不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

180 / 224

収集つか無さそうなのでマグリブ編は一気に終わらせに行きます。


不屈の体現者 180

第百八十話 マグリブの落日 下

 

激しくなる一方の豪雨によって肌寒さを感じる程気温が下がり、じわじわと体温が奪われて行く、鎧を着込んでいる俺は兎も角、もう半日はアルトリウスの大盾の結界内に隠れているルーテシアの体力の方が心配だ。

 

敵意のある物や害の及ぶ物を完全にシャットアウトするこの結界は雨風と言った物は防ぐ事が出来無い為、段々と建物の軒下に隠れているルーテシアの吐く息が白くなってきている、コート一枚では日が落ちてから激しくなってきた吹き荒ぶ寒波に耐えられそうに無さそうだ。

 

シフが途中でリンクスを相手しに行ってしまったので、ルーテシアをこの地域から脱出させる事が出来無いでいる。

 

指輪の魔力によって彼女が発見される事は無いのだが、心身共に限界が来ているルーテシアをこのままにしておく事は出来無い。

 

最善の選択は地球のような安全な場所に彼女を退避させる事だがそれは難しい、だがこのままではこの子は潰れてしまう。

 

発見されるリスクがある為、あまりやりたくない手段ではあったのだが、俺はデバイス内に格納してあった大王の大剣を取り出してルーテシアの前に突き刺した。

 

アスファルトの地面に刃の中程まで突き刺さる大王の大剣、その大剣に始まりの火を灯して篝火の火を再現する。

 

肉体的疲労、精神的疲労を完全に回復する篝火の火、ルーテシアの座る結界内にそれを作った俺は、この火に当たっているように、とルーテシアに指示した後、後ろ髪を引かれる様な思いをしながら移動する。

 

理由としては、自分が人殺しをする姿を見せる事をしたく無い事と、それに伴う死臭を嗅がせたくは無いという事だ、此処までしているのだからルーテシアが発見される事は無いだろうが、万が一と言う事もある。

 

そんな事を考えながら戦いの爪痕と死臭が残る道を走っていると、近くのマンションの駐車場に一台のバイクが止まっているのを発見した。

 

少々迷ったが、百万程の値段を記入した小切手と引き換えに、ナイフを一本取り出して鍵穴に捩じ込み、強引にエンジンを蒸して行く、俺はクロノの下にいた時にバイクの動かし方を教えて貰っているが、あまり乗った事が無いと言う状態なのだが兎も角移動する為の足が欲しかったので無謀なチャレンジを敢行する。

 

かなり下手糞な運転ではあるが、街中をバイクで走り回りながら敵の注目と怨嗟の声を集めて行く、重量の問題がある為、何時もの鎧は再びデバイス内に格納してしまったので、バリアジャケットの展開出来無い俺は当然私服姿となり、無防備となる。

 

武器に関しても、一般のバイクに乗っている以上、重い武器やハルバードの様な範囲攻撃が可能な武器は使用出来ず、光波の余波も危険だろうから月明かりの大剣も自重するべきだろう。

 

今までの装備を使用する為の格納道具としか使用していなかったデバイスを杖モードにして当面の武器とする、このデバイス自体も楔石で強化している為、鈍器として殴り付ける分には十分な力を持っているだろう。

 

車道を塞ぐように飛び出して来た残党達、彼らのグレネードやマシンガンの乱射を大袈裟な動きで避けながら、すれ違いざまに彼らの頭を殴り付けて一人を撲殺、残りの連中にカートリッジの薬莢を投げ付け、それをナイフで撃ち抜いて爆殺したのだが、少し計算をミスった所為で爆風の余波で転倒してしまう。

 

俺もバイクも致命傷や走行不能となる様な傷は負ってはいないのだが、肩や足を撃ち抜かれたし、バイク自体も何箇所か破損して居る、深くは無いが、浅くも無い傷を負ってしまった。

 

投げ出された所為で身体がバラバラになった様な衝撃を受けたのだが、幸いにも骨は折れていないし罅も入っていない、擦り傷でじくじくと身体中が痛む程度で済んだ。

 

 

改めてバイクに乗ろうと、転倒しているそれを起こそうとした刹那、視界の端にミサイルの弾頭が移り、その場から飛び退いてそれを回避、代償にバイクが跡形も無く消し飛んだ。

 

目の前にはタンク型のネクストが降り立ち、殺気を放ちながら俺を睨み付けていた。

 

 

「不死の英雄……テキ、カタキ、ミツケタ」

 

 

絞り出すような声、俺の前に立つ彼はリンクスとしての限界が近いのだろう、死に急ぐと分かっていても仇を討つ事を選ばざるを得ない様だ。

 

確かにその様な姿勢には惹かれるし、俺好みの人種ではあるのだが、どう見ても彼では俺の相手は務まりそうに無さそうだ。

 

照準を合わせる事すら億劫そうにしている彼では俺を殺す事は出来無いし、手心を加えて殺されてやる事も出来無い。

 

デバイスをモードリリースし、待機状態に戻した後、混沌の刃を引き抜き、鎧を纏わずに彼へと斬り掛かる。

 

地を這う様に身を低くしながら右足で踏み込み、一気に彼我の距離を潰す、その後左手で握った鞘を使用して彼の右手に握られているバズーカを弾き飛ばしながら心臓を目掛けて一直線に混沌の刃を突き立てて行く。

 

プライマルアーマーを貫き、装甲に切先が触れた瞬間、目の前のリンクスはバックブーストを吹かせて後退、背中のミサイルと左のグレネードを発射する。

 

