妹様は書いてて非常に楽しい、そうだ!! STSでは妹様視点で行こう(白目)
第百七十一話 ロードラン 前編
それは、何時もの通りに暇を持て余していたルーテシアの一言が発端だった。
「兄さ〜ん、山か海に行きたいよ〜」
ブレンの部屋でゴロゴロと自堕落を堪能しながら、持ち込んだ漫画を読んでいたルーテシアがお決まりの我儘を言い始めた。
なんだかんだで兄を慕っているルーテシアは度々こうして私物を持ち込み、散々食い散らかしたり読み散らかしたりして一定時間遊び回った後、唐突にこう切り出すのである。
普段なら『彼処に行きたい』『あれが見たい』『これが食べたい』と言って駄々を捏ねているルーテシアの我儘を聞くブレンでは無かったのだが、今日は珍しく顎に手を当てて何かを考える素振りを見せると、『分かった』と一言零してフェイト達に連絡を入れ始めた。
「あれっ? 良いの?」
「……最近、君が俺の事を甘く見ている様だからね、ちょっと兄の威厳と言う物を見せておこうと思ってね」
「ほーん、兄さんの威厳ねぇ」
ブレンは仰向けのままニヨニヨとブレンの顔を眺めるルーテシアの表情が癪に触ったのか、かなり強めにデコピンを喰らわせると同時に耳を塞ぎ、ぴーぴーと全身を使って文句を垂れる彼女を無視、そして前々から機会を逃してばかりで案内しようと思っていても出来なかったある場所に、ピクニックと言う名目で脚を踏み入れる事を計画する。
(取り敢えず、なのはや母さん達には後で俺の口から直接言うとして、どうせならユーノも連れて行こうか、彼奴にも良い刺激になるだろう)
そう思ったブレンはデバイスを取り出し、無視されている事にお冠な妹様を猫掴みで窓から放り投げると、周囲に誰も居ない事を確認してから通信機能を使用してユーノを呼び出す。窓の外からは無事に着地に成功したルーテシアが『にゃろー!! どーゆーりょーけんだこらー!!』と中指を立てながら騒いでいる。
その姿を鼻で笑っていると通信が繋がり、司書長に就任したユーノが顔を見せた。久々に通信映像に映った友人の顔色は非常に良く、徹夜明けや仕事が山積みになっているような状態では無い事が分かった。
「やあ、ユーノ。 久しぶりだね、元気にしてたか?」
『久しぶりだねブレン、君こそ元気にしてる?』
「ああ、毎日やりたい放題な妹様に振り回されてるし、前線に出ろと言う指示も無い、退屈なくらい平和だよ。 それより、この日予定は空いているかい?」
『? うん、その日は空いてるけど、もしかして食事でも奢ってくれるのかい?』
「いや、残念ながらそうじゃ無いんだけど、考古学者である君にとって非常に興味深い場所へピクニックに連れて行ってあげようと思ってね」
『へぇ、それは楽しみだ、参考にまで聞くけど何処に行くつもりなんだい?』
「行き先か……、それは着いてからのお楽しみ、と言いたいけど俺と君の間柄だ、特別に教えてあげよう」
この時、ユーノは本当に本当に何気無く行き先を聞いただけなのだが、彼はブレンの問題児振りを忘れており、この質問をした事を酷く後悔する事になる。
ーーーー行き先はロードラン、俺が不死の英雄として辿った道程を順番に案内してあげるよ。
この答えを聞いたユーノは暫く茫然とし、またブレンの所為で胃痛と頭痛に悩まされるのか……と、呟いたと言う。
この後、ブレンはクロノも誘ったのだが、彼は如何してもスケジュールを空ける事が出来ず、今回のピクニックには不参加となった。
そして、問題のピクニック当日。
例の秘密基地にいつものメンバー+守護騎士&ユーノが集まっている、行き先を知っているユーノは兎も角、他のメンバーは行き先を一切知らされていない為、期待半分不安半分と言った表情を浮かべていた。
「兄さん、みんな集まったよ〜? そろそろ何処に行くのか教えてくれても良いんじゃ無いかな?」
「行き先はロードラン、そろそろあの地を案内しても大丈夫かなと思っていたんだ、いや〜丁度良かった」
『えっ?』
「えっ?」
『ロードランに行こうぜ!!』的なブレンの一言に一瞬何を言っているのか分からなくなったなのは達、そんな彼女達を代表してルーテシアが酷く優しい瞳を向けながらブレンの一言にツッコミを入れる。
「あのね兄さん、いくら私でもそんなデタラメ信じる訳無いよ?」
やれやれと言う様に首を左右に振っていたルーテシアだったが、その直後にブレンの取り出した大王の大剣に圧倒され、その場で腰を抜かしてしまう。
神具であるこの剣は他者を圧し潰すような威圧感を普段から放っている為、その圧に慣れていないルーテシアは軽口を叩く事すら儘ならなかった。始まりの火を刀身に纏い、その場で大王の大剣を一閃すると、世界に斬れ目が入り、空間が裂ける。
普通ならば其処には虚数空間が広がっている筈なのだが、彼が斬り開いた空間の先には『火継ぎの祭祀場』が見えていた。
ブレンは腰が抜けて放心状態となったルーテシアを横抱きにし、全員を彼の地に招待した後、咳払いを一つ置いてから芝居掛かった口調で全員にこう言い放った。
「ようこそ、私の始まりの地、ロードランへ。今日は退屈している我が妹様主催のピクニック、探検するもよし、不死の英雄が辿った道を追体験するもよし、思う存分楽しんでくれたまえ」
今彼らが足を踏み入れたロードランには既に生物は軒並み存在していません。
毎日お弁当を用意して彼の帰りを待っていたビアトリスも、我儘を聞いてくれる弟子を溺愛していたクラーナも、口の悪い彼の冒険譚を楽しみにしていた蜘蛛姫様も、全て存在しません。