今回から三年程時間が飛び、中学時代が始まります。
妹様五才、他のみんなは十四歳となりますね。
第百六十三話 進展
ルーテシアを引き取り、地球に戻ってから早三年が経過した、手の掛かる妹様は俺の周りの人物の影響を多分に受け、非常にハイスペックになってしまった。
先ずお嬢様であるアリサやすずかの影響で音楽や芸術等の才能に開花した、問題ばかり起こすお転婆娘の彼女にはしては意外だったが、物覚えは良かったようで何度もコンクールで表彰を貰っている。
最近ではテーブルマナーにも煩くなり、俺の雑な食事作法に苦言を溢す様になった。
料理に関しても、絶望的な腕前の俺を反面教師にしたのか、料理上手なはやてや母さんなどに教えて貰っているようだ、はやては『私は一人っ子やから妹に物事教えるのは新鮮でええなぁ』と言って楽しげだし、母さんは『ルーテシアちゃんもなのはと一緒に花嫁修業頑張りましょう』と非常にノリノリでなのはとルーテシアの二人に高町家流の味付けと共にお菓子作りを教え込んでいる。
今では毎日の食卓になのはとルーテシア作のおかずが並ぶ事になっているのだが、必ずと言って良いほど二人の内どちらかの料理にはトマトが混入している。
しかも、ルーテシアの時はトマトの量が他の食材の倍近く投入されている、トマトを避けようとすると小言を言われ、残そうとすると涙目と上目遣いで責められる、それを無視した場合、凄まじく名演技な嘘泣きをお見舞いされるのだ、たまった物では無い。
なのは達の尻に敷かれるのは構わないのだが、まさか妹にまでも手玉に取られる事になるとは思わなかった。
掃除洗濯は勿論、密かに兄さんと姉さんにも身体の動かし方を習い始めているらしく、身体能力も向上して来ている。
才能が有ったからか召喚術も習得しており、教導官見習いのなのはと一緒に魔法の勉強にも励んでいる、教える側のなのはも先輩達の意見を聞いたり、教導の為の資料を読んでスキルアップを目指しているので良い刺激になっているようだ。
だが、悲しい事にルーテシアが一番影響を受けてしまったのはアリシアだった。
「はぁ…、メガーヌさんがアリシアの上位互換見たいな性格だったからある程度はそんな予感がしていたけどさ……どうしてこうなった」
「兄さん、何一人で黄昏てんのさ、デートに遅れるよ?」
「…………俺は、一人の兄としてあの愉快犯の影響を受けた君の将来が心配なんだよ」
「え〜、ししょーは私の価値観に大きな影響を与えた偉大な人なんだよ? 兄さんにも一人くらいはそんな人いるんじゃ無いの?」
「………………又サイボーグ呼ばわりされる事になるから一方的な虐殺だけは勘弁して欲しいよ、割と切実に」
「へっ? なに? なんの話? 私そんな面白…じゃ無かった、兄さんの秘密話聞いてないんだけど!?」
「…………人が家畜の様に屠殺される話を面白そう? 悪影響受け過ぎだよ…」
興味津々ですと言わんばかりに黄昏ている俺を揺さぶるルーテシアにもう昔の面影は見られない、明るくなり元気発剌となった事は嬉しいのだが、それに比例して俺に対しての遠慮が無くなっている、『兄さん、私熊鍋食べて見たいなぁ〜』とか『松茸狩りに行きたいなぁ〜』とか『鮪釣って見たいなぁ〜』とか日に日に無茶振りが酷くなっている、段々将来の子育てが不安になってきた……。
「もしもーし、兄さん聞こえてるー? そろそろ約束の時間だよー? もしもーし?」
(……どうする? 妹の教育ですらこの様だ、もしかしたら将来子供達もこの娘の様な問題児になってしまうのか?)
