひざはわたしのとくとうせき」
「にゃはは、ごめんね? ルーテシアちゃん、でももう少しだけ私に特等席を貸してくれないかな?」
「……ん、わかった」
ルーテシアは少しだけ考える素振りを見せると、とてとてとなのはに近付くと、おもむろにその膝の上に乗り、座り心地を確かめながら購入したジュースを一口啜る。
なのはは膝の上のルーテシアの頭を撫で始めたが、肝心のルーテシアはジュースに口を付けたまま硬直しており、全くの無反応だった。
俺が不審に思い、ルーテシアの肩を叩いた瞬間、彼女は何事もなかったかのように動き出し、俺にジュースを突き付けた。
「……ん、あげる」
「ルーテシア? 一口飲んだだけみたいだけど口に合わなかったのかい?」
「…………ん」
俺の質問に無言で返している妹様の目が盛大に泳いでいるのでこの液体には嫌な予感しかしないのだが、彼女は嫌でもこの液体を俺に処理させたいようで、グイグイと俺に押し付け始めている。
仕方無しに容器を受け取ると、彼女は俺の財布からジュース代を抜き取ると、今度は別のまともなジュースを二人分購入し、なのはと一緒に飲み始めている。
取り敢えず、手渡された液体がどの様なものかは分からないが、こう言った物は不味かろうと美味かろうと一気飲みしてしまえば直ぐに終わってしまう物、妹様の反応を見る限りハズレではあるが度を越した物では無さそうだ。
その後、俺はこの液体をなんの覚悟も無く飲み干してしまい、卒倒する事となり、初めて臨死体験をする事になった。
まさかあの放浪者が三途の川の向こうで手招きしているとは思わなかった、誰が川を渡ってやるものか、まだ俺はこの世に未練が山ほどあるのだ、おちおち死んでいられるかよ。
………………味に関しては辛(つら)くて苦しい代物だった。
ブレンのトラウマ再び(白目)
尚、妹様はこの味で臨死体験を起こしたものの一口だけだったので即座に回復しましたが、二口目以降が怖かったのでブレンに押し付けました。