不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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sts編開始です、漸く最終章だ(白目)


不屈の体現者 183

第百八十三話 空港火災

 

 

ーー新暦71年 四月二十九日 ミッドチルダ臨海第八空港、この日この場所は大火災に見舞われた。

 

原因はとあるロストロギアとある将官の暗殺未遂、薬剤や魔力の入り混ざった炎は中々収まる様子を見せず、轟々と燃え盛っている。

 

そんな地獄と化した空港のエントランスを一組の男女が歩いていた。

 

 

「ドーリー君、私は何処かでお祓いを受けようと思うんだけど、何処か良い場所を知らないかな?」

 

「閣下、それは此方のセリフです。 毎度毎度何故貴方の側にいるとこの様な事態にばかり見舞われるのでしょう、飛行機に乗れば必ず墜落し、船に乗ればこれも必ず沈没、列車に乗れば脱線、お客様が多過ぎます、何処か良い霊媒師は知りませんか?」

 

「生憎と、私はそう言った連中を信じない主義でね、自力で何とかしろとしか言い様がないよ」

 

「では、十年ほどお暇を頂きたいのですが」

 

「他の連中は兎も角、君に抜けられると私は仕事に押し潰されてしまうから却下だ」

 

場所に似つかわしく無い会話をする二人、それはブレン・シュトッフ少将とその秘書官キャロル・ドーリーの二人だった。

 

「今回の客は量産型のナインボールだったからね、グレネードやミサイルの所為で被害も甚大だ、それに加えて例のロストロギアの影響もある」

 

「閣下は他人事のように仰っていますが此処は我々の管轄、後始末をするのは私なのですよ?」

 

「期待しているよ、ドーリー君」

 

「面倒な仕事を私に丸投げするのは止めて頂けませんか? 仕事量が尋常では無いのですが」

 

「丸投げしても終わら無い量の仕事を押し付けられる私の身になってみるかい?」

 

「…………何か中将閣下の恨みを買うような事でも?」

 

「心当たりは全く無いな」

 

「成る程、やる事なす事全てに怒りを買ったと」

 

「…………」

 

秘書から浴びせられるさり気ない罵倒、この程度の軽口を叩けるくらいには彼らの信頼関係は構築されており、ブレンも多少罵倒された程度では気にも止めていない。

 

毒舌秘書の口から飛び出す棘のある言葉を聞き流しながら、ブレンは頭の隅で脱出ルートを構築して行く。

 

空間を斬り裂いて脱出すると言う手段を使おうにも、この技は色々と繊細な物で、繋げる先に何も無い状態で使用しなくてはなら無い為、転移先は慌ただしいこの周辺から離れた場所になる。

 

しかし、そうなってしまうと要救助者である自分が忽然と居なくなってしまったと言う事態に陥り、余計な混乱を招く事になってしまう。

 

 

「いっその事周囲の空間諸共空港を斬ってしまうかな、残骸は虚数空間にでもーー」

 

「我々以外にも逃げ遅れは居るでしょう、その人達も諸共虚数空間送りとは、いやはや流石です閣下」

 

「何時にも増して冷ややかな目をしているが、私もそんな事は分かって、…………彼処に居るのは逃げ遅れか?」

 

「…………その様ですね」

 

 

彼らがエントランスの二階からホールの方を見下ろすと、女神像の足元に一人の少女が膝を付いているのが見えた。

 

距離が距離だった為、近付いて保護しようと足を踏み出したところ、女神像が足元から崩れ、少女の上に倒れ込む、ブレンの視界にはなのはが丁度到着した姿が映ってはいたが、余計な体力を使わせる必要も無いと判断してゴーの大弓を取り出し、即座にゴーの大矢を番えて放つ。

 

 

閃光の様な速さで女神像に直撃した大矢は、ブレンの力加減によって女神像を破壊すること無く、轟音と共にその巨体をその場から弾き飛ばす、逃げ遅れた少女は何が起きたのか理解出来ていなかった様で暫く放心していたが、なのはは誰の仕業か即座に理解した様で、アイコンタクトでありがとうと行ってから逃げ遅れの少女の元に降り立った。

 

 

「…………御見事です閣下、相変わらず人間離れした腕前ですね」

 

「私もまだまだ腕は衰えていないと言う事だよ」

 

「…………褒めているつもりは無かったのですが」

 

「今でもその気になれば竜も墜とせると思うけどね」

 

呆れた秘書の視線とブレンの咳払い、其れ等とほぼ同時に放たれた桜色の砲撃、それは爆音と共に天井を軽々と撃ち抜き、満天の星空を解放する、なのははその道を少女を抱えて飛び去って行く、その際にハンドサインで後でまた来ると言う言葉を残して行ったので、ブレン達は素直に待つ事にした。

 

「初めて生で見ましたが、流石は『エースオブエース』、閣下の恋人だけあって凄まじいですね」

 

「…………まあ、ね」

 

手放しに彼女を褒められて悪い気はしないブレンであったが、反面余計な負担をなのはにかける事になっている様な気がして素直に喜べていない。

 

そんなブレンの表情を察したのだろう、キャロルは小さな溜息を吐いて少し話題を変える事にした、出来る秘書は触れて欲しく無い話題には触れ無い物だ。

 

 

「ところで閣下、吊り橋効果と言う物をご存知ですか?」

 

「つり橋効果とは、揺れるつり橋を渡ったことによる心臓の高鳴りを、一緒につり橋を渡った相手への高鳴りだと勘違いし、恋愛感情だと思い込んでしまう効果のことだったな? で、それが如何したんだい?」

 

「ええ、その吊り橋効果ですが、どうやら私にも作用している様です」

 

 

そう言ってブレンにしなだれかかるキャロル、勿論冗談であり、彼女はブレンにそう言う感情を微塵も抱いていない、あくまでも上司と部下なのだ。

そして、そんな彼女が何故こんな真似をしたかと言うと、単になのはの嫉妬心を煽る為である。

 

最近の二人は色々とすれ違い気味の様で、プライベートな時間も取れていない、幸いな事に今回の火災を口実に二~三日ほど休暇を捩込む事は出来るので、この機会にそのフラストレーションを消化して貰うつもりの様だ。

 

…………タダで休暇を与えるのも癪なので精々痴話喧嘩の火種にでもなればと思ってこうしてしなだれかかっているキャロルは中々の悪女である。

 

灼熱のサウナ状態の所為で汗を掻き、じっとりと湿ったシャツがスーツの隙間から顔を覗かせている、体に張り付くシャツはその下の肌の色が汗で透けて見える。

 

なのは達には無い年上の色気、上気した頬が赤く染まり、その潤んだ瞳は普段のクールビューティーと相まって男の劣情を誘う物なのだが、どうにも普段の毒舌秘書の姿を知っているブレンからすれば鳥肌モノでしか無い、しかも腕に抱き付いていると思わせておいて、逃げられ無い様に関節を決めている。

 

 

どうやって碌でも無い事を思い付いた自分の秘書を振り払うかと頭を悩ませていると、折り返してきたなのはと目が合った、その目は笑っていなかった。

 

流石にお互い公私混同はしないが、此れは家に帰ってからが修羅場になる事は想像に硬く無い。

 

嗚呼、如何して私はこうもトラブルばかりに好かれるのだろうか……。





キャロりんの見た目はご想像にお任せ致しますが、私は彼女のPixiv百科事典のトップ画の容姿をイメージしてます。

そしてブレンはジョースター家の様に毎度毎度乗り物トラブルに見舞われます(白目)
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