「……そこはかとなく不名誉な事を言われてるような気がするし此処まで完全にシカト食らってるけど妹様はひっじょ〜うに心が広いから我慢してっと、兄さ〜ん? 遅刻確定だよ?」
「へっ?」
どうやら本気で将来を憂うあまりに時間の事を忘れていたようで、デートの待ち合わせ時間まで秒読み段階となっていた。
「なん…だと…?」
「時計見て固まってる場合じゃ無いと思うよにーさん? コレはご機嫌取りを考えるか焼けた鉄板持って行って焼き土下座コースだね!! だいじょーぶ、骨は拾ってあげるから!!」
「……い、妹様? 召喚魔法で待ち合わせ場所まで俺を送れないかな?」
「え〜、私其処まで万能美少女じゃ無いから、ちょっと無理だよね? と言うか私をタクシー代わりにするには誠意(お小遣い)が足りないんじゃ無いかな〜?」
によによと小悪魔の様な表情を浮かべながら俺を挑発するルーテシア、約束事はきっちり守る子なので誠意と言う名前の小遣いをある程度渡せば確かに俺を待ち合わせ場所にまで送ってくれるだろうが、三年前のあの一件以降なのはに財布の紐を握られてしまったので今の俺が扱える金は其処まで多く無い上に、此処でルーテシアに小遣いを渡してしまったら俺は甘やかし過ぎだとなのはに叱られる。
「どーするのにーさん、じっくり考えても私はぜーんぜん構わないよ? 叱られるのは兄さんだからね〜」
頭の後ろで両手を組みながら胸を張るようにそう言い放ったルーテシア、その声を聞き我に帰ると、時計の針は無慈悲にも約束の時間を経過していた。
最早考える余地は無い、遅刻が確定してしまった以上、デート代を削ってまでルーテシアに運送を頼むのは辞めだ、服の裏にでもアルトリウスの大剣を貼り付けてなりふり構わず走るしか無い。
一刻の猶予も無いので、即座に聖剣を目立た無いように服の裏に隠しながら背中に貼り付け、深淵歩きのような踏み込みを連発しながら最短距離を突っ走る。
こんな時、時間が止められるフェイトが羨ましい、彼女の時間停止能力は才能と相性の良さが見事にマッチした結果だと分かってはいるが、この様な時ばかりは本当にそれが羨ましかった。
「…………と言うか、遅れるなら遅れるで電話一本入れれば済むはずなのになぁ〜」
無駄な身体能力と足捌きでアメフト漫画の21の様に人混みを縫って行く兄に向かってそうボヤくルーテシア、彼女は兄が何時その事に気が付くのだろうかと疑問に思っていたが、こう言った時は黙っておいた方が良いと言うのが彼女の師匠、アリシアの教えだった為、ルーテシアは素直にそれに従った。
「兄さんは案外フェイトさん並みに天然だからねぇ……」
やれやれと両手を広げながら呆れる様なジェスチャーをしたルーテシアは、玄関から外へ出て指笛を吹き、最近神狼の見る影もなくなったシフを呼ぶ。
即座にルーテシアの足元にお座りの体勢で座るシフ、最近の彼の中の優先順位としては『アリシア=ルーテシア>なのは=フェイト=はやて=アリサ=すずか>高町家=テスタロッサ家=月村家=八神家>>越えられ無い壁>>ブレン』となっている。
直接的な主人がブレンであるにも関わらず、まるで子供が拾って来た犬猫の世話を怠り、結果として世話をしている母親に懐いてしまったような物だった。
「シフ、私が直々にちみに任務を与えます!!」
「わん!!(また何か悪巧みしてるなぁ……)」
「ふっふっふ、ちみの目的は兄さんに気付かれない様にデートを盗撮する事です、これは普段からアルバムとかに興味が無い兄さんの為になる事だから遠慮無くやっちゃってね!! (後、私が兄さん達のデートを見てによによする為に!!)」
「……わふぅ(またそんなデバガメを……)」
「じゃあまかせたよ〜、私これから翠屋のお手伝いだから!!」
そう言って手を振りながら翠屋へと走って行くルーテシア、人生を謳歌しているような雰囲気の彼女とは対称に後に残されたシフはやれやれと嘆息しながらカメラを咥え、ブレンの後を追うのであった。
はやて「彼女は私が育てた」
アリサ「彼女は私が(ry」
すずか「彼女は私(ry」
なのは「彼女は(ry」
ブレン「その結果、俺への被害が……」