標準的なミサイルと、彼の両肩にマウントされた連動ミサイル、その火薬の雨の中からグレネードが俺の身体を焼く為に迫ってくる。

 

完全に回避する事が難しいと判断した俺は、迫るグレネードの弾頭を爆発し無いように膝を使って蹴り上げ、垂直軌道を取っているミサイルにぶつけ、その爆風と余波を利用して残りの弾頭を反らしてゆく。

 

熱風と弾頭の破片が俺に襲い掛かり、裂傷と熱傷を負ったものの、爆風の中を斬り裂きながら踏み込み、彼の懐へと潜り込んだ俺は、タンク型の脚部を混沌の刃で貫き、強引に脚を止めさせると、心臓を目掛けて抜手を敢行、混沌の刃によって傷を負っていた装甲に右手を捩じ込み、心臓を引っこ抜き、目の前で握り潰す。

 

彼は力尽きる一瞬、『ふぁ、ファーティマ……』と言い残して絶命、しかしアマジーグの様に死後も尚気力のみで戦い続ける可能性も残っている為、足止め用に突き刺した混沌の刃を振り上げ、ネクストごと彼を両断する。

 

力尽くでプライマルアーマーを突破した所為で右手が焼け爛れてしまったが、その代わりにリンクスの一人を撃破、十分にお釣りが帰って来る。

 

 

混沌の刃の血払いを済ませると同時に俺の背後にシフが降り立つ、口元が血で汚れており、シフの身体にも多少の銃痕が残っており、彼がその口からプッと吐き出した物は撃破したリンクスの腕と上半身、そしてネクストの一部、ネクストのパーツや装備から判断するに、恐らくはメアリー・シェリーの物、喰い殺したのか噛みちぎったのかは分らないが、シフが冷たい目でその肉片と残骸を眺めている事から彼の逆鱗に触れてしまったのだろう。

 

 

「シフ、予定は変更だ。君を”本来の姿”に戻すから、現在この地域一体に展開されているECM並びにAMFの破壊を頼みたい、誰かが破壊して回っているようで大分濃度も範囲も薄くはなって来たが、まだ通信が聞き取り辛い、それが終わったらMTの破壊も頼むよ、俺は撒き餌として残りのテロリストを炙り出す事に専念する」

 

 

そう言って俺はシフの身体に触れ、アルトリウスの大剣に宿る彼の魂を完全に解放、存在するだけで周囲を威圧する神狼として舞い戻った灰色の大狼 シフは静かに頷いた後、全力で目的の物を探しに行った、流石に今のシフをルーテシアに会わせるのは憚られた為、先にこの騒動を収束させる方向に向かわせる事にしたのだ。

 

雑音混ざりの通信からは順調にテロリストを鎮圧して行く局員達の声と、戦況報告が続く、それに伴い俺もリンクス二名の撃破、並びにシフの出撃を報告する。

 

即座にレジアス中将から『何をノコノコと戦場に出歩いている!!』と怒鳴り返されてしまったがコレは不可抗力だろう。

 

 

『さっさと地上本部まで帰って来い!! なんの為に貴様を昇進させたと思っているんだ!! 最早お前は前線に出る立場では無いのだぞ!!』

 

「御言葉ですが中将、私は一佐と言う立場ですが無理矢理昇進させられた上に部隊も持た無いお飾りの佐官です、後ろで書類仕事をしているだけの生活は退屈で仕方ないのですよ」

 

『貴様に求めているのは戦闘能力では無い!! その知名度と人気なのだ!! 酒池肉林していようが、遊んで暮らしていようが、女のケツを追っていようが、貴様が『生きて』『管理局』に属しているという事が必要なのだと何度言えば分かるんだ!!』

 

「ですが中将、私はーー」

 

『…………良いだろう、その立場が退屈ならばこの件が終わったら儂が貴様を忙しい”立場”にしてやる、毎度毎度減らず口を叩いておった事を覚悟しておれよ!!』

 

 

そう言って閣下は一方的に通信を斬った、最近血圧が高くなっているとか、胃薬と頭痛薬を購入している内に薬局の常連になったとか、十円ハゲならぬ五百円ハゲが出来ているとか、色々と娘さんが心配しているのだからあまり興奮し無い方が良いだろうに……、閣下の短気にも困った物だ。

 

 

シフのローラー作戦にも似た掃討と、俺自身を使った炙り出し、リンクス二名を仕留めた事による士気の差が相まって、丸一日掛かったこの騒動は完全に幕を下ろした。

 

死者や負傷者は数え切れず、マグリブ解放戦線の構成員はその全ての者が命を落とした。

 

 

この一件は後にマグリブ事件と呼ばれ、禁止されている質量兵器を大量に使用された事に加え、それだけの量の質量兵器を用意された事から、時空管理局の低迷を如実に表した事件として後世に語り継がれる事になり、ある男の名を世に知らしめる事となる。

 

 

『英雄の再来 ブレン・シュトッフ』

 

伝説の聖剣に認められた男であり、伝承の中の武具を完全に使い熟す出自不明の少年、使い魔と共にリンクス二名を討ち取った事、そのうちの一名は超広域指名手配が為されていた傭兵、メアリー・シェリーだった事、これらの功績と、彼が戦死した場合の士気の低迷を加味した結果、彼は少将として時空管理局に名を連ねる事となった。

 





妹様のカウンセリングとなのはとのデートを終わらせた後、待望のstsに入ります。

実に長かった(白目)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。