第百七十四話 ロードラン 後編
不死教会、不死街下層、最下層、病み村、地下墓地、俺はルーテシアに思い出話を交えながら格上達と対峙した場合の戦い方と生き残り方を語り聞かせて行く。
不死教会では身の丈を超える剣と盾を振り回す巨漢のバーニス騎士を始め、亡者達を強化する魔法を使う六目の伝道師や目覚ましの鐘を守護するガーゴイルが俺の前に立ちはだかった。
圧倒的な重量の武具を軽々と扱える人間と不死の膂力の違い、亡者ですら怪力にして見せる魔術と言う未知の力、このロードランは実力だけでは確実に生き残れないと悟った瞬間だった。
不死街下層、此処で俺はある意味運命の出会いを果たした。
放浪者姿の血のような赤さの霊体、世界を力尽くで捻じ曲げる様な不快感と共に現れたこの霊体のお陰で、一つ目の鐘を鳴らし終えた俺に僅かながらに付き始めていた自信を完全に砕かれる事になった。
彼の実力は俺のソレを遥かに上回っていた、経験、才能、身体能力、この時点の俺は彼に対しての有効策を何一つ持っておらず、まるで赤子の様に捻られた。
実力だけで生き残れない世界と思い知らされた矢先、矛盾する様に実力が無ければ戦いにすらならない事を思い知らされる。
俺が使用する魔術の師、グリックスとの出会いもこの下層だった、とある民家に閉じ込められていた彼の自己紹介を聞いた俺は一も二もなく頭を下げて魔術の手解きを受けた。
最下層、下層の更に下の下水道の様な場所、此処で俺はあの放浪者に一矢報いる事が出来た。
魔術と言う新たな力と不死街の商人の元で購入したナイフを駆使しながら、彼の慢心の隙を突いて一気に畳み掛け、その心臓へエンチャントを施した大剣を捻り込んだ。
思えば、この瞬間に俺と彼の因縁が始まったのだろう。
病み村、最下層よりも深く暗い日の光すら刺さない其処は瘴気が蔓延し、毒沼の広がる地獄、この地には二つ目の目覚ましの鐘があり、その手前を混沌の娘クラーグが守護していた、後で知った事だが彼女は自分の妹を守る為に戦っていたらしい。
実に美しい女性だったが、敵として出会ってしまった以上戦う以外に道が無かった。
地下墓地、最初の死者ニトが眠っていた巨人墓場の手前に存在する集団墓地、ペトルスの死と聖女レアの救出、放浪者との三度目の戦い。
一対一のタイマン勝負となったこの戦いでは、新たに呪術とクラーグの魔剣を手に入れていた放浪者に苦戦を強いられた。
炎による爆風と熱傷、流れる様な剣さばきに真っ向からの戦いでは分が悪いと察した俺は複雑な地形を利用しながら逃げ回った。
後に結局追い付かれて一騎討ちになったものの、毒ナイフを使用して勝ちを収めたのだ。
センの古城の門の前で二人で並んで座りながらロードランの前半戦を話し終えた俺は、一息吐いてからルーテシアの様子を伺う。
小道具の使い方や隙の突き方、時には手段を選ばず強引に攻撃を当てる必要性など、格上との力の差をひっくり返す方法を教え込んだつもりだったが、真剣に考え事をしている所を見るとその甲斐があった様だ。
休憩を終えた俺は全員のデバイスに、これからセンの古城を越えてアノール・ロンドを目指す事を説明し、ルーテシアを連れて行く。
センの古城、アノール・ロンドへと向かう為の登竜門、蛇人が蔓延り、原始的な罠が多数設置されたこの古城の頂上ではアイアンゴーレムが待ち構えていた。
頂上まで登った頃に放浪者から炎の嵐による奇襲を浴びたり、不可視の斬撃に辛酸を舐めさせられた。
今にして思えば唯の子供騙し以外の何者でも無いのだが、当時の俺はその子供騙しに対応出来るだけの実力が無かった。
ふむふむと、俺の横で昔話を聞いているルーテシアだったが、頂上付近に近付くに連れて足場が狭くなっている事に気が付き、思わず足元を見てしまった。
「………………へっ?」
「如何したんだい?」
「た、たたたたた、たか、たか、たか、」
あまりの高さにガクガクと足が揺れているルーテシア、足を滑らせればひとたまりも無い。
冷静に考えれば普通の感性の人間ならば、片足分の足場の上を振り子を避けながら渡り切らなければならないと言うプレッシャーは並大抵では無いだろう。
ルーテシアがバランスを崩しかけて居たので、片手で抱き寄せて再びおんぶの形に戻す。
「あ、ありがとう、兄さん。 てか、この足場で子供助け起こしながらおんぶするって、どんなバランス感覚してんのさ……」
「以前は此処に蛇人が待ち構えて居たし、闇霊の侵入の可能性が有ったから今以上にスリリングだった」
「……常人の神経じゃ無いよ、流石サイボーグ」
「昔よりは大分マシなんだけどね」
「今以上に無表情って……」
「アルバム見た事あっただろ?」
「……ああ、うん」
取り敢えず、何時迄も狭い足場上と振り子の側にいると精神衛生上よろしく無いので、走りながら一気に駆け抜ける事にする。
背中に背負ったルーテシアから『待って!! 待って!! 待って!! 速いって!! 怖いって!!』と言う悲鳴が聞こえたかと思ったらいきなり静かになってしまった、どうやら眠ってしまった様だな。
頂上に到達した俺は、ルーテシアに膝枕をしながら彼女の目が覚めるまで待つ事にしたのだが、ある重要な事実に気が付いてしまった。
「あっ、蝙蝠のデーモン居ないからアノール・ロンドまで行けそうに無いな」
目の前には聳え立つ絶壁、アノール・ロンドに到達するには何m有るのだろうか分からないこの絶壁を自力で登り切らなければならない。
…………どうしよう。
不死の英雄伝 〜舞台裏〜
NGシーン ルーテシアの成長
ブレン「そう言えば昔、ルーテシアをおんぶしていた時におねしょと涎で背中が大変な事になった事があったな……」
〜三年前〜
ブレン「妹様? 遊び疲れたのならおぶるよ?」
ルーテシア「…………ぅん」
ブレン「妹様、寝る前にトイレにーー」
ルーテシア「zzz……」
ブレン「寝ちゃったか、まあでも家までは目と鼻の先だしーー」
ルーテシア「……ん」←思う存分お漏らし
ブレン「……………背中に暖かい感覚と、首筋に冷たい感覚が……」
ルーテシア「zzz……」←スッキリ
ブレン「\(^o^)/オワタ」
〜現在〜
ブレン「…………」さわさわ
ブレン「今回は大丈夫だね」
ご褒美とか言っては行けない(白目)